魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第五十七話

 

「だめだよ、フィアット。約束の時間は守らなくちゃ。五分前行動、十分前行動は基本だよ?」

「は、はい……すみませんでした、なのはさん」

「まぁ、仕方ないか。初めてでしょ? この町は」

「はい……」

「今日は私が案内してあげるから、楽しんでね」

「はいっ!」

 私の行動が原因で、フィアットにはずいぶんと頭を下げさせた……と、リンディさんから聞いた。まさか、余所にまで迷惑が掛かっているとは考えもしなかったから、うかつだった。

 その件と、制服に穴を開けてしまったことのお詫びに、休日のお出かけを提案してみたら、案外あっさり承諾した。

 管理局、かなり人手不足で、有給なんてそうそう取れるものじゃないとは聞いていたけど……どうやら、アースラのスタッフが手を回してくれたらしい。

 

「なのはさん、なのはさん。私、一度で良いからタコヤキっていうの、食べてみたかったんです!」

 フィアットも、久々のオフが楽しいのかな。

「ん? フィアット、セーター、ちょっとほつれてるけど大丈夫?」

 よく手入れされていて、汚れてはいないんだけど……どこか、くたびれている。

「あ、あはは……成人のお祝いに、おかあさんが編んでくれたんです」

 おお、手編み。しかも、成人のお祝いって……

「フィアットのお母さんって、どんな人?」

 制服に穴が空いて、怒られるとか嘆いてたけど……

「とっても厳しくて、とっても優しい人です」

 さらっと口にした。にこにこと笑いながら、自慢げに。

「おかあさんも、管理局員なんです」

 ああ、だから厳しいのか。

「わたしと違って、武装隊で分隊指揮官をしている、ばりばりの肉体派なんです! かっこいいんですよー!? がーんっ、て。どかーんっ、て!」

 シャドーボクシングのようなジェスチャーも交えて、はしゃいでいる。

「わたしは、見ての通りもやしっ子だったので、武装隊は落ちてしまいましたが…………せめて、前線にいるおかあさんを、おかあさんみたいな人たちをお手伝いしたくて、オペレーターになったんです」

 へえぇ……武装隊には落ちた…………え?

「フィアット、武装隊志望だったの!?」

 こんなほっそい身体で! 弱気な性格で!

「そんなに驚かなくてもいいじゃないですかぁ……もう」

 赤面して、照れ笑いしている。

「わたしの家は、おとうさんがいなかったので……おかあさんは、おとうさんでもあったんです」

 子供は、親の背を見て育つって言うし……わかる気がする。

「残念なことに、おかあさんと同じ部隊には配属されたことはありませんけど……いつか、そのときのために、今はスキルを身につけるんです!」

 むんっ、とガッツポーズを取った。

「職場が同じだと、いいこともあるんですよ? わたしとおかあさんは背丈がほぼ同じなので、制服はお下がりで着れますし、陸士隊の制服や、佐官の制服をこっそり着ちゃったりもできるんです!」

 ああ、だから怒られるのか。

 そりゃ、貸してやった制服に穴ぼこ空いていたら怒る。

「ごめんね、フィアット……」

 知らず知らずのうちに、フィアットの母親にまで迷惑をかけていた。

「あはは、いっぱい怒られちゃいましたよー?」

 悪戯っぽく言うけど……はぁ。

「あ、名前まだ聞いてなかったね」

 プロフィールだけは聞いてたけど、すっかり忘れてた。

「あー……そうでした。つい、『おかあさん』で通しちゃいましたね……」

 そして、フィアットは……誇らしげに、母親の名を言った。

「ルカ・コルデーロ、です」

 ルカさん……ね。覚えた。

 

「……あ、あった」

 そのまま、目的地に向けて歩いている最中……たこ焼きの屋台が出ていた。

「ちょっとここで待っててね」

「? はいですー」

 きょとん、とその屋台を見ている。ああ、そっか。日本語が読めないんだ。

 

