魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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vivid編 4話『ひとりえんそく』

 

 ここは産婦人科の入院病棟。治療と言うよりは、出産の準備、もしくは予後のための宿泊施設といった側面の方が強い。

 無事、5600gの男児を出産したなのはも、普通の病院と違い暖色系の内装が特徴的な部屋で(強制的に)入院と言う名の宿泊をしていた。

 

「だってあなた。あの母親ったら、嬰児連れてさっさと家に帰ろうとするんですもの」

 

 担当した産婦人科医・玉木和江は後にこう語る。

「普通ね、出産っていう大仕事を終えて、さらにこの後数年スパンで取り組む育児っていう更なる大仕事が待っていて……ある意味、ゆっくりしていられるのはこれが最後なのよ。

休むでしょう? 普通は…………。というか帰さないわよ。いくらデカくっても嬰児は脆弱なんだから。

 

え? さすがに嘘だろうって?

 

 ……わたしだって、信じたくなかったわよ」

 

 ため息をついた玉木医師は、さじを投げたように微笑む。

「あなたは、分かっていないわね。吾妻なのはという人物の真の恐ろしさというものを」

 

――――まさか、院内であんな騒動になるなんて。それこそ、神さまだって分からないでしょう?

 

 

「帰って! 帰って!! 帰ってぇえええええええええ!!!」

 

「すまねぇ! すまねぇ!! すまねぇえええええええ!!!」

 

 ………………掛布団を頭まで被って絶叫するなのはと、額がめり込むんじゃないかと思うくらいに深々と土下座を敢行するハリー。

 

 

 時は遡る――――

 

 

 無事、何事も無く出産を成し遂げたなのは。待機していた面々は、その今世紀最大に喜ぶべき出来事に文字通り狂喜していた。…………病院の廊下で。

 

「じゃかぁしいわボケがぁッ!!!!!」

 

 ……鬼のような形相の師長に一喝され、なのはの体調も気遣って早々に退散していく。

 両家の両親のみが最後に残り、それも帰って行った。

「大丈夫なのにぃ~…………」

 若干、ぶすっとした態度のなのはがぼやく。二人の子供は、今は新生児室でぐっすりと眠っている。ずっと手元に置いていたい気持ちは、分からなくもない。

「それに、その方が良いと思うんだけどなぁ」

「産声でガラスを割るとは……」

「元気だよねぇ~」

 ひと仕事を終えた安心感から、どこかホワホワしている。

「うむ…………しかし、そうか……………………子供か…………」

 父親としての自覚は持ったつもりだったが……やはりまだ、現実感が無い。男親であるので、仕方ないと言えば仕方ない。

「うんうん。停学してても仕方ないよね」

「仕方あるわ!」

 停学は一か月。タイミングが良いと言えば良いのかもしれない。

「……まぁ、学校にも保育所があるから、停学明けからはそこを使おう」

 二人の通う学校は、若年者ばかりではなく幅広い年代の生徒を受け入れている。中には、子供を持つ母親もいる。そういった者を対象にした設備も完備されており絶賛稼動中、とのことだ。

「…………ねぇ秀人さん。保育所登校って」「無ぇよ」

 この期に及んで、この母親は。

「明日あたり、四葉がヴィヴィオ連れて飛んでくるって言ってたよ」

「さすがに急すぎて間に合わなかったな……」

 入学式-乱闘-停学-出産……全く意味が分からない。予想できたらそれこそ神だ。

 と、マナーモードの携帯電話が、メールの着信を告げて振動する

「すずかだ」

 文面の長さからすると、学校関係……「え?」同じく、画面を見たなのはも「え?」

 

――――ハリー・トライベッカさんがそちらへ向かっています。

 

「ハリーって、確か……」

 なのはの、乱闘相手の。

 

――――もちろん、こちらから情報は一切開示していません。ですが、何をどうやったのか、そちらの所在を突き止めたと、彼女の知人から通報がありました。

 

「……不利な状況を突くのは定石だけど」

「これは……ヤバいかもな」

 まさかのリベンジマッチか。産後のなのはが不利だ。

 

――――あ、申し訳ありません。もう面会時間は、あ、ちょ、

 

――――きゃー!! なんですか貴方は!? 警察、誰か、けいさ あべしっ

 

 …………二人は顔を見合わせ、頷き……存在隠匿の高位結界を展開する。

「…………」「…………」

 新生児室までも覆ったので、安心だ。

「「ふぅ。とりあえずこれでやり過ご」」

 

「――――邪魔するぜぇッ!!」

 

――――ガラガラガラッ!!

