魔法少女リリカルなのはties 作:ハルハルharuharu
いつもの高台に、訓練用の結界が展開していた。
術者はアルフ。久々に、ユーノの手伝いに時間を貰い、フェイトに付き合っていた。
中では、バリアジャケットに身を包んだフェイトと、短パンにジャケットを合わせたような戦闘服のヴィータが、激しく打ち合っていた。
「そりゃー!」
「うぉらあぁっ!」
――バギィンッ……!
「ふにゅうぅぅ……!」
「ぐううぅ……!」
鍔ぜり合いの体勢から、互いに牽制の魔法を放つ。
――ドガガガガガガッ!
射撃魔法がぶつかり合い、また間合いが開く。
「ハーケン……セイバー!!」
ギュルギュルと回転しながら追尾する、ハーケンセイバー。
「……はッ!」
ヴィータは、気合い一発。
――パキィィン!
グラーフアイゼンの一撃で、ハーケンを破壊してしまった。
『Photom Lancer』
「ファイア!」
間合いを詰めさせまいと、射撃魔法を放つ。
――ガギギギギッ……!!
シールドで弾くが、それだけ距離を離される。
「くらえっ!」
『impact!』
秀人を真似るように、衝撃波を放つ準備をするフェイト。
「……」
対してヴィータは、野球ボール大の鉄球を二つ、出現させる。
「あはッ……!こんな距離で、ボクの魔法を破れるもんか! はァッ!」
――ゴパァン!!
発射される衝撃波。
回避か、迎撃か。だがヴィータが取った選択肢は、ありえない三つ目……正面突破だった。
「ハッ!!」
――ガギィンッ!
グラーフアイゼンに打ち出された一発目の鉄球は、フェイトの衝撃波とぶつかり……掻き消されたりはしないものの、減退を余儀無くされる。
後は衝撃波との波状攻撃で、ヴィータをノックアウトするだけ……そう考えていたフェイトの思惑は、呆気なく砕かれる。
「らあぁっ!!」
――ガッキイィィン!!
ヴィータは、二発目の鉄球を……一発目の鉄球目掛け、打ち出した。
――ガチィンッ!!
寸分違わず、一発目の鉄球に衝突。
ビリヤードのように、推進力を中継し、一発目が勢いを取り戻す。結果……
――バキンッ!
鉄球は、フェイトの衝撃波を突破した。
「えっ!?うわわわわっ……!?」
まさか、こんな手で突破されるとは思っていなかったのだろう。
姿勢を崩し、決定的な隙を晒してしまう。
「どりゃあぁっ!」
「ぎゃああぁっ!」
――そして、勝敗は決した。
「ううぅ……ちくしょー!」
「あぁ、動かないでよフェイト。バンソーコーが貼れない」
「負けたぁ……」
うー……と、不満そうにむくれる。
「自信あったのに……」
そんなフェイトに、ヴィータがアドバイスをする。
「アタシらの技術は、防御の上からブチ抜くことに長けてるからな。
ああいうシチュエーションは、恰好の獲物だ」
ヴィータの戦法は、古代ベルカの騎士の、引いては、守護騎士の戦い方だ。
「防御したから安心……ってわけじゃないんだよ。
防御したなら、それが破られた時、どうやって立て直すか。
そこまで考えないと、戦場では生き残れない」
「……むらさきのやつ、そんなたたかいしなかったぞ」
「そりゃ、意思を剥奪された操り人形じゃ、技術なんて活かしようが無いだろ」
その言葉に、フェイトがさー……っと青ざめる。
「あ、あいつ……あれがほんきじゃなかったの?」
アルフと二人掛かりで、相当に苦戦したのだ。
しかも、結局勝負は……闇の書の一時封印による消滅という預かり試合というオチ。
ヴィータは、人差し指をフェイトに突き付け、言い放った。
「ベルカの騎士、ナメんなよ」
「ぐぬぬ……きょうは、ちょうしがわるかっただけだもん……ね、バルディッシュ……?」
と、相棒に目を向けたフェイト。次の瞬間……
「あーーーーーーー!?」
素っ頓狂な悲鳴を上げた。
何故なら。バルディッシュの、黒いボディ。
それを真っ二つに縦断するように、大きな亀裂が入っていたのだ。
「ば、バルディッシュー!?」
『修復できます。問題ありません』
「そういうもんだいじゃないー!」
あたふたと魔力を注ぎ、応急処置をする。
「なんで、こんないきなり……!」
「あー……おめぇ、気付いてなかったのか?」
慌てふためくフェイトに、ヴィータが、頬をぽりぽりと掻きながら、衝撃的なことを言った。
「アタシのグラーフアイゼンとそいつじゃあ、そもそも強度が違いすぎたんだ。
打ち合う度に、ちょくちょく割れてたぞ」
「んなっ……!ほんと、バルディッシュ!?」
『……Yes,sir』
「なんで、もっとはやくいわないんだよ!もおおぉぉ!!」
『修復すれば済みます。ご心配には及びません』
相変わらずクールに返す相棒に、フェイトが怒った。
「ばか!
