魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第六話

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 俺の血を熱源として、燃え盛る蒼炎。

 俺のほぼ全身に刻まれた傷は、その炎に触れた箇所から、片っ端から修復されていく。

 そして、レイジングハートが機能を停止し、治療が中断されたままになっているなのはの身体を、蒼炎が包み込む。

 ボロボロになっていたバリアジャケットが燃え上がり、その魔力を治癒魔法へと変換される。

 

――ゴウッ!!

 

 一歩、前へ。

 蒼炎の動きもそれに追従し、移動する。

 それだけで、俺を好き勝手に痛めつけていた雑魚騎士が、一歩後ずさった。

「…………!!」

 チビ騎士の号令を受けた雑魚騎士の集団が、俺に殺到する。

 

「……はアァッ!!」

 

――ゴバアアァッ!!

 

近寄る雑魚騎士を、吹け上がる蒼炎の熱波がなぎ払う!

「……、ア!」

 バックステップで回避しようとする雑魚騎士の鎧を、蒼炎が僅かに撫でた。

 そして、

 

――ボゥンッ!!

 

 爆発的に、発火する!

「ア、アアアアアア!!」

「ギャアアアアッ!!」

 蒼炎に炙られた雑魚騎士達が、のたうち、逃げ惑い……

「ア……あ、あ……」

一瞬のうちに鎧を失い、倒れ付す。

 だが、もうそんなものは考慮に入らない。

 単に……チビ騎士を破壊するのに邪魔だったから、どかしただけだ。

「……!」

 先端をピッケルのように細くし、一点での破壊力を増したハンマーを振り回し……

 

――ガゴオオオンッ!!

 

 その先端は、再び俺の身体に突き刺さった。

「…………!?」

 どろっ……と、ハンマーの先端が……高熱で溶ける。

 

――ブゴオオオッ!!

 

 傷口からあふれ出た血液が炎上し、一瞬のうちに傷を塞ぎ……チビ騎士を吹き飛ばす!。

「……!」

 

――ギュガガガガッ!!

 

 鉄球の一斉掃射。だがそれの大部分は、身体に届く前に蒼炎によって蒸発し……届いた数発もまた、ダメージにはなりえない。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 思考が怒り一色に染まり…………この蒼炎で、いかに敵を焼き滅ぼすかだけが、めまぐるしく頭を駆け巡る。

 

――ギュルルルルルッ…………!!

 

手元に、蒼く燃える血液を凝縮し……!

 

 

「くたばり……やがれええええええええええエェェッッ!!!」

 

 

 その炎を…………全ての怒りのままに、叩き付けた!!

「……………………!!!」

 チビ騎士は、迷い無く回避を選ぶ。

「……!!」

 

――がきゅん、がきゅんっ、がきゅんっ!!

 

 三発の薬莢を排出。

 攻撃力を爆発的に増大したハンマーで、

 

――バッキイイイイイイインッ!!

 

 火炎弾の下を叩き、力をいなし……火炎弾を天空へ跳ね上げる。

 

「逃ィがすかアアアアアアアアアアアアァッッ!!」

 

 天空へ上昇を続ける火炎弾に手をかざし……操作!

 

 

――……ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!

 

 

 蒼い炎は、より一層激しさを増しながら姿を変える。

「……!!」

 背中を向け全速力で逃走していたチビ騎士が、その圧倒的な熱量に振り返り……硬直。

 

大気を切り裂く、巨大な両翼。

 

幾重にも重なる、長大な尾。

 

獲物を食い千切らんとする、鋭利な嘴。

 

全身に炎を纏う、伝説の神獣。

 

 

――――――不死鳥。

 

 

『ギュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!』

 

 

 生誕の嘶きが、空間を揺るがす!

 

――ガシイイッ!!

 

「……!?」

 その荒々しい鉤爪が、チビ騎士の胴体を拘束し、ぎちぎちと締め上げ……

 

――ビキッ……ビキッ……!!

 

 鎧に、細かなヒビが広がっていき……ぶしゅっ、と、血液が噴出させる。

 

『ピギュエエエエエアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 鷲摑みにしたまま……

 

――ッドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

 

 大地に、叩き伏せた!

