魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第三十八話

いきなり現れて、いきなり攻撃してきて、いきなり三行半を突き付けられた。

 何だこの状況……

「大丈夫ですかー!?」

 音を聞き付け、スタッフがやってきた。

 やっべぇ……何て説明すれば……

「チッ……世話の焼ける奴」

 はやて……? 何を……

 

「『何でもないから、仕事に戻れ』」

 

 ……なんだ、今の声?

 ハウリングでも起こしたように、妙に頭に反響した。

「あ……はい……」「了解、しました……」

 責任者でも何でもない、はやての言葉を聞いたスタッフ達は……ふらふらと、どこか覚束ない歩みで戻って行った。

 今、何をやったんだ……? 魔法……だとは思うけど。

『暗示です』

 悩む俺に、レイジングハートが言った。

ああ、俺が桃子たちに掛けたのと同じようなものか。

 

 

 向こうから、すずか達もやってきた。

「秀人さん、ご無事ですか!?」「あちゃー……タンクべっこり凹んでるわね。高くつくわよコレ」

「大丈夫大丈夫、予備パーツ持ってるし」

 実際には、スレイプニルの自己修復なわけだが。

 

 遅れて、健太と望も……

「……」

「……」

 あれ……なんか、びっくりした顔のまま固まってるんだが……

 そんなにひどい転び方したか、俺。

 だが、違った。

「はろー。望、健太」

 アイが、しゅたっと手を挙げ、気安く二人に挨拶をした。

 

「「アイさん!?」」

 

「……知り合いか?」

 ……一応、聞いておくけど。

「な……何で、望たちに……?」

 なのはも、この急展開に頭が追いつかないようだった。

「先々週、くらいかな。健太たちの練習に、ちょくちょく顔出して……」

 ……見た目、15くらいのアイが、小学生に混じってサッカーをしている姿を思い浮かべた。

 

 ……ちょっと待て。

 

「服はどうした」

「着てる」

「そういう意味じゃない」

 

 こんな……雑誌を突き刺した白衣に、ヨレヨレのジャージ、スリッパ履きで、

あちこち歩き回ってたのかよ……

 頭を抱える俺に、望が話してくれた。

「えぇと……基本、あの格好でしたよ?

 練習が終わると早々に、どこか行っちゃいましたけど」

「どこ行ってた」

「……(つーん)」

 そっぽを向いて、答えようとしない。

 

『何をしているのですかこの阿呆!

 教育プログラムが終了せるまで、民間人との接触は厳禁と……!』

 レイジングハートが、念話をビシバシとアイにたたき付ける。

「ほんっとにうるさいのこの石頭…………」

 アイは、聞こえていないフリをして聞き流した。

 

 あー……なんか、グダグダになってきた。

「んで……何しに来たんだ?」

 まさか、わざわざ俺に三行半を突き付けるためだけに来たわけじゃ……無い、よな? 多分。

「それもあるの」

 あるのかよ。

「でも、残りもう半分は、別のこと」

 半分……?

「……あれ?でもここ、私有地よね……フェンスもあったのに、どうやって……」

 望がいち早く、不自然さに気付いた。

 やっべ……!

 

「『アイとは街で会って、同じ車に乗ってきただろ』」

 

 はやてが、再び暗示を掛けた。

「……あぁ、そういえば」

 ほっ……

 なんとか、ごまかせた。

「それじゃ、アイさん。また後で」

 四人が向こうに戻ったのを見計らって……アイに向き合った。

 

 

「マスターとして認めないって……何でだ?」

 俺、アイに何かしたどころか、初対面だったんだけど。

「アイは、学習の過程で、おまえの戦闘の映像記録を見ていたの」

 まぁ、俺の専用機、って扱いだからな。

 

「お前の戦い方は、見ていられなかった」

 

「……」

「……不利になると、ただがむしゃらに相手の懐に飛び込んで、ゼロ距離から砲撃魔法を

炸裂させたり……自分の体を省みない、自滅行為に躊躇無く走る」

「……」

「例え、その身体の性能があったとしても……いずれ、破綻をきたす」

……ヴィータとの初戦という実例もある。

 他者から改めて指摘されると、言い返せない。

 

「アイは、デバイス」

 

 胸に手を添え、告げる。

「契約者の半身となり支える杖であり、契約者を守る盾」

「……」

 

「けれど、」

 

 目を開き……とん、と俺の心臓あたりを人差し指で突き、言った。

 

「自ら死地に身投げをするような……自殺志願者など、支える意味も、守る価値も無いの」

 

