魔法少女リリカルなのはties 作:ハルハルharuharu
俺たちが降り立ったのは、どこか薄暗い、砂漠のような世界だった。
さくさくと、青白い砂を踏みしめながら、凶鳥部隊の6人が歩を進める。
「…………」
オウルたちは、無言だ。ミーティングも何も必要ない。なぜならば……任務の内容はあらかじめ、隊舎の壁のパネルに全てを明示されていたのだから。
それによると、目標は闇の書…………ではなく、その影響を受けた『何か』。詳細は、現地まで出撃し、確認。可能であれば、サンプルを採取しておく……と、至極シンプルだ。
「…………」
このへんは、さすがはプロの…………うん、まぁ、なんというか……特殊部隊だ。
「……」
皆が皆、ただ無言で……周囲を警戒しながら……
「なぁ、秀人」
…………警戒、しながら。
「ただ歩いてるだけじゃつまんないから、何か喋れ」
……ただ、歩いているだけだった。
「何かって何だよ……」
それを耳ざとく聞きつけたのは、アーデだった。
「うふふふふ…………それじゃあ、自己紹介でもしてもらいましょうか? 私たちのことは、オウルが勝手に紹介したけど……あなたのことは、何も知らないもの」
(おお、変態にしてはまっとうなことを……)
「すっごく不本意な感想を抱かれている気がするわぁ………………えいっ」
アーデがそう言って、メスに力を注いだ途端……
――ぶしゅっ
「――ッ! また……!」
初日にアーデに切られた下瞼の傷が、また開いて……真新しい血を垂れ流した。
「うふふふふ……ちなみに、私の得意な魔法は、呪術よ……?」
邪悪な魔法……呪い。なるほど、それなら、この不可解な現象も多少は納得できる。
なんて嫌らしい攻撃しやがる……
――ザバァッ!!
……瞬時に魔力を手に集め、砂を掻き分けて飛び上がってきた敵に、インパクトを叩き込む。
『……』
ざしゃっ……と、砂地に叩きつけられる。あーびっくりした。
「……」
倒れこんだそいつは…………雑魚騎士に非常に良く似た、傀儡兵だった。
外見は、雑魚騎士そのもので……中身は、がらんどうの空洞。どうやら、本来に操られている端末のようだ。
とりあえず、空洞の中に残っていた魔力をサーチして……
――ガラガラガラッ!!
と、触れようとした瞬間、鎧がひとりでに動き回り……
――ガシィンッ!!
元通りにくっついた。
「ふんっ!!」
――ガコンッ!! ……ガシィンッ!
今度は、物理で殴ってみたが……結果は同じ。鎧は凹んだが、まったく問題無さそうに動いている。
そのものは、割と弱いが……このしつこさは厄介だ。集団で来られたら、際限なく数が膨れ上がってしまう。
こいつは縛って転がしておいて、さっさと本体見つけて叩くか……と、思っていた時だった。
「あはははは! お兄ちゃんってば、へったくそだなー!」
ラーファが、いつの間にやら手にして……いや、担いでいた、巨大な火器を傀儡兵に向ける。
「ラーファが、お手本見せてあげる!」
その指が、何の躊躇いも無くトリガーへ……!
――バガアアアァァンッ!!!
至近距離で、火を噴いた!
「ぐえ……!」
二歩、三歩と後退して、顔を庇っていた腕をどける。
……目の前には、ひどく抉られた砂の大地が。
「あはははは! きれいさっぱりだー!!」
ぽいっ、と撃ち終えた火器を捨てた。
「いい、お兄ちゃん? こーいう敵は、跡形も無く吹っ飛ばしちゃえばいいんだよ!」
「馬鹿! ンなこと分かってるっつーの!」
「ほぇ……? じゃ、何でやらないの?」
こういった、『集団で来られたら厄介』な手合いは、大抵の場合……!
――ザザザザザザザザザザザザッッ!
たいていの場合、集団で徒党を組んで襲ってくる!
だから、撃破しないで縛り上げておくのが一番だったっていうのに……!