つぎはぎしてたら、いまはなんとかなってても、いつか……なおせないくらいにブッ壊れちゃうだろ!」
クロノに緊急コールを躊躇い無くかける。
『クロノだ。どうしたフェイト、珍しいな』
「実は……」
そして、事情を説明した。
「……ってわけなんだ。なんとかしてよ」
『……まぁ、そういうことなら、』
「うんうん!」
『マリーに頼むか』
「ばいばい」
ぶちっ、と通信をちょん切る。
すぐさまクロノからのコールが掛かり、嫌々渋々、それを受ける。
『あのなぁ!』
「やだ。あいつきらい!」
……相当に、怖かったらしい。
「あいつだけはやだ!」
フェイトの相棒、バルディッシュは、育ての親であるリニスの特製だ。
複雑な変型機能、高度な演算能力、人格AI……と、採算を度外視した高性能機。
だが、だからこそ、メンテナンスも複雑かつ面倒極まりなく……
『設計図が紛失したワンオフ品を弄れる技術者なんて、僕はマリーくらいしか知らん』
マリーは変態だが、腕は確かだ。
「ううぅ……」
だが、背に腹は代えられない。
相棒の傷を癒すことが第一だ。
「フェイト、あたしも着いていくから……」
アルフが宥めて……
「……うん」
フェイトは、小さく頷いた。
『それと、ヴィータ。君には、マリーから直々に召集がきている』
「…………」
フェイトを下した、ベルカの騎士が脂汗をかいていた。
「あー、そのー……なんだ。アタシはちょっと腹痛があるから、今回は……」
どこで覚えてきたのか、仮病まで使ってバックレを決め込もうとしている。
「うわぁ……」「見苦しい……」
主従コンビも、ジト目にならざるを得ない。
「うっせー! アタシにだって、苦手なモンくらいあるんだー!」
キレて叫ぶヴィータ。
「……」「……」
……なぜか、フェイトがアルフの背に隠れる。
アルフも、何か緊張した面持ちで、ヴィータを……いや、その背後を見ている。
「あん?……なんだおめーら。変な顔して……」
「……腹痛とは、興味深い」
「はヒィッ……!?」
金縛りにあったかのように、瞬時に凍りつく。
どこまでも沈んでいくかのような、ダウナーボイス。
「……プログラムなのに、腹痛。生理現象。……興味深い」
幽鬼の如き、ほの暗く、しかし確かな存在感。
「あ、あ、あ……!」
ぎち、ぎち、ぎち……と、硬直した身体を後ろに向けようとするヴィータ。
「……迎えに来たよ」
――白衣の悪魔が、そこにいた。
「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
……ヴィータは、情けない悲鳴を上げ、魔法まで使って逃亡を図る。
「あ……」
ぽつりと寂しげに、声とも吐息ともつかないものを呟く。
「逃げちゃった……」
『おいマリー……!』
通信の向こうで、クロノが頭を抱える。
『何で、そこにいるっ!?』
「モルモ……じゃなくて、ヴィータが呼んだのに、来ないから……」
(今、すごく自然にモルモットって言いかけたなこいつ……)
(やっぱこわいよコイツ……)
『許可は取ったのか!?』
許可、とは、転送ポートの使用許可のことだろう。
が……
「……取ってない」
『……』
クロノは、完全にフリーズした。
「でも、だいじょぶ……もーまんたい……」
『ンなわけあるかァッ!!』
……壊れた。
「いや、ホント……ワタシ、地球在住だし……」
マリーは現在、地球支部に駐留している。
確かに、異世界を跨ぐわけでは無いのだが。
『地球支部から海鳴市まで、何十キロあると思っている!? 電車、バス……果てはタクシーにも乗れない社会不適合者が、どうやって!?』
「ん……」
すっ……と、後ろ手に持っていたソレを、胸の辺りに持ってくる。
「あ、それ……!」
それは、黒地にオレンジのフレアパターンが栄える、やや派手な……
「ひでとのめっとじゃん!」
オートバイ用の、ヘルメットだった。
「あの馬鹿、メンテついでにワタシのラボに預けっぱなしでいなくなったから、邪魔で邪魔で……だから、返すついでに乗ってきた」
『……乗ったのか、アレに』
「うん」
身長が140も無く、筋力も絶望的なマリーが。
「……楽しかった」
意外と、多芸なのかもしれない。
いや、それより……
「よく、つかまらなかったね……」
妙に感心したフェイト。
「捕まる……誰に? ワタシ、信号はちゃんと守ったよ?」
『……』
いちいち突っ込んでいては、頭の血管が持たない。クロノは、傍聴に徹した。
「青は、『進め』」
正解。
「黄は、『急いで進め』」
…………可能であれば停止、が正しい。
「赤は、『注意して進め』」
……アウトー!
