魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第十五話

 

 アースラの転送ポート。

 

――とんとん。

 

 戦闘は終わって、そろそろ、戻ってくる頃だ。

 

――とんとん。

 

 秀人さんと、アルフと……フェイト。

「なのはちゃん……もうちょっと、落ち着いたら……?」

 

――とん。

 

 無意識のうちに行っていた貧乏ゆすりを止める。

 エイミィを見上げる。

「……だって、何ヶ月も会ってないんだよ」

 連絡だって出来なかった。

 忘れてるなんて、絶対に無いと思うけど……どういう顔で会えばいいのか、分からない。

 

――ヴゥン……!

 

 転送ポートが輝く。そして……

 

――バシュッ!!

 

 光が収まり、前線メンバーがわらわらと戻ってきた。

 けが人も多く、待機していた医療班がストレッチャーに彼らを乗せ、医務室へ走っていく。邪魔にならないよう、壁際に立って彼らを見送り……自力で歩けるメンバーの中に、ぴょぴょこ動く金髪を見つけた。

「あ」

「あ」

 向こうも、私を見つけた。

「……」

「……」

 私は、どう声をかけたものか思い悩んでいて……フェイトは多分、認識した光景に、思考が追いついていない。

 口を半開きにして、ほけーーー……っとしている。その間抜け面といったら、もう……

「ぷっ……」

ああ…………なんというか、笑えてくる。

「あ、ああ~~~!! 今、ボクのこと笑っただろ!?」

 目を吊り上げ、ずかずかと歩いてきた。

「ごめんごめん……」

 目の前にやってきたフェイトは、まぁ何と言うか……ボロボロだった。

 バリアジャケットは解除しているから、服は小綺麗なワンピース。でも、髪はボサボサで、身体は土ぼこりでザラザラ。擦り傷や青あざも多い。

「大丈夫?」

「うん、へいきー」

 にへら、と締まりの無い笑顔を浮かべる。

「おお、いたいた」

「ダメだよ、フェイト……ちゃんと手当てしないと」

 と、人混みの中から秀人さん、アルフ、それにクロノが出てきた。

「…………」

 クロノは、ちょっとバツが悪そう。

「ごめんね? 怒鳴っちゃって……」

 ちゃんと謝っておこうっと。

「いや…………ありがとう」

 あら、珍しい。クロノが素直だ。

「うひひひひ……」

 と、エイミィがとても頭の悪そうな笑いと共に、クロノへ意地の悪い視線を送る。

「クロノくん、泣いちゃったんだもんね~?」

「ぐっ……!」

 気まずそうに、恥ずかしそうに俯く。

「ふふふ、もう、クロノくんったら……」「エイミィ」

 調子に乗って、更に何かを言おうとするエイミィを、秀人さんが遮った。

「は、はいっ!!」

 条件反射のように直立不動となり、背筋をピンと伸ばすエイミィ。

「……あんまり、俺のダチをいじめてくれるな」

「はっ! 失礼いたしました!」

 ……よっぽど、怖かったんだろうなぁ。

 横ではクロノが、「『ダチ』とはどういう意味だ……?」と首を傾げていた。

 教えてあげてもいいんだけど……面白そうだから、黙っていよう。

「……ま、いいや。艦長への報告もあるし、戻ろう」

「はーい!」

 と、私の目の前にいたはずのフェイトが素早く秀人さんに駆け寄り……あろうことか、腕にしがみついた。

「な……何してるのよおぉぉぉ!?」

 慌てて、フェイトを秀人さんから引き剥がす。

 全く、油断も隙も無い……!!

 でもフェイトは、不満タラタラな顔で、しぶとく秀人さんの腕にしがみつく。

「いいじゃん別に少しくらい!!」

「ダメったらダメ!」

「少しくらいボクに貸してくれたっていいじゃん!」

 するっと私の手から逃れ、ひょいっとジャンプし……秀人さんの右肩に、横座りした!

「こ、こらぁぁぁ!!」

頭を両腕で抱え込んで、なんて羨まし…………じゃなくて!!

