魔法少女リリカルなのはties 作:ハルハルharuharu
そこは、地球支部とよく似た建物だった。
グレアムさんの用意したポータルから飛び、ベッドで泥のように眠った後、ここに向かうように指示を受けた。
「……」
地球支部と違うところは……まず、微妙に荒れている。
壁には意味不明なペイントがあったり、何故か鋭利な切り傷があったりと……昔、仕事で解体した、アホのたまり場と化していた廃ビルに近い雰囲気を持っていた。
事前の説明によると、どうやらここは、グレアムさんの直轄部隊専用の宿舎らしいが…………どんな直轄部隊だ。
――ザ、ザザザ……
少し歩くと、僅かな雑音が聞こえてきた。
――ザザザ……ザザ……
開放された一角……多分、サロンのようなスペースに、足を踏み入れる。
中身が飛び出し、あちこちに散乱したソファ。その、唯一正立したソファに、人の後頭部が覗いていた。やや煤けた、ウェーブした金髪が、ソファの背もたれから垂れ下がっていた。
やれやれ……やっと人に会えたよ。
――ザザザザ…………
雑音の正体は……時空管理局という組織とはかなり縁が無さそうな、古臭いブラウン管のテレビだった。
どうやら、ソファに腰掛けたその人影は、テレビを見たまま眠ってしまったらしい。寝落ちというやつだ。
とりあえず、テレビを消して……っと。
――ザザ…… プチッ。
テレビを消して、振り返る。
「………………………………」
――目が合った。
「…………………………………………………………」
その、存外に整った顔立ちの、オーバーサイズのセーターを着た女性は、今しがた目が覚めたようには見えなくて……
「…………あ、ども」
何だ、起きてたのかよ……
「……ん?」
と、その奇妙な食い違いに気が付いた。
この女性は、今の今まで起きていた。でも、テレビは砂嵐で点きっぱなしだった。
…………ずうっと、俺が来る前から、砂嵐を眺め続けていたのだろうか。
「……………………」
女性は俺を、じっと凝視している。もしかして、テレビを勝手に消されたことに抗議している……?
「あの、すみません…………勝手に消してしまって」
とりあえず、他人の娯楽を邪魔してしまったことには謝らねば。
「すぐ点けますんで、」
「あなた」
……と、じっと人形のように静まっていた女性が、俺の話を遮って発言した。
「綺麗な目をしているのね」
…………目?
「とても綺麗な目をしているのね」
……二回も褒められた。
「あ、どうも……」
「とても綺麗…………真珠のような強膜。薄茶色の虹彩。漆黒の瞳孔。 …………余分な充血一つ無く、それでいて、健康的な活力に満ちている」
「……この部隊の人ですか? 俺……自分は、」
「ああ、綺麗な目…………」
…………何か、おかしくないか、この人。
さっきから、俺を見ているようで、全く見ていない。見ているのは、ただ一点…………俺の、眼球にだけ。
「綺麗………………………… だ か ら 」
その、セーターの余った袖の下で…………何かを、握った。
「くりぬいて、保存しなきゃ……!」
――ぞわああああああっ………………!!
凄まじい悪寒が、背中を、全身を駆け抜ける!
「う、お……!!」
銀光が閃くのと同時、経験値からのカンで一歩後退!
――シュッ!!
「ぐっ!」
…………下瞼に、熱のような痛みが生まれた。
そして、ドロッ……とした感触。血だ。
女が手にした刃物…………所々が錆びたメスが、俺の真新しい血を滴らせていた。
幸いにも、下瞼。目に入ることは殆ど無いだろうけど…………この女、躊躇い無く眼球を抉りに来やがった。
「…………保存、しなきゃ……美しいモノは、保存、しなきゃ……」
…………ヤバい、こいつ。完全にキマッてやがる。
「ああ、いいなぁ…………アーデも、その目が欲しかったなぁ……」
(き……きもちわるっ……!!)
今までの敵とは、あまりにも毛色が違いすぎる。
「…………ちょうだい」
――ヒュオンッ!!
メスが閃く。
見慣れてしまえば、単純な攻撃だ。
「アーデに、その目をちょうだいっ!!」
何度でも、避けられ……
――バチッ!!
「!?」
……今度は前触れ無く、痛みが発生した。
また、下瞼。しかもそこは……さっき切られ、ついさっき治癒した箇所。
触れていないのに、切れた……? というか…………傷が、開いた?