「ほんとに、ほんとーーーーに、つかまらなかった?」
むしろ心配そうに聞くフェイトに、マリーは、かくっと首を傾げ……
「捕まらなかったけど……変な奴らに、なんか追い回されたような気がする……
白くて黒い、四輪と二輪……ニホンは怖いね……」
パトカーと白バイである。
ナンバーは、修理の際にフェンダーごと取り外し、そのまま付け忘れてしまったらしい。
不幸中の幸だ。
――ぱたっ……
と、通信口から、枯れ枝が落ちるような、はかない音が響いた。
『きゃー!クロノくーん!?』
そばに控えていたエイミィの叫びもセットで。
「それで」
「ぴぃっ!?」
ぐわっ……と、いきなり超至近距離に顔を寄せられ、飛びすさる。
アルフにも、反応できなかった。
「ワタシに、なにか用……?」
「え、えと……」
すっ、とバルディッシュを見せる。
「ヒビが、たくさんはいってて……だから、なおしてほしいな、って」
「む……」
ぴく、とマリーの頬が反応する。
「これ……バルデイッシュ?」
知っているかのような、そんな口ぶりだった。
「こわれたらいやだから……」
「いいよ」
「え?」
見れば、マリーの顔からは、ダウナーな雰囲気は消え去っていた。
「一日だけ頂戴」
バルディッシュをつかみ取り、手元にコンソールを出す。
「エイミィ、支部までの転送許可を。すぐに取り掛かる」
『あぁ、うん……』
「では、また」
――パシュッ……!!
……いかなり現れて、突風のように去って行った。
「……なんか、ちがうひとみたい」
ヴィータの身柄を確保しに、アパートに突撃してきた時とは、別人のようだった。
その疑問に答えたのは、向こうのエイミィだった。
『マリーは、人格にすっごいムラがあって……気分の静動の切替が激しいの』
「……ふーん」
あまり分かっていなさそうだった。
「……バルディッシュ、無事に帰って来られるかなぁ……?」
「……魔改造されてなきゃいいけど」
……不安が尽きない二人だった。
さて、すっかり忘れ去られたヴィータはと言うと……
「うわああぁぁぁぁん……!」
自分の影に怯えるように、まだ逃げていた。
……ヴィータ、哀れ。
◆ ◆ ◆ ◆
ラボに戻ったマリエルは早速、監獄のプレシアと通信を繋いだ。
『あら、何かしら……って、それは』
すぐに、マリエルが手にするバルディッシュに気付いた。
『バルディッシュ……?』
『お久しぶりです』
数ヶ月ぶりの再会だった。
「……」
無言でスキャナーに設置し、内部の詳細な情報を表示させる。
すると、出るわ出るわ……エラーメッセージの嵐。
「……これはひどい」
『本当……管理局の技術部は、ボンクラの集まりなのかしら』
かつての使い魔の作。
それが、ここまで粗末な扱いを受けていることに、怒りすら覚える。
それは、マリエルも同様らしく……
「直すよ」
『了解だわ』
がちゃがちゃと、資材の山を掻き分け始めた。
『……ねぇ、マリエル』
がちゃがちゃ、がさごそ。
「……なに?」
『こんなこと言うのも変かもしれないけど……少しは整頓なさい』
「一見、乱雑な部屋。 それでいて……実は、きわめて機能的な配置」
『……』
片付けられない人間の、常套句だった。
『なら、この前の中間報告……試作型カートリッジユニットはどこ?』
「……この山の、一番下」
指差したのは……分解された、もしくは組み立て途中のまま放置されたパーツ……要は、ゴミの山だった。
