魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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StrikerS編 第二十五話『そしてまた、激動の日々が始まる。しかし、歩みは独りではなく』

 

 

「……アルフ、ザフィーラ。大丈夫だね……?」

「ああ、問題ない」

「平気だぞ」

光学迷彩系技術により風景に溶け込むことのできるB級ロストロギア『インビジブルスーツ』を身に纏い、消音・衝撃吸収技術により無音移動が可能なC級ロストロギア『サイレントブーツ』を装備し、認識阻害以上に高レベルでの気配遮断を可能にするB級ロストロギア『ステルスジェム』を胸に提げ……無限書庫の近辺。コソコソと、人目を忍んで移動するユーノの姿があった。

「明日だけは、どうしても捕まるわけにはいかないんだ……!」

 ロストロギアの効果範囲の中で、二頭の狼が確認する。

「翻訳が4、論文が2……」

「……それに、遺跡調査が3、だ」

「無理だ……! どう考えても、無理だ……! 何で遺跡調査に任期が有るんだよ! 急いだら見落とすだろう!!」

「それが一度も無いユーノだから、依頼が来るんじゃないの」

「信用が有るのだ。誇るがいいぞ」

「うん、僕じゃなくて館長が勝手に受けた依頼でなければね!!」

あの館長に捕まったら、缶詰どころかコンクリ詰めにされてしまう。見た目が幼女のくせに、無限書庫発見時から姿かたちがそのまま不変という、あの妖怪変化。

「事変の際、無限書庫を持ち出す許可の対価と……」

「……A~S級、多数の原典魔導書喪失の損害賠償もあるのだ」

 金額換算できるものだけで、次元航行艦が一隻、建造できてしまうのだ。事情が事情とはいえ、あの、無限書庫の付喪神であると推測される女児が、それを無条件で許す筈が無かった。

「この間は、山を挟んだ敵対部族同士の紛争解決」

 山脈を一日に三往復させられた。

「その次は、互いに同一神の起源を主張し合う宗教の和睦交渉」

 真相を探るために潜入した遺跡には、S級ロストロギア相当の守護者が居た。

「もー無理もー限界! あのガキ、ぼくのことを合法的に過労死させる気まんまんじゃないか!」

何かにつけて、ユーノをいじめて楽しむ悪癖があったとはいえ……ここ最近のヤツの所業は、常軌を逸している。ユーノは、頭を抱えて叫んだ。

 

 

「有給が通らないのなら……逃げるしかないじゃないか!」

 

 

 …………数百年前の伝説的暗殺者の装備一色が、こんな用途のために使われていると知った学者たちは何を思うのだろう。

 

 ドクンドクン、と緊張で脈打つ心臓を意識しながら、エントランスに差し掛かる。

『内側を向いた番兵』という、無限書庫という組織のブラックさを如実に体現する存在の目の前を、抜き足差し足忍び足で…………

「 「 「 ……………………ふぅ、バレずに済んだ 」 」 」

 

――――プシューーーーーーーーーーーーー!!

 

 ……突如としてスプリンクラーのような装置から噴き出された塗料が、『インビジブルス―ツ』の表面に付着し、姿を浮き彫りにした。

「……!! バレた!」

 ユーノは即座にスーツを収納した。一度でも認識されてしまえば、たとえ迷彩が発動したとしても、『居る』という認識までは誤魔化せない。

 

 

――いたぞ! 司書長だ!!