 

「うわぁあああああああーーーーーーーッ!!」

 何事も無かったように入ってきた!

 なのはとやりあったままの姿だ。生命力溢れる特徴的な紅色の頭髪が、まるでそれ自体が発光しているかのように煌めいている。

「見つけたぜぇっ……!」

「…………随分と早い再会ね」

 なのはも既に戦闘モードだ。

「おいちょっと、二人とも待て! つーか場所を弁えろ!」

 すぐそこに新生児室がある。ここでいつものノリでドンパチされては、絶対にマズい。

 

 が、ハリーは聞く耳も持たず……

「ここで会ったが百年目――!!」

 シュバッ、と野生動物の身のこなしで跳躍!

「くっ」

 迎撃やむなし。構える秀人。そして………………

 

 

「――――すまなかったぁあああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 ………………額から着地するジャンピングDOGEZAが炸裂した。

 

 

――――時は動き出す。

 

 

 その後、根が生えたように動かず土下座を続行するハリーに恐怖を覚え、精神的ひきこもりを発動したなのはも没交渉となる。

「もう帰って!!」

「いいや帰らない! お前に謝り倒すまでは!」

「いいから帰って!!」

「いいや帰らない!」

「帰ってーーーー!」「嫌だーーーー!」

 

――――どうすりゃいいの、これ。

 

 秀人は、途方に暮れていた。とそこへ、またしても結界を無視して奈々がひょいひょいと入ってきた。

「受付の子は無事だヨー。ちゃんと記憶も消……ケアもしておいたヨー。…………そっちの子」

 さらっと恐ろしいことを言う奈々だったが、秀人には、どこか……様子がいつもと違うように見えた。

「おーう、秀人。ここにワシの曾孫来とらん?」

「おう爺さん。……曾孫って、もしかして」

 

「帰っ…………ええいもう分かった。私が帰る! おうちに帰る!!」

「帰すものかぁあああああっ!!」

 カバディカバディカバディ…………と、部屋の中でシャカシャカと円運動を繰り広げる二人の片方。紅髪のほうの襟首を大家が摘み上げる。

「うわっ誰だ!? …………あ、ジッちゃん!!」

 ぱっと顔を明るくするハリーの脳天に、巌のような拳骨が………………

 

 

 

「ふむ。騒動の後、なのはちゃんが身重だと知り、いてもたっても居られなくなった、と」

「そ、そうだ……身重の獲物は狩らねェ……それが、野生のルールだ…………イクラもシシャモも食わねぇ……」

 ……ぶすぶすと煙を上げそうなタンコブを作りながら、ハリーが言う。

「爺さん、曾孫まで居たのか」

「そりゃおるわい。ごひゃ、……げふんげふん……80も生きておれば、おるわい」

「今すっげぇ鯖読んだな!?」

 本当に人間かよ、と、お前が言うなと全宇宙から突っ込まれそうな感想を抱く秀人だった。

 

「ルールを破ったケジメをつけようと、匂いを辿って来た、と」

「おう。余裕だったぜ!」

「時と場を弁えんか!!」「いてぇーー!!」

 がり、と、変な音がして振り向くと、奈々が、親指の爪を齧っていた。

「おい、どうした」

「………………べぇっつにーーーーーー………………」

 その目は、大家とじゃれあうハリーに、ひたすらに注がれていて。

(あぁ……そうか)

「……その察したような目、ちょっとむかつくー………………」

 余裕の無い奈々という、貴重な1シーンが見られた。

 

「おう、お前らも入れ!」

 ハリーが号令すると、長身、中背、チビの三人がぞろぞろと入室してくる。仲良しグループ……ではない。どこか、三人が三人とも、互いを警戒しており、『友達の友達』が三人集まった……といった様子だった。

「えー……なんかぁー、ウチらが言ったことで気にしちゃってるって、この人から聞いてぇ」

「あー、そうそう。なんかゴメンねー。悪気は無くってさぁ」

「……すみませんでしたぁー」

 …………謝れと言われたので、形だけでも謝りました感がアリアリと感じられる。

「お前らぁ……!!」

 ハリーもそれを感じ取ったのか、怒りのオーラが見え隠れする。

 

「だってぇ、みんな(・・・)だって、そう言ってたしぃ」「そうそう。みんな(・・・)言ってたもんねぇ」「みんな(・・・)だって同罪だと思うなぁ」

 

