魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第四十九話

 

――ヒュンッ!!

 

「うわっ!?」

 薙ぎ払われる西洋剣を、フェイトは慌てて回避する。

「ひゃー、びっくりしたー……」

 初戦の時と比べ、格段に動きが良くなってきている。

「ねーアルフ! こいつらのうごき……!」

その剣捌きに、フェイトは覚えがあった。

「ああ! あの、守護騎士ってやつにソックリだ!」

 剣を持たせただけではなく、守護騎士のデータをフィードバックすることで、戦力を増したのだろう。

「うーん……どうしよう……?」

 フェイトは、悩んでいた。

 以前は、気にもせずにバルディッシュを剣に叩きつけていた。だが、ヴィータとの訓練では、それによって破損していたことも明らかとなっていた。

「うーーーーーーーーん…………」

 

――ひょいひょいひょいっ。

 

 悩みながらも全て回避しているのは、さすがだが。

『問題ありません』

 それに、当の本人が答えた。

「でも……」

『内部機構に加え、外装素材を一新しました。強度・柔軟性共に、以前の比ではありません。どうぞお気になさらず、全力を』

「……うんっ!!」

 笑みで返すフェイト。

『ガアアアアアッ!!』

 その向かいから、雑魚騎士が迫る。

「でやああああっ!!」

 西洋剣に、バルディッシュをぶつけて迎撃。

 フェイトの頭の中は、この後、拮抗した鍔迫り合いからいかにして戦うか、という思考になっていた。

だが……予想外すぎる事態が起きた。

西洋剣とバルディッシュがぶつかった、次の瞬間……

 

――バキィンッ!!

 

 敵の西洋剣が。劣化しているにせよ、守護騎士のアームドデバイスが。

「へっ……?」

 

――真っ二つに、折れ飛んだ。

 

『グッ……』

「…………………………はっ!? ちゃーんすっ!!」

最初、ほけー、っとしていたフェイトだったが、その隙を見逃すことは無かった。

 

『Photon Lancher』

 

――バガアァァンッッ!!

 

一点集中型の雷撃の槍が、雑魚騎士を直撃した!

「うおお、なんじゃこりゃー!!」

喜色満面に、バルディッシュを振り回す。

 

――バゴッ!!

 

……一体、何をどう作ったのだろうか。打ち合う……などという段階にさえならない。敵の武装は、衝突した瞬間、一方的に当たり負けしてしまうのだ。

 しかも。

 

『Thunder Rage!!』

 

――バリバリバリバチイイイイイイインッ!!

 

 元から得意だったとはいえ、高等魔法に位置する天候操作魔法に、殆どモーションが掛からない!

「うわー、しょりもはやーい!!!」

 武装としての強度。魔法の杖としての処理能力。どちらをとっても、常識の範疇を飛び越える。

 …………管理局随一の技術屋と、ミッドチルダ随一の大魔導師の合作なのだから、そうなるのは必然なのかもしれない。

「よーし、どんどんこーい!!」

 全く、負ける気がしなかった。

 

 

 それを見ながら、クロノは術式を詠唱する。

『グアァッ!!』

 迫る西洋剣。

 自分より魔力に秀でた、自分より小さな女の子……フェイトは、それを難なく跳ね返して見せた。自分も負けじと、それに合わせようとして……

「……」

 一瞬浮かんだ考えを、クロノは苦笑いと共に捨て去る。

 

――ガスッ!!

 

 飛び退った足元に、西洋剣が突き刺さる。

 同時、S2Uは詠唱を認識し、発動の準備を終えていた。

『Stinger Snipe !』

連発された射撃魔法が、雑魚騎士の腕を直撃。装甲と、握力を奪う。

「はァッ!!」

『Blaze Saber!』

 展開した魔力刃で、その腕を叩き斬る!

『ガアアア……!!』

(これが、僕の戦い方だっ!)

 誰かに勝る、劣る……そんな瑣末なことには気をとられない。

 最小限の動作で、最大限の成果を。

 それが、資質に乏しい、クロノ・ハラオウン執務官の戦いだった。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 学校は、一時騒然となっていた。

 生徒・来場者の大部分が、眩暈などの体調不良を訴えたのだ。

 ガス漏れ。食中毒。ありとあらゆる憶測が飛び交い、ついには警察・救急隊・消防隊までもが出動する騒ぎとなってしまった。

 とりあえず、確認できた人間は敷地外へと避難させられ、特に症状が酷い者は病院へ搬送される。

「待って下さい! まだ、うちの子が中に!!」

 ……恐らく、隔離結界に閉ざされてしまった児童の保護者だろう。制止する警官隊を押しのけようと、暴れていた。

「市民の皆さん、敷地内は現在、立ち入り禁止となっています! 敷地内に残った児童・来場者を、現在確認中です!」

 メガホンで声を張り上げる、制服姿の男性。

 人のバリケード。警官隊の誰も、そこを通した様子は無い。無いのだが……

 

「おじいちゃん、ここなの、ここ」

 

黒髪の少女と。

 

「じーちゃん、ここだ!」

 

紅髪の幼女と。

 

「…………ふむ、ここだのう」

 

 ……作務衣姿の老人が、全く気配を悟られること無く、敷地内に潜入していた。

 喧騒を背後に、三人同時に、何も無い空間…………に見える、結界と現実世界の境目を指差す。

 デバイスであるアイ、騎士であるヴィータならまだしも。

 ……大家が、何食わぬ顔でそれを探り当てていることには、誰も疑問を抱かない。

「ふん、雑な造りじゃのう…………」

 やれやれ……と頭を振り、結界の粗を指摘する。

 

「いっせーのせ、でやるの」

「おっしゃ! いくぞアイゼン!」『jawohl!!』

 

――ジャキンッ!!