「……」

 それは、前々から誰其に言われ続けてきた。

 我が身を省みないって。

 でも、それは……

「俺は、」

「『そういうふうに出来てるから』?」

「……ぐ」

 こいつめ……いらんことまで学習しおって。

「……ま、そーゆーことなの。アイと契約をしたいのなら、」

「やーめた」

「まず……ぇ?」

 キョトン、と首を傾げるアイ。

「つーか、よく考えたら俺、デバイスがあっても無くても、そんなに変わらないし」

 レイジングハート不在でも、特に戦い方に変化は無かった。

 スターライトと、三連コンボが使いづらくなる……くらいの制約か。

 それなら、その二つを自力で使えるようになった方が良さそうだ。

「さーて、バイクも壊れちゃったし、チャリで遊ぼっかなー」

 

「待つの」

 

 がしっ、とジャケットの裾を掴まれた。

「訂正するの。このアイを……最新最高スペックの私を……『いてもいなくても変わらない』……? 訂正するの」

 

 ……プライドは高いらしい。

「だってお前、俺の力にはなってくれないんだろ?」

「そのつもりは無いの」

「なら、俺の戦力には変化無し。いてもいなくても同じじゃん」

「だから、お前がその性根を入れ替えれば……」

「やーだよ」

 はいそーですか……なんて変われるなら、苦労は無い。

「……気が変わったの」

 ぐいっ、と、俺の胸倉……より少し下を握り締め、精一杯の意思を込めた目で、俺を睨み上げる。

「おまえに、アイのマスターに『なってもらおう』なんて、甘々の大甘だったの」

「ほぅ……で、どうする?」

 

 

「おまえを、アイのマスターに相応しくなるように…………教育してやるの」

 

 

「やってみろよ」

 上等だ。

 誰が、お前のマスターに相応しい人間になんてなるものか。

「俺は俺のまま、ぜってぇーに変わってやらん」

 言うことは言い終わった。俺は、さっさとなのは達に合流して……

 

「待つの」

 

「……今度は何だ」

 びしっ、と、皆が乗っている自転車を指差した。

「それは、なに?」

「……自転車。それは知ってる。けれど、自転車は市街地を走る乗り物のはず。なぜ、不整地を走る?」

 …………えーと、つまり、『残り半分』って……まさか。

 

「わからないから、聞きに来たの」

 

 えへん……と、胸を張った。

 

 結局その後、何でか分からんが、アイにマウンテンバイクについて講義を行い、乗り方を教え、ダウンヒルを走った。

 

……しっかり楽しんでやがった。

 

 

 その、帰り道。

 バイクは適当に修復し、後ろに猫モードのリーゼ、犬モードのアルフ、フェレットモードのユーノを、すずかに借りたケージに纏めて突っ込んでおいた。

 なのは、フェイト達は、とっくに体力を使い果たして夢の中。

 人数的に、こうなった。

 その三人(匹?)も、ケージの中で休んでいた。

 

 

 なのはの夏休みは、明日で終わりか……

「明日、どうすっかなぁ」

 また遠出……は、ちょっとなのはが疲れるかもしれないな。

「……あ、そうだ」

 さっきリンディさんに送ったメール、確認してもらえただろうか。

 念話のチャンネルを開いて、と。

『リンディさん、今いいですか?』

『えぇ、問題ありませんよ』

 答えは、すぐに返ってきた。

『例の件、なんですけど……』

 簡単に通るとは思わないけど、可能な限り、力を借りたい。

『……その件なんだけど、えぇっと……』

 途端、口ごもる。

『……難しいですか?』

『いいえ。手続きさえ踏めば、実現できるんだけど……』

 ハッキリしないなぁ。

『問題って何すか?』

『……………………レジアス少将との、面談』

 

…………うへぇ。

 

 うーん……

『それって、フェイト一人でなくちゃ駄目ですかね?』

『縁者の同席は可能よ。……秀人くん、あなた、まさか』

『俺が同席します』

 流石に、あのオッサンと身一つで対面させるにはまだ早い。

『わかりました。少将には、私の方からアポイントメントを取ってみます』

 出来れば明日の午後……と要望を付け加え、念話を終了させた。

 

 午後の予定は埋まったし……よし、午前中は、なのは連れて、街まで買い物にでも行くか。

 

 そんなことを考えながら、高速道路を降り、街に戻ってきた。

 アパートの前にバイクを止める。

 高級車のドアを、ゆっくりと開けると……

「くぅ……くぅ……」

 遊び疲れたなのは達が、安らかな寝息を立てていた。

「では、秀人さん。またいつか」

 挨拶をするすずかも、流石に疲れて眠そうだ。

 アリサはとっくに、シートにゴロンと横になっている。

「あぁ、それじゃあな」

 