 

 

 ……何故かユーノを捕獲に掛かる同僚たち。猛ダッシュで遁走を始めた。

「逃がすな! 捕まえろ!!」「館長がご立腹だぞ!」「もう始発帰りは嫌ぁ!」「朝は帰る時間じゃない! 出勤する時間帯なのよ!」「ベッドで横になって寝たい!」「週休0.2日は人間の仕事じゃない!」「早番、日勤、遅番、夜勤までのぶっ通しシフトはもう嫌よ!」

 

「 「 「 「 「 ヤツ(司書長)を捕まえれば有給だ! 」 」 」 」 」

 

「なんちゅう条件で部下を唆してるんだあのガキはぁああああああ!!」

…………本当にロクでもない理由だった。

「というか、なんで判ったんだ?」

ステルス系技術のロストロギアを、三つも併用したというのに。

不思議そうに首を傾げるアルフに、ザフィーラが答える。

「恐らくは『匂い』だろう。人感センサーやサーモグラフィーでは探知不可能。であれば、『匂い』の元でもある分子の変化を感知し、あの塗料を噴霧する仕組みになっていたのだ」

「特許取って売り込めば儲かりそうなハナシだねぇ」「それは良い考えだ。我らの夕餉がランクアップするな。……ちなみに我は、クジラのステーキを所望する」「あたしはスペアリブのブロックがいいなぁ」

「いいから早くルートを算出してくれるかな!?」

 ……背後から射出式投網やサスマタがビュンビュン飛んでくる中、ヒラリヒラリと見事に回避し続けるユーノだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 ユーノが懸命の逃走を敢行している現在は、秀人たちの変化から、更に半年が過ぎていた。

 

 

 結局……統括理事という席が埋まることは無く。はやては、三提督の権威と名を盾に、腰の重い上層部を(時には物理的に)椅子ごと蹴り転がしながら処理を進めた。

 

 

「時間を詰めるか、指を詰めるか……好きな方を選んでいいぞ♪」

 

 

 和包丁を片手に、晴れやかな笑顔でそうのたまった。

 ………………以後、八神はやての名は、上層部にとって恐怖の象徴となり、老害どもが自発的に働き始めるきっかけとなった。

 

 レジアスはその後、大将に昇進……というか、『あんな恐ろしい奴の手綱を握れるのはアンタだけ』という、極めて消極的な理由から、取りまとめ役のような役職に就かされるハメになった。全会一致の信任である。

リンディもまた、その補佐という形で、携わることとなり……結局、ツートップのような扱いを受けることとなった。

 

 

 

 そして。

 

 機動六課隊舎。

 その正面広場に、はやてと、隊員たちの姿があった。

 

 はやては檀上に立ち、彼らを見渡す。中には、美香やシュテル達、聖王教会の面々や、果ては元ナバーズたちも、集まっていた。見届け人は、秀人となのは。レジアスとリンディ。

 ここ最近、あちこちの事態収拾のため、傭兵の如く派兵され続けていた隊の面々にとっては、久々に顔を合わせる機会となっていた。機動六課が結成して、まだ三年も経過していないというのに……まるで、十年来の仲間たちのような雰囲気を醸し出していた。それだけ、短くも濃厚な時間だったということだ。

 全員が静まるのを確認し……はやては、口を開いた。

 

「まず、貴様らを労おうと思う。此度の事件、貴様らの尽力があってこその解決だった。

 

 ――――ご苦労だった」

 

 これにどよめく隊員たち。

「ぶ、部隊長が労った……!?」「あの部隊長が!」「あの悪鬼が……!」「部下をホッチキスの芯くらいにしか思っていない、あの部隊長が」「他部隊との合同演習に乱入して、全員を根絶やしにするような、あの部隊長が!」

 …………酷い言われようだった。はやてはそれを無視し、続ける。意外なほどに穏やかに、常識的に、まっとうに……関係者への感謝や、部隊の面々の功績について。このまま和やかに終わるか……と、誰もが思っていた。

 

 

「――――――――――私は、管理局を去ることにした」

 

 

そんな特大の爆弾を投下するまでは。

「――――理由の前に……時空管理局について、話そう」

レジアスとリンディという、現時点での管理局のトップの前で、その話をしようと言う。

 

「今回の事件で、つくづく感じた。

 

絶対的な統制機関を頂き、そこがあらゆる分野をリードしていくこの世界の構造は、確かに、効率的なのかもしれない。

 