――――ガタンッ。

 

 ……なのはが、ベッドに突っ伏していた。

「みんなって……みんなって、何よ……『みんな』の中に居たこと無いから、分からないわよ……!『みんな』を引き合いに、話さないでよッ……! 私には、分からないじゃないッ……!!」

 あまりに切ない告白に、場が沈黙する。ハリーが、気を取り直したように。

「――――ま、まぁ、停学明けたら遠足だ。それで、」

 

「え、遠足ッッ…………!?」

 

 目を見開く。その姿を、『楽しみにしている』と勘違いしたハリーが意気揚々と言葉を重ねる。

「おお、そうだ遠足だ! どっかの山に行くって」「山ッ!?」「…………お、おい?」

…………ただならぬ様子だ。

「……う、運動広場……ベンチ……お弁当………………!!」

 

――――あ、これヤバいやつ(黒歴史)だ。

 

 ……そう頭で理解はしていても。

(や、やめろ私! 思い出すな!! 思い出すなッーーー!!!)

 もわもわもわーん、と、過去の記憶が甦る。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

オイオイオイ(笑)

(寂しくて)死ぬわアイツ(笑)

 

ほう、友達抜き遠足ですか……

 

大したものですね(憐憫)

 

友達を抜いた学校行事はトラウマ製造率が極めて高く、生涯に渡って苦悩する人間もいるくらいです

 

なんでもいいけどよォ

この先の人生リア充だらけだぜ

 

それにクラスで一人だけのスーパーの弁当にペットボトルの温いお茶

 

これも即効性のトラウマ源です

 

しかもスナック菓子も添えて悲壮感バランスもいい

 

それにしても人生この先長いというのにあれだけ孤立してしまうとは、悲劇的な社会性というほかはない

 

 死にますよ彼女は(社会的に)

 

「よし、と……(トラウマ爆誕)」

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「うわぁああ………………!!! うわぁああああああああーーーーーー! うわァアアアアアアアアーーーー!!」

 ……頭を抱え、精神的自刃を強行するなのは。

「あの五部刈りメガネのクソ教師ぃいいいいいいい!! ええ予想通り孤立したわよぉおおおおおおおお!!」

「なのは!? 正気に戻れ! なのはぁーーーーー!?」

 ガクッ……と、電池が切れたように項垂れる。ハリーも、見舞いに来ていた大家と奈々も、何事かと動きを止める。

 

「…………………………滅べぇ、リア充ぅうううッ……!!」

 

 ………………ぐにゃりと、禍々しい動きで首をもたげたなのはは、見舞客、看護師、外敵、そのツレの一般人……その全てへ暗黒の気を無差別に解き放った。

 

 漆黒の瞳で、ただ機械的に、無感情に、有るがままの事実を……。

 

「……あの日私は、疲れ果てた様子の母さんにどうしても『お弁当作って』の一言が言えず、毎日テーブルの上に置かれている千円札を片手にスーパーへ。丁度半額セールの時間に重なり、幸運にも弁当入手に成功。お茶と、……誰かとシェアできるかもという甘い期待のもと購入した特用サイズのスナック菓子を購入。遠足当日。クラスメイト達はみな魔法瓶を持参。ペットボトルを持って来ていたのは私だけ。また、女子というものはチョコレート・クッキー・マシュマロなどといった甘味を好む傾向が有り、スナック菓子の受けは最悪。封も切らずにリュックサックの底へ。遠足会場、運動広場へ到着し昼食の時間。皆、ランチョンマットで包まれた手作り弁当を持参しており、出来合い弁当を持参した私、見事に浮く。誰からも声を掛けられず、一人離れたベンチで食事をする。自由時間、一人でアスレチックなど出来よう筈も無く、一人で長時間、ベンチから広場を眺める。陽を浴びて目いっぱいに遊ぶ同級生を、薄暗い木陰からただ眺めるだけ。帰りのバス、新たに形成されたグループに席を奪われ、一人で補助席に座る。思い出を語らい、遊び疲れて眠る同級生たちに囲まれ、固い補助席の上、誰も食べることの無かったスナック菓子を齧りながら、一人冴えた目で高速道路の流れゆく壁をただ眺める。迎えの保護者はおらず、一人で家路につく私。後日、張り出される購入希望者向けの遠足風景の写真の中、広場を眺める姿をプロのカメラマンに激写されていた私、最上段に単独で掲載される。掲載期間は一週間。せめてもの慰めに、と、その写真を購入。購入枚数が掲示されることを知らず、購入数1(内訳:私)が公表され、『誰が買ったの、これ(笑)』『いらなーい(笑)』『っていうか、誰これ(笑)』と同級生たちがその写真を指さし笑う姿を見続けることに」