 高級車を見送り……俺がなのは、アルフがフェイト、ユーノが……何故かアイを抱えて、

アパートに戻る。さーて、俺も、明日の準備でもするかなぁ。

「あ」

 大事なこと、忘れてた。

 

「……ただいま、みんな」

 

 一月ぶりの、我が家だった。

 

 

 

 

 

 

 さて、一方その頃。

 

「……どこで寝るかなぁ」

 

 寝床に困る、闇統べる王がいた。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 帰宅してすぐ、疲れもあって熟睡してしまった。

 

 夏休みだから、目覚まし時計も止めていて……起きたのは、9時になる少し前だった。

「んー……!」

 背伸びをすると、ぱきぱき、と背が鳴る。

「……今日で終わりかぁ」

 カレンダーを見るまでもなく、今日は八月三十一日。夏休み最終日だ。

 宿題は……まぁ、ぼちぼち。富山先生が怒らない程度に仕上げてある。心配皆無。

 

 両隣の布団には、一緒に朝を迎えるのは久しぶりになる秀人さんと……

まーたタオルケットを蹴飛ばし、寝巻がお腹までめくれ上がっているフェイトがいた。

「はあ……」

 タオルケットをかけ直す。

 まぁ、朝ごはんまで寝かしておいてやるか。

 

 できるだけ足音を立てないように、抜き足差し足……ん?

 何コレ。食卓の上に、紙ペラが……

 

『暇だから遊んでくるの。気が向いたら戻るの』

 

 ……ワープロ打ちしたような綺麗な字で、そんなふざけた内容が書かれていた。

『戻る』って、完全に居座る気だコレ。

 ……頭が痛い。

 それにしても……

『全く、アイは……秀人の専用機だというのに、何を考えているのやら』

 傍らで、レイジングハートがふよふよ浮かびながら、ぶつくさ愚痴っている。

 あはは……確かに、教育係としては、育てがいの無い子だったよね。

「まぁまぁ……アイの言っていることも、あながち間違いじゃないし」

 秀人さんの無茶が、あれだけ真正面から切り捨てられるのは初めてだ。

「アイはアイで、自分なりの考えを持ってるんだし、さ。尊重してあげようよ」

 

 ……そういえば。

「ねぇ、レイジングハート」

『ぶつぶつ……え?、あぁ、何でしょうか?』

「アイの正式名称は、そのまま『アイ』でいいの?」

 もしそうなら、少し素っ気ない気がする。

『いいえ、あれは愛称です』

 愛称……

「じゃあ、本当の名前は?」

 実は、かなりカッコ良かったりするんだろうか。

 密かにワクワクしていたんだけど……

『……思い出せないのです』

「……はい?」

 ふぅ……と、最近すっかりサマになるようになったため息をつき、ぼやいた。

 

『アイは脱走の寸前……私とバルディッシュがスリープモードに入った隙を見計らって、メモリーにプロテクトを仕掛けやがったのです』

 

……なんて奴だ。

 

『なので、アイの正式名称は、奴にしか……』

 

 重ね重ね、何て奴だ。

 

『マリエルにも伝える前の出来事だったので、機体番号『AI-00XXX』の頭文字から、『アイ』と呼ぶことにしたのです』

「……大変だったんだねぇ」

 と、話している間に、鍋が沸騰した。

 削り節を入れて、一煮立ち火を弱めて……具はどうしようかなぁ。

「ワカメと豆腐でいいんじゃないか?」

「うん、わかった…………っていうか、おはよう秀人さん」

 気付いたら、いつの間にやら背後に秀人さんが立っていた。

「手伝うよ」

「ありがと」

 台所に並んで、五人分の朝食を支度する。

 ヴィータは、今日の夜に帰る予定だ。

「秀人さんが迎えに行くんだよね?」

 午後からはフェイトと一緒に管理局だし、そのついでに拾ってくるらしい。

「あぁ、全部午後からの予定」

 フェイトは説明を受けにアースラに、アルフはその付き添い、ユーノくんは無限書庫で調べ物……

 つまるところ、一日まるまる暇な私と、半日だけ時間のある秀人さん。

「と、いうわけで、なのは」

 秀人さんの手が、まだ寝癖がついている私の頭を、わしわしと撫でた。

「朝飯食ったら、街まで遊びに行くぞ」

「うんっ!」

 

 夏休み最終日は……秀人さんとお買い物だー!