「はぁ、はぁ……!! 綺麗な目……! アーデの、新しいおめめ……!!」
アーデ……というらしい女は、不気味な吐息を漏らしながら、興奮に上気した顔で、俺の目を執拗に狙い続ける。
間合いを取ることを止めて……アーデを誘い込む。
「あはっ……アーデに、目をくれるのねえええええええええええええッ!?」
瞬時に肉薄するアーデ。
速い。速度だけで言えば、フェイトにだって匹敵するだろう。
けど、そんな直線だけの移動……破って下さいと言っている様な物だ!
「ンなわけねぇだろッ!!」
――――ドフッ!!
インパクトを織り込んだ双掌打を、胸部に叩き込む!!
「くぁハッ……!!」
『く』の字に折れ曲がり、吹っ飛ぶアーデ。
決まった……と、思った時だった。
「…………ちょうだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
アーデは壁を蹴り、天井を蹴り……三次元的な軌道を描き、再び襲い掛かってきた!
「……!」
バインドを仕掛けようとするが、アーデのほうが速い!
――ガシッ!!
「……っぐ!?」
アーデは、俺の腕をするりと回避し……首筋に、思いっきり抱きついてきた!
「くっ……やめろっ!!」
――ドドドドドンッ!!
バレットを生成し、至近距離から、アーデにブチ込む!
「お、あ……う……!! 目、目……!!」
だが、アーデはまるでダメージを感じさせない動きで、メスを振るう!
「ちょうだい、目をちょうだい……!!」
――ぞぶっ!!
「うああッ!」
……肘を、真一文字に切られる。靭帯を切られたのか、意思とは関係なしに垂れ下がる右腕。治癒するだろうが……!
「離れろおおおおおおおおおおっ!!」
――ガゴンッ!!
無事な左腕を振り抜き……アーデの即頭部を、思いっきりブン殴る!
こうなったら、女だろうと手加減無用だ。やらなきゃ、ヤられる。
「あああああ…………! やっぱり綺麗……!」
……が、脳震盪くらいは起こしていそうなアーデは、ぐるぐると気持ち悪く目を回しながらも、俺の頭をがっちりとホールドし、放そうともしない。
――――べろォッ……!!
「うわっ!!?」
いきなり右目に入り込んだ、粘り気を帯びた感触。左目に映るのは、どアップのアーデの顔。きめの細かい肌が、視界を埋め尽くしていた。
「綺麗……かわいい……おいしそう……!!」
べろっつ、べろっ……と、何度も粘液のようなものが、右目を撫で付ける。
……舌だ。
こいつ……俺の眼球を、飴玉みたいなノリで舐めてやがる……!!
瞼を閉じても、舌が強引にそれを割り、眼球を愛撫する。
「き……気持ち悪い真似……!」
嫌悪感がマックスに達し……俺は、とにかくこの変質者を撃退することにした。
ぐいいっ……と、思いっきり背を反らし……!
「してんじゃねええええええええええええええええええッ!!」
――ゴォンッ!!
渾身の、ヘッドバット!
「……! あ、」
脳震盪に止めを加え…………アーデは、ぐるんと白目を剥いて気絶した。
どさっ……と、汚い床に落ちるアーデ。
「……どうなってんだ、ここの治安は……!!」
こんな変質者が、隔離部屋から脱走しているなんて……! とにかく、局員見つけて、牢にブチ込んでやらないと、新たな犠牲者が出てしまうかもしれない。
俺は、アーデの身体をワイヤーでガッチガチに縛り上げ、メスを取り上げ、その場を走り去った。
……角を曲がった先から、制服を着た二人の少女が並んで歩いてきた。
無表情ながらもそっくりな顔をしているし、双子だろう。腰までありそうなお揃いロングヘアで、片方は右目を、片方を左目を隠している。……さらに付け加えるならば、片方は右腕、もう片方は左腕の制服の袖を、肩から引きちぎっていた。肩から先が完全に露出し、生々しい肌が曝け出されていた。
「おい、君ら……! ここの局員か!? さっきあっちに、」
とんでもない変態が……と、言おうとした時。
無表情だった二人に、変化が起きた。
「あぁ……」「うぅ……」
片方の口唇が、にいィ……とつり上がり、もう片方の口唇が、くしゃっ、と歪む。そして。
「あぁはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」
「うぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!!!!!!」
……爆笑と号泣が、響き渡った。
「……、……、お、おい……?」
やばい……マジで一瞬、思考が停止していた。
「あぁははははは!はは、あはははははは……!!! 楽しいなぁ! 愉しいなあああああああああああああ!!」
「うえええええん……えええええええええん……!! 悲しいよぅ! 哀しいよおおおおおおおおおおおお!!」
――――じゃきっ、じゃきっ!