「…………、!!!」

 直径10メートルはある巨大なクレーターが、大地に深々と刻まれた。

『フシュウウウウウ……!!』

不死鳥に踏み潰された格好のまま、ぴくりとも動かなくなったチビ騎士の手から、ハンマーがずるっと滑り落ちる。

 死んだか……どちらにせよ、戦闘の継続は不可能……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いや、まだだ。

 

――ガギンッ……

 

 蒼炎の檻で、チビ騎士を大地に張り付け……

 

『ギュエエエエエエエエエエエエエエッ!!』

 

 不死鳥を、再び上空へ解き放つ!!

「お前は……お前だけは!!」

 なのはを魔導師生命どころか、本気で命を奪おうとした。

 レイジングハートを全損にまで破壊した。

 

「ここで、終われエエエエエエエエエエエエッ!!」

 

 その罪を…………死をもって、償え!!

「焼き尽くせ…………!!!!」

 …………叩き下ろす!!

 

 

「クリメイション……フェニイイイイイイイイイィィックス!!」

 

 

『ギュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!』

 

特大の嘶きと共に、蒼き不死鳥が急降下する!

「! ……!」

 檻に捕まったチビ騎士は、脱出に間に合わない。

 ただ呆然と……圧倒的な『死』というプレッシャーに、立ちすくんでいた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――………………キュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 

 着弾した不死鳥は、初撃の比ではない大爆発を巻き起こす。

 数十メートルもの火柱が上がり……着弾地点から数百メートルを、吹き飛ばした。

「はぁッ、……!! ざ、ざまぁ、見やがれ……!」

 蒼炎の残り火がちろちろと燃え……自然に鎮火する。

 同時、無理に身体を動かしていた反動が一気に襲い掛かり、その場に座り込んでしまった。

「ぜェッ、……!!」

 目の前には、広大な更地が広がっていた。

 サーチするだけの魔力は残っていないから分からないけど…………とにかく、あの騎士の連中は、倒せた。

「…………今のは、一体……?」

 キレている最中は、無我夢中で気にしなかったけど…………何だったんだ。あの蒼炎は。あの不死鳥は。

 俺は、あんな形状に変われだなんて命じてはいないし…………そもそも、俺は炎を操る魔法なんて、一度も習ったことは無い。

 それに……

「クリメイション・フェニックス……?」

 あの、圧倒的な破壊力を持った不死鳥の名前。

 命名したわけじゃない。唐突に、頭の中に浮かんできた名称だった。

 

って、それよりも!!

「も、戻らなきゃ……!」

 一応、治癒魔法は残してきたけど……ちゃんと効いているかどうか不安だ!!

 レイジングハートだって、ちゃんと状態を確認してやらないと!

「ああもう、さっさと治れっつーの……!!」

 そのぐらいしか取り柄の無い身体なんだから……!

 

 いまいち動きが渋い身体を動かし、なのはを置いてきた場所へ戻る。

 なのはは……

「……すぅ、すぅ」

 良かった……寝てるだけだ。

 問題は、

「レイジングハート……」

『…………』

 レイジングハートは、答えない。

 魔力を注いで修復しようにも、結界を破壊しようにも、もう殆どすっからかんで全く足りない。

「……しゃーない」

 右手の魔力結晶に、意識を集中させる。

「スターライト…………も、無理か」

 魔力を収束しようにも、レイジングハートがいなければまともに出来ない。

 この辺は、魔導師共通の弱みか。

 もういっそのこと、魔法そのものを継続的に身に纏えればいいんだけどなぁ……

 出力の上げ下げだけすればよくて、タイムラグも無くなるし。

 