 

「もういい!! もういいだろォオオオオオオオオ!!」「ウギギギギ……!! やめろッ……!! お願いだからやめてくれぇーーーーー!!」「嘘だ……!! 学校生活が……そんな、そんなのって……! ……嘘だぁっ!」「ひぃいいん……!! 怖いよぅ……ぼっちになるの怖いよぅ……!」「世間が悪いと叫んでも、誰も責めないッ……!! 世の中クソだッ!!」「ああ……故郷に戻らなきゃ……!!」「おかあちゃん……弁当、作ってくれてありがとう……!!」

 

 切なくて死にたくなるような胸を掻き抱き、滂沱と涙を流して絶叫する者。耳を塞ぎ、歯を食い縛りすぎて血を流す者。学園生活への希望を打ち砕かれ絶望する者。ただ、訪れる可能性のある未来に忘我する者。やり場のない憎しみを覚える者。全てからの逃避を選ぶ者。ロシアンルーレットが外れたことを感謝する者。

 

――――――これは…………ひどい………………

 

 度を越した……それこそ『黒歴史』と呼んで差支えの無い心的外傷が、『共感』という、人間に備わった尊く美しい機能を介して伝播していく。というかちょっと神通力が漏れていた。なのはのぼっちで世界がヤバい。

 

 

――――20××年。世界はぼっちの怨念に包まれた。

 

――――涙は枯れ、胸は張り裂け、全ての希望が死滅したかのように見えた。

 

――――だが、リア充は死滅していなかった!

 

「私の名前を(知っている人がいたら)言ってみろぉ……!!」

 

――――世はまさに(心の)世紀末……!!

 

「ククク……私は既に(社会的に)死んでいる………………がくっ」

 胸に七つの心的外傷(トラウマ)を持つ女、なのはは、己が暗黒奥義のひとつ、『ひとりえんそく』を解き放った反動+出産の負担で、二度煎れた出がらしのように干からびていた。

「なのはーーーーーーーーーーーーっ!!!? とりあえずこの状況なんとかしてから倒れろーー!!?」

 

 ……『学校』システムをロクに知らない者には通用しないという、なのはすら知り得なかった抜け穴をどうにか脱出できた秀人、奈々、大家、という三傑が事態を収束させ、改めてなのははハリーと向き合う。

「……………………なんか、スマン」

「謝らないでよ……惨めになるじゃない……」

 極めてバツが悪そうに謝るハリーに、なのはは若干、警戒を解いた表情だ。警戒レベル120が、警戒レベル90くらいに。断絶ラインが100なので、ギリギリ対話が成立する。

「さて、ぼっちのなのは」

「ぼっちは真実だけど余計よ」

「真実なのか……」

 がくっ、と脱力するハリー。

「んじゃ、なのは」

「なによ赤いの」

「ハリーだよ!! ハリー・トライベッカ!!」

 憤慨するハリーは、腕を組んでなのはへある提案を持ちかける。

 

「――――同盟を組もうじゃねぇか」

 

「……同盟?」

「ああ、そうだ」

 仰々しく、頷く。

「……残念ながら、オレも停学を喰らっちまった」

「自業自得じゃない」

「お前もな! 話が進まんから黙っとけ!

…………オレが言うのもなんだが、人間ってのは群れて生きるモンらしい。オレやおまえは、別に生きていくだけなら死ぬまで困らん能力はあるが、世の大抵の人間は違うからな。群れて互助しながら生きる、そのための場が『社会』ってヤツだ」

「しゃ、しゃかい……社会ッ……!」

「怨念出てるぞ。

 

…………で、『学校』っつーのはどうやら、その『社会』の予行演習の場であり、一部本番らしい。なら……オレらもそのルールに則り、群れなきゃならねぇ。

 

 が、オレらはその第一歩でケッ躓いちまったようだ。それこそ、下手をしたら群れの中の異物になっちまう」

「? 何かおかしいの?」

「すべてがおかしいんだよ、お前は!