『……片付けなさい』
ぴくぴくと、こめかみを引き攣らせながら言う。
「……や。面倒臭い」
ぷいっ、とモニターから顔を逸らす。
――ブチッ……
とうとう、プレシアがキレた。
『片付けなさいッ!』
平然とした様子のマリエルだったが、怒鳴られるのは嫌だったのか……
「なんだよもー……」
ぶちぶち言いながらも、ジャンクパーツを仕分け始めた。
『ふぅ……』
だらしない友人と付き合うのも、苦労するものだ。
ジャンクパーツの山と格闘する小柄な身体を眺めつつ、ぼーっとする。
『プレシア・テスタロッサ』
と、珍しいことに、バルディッシュの方から話し掛けた。
『あら、何……?』
向こうで準備を進めるプレシアも、少し面食らったようだ。
『我が主は、常にあなたのことを案じていました』
『……そう』
罪を清算し終えるまで、母親面はしない。
そう決めているからなのか、表立ったリアクションは見せない。
『……そちらの調子は、どう?』
『毎日を、友人と楽しく過ごしています。最近では、料理にも挑戦されて……』
『まぁ……でも、怪我が……』
『それも含めて、教わっています。初めて触れる事柄に、よく取り組んでいますよ』
『保護観察で、不自由な思いはしていない?』
『ハラオウン執務官の尽力で、その点は問題ありません』
とはいっても、やはり気になって仕方が無いのだろう。
矢継ぎ早に、質問を繰り返していた。
――プレシア・テスタロッサ。
その本性は生粋の、『親バカ』なのであった。
「……修理」
ぼそっ、とした声に中断されるまで。
「……始める」
流石に、始めれば早い。ジャンクパーツの山は、綺麗に整頓されていた。
『そ、そうね……』
恥じ入るように、表情を取り繕う。
『それに合わせ、いくつか要望があります』
「……言ってみ?」
『構成素材を、より強度の高いものに交換・補強を』
「……そのつもり」
『当然ね』
構成素材は、秀人の機体にも採用した新型の魔導合金に変更する予定だ。
ヴィータのグラーフアイゼンから得られた技術を基にした素材で、強度はもちろん、軽量かつ、粘りのある素材となった。強化には、うってつけだろう。
『それから、もう一つ』
……むしろ、こちらが本題だ。
『私に、カートリッジシステムを搭載して頂きたい』
◆ ◆ ◆ ◆
今日もまた瞑想し、魔法構築の基礎を反復していた。
……さて、俺達が先日、多くの獲物を仕留めたのは……なにも、無目的な乱獲がしたかったわけじゃない。
「……」
こうして、時間の全てを、魔法の基礎練習にあてるためだ。
「……ハッ!」
――ビシュンッ!!
手に、魔力刃を発動。
そして、分解されそうになるソレを、とにかく維持できるようコントロール。
「……」
5分が経過した。
初めのうち、一分も持たなかった惨状に比べたら、小さいながらも大きな一歩……
「ていやー☆」
――パリイィン!
「俺の一歩があああああああぁぁぁぁ!!?」
上手くいってたのに!
「はやてぇぇぇ!」
「ひゃーっひゃっひゃ!」
愛剣を片手に腹を抱えてバカ笑いをするはやて。
「邪魔すんなっつったろ!!」
「ひゃはははは! ちょっと叩いた位で割れる脆い魔力刃なのがいけないんじゃん!」
「ぐっ……!」
確かに、そうだけど!
「ほれほれ、二刀流~♪」
剣を鞘に収めて、見せびらかすように、左右の手にそれぞれ魔力刃を完璧に構成して見せる。
「ぐぐぐ……!」
畜生……才能の壁が憎い!