チッ……全方位を囲まれた。飛行魔法で飛んでも、これだけ囲まれていては即座に撃ち落とされてしまう。ウイングロードを使えば、逃げられなくも無いけど、まぁ、抗戦かな……
「なぁんだ、ガラクタか……」
カレンが、不満そうに唇を尖らせた。
「ヒトを殺したかったなぁ…………」
……目当ての菓子が売り切れていた……程度のノリで、そんなことを言った。
「まーったくだ。あーつまらん」
「うふふふふ……スカリエッティじゃあるまいし……無機物を使うなんて、ナンセンスだわぁ……自立兵器は、100パーセント有機物じゃあないと」
「あははははは! つっまんなーい!」
「うええええん! つまらないよぉ!」
やる気無く、ブックホルダーをぷらぷら揺らしながら言ったカレンに、凶鳥部隊の連中が同意する。
「まーあ、でも…………」
オウルが手を一振りして……何か、恐らくは詠唱を唱える。
「降りかかる火の粉は払わないと、な」
そして……最後のトリガーボイスだけは、確かに聞き取れた。
「――――錬鉄召喚」
……と。
次の瞬間、オウルの目の前に、魔方陣が展開される。あふれ出る魔力光は、赤銅色。形状は…………ベルカ式!?
――ゴズンッ……!!
凄まじい重量感を伴う音と共に、巨大な鉄塊が現れた。
本当に、ただの鉄塊だ。荒削りの長方形で、一部分だけが、僅かに細くなっているだけ。刃がついているわけでもなく……言ってしまえば、それは棍棒だった。
「よーいしょっと」
ずっ……と、特に重そうな表情も見せず、オウルは棍棒を持ち上げる。
「……ん? どうした秀人」
じろじろ見ていたせいか、オウルが怪訝そうに聞いてきた。
「いや……お前、ベルカ式使えるんだなー、って……」
聞いた話だと、協会……教会だっけ? そこが技術を独占している……って言ってたのに。
「ははは。まぁ、コレっきゃできないけどな」
「……」
器用なんだか、不器用なんだか。
「オウル姉さーん、そろそろ仕掛けてくるっぽいよー」
カレンが剣を鞘から抜き、気の抜けた調子で言った。
「いえーっす!」「や、やっちゃおう……?」
お揃いのゴツい拳銃……のようなものを取り出し、両手に構える双子。
「アーデ、お前は?」
呪術が、無機物に効くのだろうか。
「うふふふふ…………心配してくれるのかしら? まぁ最低限、自分の身は守れるから気にしなくとも大丈夫よぉ……」
よーし。機械相手なら、何の遠慮もいらないな。
――ガシャガシャガシャガシャ……!!
傀儡兵が、包囲を一気に狭めてきた!
まずは、広域インパクトで一気に牽制して……
「……ヌゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!」
…………カレン達が地べたに這いずるように伏せたのと同時……オウルが凄まじい怒号を吐き出し…………
――――俺は、尻に発生した巨大な痛みと共に、上空へ打ち上げられていた。
「………………」
いてぇ。ケツが超いてぇ…………
妙に覚めた感覚の中……オウルが、鉄塊をバットのように振りぬいた姿勢でいるのが見えて……カレンとラーファが、俺を指差して爆笑していた。
――めしゃっ。
「…………」
無様に顔面から着地し、砂を食う。
――がしゃがしゃがしゃ……
顔を上げれば、そこは…………敵陣真っ只中!
「………………うおおおおおおおおおおおお!! オウルてめえええええええええええええええッ!!」
……俺は、全力でインパクトを発動した。
◆ ◆ ◆ ◆
私は、海鳴市の街角で、待ち人を待っていた。
…………あれから、二週間が経った。
何が……と言うと、秀人さんが家出をして、二週間が経った……ということだ。
「……」
夏休みの時とは違い、今回は……秀人さん自身の意思での失踪だ。
無事であることは間違い無いんだろうけど…………変な人たちに捕まってなければいいなぁ。
「うー……ねぇレイジングハート、こっそり探しに行っちゃおうよ」
もう心配で心配で、あちこち探し回って……ちょっとやりすぎて、謹慎を食らってしまった。
『駄目ですよ。さすがに、マスターの魔力量とはいえ、連戦の疲れが蓄積しています。秀人を探すことも大事ですが、まず、マスターのコンディションを整えなくては』
「ちぇっ…………」
『それに……彼女との待ち合わせの最中です。すっぽかしては、失礼になります。マスターから誘ったのですから』
「それはそうだけど……もう時間過ぎてるし……」
レイジングハートの時刻表示が、待ち合わせの時間を10分ほど過ぎている。
まぁ、もうちょっとだけ待ってあげるかなぁ、と思っていたら……
「な、なのはさぁーん……」
へろへろと、走ってきた。
「すみませぇん……はぁはぁ……通りを一本、間違えてしまいましたぁ……!」
へこへこと頭を下げるのは、暖かそうなセーターを着た女性。服装の違いはあれど、見知った顔だった。
「遅いよ……フィアット」