 

 

「支度できたか?」

「おっけーだよ!」

 うきうき気分で、ショルダーバッグを提げる。

 財布、携帯、ハンカチティッシュ、回天桜花……忘れ物、無し!

「なのは、いいなー……」

 フェイトが、物欲しそうな口調で玄関先まで見送りに来た。

「いいなーって……午後はフェイトと一緒じゃん」

「うぅー……それは、そうだけど」

 あー……もしかして、遊びに行きたいのかな?

「フェイト」

 秀人さんが、フェイトの前に腰を下ろし、目線の高さを合わせた。

「今日はお仕事だけど……今度は、二人で遊びに行こう」

「……ほんと?」

「ああ。約束だ」

 小指を差し出し、指切り。

 

「「指切りげんまん、嘘ついたら、なのはの砲撃喰ーらう! 指切った!」」

 

 ちょっと待てぇえええええええええええ!!

 

「二人とも、どーいう意味ソレ!?

 私の砲撃、針千本!?

「いやー……むしろ、いちまんほん……くらい?」

「針っつーか……杭百本?」

「「ねー」」

 二人して、ハモった!

 そんなに酷くないもん!

「もうっ! 秀人さん、行くよっ!」

 ぎゅーっと手を握り、引っ張る。

「いってらっしゃーい」

 ニコニコと、悪戯を成功させた子供のような顔をしていた。

 

 

「さてと……まずは、ヴィータの服と雑貨かな」

「そうだね」

 私とフェイトとユーノくんは、体格が近いから(と言うと、ユーノくんすっごく渋い顔するけど)服の着回しができる。

 自分の服を選ぶ時も、まずそれを考えて選んでいるんだけど、一回り小さいヴィータには、合う服が無い。いつまでも私のお下がりを着ている状態では可愛そうだし、ここで一丁、超可愛い女児服を用意してやろう。お代は、貯め続けている、管理局からの報酬で。

 

「お……コレ、似合うんじゃないか?」

 秀人さんが、ボーイッシュなパーカーを選び出した。

「それじゃ、こっちのデニムを合わせて……」

 

 ……結果。

 

「ボーイッシュというか、まんま男児だよな」

「動きやすそうではあるけど……」

 まぁ、まずは普段着をワンセット。

 次。

「ぶはっ……なのは、コレコレ!」

 秀人さんが、寝巻のコーナーから一着を選ぶ。

「どれどれ……ぷっ!」

 それは……俗に言う、『着ぐるみパジャマ』だった。

 しかも、よりにもよってポケモ〇の。

「秀人さん、真剣に選ぼうよ……ぷくくっ! こっちはイ〇ーク……!」

「寝袋じゃん!」

「ビリ〇ダマだ!」

「……どうやって着るんだろうな」

「ソーナ〇ス……」

「まぁ普通……おい待て。右手と頭が縫い付けられてるぞ!」

「寝られないよ」

 ……まぁ、おふざけは程々に。

「……お?」

 秀人さんが、一着のワンピース……というか、ドレスのようなものを見つけた。

 深い紅色で、所々にブラウンの装飾。

 子供サイズにしては、妙にシックな感じの服だ。

 ぶかっとした帽子とセットで……

「これ……似合うんじゃないか?」

「うん……」

 イメージ図だけで、ベストマッチだ。

 お値段は、他と比べて桁が一つ多いけど……管理局からの報酬からすれば、微々たる額。

 でも、贅沢すぎるような気も……うーん。

「いいんじゃね? 特別に、プレゼントってことで」

「……うん、そうだね!」

 

 ……色々と見て回り、服は揃った。

 次は雑貨かな……

「ヘイ、そこなお二人サン!」

「ひっ!?」

 びっくりした……

 振り向くとそこには……なんというか、派手な女性が。

「なんですか……?」

「何だお前……」

 秀人さんも微妙に迷惑そうだった。

「あっれ、忘れてる? 忘れられてる的な感じデスかー?」

 身につけた多数のアクセサリーが、じゃらじゃらと鳴った。

「その飾り紐、あたしが作ったんだけどなァ」

 あ!

「あのお店の……」

 今年の春、レイジングハートの飾り紐を買った店の店員さんだ!

「あぁ、あのケバいねーちゃんか」

 思い出した。

 ……けど、何で露店にいるんだろう?