「……最初に使った魔力『だけ』で構成するんじゃなくて、分解された箇所に、新しく魔力を注いで維持してみな」
……アドバイスは、してくれるんだな。
「……」
確かに、これはこれで維持がしやすい。
もう一度、集中して……
「こちょこちょこちょ」
「ぶほぁっ!」
――パキィン!
集中を断ち切られ、またしても砕け散った。
「やめい!!」
アドバイスしたと思ったら邪魔しやがって……
「ほらほら、集中集中♪」
はぁ……
思わず、ため息が出てしまう。
「なのはなら、こんな真似はしないのに……」
まして、練習の邪魔をするなんて有り得ない。
「……おい」
バカ笑いから一転して……不快そうに、眉間に皺を寄せて、俺を睨んでいる。
…………何だ?
何か、こいつの地雷でも踏んだか?
「私に、誰かを投影してんじゃねぇよ」
「……すまん」
よく分からないけど……って!?
「……死ねッ!!」
――ビュンッ!!
「うわっ!?」
あっぶね……
「……決めた。殺そう」
剣を握る手に、ぎちぎちと力が篭っている。
やべ……マジでキレてる!
「ま……待て。落ち着け。話し合おう!」
「問答無用だァッ!」
振り下ろされる先は……躊躇い無く、俺の額!
――ガシンッ!
魔力で補強した掌で、なんとかギリギリ受け止める。
「はァ……!」
その頬は、酔ったように紅潮していて……とても、言葉で正気には戻せそうにない。
「えぇい、許せ! 俺は今のところ死ぬわけにはいかん!」
――ガスッ!
両手が塞がった状態から、中段蹴りではやてを蹴り飛ばす。
……もちろん、女の子を足蹴にするのに抵抗はあるけど、命が懸かっているなら話は別だ。
――ザンッ……!
はやては自分から後ろに跳び、蹴りの威力を軽減した。
……中途半端な射撃は、隙を作るだけ。
となると、残るのは接近戦だが、ほぼ無手の状態じゃ不利だ。
魔力刃は……駄目だ。まだ、実戦には耐えられない。
「……!」
腕に魔力を集中。
とりあえずは、これで!
――ガシュッ……!
「い……ってェ!」
おいおい……強化魔法を突き抜けたぞ!?
力尽くじゃ、こうはいかない。
やっぱり、剣のセンスが半端無いなコイツ……!
……っていうか、なんでいきなりガチバトルになってんだ!?
――ガギギンッ!!
「何が、そんなに気に食わなかったんだよ!?」
「知るか! とにかく、ムカついたからブッ殺す!」
め……目茶苦茶だ、こいつの思考回路!
「ミドリムシの方がまだ思慮深いわこの単細胞!」
「い……言ったなあああぁぁ!?」
……実は気にしてたのか?
「言ったから何だバーカバーカ!」
半ばヤケになって、幼稚な罵声を浴びせる。
「生皮剥いでやるこの脳筋!」
「やってみろバーカ! ……ごめん嘘ですやっぱりやめてぇぇぇぇ!」
くそ……せめて、インパクトが使えれば……!
使えないことも無いだろうが、対人制圧用の威力調節版は、まだこの環境下では使いこなせない。
大威力では、はやてに重傷を負わせかねないし……
(――そうだ!)
確か、恭也の奴が前に……!
「……!」
思い出せ……あの時の、恭也の動きを!
「らあぁぁぁっ!」
「フンッ!」
――ごりっ……!
肉をえぐる、不快な感触と痛み。
だけど……
「つかまえ……たっ!」
「!?」
密着している今なら……使えるはずだ。
足腰で地面を捉え……捻りを加えて……接触面に、伝達!
零距離で……!
「せァッ!」
――パァンッ……!
「ぐっ……!?」
この技の利点は……一切の魔力を必要としないこと。
つまり、初見の魔法戦では必ず決まる。
たしか、『徹』……とかいう技だ。
「!」
剣を握る手から、僅かに力が抜けた。
「おおっ!」
腕に食い込んだままの剣を、掠め取る!
「あっ……!?」
意識が逸れたところで……
「寝てろ!」
首筋に、『徹』を叩き込む!
「かはっ……!」
どうっ……と気絶し、倒れ込むはやて。
「……あぶねー奴」
付き合い始めて一週間。そろそろ、地が見えてきたってことか。
「……はぁ」
うまくやっていけるかどうか、激しく不安だ。