「秀人さん、怒っていいんだよ!?」

 そう言ったのに、秀人さんは何故か私を宥める。フェイトを、背負ったまま!!

「まぁまぁ…………全然重くないし、いいって」

「でも……!」

「久しぶりに会ったんだし、このくらい許してやってもいいんじゃないか?」

 むぐぐ…………まぁ、秀人さんがそう言うなら、ちょっとくらいなら……

 話の流れから、自分の勝利を感じ取ったらしいフェイトは、

「べー!」

 勝ち誇った表情で、ぺろ、と舌を出した。

「こ、こら……!」

 秀人さんが慌てて止めさせたけど……手遅れだった。

 

――ぷちんっ……

 

 堪忍袋の尾が、ブチ切れた。

「こ、の…………!」

 カーーーーッ……と、自分でも分かるくらい、頭に血が上っていくのを感じる。

 

「返せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 そんな、目的語が抜け落ちた叫びを上げ、フェイトに飛び掛かる!

「か・え・せーーーーー!! 秀人さんは、私のなんだからあぁぁ……!」

 秀人さんの左肩に跨り、フェイトをぐいぐいと押す!

「わたすもんかー……! ひでとは、ボクのもんだー!」

 フェイトも落とされてたまるか、と押し返してきた!

「ふぇ、フェイト……」

「…………ど、どうしようか?」

 おろおろするエイミィとアルフ。

「……知らん。先に行ってる」

 諦めた様子で、さっさと部屋を出て行くクロノ。

 

「うにゃー!」

 

「このぉー!」

 

 負けて……たまるかああああああああああああ!!

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「……うう」

 酷い目に遭った…………まだ両肩がギシギシいってる気がする……

「……というわけで、しばらく襲撃は無いものと思われます」

 クロノの報告を横に聞きながら、両肩をほぐす。

「ごめんなさい……」

 なのはが、俺の左手を握りながら謝った。

 じとーーーーーーっと、俺の右手を握るフェイトをやぶ睨みする。

「…………ふぁあああ……」

 フェイトは我関せずと、大あくびを隠しもしない。

「闇の書の主に関しては、秀人の方が詳しく説明できるでしょう」

「お願いできるかしら、秀人さん?」

 ……っと。俺か。

 まず、説明から始めるか。

「封印魔法が届いたのは、闇の書のみ。本人は、残念ながら取り逃がしてしまいました」

 詰めが甘く、逃げられてしまったのは痛恨のミスだった。全く……俺も、まだまだだな。

 でもまぁ、当面の危機は無いだろう。

「闇の書は、言ってしまえば魔力の増幅装置です。俺と同程度……まぁ、仮に100として、それを100倍の10000に増幅するのが闇の書」

 資質があれば、極めて危険な災厄を齎すシロモノだが……

「増幅装置さえ無ければ、それは100。ただ大きいだけで、それ単体では脅威にはなりえません」

 大きな魔力があっても、それを御する能力がほぼゼロだった奴は、何も出来ずに大人しくしているだろう。少なくとも、襲撃してくるような馬鹿ではないはずだ。

「……なるほどね」

「猶予期間は、なのはを参考にすればいいでしょう」

 なのはは流石に聡明で、俺の言おうとすることをあっさりと理解していた。

「蒐集も、ある意味封印の一種。蒐集の影響が私から抜ける頃には、奴も同じく、封印魔法を破る」

 そういうこと。

「現場での報告は以上です」

 あとは、リンディさんの判断だ。

「…………闇の書の細かい機能については、ユーノさんが現在、調査に当たっています。上がってきた報告の中には確かに、魔力の増幅という項目もありました。なので、秀人さんの報告は、十分論理が通ります」

 なかなか、好感触だ。

「猶予期間については、あまり楽観はできませんね」

「……はい、そうです」

「同じ人物に一度だけ、という蒐集の制約があるにせよ、今のなのはさんは、魔法で自分の身を守ることが出来ません」

 ……だよなぁ。アイツ、復讐する気満々だったし、俺ではなく、弱体化したなのはを真っ先に襲うだろうし……

 悩んでいたら、リンディさんがパンッ、と手を叩いた。

「護衛を付けましょう」

 ……護衛?