 

 ……ああ、まぁ続けるぞ。群れの中で生きるためには、群れの中で更にコミュニティを作って群れなきゃならねぇ。……矛盾してるか? あぁそうだな。オレもそう思うよ。

まったく人間ってヤツは…………

 

――100年程度じゃ、これっぽっちも変わりゃしやがらねぇ」

 

 ざわっ……と、ハリーも苛立っているのか、赤い毛並から神気のようなものが漏れる。

「……ハリー、あなた」

「言いっこナシだぜ、新米の『神様』よ」

 にやり、と、人間を逸脱した鋭さの牙を剥きだして笑う。

「ま、そーいうわけで、オレも人間社会で生きる以上、必要以上に孤立するわけにはいかねぇんだわ。一人っつーのは、悪目立ちするからな。

 

例えば、さっきの遠足「「「「「「「「「「おいやめろ」」」」」」」」」」…………ぅおっほん。まぁ、そういう、複数人行動が必要になったとき。例えば、学校を休んでいて、ノートが必要なとき。例えば、体育の授業で『はい、ふたり「「「「「「「「「「おいやめろ」」」」」」」」」」……まぁそんな状況になったとき。真っ先に、お互いの姿を探し、必ず組む。そういう同盟だ」

「何のメリットが」「想像してみるんだ」

 なのはは、言われた通り、『複数人行動が必要だった場面』を想像してみる。

 

――――家庭科の調理実習。

 

――――あの日私は、少しなりとも料理の腕に覚えのあるところを見せて、イメージアップを『クスクス、見て、高町のやつひとりで超張り切って「ストップ! ストォオーーーーーップ!!」

 

 劇団ひとりを強制閉幕させるハリー。

「はっ、私はいったい……」

「マジでやめろ! 切なくって死にたくなるんだよ!!」

「えっ、大丈夫だよまだライトなやつだから」

「ライト……!? 今の断片だけで人が死ぬぞ!?」

 涙目で訴えるハリーに気圧され、改めてイメージする。

 

『はいそれじゃあ、二人組になってスケッチをしましょう』

「がふぁっ……!! お、落ちつけ、私。ただのイメージ……イメージだ……ず、図工の授業……ペア……石膏像……おいやめろ! ……イメージだってばぁ!!」

 イメージを気合で研ぎ澄ます。

 

 あの悪魔の言葉は消し去らなければならない。教室を見渡すと、こちらを見るハリーと目が合った。互いに駆け寄り……

『ハリー!』『なのは!』

 ぱしーん、と、ハイタッチ。そのままシェイクハンズ。

 

『 『 二人組成立!! 』 』

 

――――――………………。

 

「あれ!? ダメージが無い!?」

「ダメージ前提なのか…………だが、どうだ?」

「ちょっと待って。もう12パターンくらいシミュレートする」

「………………そんなに検証する場面があるのか……?」

 うんうんと、こればかりは無駄に長けた状況予測能力をフル回転させ、あらゆる場面においての『同盟』の有用性を確認する。

 

「すごい! 天才じゃね!?」

 この神、ウッキウキである。

「同盟、組むか?」「組む!!」

 即決!

「おっし。んじゃよろしくな」

 すっと差し出された手を、じっと淀んだ瞳で見つめ……「そう、あの日もそうだった。『えー?(笑)いつからアンタと仲良しに

 

「 よ ・ ろ ・ し ・ く ・ な ! ! 」

 

 もうええ加減にせぇやとばかりに、がっちり捕まえた手を、ぶんぶんと上下に振るハリー。目を回しながらも、照れくさそうになのはが笑う。果たして、なのはは気付いているのだろうか。

 

 

――――その『同盟』が、『友情』と呼ばれるものと極めて近しい、ということに。

 

 

「がんばれ……なのは、がんばれ……!!」

 秀人は、両手をぐっと握りしめ……社会性ズダボロな妻の社会復帰への一歩を涙目で見守るのだった。夫と言うか親の心境である。

 

「……なぁ、」

 と、そんな様子を遠巻きに眺める(回復した)同級生たちが、慈愛に満ちた心で語り合う。諍いなど、わだかまりなど……この胸を満たす温もりの前には、ちっぽけなものではないか…………。

「なのはちゃん、停学が明けても、アタシたちが面倒を見てあげよう…………」

「うん…………なのはちゃんには、たくさんの愛が必要だと思う…………」

「…………なのはちゃんに、楽しい思い出、いっぱい作ってあげようね……」

 

――プ○キュア五つの誓い。一つ。愛は与えるもの!

 

 社会性協調性コミュ力その他を、もろもろ過去に置き去りにしてきたなのはのための影の同盟……『なのはちゃんを温かく見守る会』が、ここに結成されていた。

 

 

 

 

 

 

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