……って、

「お、おおう……なんじゃこりゃ」

 あたりに目を配ると、死屍累々と……多分、雑魚騎士として使われていた人間が、その辺に転がっていた。

 ボロボロの洋服……これは、アロハシャツ? そんで、こっちは黒いスーツ……妙につま先が尖ったエナメルの靴。

「…………ヤクザ?」

 そういや、雑魚騎士達の武器も、トカレフだの匕首だの、それっぽい物が多かった。

その辺の事務所の奴らを拉致ったのだろうか。

「う、うう……!!」

 一人、作務衣を着ていた男がうめき声を上げる。

「おいコラ、起きろヤクザ」

 襟を掴み、頬を二、三回張る。

「あ……?」

 ようやく焦点を結んだ目が、見開かれる。

「俺、は…………生きている、のか?」

「まーな。んで……どこまで覚えてる?」

「あ、ああ……」

 ヤクザが話すところによると…………

「子供が変な姿に変身して、仲間達を殺した?」

「信じられないだろうが、本当だ……この場にいる人数より、ずっと大勢が……」

「…………そうか」

 子供……か。なるほど。

「顔は覚えているか?」

 大体の特徴さえ覚えていれば、アイツに頼んで、似顔絵を描いてもらえる。

「ああ、確か………………」

 いくつかの特徴を聞き終えたところで、精神力を使い切ったのか、再び意識を失った。

 さてと。

「どうやって、結界から出るかなぁ……」

 魔力は空。

 周辺から集めようにも、スターライトは使えない。

 外への連絡手段もない。

 早いところ外に出て、なのはをちゃんと治療してやりたいんだが……

 

――パリンッ……

 

「……え?」

 今、結界のどこかに穴が開かなかったか……?

もしかして……

「ユーノか!?」

 慌てて、念話と同時に肉声も出してしまった。

「……ユーノ?」

 返事が無いってことは……ユーノじゃないのか?

「…………増援だったら最悪だぞ」

 今のところ敵意は感じないけど……着々と、距離を詰めてきている。

 あと、数十メートル。

 

――ザッ……

 

 姿が見えてきた。

 遮蔽物が無くなっているおかげで、身を隠すつもりは無いらしい。

 青いスラックスに白いシャツを着て…………変な仮面で顔を隠した、長身の男だ。

 じろじろとぶしつけに俺の身体を上から下まで眺め……

「………………蒐集は無理だな。完全に肉体と同化している」

「は? 何のことだ」

 シュウシュウ……?

「まぁ、そっちの少女の分が手に入っただけ、よしとしよう」

「…………?」

 何のことだかさっぱりわからん。

「なぁ、アンタ」

 ぶつくさ言ってるだけで襲い掛かっては来ないし、とりあえず敵ではないだろう。

「……」

 くいっと首を曲げ、俺と眼が合った。

 ……いや、仮面だからわかんないけどさ。

「悪いんだけど、結界の外まで連れ出してくんねーかな?」

 結界に入れたなら、出ることもできるはず……

 

「……」

「あ、おい!」

 用事は済んだとばかりに踵を返してしまった。

 敵ではないにせよ、友好的でも無いか……まあいいや。

「勝手にやらせてもらうぞ」

 

――バシュッ……

 

『ライン』を伸ばし、仮面男に接続する。

「……!?」

 おー……って、なんじゃこりゃ!?

 結界・捕縛術だけで34!?

 遠距離バインドに、これは……拘束結界?

 それに、幻術魔法、変身魔法……

 派手さは無いけど……速効性・汎用性・確実性は、俺が使うものに比べたら段違い……というか、別次元だ。

まるで、クロノの魔法が、更に磨きぬかれたような……お、あったあった。局所的結界破壊。

 結界は残しておいて、後でユーノに頼んで修復してもらわないと……

 ついでに、ちょこっと魔力を拝借して……

 

――ブオッ!!

 

「うおっ!?」

 いきなり飛んできた回し蹴りを回避する。

「貴様……!!」

「怒るくらいなら、最初から手伝ってくれよ……」

「……ふん!」

 ずかずかと大股で去っていった。

 

 まずは……拝借した魔力で、結界の一部を破壊。

 とりあえずはこれで、通信は外に通じる。

 残った魔力をレイジングハートに注いで、修復を開始させた。

「……」

 さすがに、ここまでぶっ壊されていたら、すぐには直らないか。

 結界の外は……うわ…………もう夜だ。

 あー……携帯電話、道場に置いてきちゃった。

『ユーノ、俺だ』

 念話でユーノを呼ぶ。

『秀人!? 今、どこにいるんだい!? この結界、防御が硬くて全然破れなくて……』

「んーっと……」

 位置情報を、探る。丁度、結界を挟んで反対側か。

『今、そっちに行くから……』

 

「いや、その必要は無い」

 

 …………妙に聞き覚えのある声が、割り込んできた。

「管理局嘱託魔導師・吾妻秀人。並びに、高町なのは」

 厳つい法衣のようなバリアジャケット。手には、複雑な形状の杖……S2U。

 

「アースラへの出頭を、要請する」

 

黒い髪・黒い瞳の……

「…………クロノ?」

 およそ一ヶ月ぶりの、再会だった。

 

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