「なのはさんと同レベルの戦闘能力を持ち、常になのはさんと行動することが出来る、専属の『護衛』を」

 ……いやいやいや。

「いるわけ無いじゃないですか、そんな都合のいい人」

 俺の変わりに、なのはが答えた。

「私並に強くて、あまり管理局の縛りを受けず、自己判断で行動できる人なんて……」

 なのは並に強い……それは、クロノも当てはまる。けど、クロノは管理局の中でも比較的高い地位にいる。なのはにかかりっきりで護衛なんて、不可能だろう。

「それが、いるのよ……秀人君」

 あれ……? 

リンディさんが、気さくモードになった。

「さぁて、誰かしら?」

 リンディさんの視線は、俺……ではなく、俺の右隣を向いていた。

……おいおい、まさか。

 

「……フェイトとアルフ、ですか?」

 

「ええ、その通り」

「いいんですか? その……前回の事件の裁判だって、まだ……」

 そう。フェイトはまだ、前回の事件の重要参考人のままなのだ。容疑者、と言ってもいい。それが、護衛という名目で自由に出歩いて、後々フェイトの不利にならないんだろうか……?

「その辺りは、もう済んでいるから安心して」

 今回のことがあろうが無かろうが、護衛……というか、フェイトとなのはをくっつけるつもりでいたらしい。

 ……色々と、根回ししたんだろうなぁ。黒いぜ、提督。

「それとも、嫌?」

「まさか! 大歓迎ですよ!」

 即答で返す。

 言い方は悪いが……手回しが済んでいるのなら、何の問題も無い。

「ははっ……やったな! なのは!」

 あれだけ会いたがっていた、大事な友達だ。

久々の再会どころか、これからはずっと一緒だなんて…………嬉しいとか、そういうレベルじゃないだろうな。

「よかったわ。ねぇ、なのはさん、フェイトさん…………なのはさん、フェイトさん?」

「なのは……? おい、どうした?」

 見れば、二人は時間が停止したように顔を見合わせて固まっていた。

 一体どうした…………と、思った矢先のことだった。

 

「………………ウええええええええええええええェェェェぇぇェッ!?」

 

なのはが、素っ頓狂な声をあげた。

……いや、驚きすぎだろ。

 

「いいいいィやっほおおおおおおおおおおおゥ!!! やったあああああああ!!」

 

 フェイトが歓声をあげ、なのはに抱きつく。

「わあああああっ!?」

「フェイト、危ないってば!」

 いきなり抱きつかれ、転びかけた二人をアルフが支えた。

「なのはー! よろしくねー!」

 百パーセントの、明るい笑顔。それにほだされて、なのはも笑顔になった。

「あ、あはははは…………うん、よろしくね、フェイト」

 少し照れている。

「ボク、ハンバーグとオムライスがいいな!」

「え、作れってこと……? そっちの『よろしく』だったの!?」

「どっちも!」

「…………もう、しょうがないなぁ」

 そう言いながらも、満更ではなさそうだった。

 

 そんな坩堝を遠目に眺めながら、我が家を思い出す。

「……あ、やべ」

 今更ながら、別の壁が生まれた。

「部屋……どうしよう」

 今現在の、俺達三人で住んでいるアパートは、元々は単身向けの物件だった。

 なのは、ユーノと同居するにあたって、大家さんの了承は得たものの…………更に二人増えたら、定員オーバーだ。

「護衛中は任務として扱いますから、皆さんにはお給料も出ますよ」

 金銭的には問題なし、と。

 んじゃ、まぁ……

「でもしばらくは、あの狭いIkか…………」

 これからは、大人数であの一室で暮らすことになりそうだ。

 あの八畳一間に、五人……すし詰め・イモ洗いという言葉が、これほどまでに似合う状況もそう無いだろう。

 風呂もトイレも流し台も常に満員。そろそろ本格的に夏だから、体温で更に暑苦しくて、動くたびに互いの身体がぶつかってしまう。部屋の中は、なのはの本、ユーノの資料、俺のバイク用品、フェイトの玩具、アルフの雑貨で、足の踏み場も無くなって……