 

「潰れたのか?」

 

 秀人さんが、そのままズバッと尋ねる。

「潰れてねーヨ! 営・業・活・動!」

 あぁ……なるほど。

「頑張って下さいね。それじゃ」

 サクッと挨拶を済ませ、その場を後にする。

「ウェエエエエエイトゥ!」

 ズザザザザッ……と、お姉さんが目の前に回り込んできた。

「……何ですか?」

 ……なんで私、こういった類の変人とばかり縁が出来てしまうんだろうか。

「その飾り紐、使い心地はどう?」

「?……まぁ、悪くは無いですよ」

 

「でも、そろそろ交換時期! あら大変、紐の繊維がほつれてきてるyo!」

 ……言われてみれば、確かに。

 買って半年くらいだけど、表面が僅かにざらざらしてきている。

 毎日使っているから……だろうか。

「……計算尽くで作ったろ、お前」

「なんのことカナー?」

 すっとぼけてはいるが、確信犯だ。

「飾り紐が切れかけて困っている、そこのアナタ! こちらの、気品有るシルバーチェーンはいかが!?」

 

 つまり、最初に売り付ける商品は、短い期間でダメになるように仕掛けているってこと?

「現在、当店で販売したお客様に限り、下取りキャンペーン実施中ダヨ!」

 ……商売上手だなぁ。

「お前、商売上手いな」

 秀人さんも、半ば呆れて言った。

 まぁ、見てみれば、そのチェーンもいい出来だ。

 アタッチメントの流用も可能らしい。

 

「……で、いくら?」

 

 ……満面の笑みを浮かべるお姉さんに代金を渡し、チェーンと紐を交換した。

「今度は千切れないだろうな」

 秀人さんが念を押す。

「だいじょーぶだいじょーぶ! 今度はイケるって!」

 何が。

 ケラケラと笑いながら、サムズアップした。

「これでも、西から東へアクセ売りながら渡り歩いてたんだから!」

 腕は確かってこと?

「関西にいたころは大変だったヨー。ヤクザ屋さんから逃げて逃げて、警察から逃げて逃げて……気づいたら、東京にいました☆」

 凄いんだか、凄くないんだか……

 

『もし壊れたアクセサリーとかあったら、店に持ってきて。サービスで直してあげる!』

 

 そんな話を最後に、露店を後にした。

 

 時間は……十一時を回っていた。

 秀人さんはいつもとは違う道を通って、ある店の前で足を止めた。

「バイク屋?」

 駐車スペースには、色々なバイクが止められていた。

 売り物じゃないみたいだけど……

「ちょっと違うけど、似たような店だ」

 手を引かれて、店内に入った。

 

 ジャケット、ヘルメット、グローブ……

「あ、バイク用品のお店だ」

「ご名答……と、いうわけで」

 ずぼっ、と、頭に何かを被せられる。

「あっ……」

 両肩を持たれ……鏡の方を向かされた。

 

「新しいヘルメットをプレゼントだ」

 

「え……でも、」

「あれはもうキツいだろ?」

 ちらっ、と値段を見て……

「高っ!?

 ……駄目だよ、こんな高いの!」

 今まで使ってたやつで十分だよ!

 

「あ、店員さーん。コレと同じサイズのやつ、三つ!」

「こらぁあああ! むぐっ」

 口を塞ぐなぁ!

「あぁ気にしないで。それと、もう一回り小さいやつを一つ」

 ヴィータの分まで!?

「……かしこまりましたー♪」

 店員は、爽やかな笑みでバックヤードに走っていった。

「ぷはっ! ……秀人さん、いくらなんでも使いすぎ!」

 今日だけで、六桁の金額を使った。

「贅沢癖が付いちゃうでしょ!」

「必要経費だよ必要経費。それとも……いらなかった?」

「ぐ……そ、そりゃ、いるかいらないかで聞かれたら、いるけど……」

「だろ? ……それに、これは会社からの手当で買ってるから、貯金には問題無し」

 管理局からの報酬は、使っていないらしい。

 けど、

「それなら、自分が欲しいものでも買えばよかったのに……」

「だから、なのは達の新しいヘルメット買っただろ」

「うー……」

 秀人さんは、お金の使い方が豪快すぎるんだよ。

 

 ラッピングまで施されたヘルメットの箱の配送手配を済ませ、店を出る。

「秀人さん」

「んー?」

「……ありがと。プレゼント、嬉しいよ」

 秀人さんは笑顔で、私の頭を撫でた。

 

 

 時間は、12時半。

 名残惜しいけど……

「秀人さん、そろそろ帰ろう」

 

 一緒に過ごせたのは、僅か二日……いや、実質、一日半。

 けど……

 

「夏休み、楽しかったよ」

「またどっか行こうな」

 

 私の夏休みは、幕を閉じた。

 

 

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