 

 グラーフアイゼンを起動し、騎士甲冑……という名の、フリフリのドレスを身に纏う。

「…………いつ見ても戦闘服には見えないの。とっても可憐なの」

 半笑いで感想を漏らすアイ。

「るっせ。いいんだよ別に機能には問題ないんだし」

 これはこれ、と割り切っていた。

「カートリッジ、ロード!」

――ガシャコンッ!!

 薬莢が排出され、グラーフアイゼンに破壊力が漲る。

 

「すー……はぁー……!!」

 大家は、独自の呼吸法で体に力を漲らせる。

「コぁッ!!」

 

――バツンッ!!

 

 …………作務衣の縫い目が、膨れ上がった筋肉で破れた。

「じゃ、いくの。いっ、」「せー、」「の、」

 

 

「 「 「 せっ!! 」 」 」

 

 

――パキイイイイインッ!!

 

 

 アイの無造作な蹴りとヴィータの鉄鎚が結界に罅を入れ……大家の鉄拳が、結界を叩き砕いた。

 ……重ね重ねになるが、大家はただの民間人である。

 

『オアアアアアアアッ!!!』『ガアアアアアアアアアッ!!』

 

 結界に突入するや否や、雑魚騎士が襲い掛かってくる。

「ほっほ……懐かしい空気じゃ」

 振るわれる西洋剣。それを前にして、大家はまるで、散歩道に咲いた花でも見るように、微笑んでいた。

「ただ……」

 

――すぱんっ。 …………ゴガンッ!!

 

「100年ばかし、鍛錬が足りんのう」

 流れるような足払いからの、かち上げるようなアッパー。

 雑魚騎士は、甲冑の欠片を撒き散らしながら3メートルも打ち上げられ……落ちた。

「…………死んでないよな?」

 ヴィータが、怪訝に聞く。

「うむ、安心せい。死んではおらんよ…………………………死んでは、のう」

 ……コロコロと、足元に白い物体が転がってきた。

 

…………折れた歯(×複数)だった。

 

「…………そっか」

 ヴィータは、考えることを止めた。

「ま、まぁ……心臓マッサージでも、アバラ折ったりするもんな! 不可抗力だ不可抗力!!」

――ベキンッ!! 

 近寄ってきた雑魚騎士に、頭蓋が潰れそうなスタンプを叩き込む。

「命拾えるなら、ちょっと(全治半年レベル)の怪我なんて、安い安い!!」

「うむ。大バーゲンじゃ」

 

――ゴパッ!!

 

 吹っ切れたように雑魚騎士をボコり始めた。

「……ひっどい奴らなの」

 暢気に観戦するアイの背後で、雑魚騎士が剣を振りかぶる。

 

――ビュンッ!!

 

「おっと、あぶないの」

 その小柄な体躯を活かし、雑魚騎士の股座を潜り抜けた。

『ア!?』

 いきなり目標を見失い混乱する。

 アイは、何歩か助走を取り、

「とーう」

 そんな、気の抜けるような掛け声を発し……

 

 

――――――――チーン★

 

 

……………………男性にとって割とガチで生命に関わるデリケートなトコロを、人外の力で蹴り上げた。

 

『ア、アッー……ー!! ……ホアァ……!! アーッ……!! ヘアァ……!!』

 

 ……蹲り、男性にとって割とガチで生命に関わるデリケートなトコロを押さえ、バッタンバッタンと悶絶する。

「…………うっ」

 大家が、目を背けた。

 

『 『 『 『 …………………… 』 』 』 』

 

 ……雑魚騎士にも、伝播したのだろう。

男性にとって割とガチで生命に関わるデリケートなトコロを、ガードしながら、後ずさった。

……哀れな第一号は、動かなくなっていた。

「む、むごいことを……!」

 自分のことを棚に上げてまで、アイの行為に慄く。

 じりじりと後ずさる雑魚騎士達に、アイは傲然と言い放つ。

 

「……おまえたちのも、潰してやろうかー、なの!」

 

『も』!?

「潰れ……っ!?」

 ヴィータも、理解したのだろう。敵であるはずの雑魚騎士に、深い哀れみの視線を向けた。

「…………」「…………」

 大家とヴィータは顔を見合わせ、こくんっ、と同時に頷いた。

「安心せい、お主ら…………ワシがこの手で、引導を渡してくれる……!!」

「ああ、そんな真似される前に、アタシがキッチリ沈めてやるからな……!!」

『 『 『 …………!!!! 』 』 』(ぶんぶんぶんぶんっ!!) 

 

 いやいやそれはおかしい……と、ぶんぶん頭を振りながら下がる。

 

「…………プチトマト」

 

『 『 『 …………!!? 』 』 』

 

 ……極めて不吉な単語を呟くアイの声に、ビクッ! と停止する。

 

前門の虎。後門の狼。

 

 ……おかしい。自分たちは、狩る側ではなかったのか。

 雑魚騎士たちは、知らず知らずの間に、立場を逆転されていた。

 

――叩き潰されるか……蹴り潰されるか。

 

 今、究極の二択が提示されていた。

 

 

『…………!! アアアアアッ!!』

 

 

 ……突貫する雑魚騎士。その兜の奥で、何かがキラリと光っていた。

 

 

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