「…………くくっ」

 大変だといいうことが分かりきっているのに、つい笑ってしまう。

 五人で暮らして、騒いで、じゃれ合って…………そんな生活、楽しいに決まっているじゃないか。

「……秀人さん」

 裾が引かれた。

 フェイトと手を繋いだなのはが、にこにこと無邪気に笑いながら、言った。

 

「楽しみだね」

 

……ああ、そうだな。楽しみだ。

 さて……なのは、フェイト、アルフ…………残り一人は、どこ行った?

 戻ろうとしていたクロノを捕まえた。

「ユーノはいつ頃戻って来る?」

 何日も前から、姿を見ていない。

『ちょっと、調べ物をして来る』と言い残して、それっきりだ。

「先ほど、件のフェレットもどきから連絡があった。まだ少し調べたいことがあるから、先に帰っていて欲しい……とのこと、」

 あいつ、目の前のことに集中しすぎて突っ走るからなぁ……やれやれ、仕方ない。

 

「駄目! 連れて帰る!」

 

 ……無理やりにでも連れ帰って、休ませよう。そう言おうとした瞬間、殆ど同じことを考えていたらしいなのはが、がーっと吼えた。

 

「みんなで帰って、みんなで晩御飯! ご飯抜きなんて許しません!」

 

 ふぅ……と、クロノがため息をつく。

「……だろうと思って、通行許可を人数分確保しておいた」

 段々、いい意味で力が抜けてきたな。頑固な堅物も、いろいろと俺達に影響されているらしい。

「で、ユーノはどこにいるんだ?」

「無限書庫……まぁ、書庫とは名ばかりの、膨大な未整理データの山だ」

 その中から、闇の書および、古代ベルカの知識を発掘しているらしい。

 発掘……? そんな、大げさな……

俺達は、実際に案内されるまで半笑いだった。

 

 

 

 

 

 そして、転送ポートからその場所まで案内され……言葉を失った。

 

――山。

 

 比喩表現でもなんでもなく、正真正銘、それは『山』だった。

 それも、ギッチリと本を納めた書架が、四方八方どころか、果てが見えないほど上下に連なっている。

「………………す、っげぇ」

 試しに、近場にあった本棚に接近してみる。無重力のようだが、進みたい方向へ意識を向ければ、すんなりと移動できた。

「無限書庫には、あらゆる世界の出来事が、『本』という形になって絶え間なく更新されている。どこの誰が、何のために、いつ創ったのか、まったくの不明。そのあまりに膨大なデータ量は、活用するには難しくて、長年放置されていた」

 クロノの説明を聞き、納得。

 ……確かに、ろくな検索装置も無い以上、自分の手でデータの山を掘り返すしかない。

 そんな時間があったら、他のデータベースを使った方が早い。

 …………既存のデータならば。

 ここにある膨大な知識の中にはきっと、闇の書に関するものがある。

 ユーノはそう信じて、この場所に足を運んだのだろう。

 

「うわー! 何コレ何コレ! たのしー!!」

 