双子は……それぞれ両手に、無骨な鉄塊を握った。
「……!!」
さー……っと、血の気が引いていくのが、実感できた。
双子が構えたのは、型式こそ見たことが無い部類だが、明らかに…………
「!!」
物理防御を加えたプロテクションを展開!
――――バラララララララララララララララララララララララララララララッッ!!!
「あああああああああああああああああああああああっ!!?」
しかも、フルオート拳銃!?
無数の弾丸が衝突し、潰れ、逸れ……あたりはあっという間に、弾痕だらけの戦場と化した。
(弾切れを待てば……!)
だが、その期待は砕かれることになる。
――がちんっ。
片方の弾倉が底をつき、撃鉄が止まる。その瞬間……
「あはははは! クライア! いくよおおおおおお!!」「うええええん! ラーファ! わかったああ!!」
泣き笑う双子姉妹…………ラーファと、クライア。
クライアの弾がバラ撒かれている間に、ラーファが次の弾倉をセットする。
――バラララララララララララララララララララララッッ!!
ラーファが尽きればクライアが。クライアが尽きればラーファが……と、全く途切れること無く、鉛弾が吐き出され続ける。
……! これじゃ、いつまでも弾切れなんて起きない! 作戦変更!!
――ガシャコンッ!
再びの、弾倉交換。この一瞬だけは、弾幕が薄くなる!
「……リアクティブ・アーマー!!」
プロテクションを、炸裂させる!!
――ッバゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
「っくあああああ……!! 効くぅ……!!」
防壁を張ったにも関わらず、耳がキーン……と、痛みを発した。
スタングレネードにも匹敵する、リアクティブ・アーマー。しかも今回は、ヴィータ直伝・スターレンゲホイルも流用してある。殺傷力は低いが、閉所での制圧戦にはぴったりだ。
「あは……あははは……うるさいなぁ……」「うう……うえぇん……うるさいよぉ……」
その凄まじい轟音は、細身の少女たちを確かに打ち据えていた。
耳から血を流してふらつき、互いに正面からぶつかり……抱き合った。
「た……楽しい、なぁ……」「か……哀しい、なぁ……」
双子は、そのままコテン、と倒れた。
「……ど、どうなってる……! はあはあ……!」
さっきの変態といい、今度の変な双子といい、本当にここ、グレアムさんの直轄部隊の隊舎か……?
「ぜー、はー……」
連戦で上がった息を整える傍ら、双子をワイヤーでくくり付けようとしたのだが……銃弾を受け止め続けた手がまだ痛み、なかなかうまくいかない。
「ねーねー、今の音なぁにー? うるさくて目ぇ覚め……………………」
…………今の銃撃戦でボコボコになった、簡素な木のドアを開けて出てきたのは、俺と同年代くらいの、黒髪の少女だった。
デニム生地のホットパンツに、薄っぺらいタンクトップだけという、いかにもな部屋着で、今まで読んでいたらしい文庫本を手に、俺と目を合わせた。
「…………………………なにしてんのー?」
その少女は、きょとん、とした調子で聞いてきた。
よかった……この子は、比較的マトモそうだ。少なくとも、初対面で殺しに来たりはしない。
「ああ、こいつらいきなり襲ってきたから……あああぁぁぁ!!?」
――スコンッ!!!
頬を掠めて……壁に、紙切れが突き刺さった!
「お前もか……!!」
目の前の少女は、文庫本からページを破り取り、強化して投擲してきた。
首を、真一文字に切り裂くような軌道で!!
「んー……よくわかんないけどー……知らない人だから、殺すね?」
――バリィッ……!!
少女は、文庫本の装丁を破壊して、百枚前後の紙を宙に舞わせた。その紙が、意思でもあるかのように動き、うねり……!
「そーれ! れっつ・えくすきゅーしょん!」
断頭台のように、鋭い刃の群れが殺到した!
――バチンッ!!