そのシステムが、世界を繁栄へ導いてきたことも認める。

 

だが、あまりに絶対的であるがゆえに、暴走した際、抑止力となりうる力が存在しないという脆さも、同時に抱えている。

 

今、必要とされているのは、絶対的な統制機関ではない。

 

――――その統制機関へ、『NO』という意思を表明できる、全く正反対の存在だ」

 

その為に、管理局の地位を捨てるのだとしても。

 

「歪みは、そこに人がいる限り、完全に無くすことは出来ない。

 

無理やりに正してはいけない。

 

しかし、それを正すことを諦めてはならない。

 

世界はこれから、大きな変革を迎える。

 

当然、その歪みを内包するままに。

 

既存の体系を引き継ぐだけでは、やがて、その歪みは、世界に亀裂を入れるだろう。

 

――――だからこそ、その歪みを、外から叩いて直すための、鉄槌が必要なのだ」

 

故に、私は管理局を去り、一から……いや、ゼロから、それを構築する」

 

 そこで、ふと……優しげな笑みを、隊員たちに向ける。

「貴様たちはこの一年、よくやってきた。その褒章を与える」

 そして、全員のデバイスに、その『褒章』が提示される。第一空挺団。第一陸上機動部隊。防災部特別救助隊。本局管制室。カレドヴルフ社特別開発室。公的なものから民間まで、錚々たる絢爛な組織名が表示される。

「全てにワタリをつけておいた。選んで提出するだけで、内定だ」

 はやては……機動六課を解体した後の、隊員たちの進路を確保していた。

「改めて、労おう。お前たちは、この1年でよくやってきた。もう、お前たちを、はみ出し者と、表だって揶揄する者はいないだろう。だから……」

 

 

――――達者でやれ。そう言いかけたはやての演説を遮る声が上がった。

 

 

「――――――オレ、部隊長に着いていきます!!」

 

 

その、コリンの声に呼応するかのように。

「水臭いッスよ、部隊長!!」

「そんな面白そうなこと、一人でやろうなんてズルいです!!」

「そうだそうだ!」

「わたしも連れてけー!」

「ここまでひっぱってきておいて無責任だぞー!!」

「責任とってくださぁい!」

 次々と、次々と……やがて、部隊全体を揺るがす大合唱へ。

 

「――――――……え、嘘でしょう」

はやては、心底意外そうだった。

 

――――実は、本人も気づいていないことだが。

 

他人の心情を察することには長けているはやては…………自身へ向けられる好意というものへは、まったく想像が及ばないという欠点があった。

「えっ、……えっ…………ホントに? 盛大なドッキリとかじゃなくて?」

 隣のリーゼと……美香やシュテル、フィアットにまで目で確認し……茫然となる。

 

かつては落ちこぼれとして左遷されてきた隊員たち。

だが……彼らは今、自分の意志で、はやてと共に、苦難の道を歩こうという。

「………………す、酔狂なやつらめ…………!」

はやては、嬉しさをできるだけ隠す……とはいえ、隊員たちにはもう、はやての性格はバレているので、隠せていなかった。

 

「――――――よし、貴様らの気持ちはよぉく分かった!」

 

一緒に行こう! ……などと、言うわけがないのも、皆知っていた。

 

「――――だが、ここからは管理局の庇護もなく、多大な困難が待ち受けていることだろう! そこへ、弱っちい足手まといを連れて行く余裕は無い!

 

――――私と来たいと言うのなら…………!!」

 

 

各々、何故かやる気満々で武装を構える。

 

はやても、気付けばツインユニゾンン状態で、やる気満々。

あの日の再現……だが、門出を祝うのに、これほどふさわしい催しは無いだろう。

 

機動六課らしい……破天荒で、無茶苦茶な、追い出しだ。

 

 

「――――――全員、かかって来いやぁ!!」

 

 

 

 

――――――――――――――――!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――そして地形が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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