 飛行魔法ともまた違う感覚に、歓声を上げるフェイト。

「う……落ち着かないなぁ……」

 逆に、アルフは居心地が悪そうだった。

「あんまり遠くに行くなよー?」

 ……まぁ、俺達以外に人はいないみたいだし、遊ばせておいても問題無いな。

「あいつは……ああ、結構遠くまで行ったんだな」

 クロノがユーノの位置を探査し、僅かに驚く。

 ……この数日、こもりっきりで調査をしていたんだろう。あいつはどうにも学者肌というか、熱中すると時間の観念を忘れてしまう悪い癖がある。

「全員で行くことは無いだろう。僕が呼んでくるから、君たちはこの辺りにいてくれ。本は、自由に閲覧してくれて構わない」

 と言って、クロノだけがすーーっと移動していった。

 ……途中、

「どれどれ……?」

おお……本そのものも、大判の図鑑くらいのサイズがある。

 一冊を抜き出し、頁をめくる。

「……駄目だ、読めん」

「こっちも……」

 ミッド文字もあまり読めないというのに、この本は更に複雑な文字がびっしりと埋めつくしていた。

 隣の本を抜き、同じように捲る。最初に抜いた本とは、更に違う言語だった。

 何冊も捲ってみたが、言語もバラバラ。たまに言語が同じように見えても、文体がバラバラで、結局違う言語だったり……『内容が分からない』ということだけが、共通だ。

「あ!」

 と、俺と同じように、本を物色していたなのはが、驚いたように声を上げる。

「これ、日本語だよ!」

「え!?」

 驚いて、その本を覗き込む。

 

「……JSS・旅客機墜落事件概要?」

 

 それは、一昨年のクリスマスに、世間を騒がせた事件の名前だった。

 ……なんで、こんな物がここに。

「これ、何年か前のクリスマスに起こった事件だよね?」

 変な気分……切迫感、とでも言えるだろうか。

 何かに突き動かされるように、二人して食い入るようにその本の頁を捲っていく。

 図鑑並みの厚みは伊達ではなく、途中、難解な表現や、意味不明な文字の羅列があったりと、読みづらかった。

 だがそれでも、事件の概要、被害者の総数、……そして、原因が、極めて克明に、まるで、その時その場所で見てきたかのように記されていた。

「……あの事故、結局は原因が不明だったんだよね?」

「ああ。エンジントラブルだとか、地磁気の影響だとか、陰謀論とか、あれこれ好き勝手言われてたけど……でも、実際は違ったみたいだ」

 読み進めていくと、原因の箇所に辿り着いた。

 それによると、原因は……

 

「大規模な魔力噴出による、駆動系の破損……?」

 

 おいおい……マジかよ。

「魔力噴出って……」

 なのはが、強張った表情で呟いた。

 

 魔力噴出。

 

 それは、術式に乗せた魔法ではなく、ダイレクトに魔力そのものがあふれ出てしまう……言ってしまえば、暴走状態のことを指す。

 何らかの影響で、誰かの魔力が制御不能の状態に陥り、結果……旅客機を墜落させた。

 その魔力の持ち主は、きっと……

「生存者、一名」

 ニュースでは、7歳の子供だった、としか報道されていない。男児なのか女児なのかも不明だが、ほぼ間違いなく、この子だろう。生きていれば、なのはと同い年。

 次のページで、名前が分かるはず……そう思い、ページを捲る。

「あれ……?」

 次のページは、白紙だった。なんでこんな唐突に……

「ちょっと待って」

 なのはが、白紙のページと、前のページとの隙間を開く。そこには、ほんの僅かに、ぎざぎざした……明らかに、意図的にページが破り取られた痕跡があった。

 何で、この頁だけが……首をかしげる俺達の元に、クロノの念話が入った。

『秀人、今から戻る』

「ああ、わかった」

 動揺は、声に出なかったと信じたい。

……それじゃあ、本を戻そう。

「…………」

 いや、待った。

 この事件は、魔法絡みの事件だ。しかも、何やらキナ臭い。頁が破られているということはつまり、少なくとも、誰かにとっては、見られては困る資料なのだろう。

 今回の闇の書事件と無関係かもしれないけど……念のためだ。

 本を、目印を付けて書架の裏に隠す。今度来た時に回収しよう。

「なのは」

 呼ばれたなのはは、こくんと頷いた。

「うん、秘密だよね?」

「ああ、頼む」

 短いやり取りをして…………俺達は、クロノ達が戻ってくるのを待った。

 

 さっきの本。

 

 何故あれが妙に気になったのか、その理由は、最後までわからなかった。

 

 

 

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