プロテクションで防御! ……突き刺さりはするものの、破るには至らないようだ。
「あらら……防がれちゃってるよ」
殺到する紙の刃の向こうで、暢気な声が聞こえる。
……アーデ。ラーファ。クライア。そして、この少女。
攻撃手段はまちまちでも、共通しているのは…………不意を突いた攻撃。奇襲。
そんなやつらが集まってるってことは……この部隊の正体は……!
「……暗殺部隊か!!」
「それだと50点かなー」
――ガスッ、ガスッ、ガスッ!!
三連続で……プロテクションを、三角形に切り取るように、刃が突き刺さる。
「!」
その描かれた三角形から、頭を反らすのと同時……
――パキイイイイインッ!!!
脆くなった箇所を…………紙で形成した刃が、貫き通した!
「ちィッ……!」
リアクティブアーマー発動まで、あと少しだったって言うのに……!
「まぁ、暗殺もするけどー……」
――ビュインッ!!
魔力刃を展開し、紙の刀と鍔迫り合う!
「真正面からだって、強いんだからー♪」
――ヒュ……カンッ!!
壁に突き刺さっていた紙が、再び魔力を纏い……背後から強襲する。
「……インパクトぉッ!!」
――ドパアァンッ!!
襲ってきた刃と、漂っていた紙を、纏めて細切れに消し飛ばす。
――ギィンッ!!
間合いから弾かれた少女は、まるで重量を感じさせない動きで、ふわりと着地する。
「おー、強い強いー。ラーファとクライアじゃ、歯が立たないわけだー」
「そいつは、どうも……!」
――左手を腰に、右手を頭の高さに……構える。
こうなったら……一撃で仕留めてやる。
「……へぇー。なんか、突っ込んだらタダじゃ済まなさそうー」
ニコニコと笑い……紙の刀を、だらりと下げた。
「んふふ。でも、その構え……自分からは攻撃できないでしょー?」
……こいつ。
初見の癖に、カウンター技だと看破しやがった。
「よーいしょっとー」
少女は、紙の刀を放り出し……その場に座り込んだ。壁に背を預け、両足を投げ出し……完全に、リラックスしている。
「……おい、何してんだ」
「んー……休憩?」
紙の刀を解体し、再び文庫本の状態にまで戻し……ぺら、とページをめくり始めた。
……戦闘意欲、消失……? いや、油断はできない。
こいつらは……くしゃみでもするようなノリで、命を狙ってくるんだ。
……寛ぐ少女と、構える俺。
そんな状態のまま、時間が過ぎていく。
「なーにしてるんだい、お前たちは」
「!?」
いきなり背後から聞こえた声に、構えを解除してしまう。
ばっ、と振り返った先にいたのは、ボサボサの茶髪を膝あたりまで伸ばした、異様な風体の女性だった。
その身を包むのは管理局の制服ではなく、薄汚れた、野武士のような和装。
「あ、オウル姉さん。おかえりー」
少女がパッと飛び起き、オウルと呼ばれた野武士の女に抱きついた。
……進路上にいた俺を、丸っきり無視するような形で。
「……オウル、おかえりなさい……よいしょ、よいしょ……」
……俺に縛られた格好のまま、尺取虫のような動きでアーデがやってきた。
「わお、アーデルハイド。斬新なファッションじゃないの」
ぎゅむっ、とその背を踏みつけ、地面に押し付ける。
「あはははは! オウルお姉ちゃんだああああ!!」「うえええん! オウルお姉ちゃんだああああ!」
手を繋いで、ラーファとクライアもやってくる。
「おーう、双子。今日も極端に感情豊かだねぇ」
二人を、ひょいっと小脇に抱え、くるくると回る。。
「………………何なんだ、お前ら」
……馬鹿馬鹿しくなって、構えを解いた。
「なんなんだ、って……そりゃ、ウチの台詞じゃないの?」
「…………そういや、そうだな」
今更だけど、俺はこの部隊と合流するんだから。
「……吾妻秀人だ。グレアムさんの依頼で、この部隊に協力することになった」
ぽかーんとしていたオウルは、ぽん、と手を打つ。
「…………はーい、はいはいはい……そうだそうだ、すっかり忘れてた。ついでに、こいつらに説明するのも忘れてた」
おい。
「わるいわるい。あっははは」
……なんて胡散臭い連中だ。
――ぐうぅ……
……と、オウルの腹から、品の無い虫が鳴った。
「はら減ったなぁ。んじゃ、メシ喰いながら説明すっから、食堂に行こう」
……ぞろぞろと連れ立って歩くオウル達の後を追い、食堂へ。
「…………………………」
……汚い。その一言に尽きる。
流し台らしき場所には、恐ろしいことにカビが生えた食器や食べ残しがうず高く積み上げられ、入りきらない分は床に直接捨てられ、適当に端っこに寄せられている。
冷蔵庫らしき箱は大口を開け、食べ物なんだかよくわからない、ビニールのパッケージがはみ出している。
テーブルは真っ二つに割れて転がっていて、とても使える気がしない。
「ひとり二つまでなー」
オウルは、冷蔵庫らしき物品から、先ほどのパッケージを三つ取り出し、うち一つを俺に放った。
どこに座るのかと悩んでいたら、オウルは薄汚れた床に、躊躇い無く腰を下ろし、胡坐をかいた。
……郷に入り手は郷に従え、という言葉があることだし、俺もそれに倣う。
いただきます……などとは誰も言わず、好き勝手に食べ始めてしまった。
アーデは尺取虫のまま、口でビニール包装を破き、犬のように中身にがっついている。
……解いてやろうとも思ったが、やめた。さっきから、チラチラと俺を……というか、俺の眼球を見ては、舌なめずりをしている。
その、きもちわるい視線を可能な限り無視しながら、俺もその『食事』…………汁気のあるカ○リーメイト的なソレを、口に入れる。旨くは無いが、不味くも無い。
「そういえば、どこを狙われたんだい?」
行儀悪く、口の中で咀嚼しながら、オウルが聞く。
「…………眼球」
「へーえ」
……さらっとスルーされた。
……味気ない食事を終え、一息。
「それじゃあ、自己紹介といこうか」
……やっとか。
「ひさしぶりだなぁ、自己紹介するなんて……今までの奴ら、ここに来る前に死んじゃったしー……」
「……!!」
……あまりにも自然に放たれた言葉に、身体がこわばる。
「うふ、うふふふふ……でも、美しい肉体の素材が、たくさん収集できたわ……」
アーデが、ゴロゴロと転がり、俺の膝元にまでやってこようとした。
「……」
――げしっ。ゴロゴロ……
「あらー……」
蹴り転がして、遠ざける。
「あーははは。ウサギ狩りは楽しかったよー」「うえええん。でも、すぐに壊れちゃってつまらなかったの」
ラーファとクライアが、笑顔と泣き顔で言う。
「はじめまして。ウチはオウル。苗字は無くて、ただのオウル」
――キンッ。
鋭い金属音と共に、アーデを縛っていたワイヤーが、纏めて切断される。
「こいつの名は、アーデルハイド・アーバイン」
がっちりと首筋を捕獲され、襲い掛かっては来ない。
「んで、階級は三等……あれ、二等だっけ? ……まぁ、とにかくそのくらいの陸尉だ」
「…………うふふふふ。綺麗な眼球……絶対に貰うわ」
「やるかボケ」
「ちょっと気が振れてるけど、見てくれは抜群だ」
……『ちょっと』なんてレベル、軽く超越している気がする。
「そっちの双子は、ラーファと、クライア。笑ってるのが姉で、泣いてるのが妹だ。階級は二人とも陸曹」
「あはははは。また後で遊ぼうねーお兄ちゃん」
「うえええん。でも、さっきの耳がキーンってするのはいやぁよ、お兄ちゃん」
「誰がお兄ちゃんだ」
「見ていて飽きない、愉快な奴らだよ」
……というか、オウルの中では、この双子は気が振れてないって認識なのか?
「そんで、残りのそいつは……」
食事を終えたそいつは、文庫本から顔を上げて……自ら、名乗った。
「――カレン・フッケバイン」
……そうか、カレンっていうのか。
「かなり将来有望な、ウチの秘蔵っ子さ」
……確かに。年齢からすれば、まだまだ伸びシロがあると想像できる。
「というわけで、以上5人」
……異常に少ないのは、少数精鋭であるということと、多分……入っても、すぐに消えていく所為。
「…………いつまでの付き合いになるかは知らないけど……」
そしてオウルは、両腕を広げ……告げた。
「時空管理局・特殊案件処理専門・独立権限保有…………『凶鳥部隊』は、君を歓迎する」