「お待たせー」

 二つで600円。割高な気もするけど、フィアットが食べたいって言ってたし……たまには、いいよね。

 丁度焼いているところだったから、焼きたての熱々。パックに入れているのに、ホクホクと湯気が出ていて、この寒空には有難い。

 さて、食べるか……と、フィアットに待っていてもらっていた場所に戻ったのだが……

「…………いないし」

 ここで待ってて、って言ったのになぁ。

『フィアット……フィアット?』

 念話で呼び出すこと数秒。

『あ、なのはさん! 今、そこのレストランに入ってます! すっごくいいお話があるんですよ! なのはさんも来てください!』

 やたらテンション高くそれだけを言い、切れてしまった。

 そこのレストラン……というと、曲がり角のファミレスか。

 

 からんころん……と、ベルを鳴らし、店内に入る。

 お昼時を少し外れているからなのか、人はまばらだった。

「いらっしゃいま……せ……?」

 店員が、怪訝な顔をした。いくらなんでも、小学生が一人で入る店じゃないもんね。

「すみません、待ち合わせです」

 さっき入った、フィアットと思しき客のテーブルを聞き、そこへ歩いていく。

『マスター、あそこです』

「うん、いたね…………」

 喫煙席の薄暗いブース、更に奥まったところに、フィアットはいた。

「……ええ、そういうことです。この基本無料のメンバーズクラブの会員になれば、全商品が常時90パーセントオフでご購入いただけるのです」

「わぁ……すごいですねぇ」

 壁際に座るフィアットの前には…………優しげな風貌の、眼鏡を掛けたスーツの男性が座っていた。

「そう、オトクなのです……そのため、このメンバーズクラブの会員数は限られておりまして、今回は特別に……そう、特別に、お誘いしたと考えてもらって差し支えありません」

 テーブルの上には、何枚もの資料が広げられている。

『マスター。あれは、かなりの確立で……』

「うん……やっぱりそうだよね」

 

 …………典型的な、キャッチセールスだった。

 

「フィアット」

 夢中で資料を読みふけっていたフィアットが、ぱっと顔を上げる。

「なのはさんっ、この人が、とてもオトクなお話を……」

 はぁ。ミッドチルダにも、キャッチセールスくらいあるだろうに……

「出るよ」

 手を掴み、無理やり立たせる。

「なのはさん……?」

「おっと、待ちなぁ……嬢ちゃん」

 がたんっ……と、ほかの席に座っていた連中までもが、私たちを取り囲む。

 スーツの男は、こいつらのまとめ役か。

「別に、悪い話じゃあ無いだろう? タダで会員になれて、商品は9割引だぜ……?」

「ど、どういうことでしょうか……? なぜ、いかついお兄さんたちに囲まれているのでしょうか……?」

 フィアット、少しは疑いなよ。

「最初に会員に『なる』、契約料はタダ……で、会員維持費とかいう名目で、毎月お金取るんだよ」

「えぇっ!? そうなんですか!?」

「それで、退会する時には、契約への違約金として、またお金を取る…………そうでしょ?」

 スーツの男は、張り付いたような笑みから一変……忌々しげに、舌打ちをした。

「ちっ……お嬢ちゃん、テレビの見過ぎは良くないぜぇ…………なぁに、手荒な真似はしないさ。ちょっとばかし、契約書にサインをしてもらうだけ…………」

 

「――――――お断りします」

 

 抜き身の回天を、鼻先に突きつける。

「おいおい、お嬢ちゃん、オモチャ振り回したらいけねぇよ」

 オモチャだって? ふうん……

「……」いいかな?

『いいのではないでしょうか』

 よーし、レイジングハートのお墨付きもゲット。

 コーヒーカップの取っ手に刃を引っ掛け、宙に放り……回天を、振る!

 

――カンッ!!

 

 空中で両断されたコーヒーカップが、中身を撒き散らし……うさんくさい契約書と、資料の紙を茶色く染め上げた。

「…………」

 スーツの男は、口をぱくぱくさせて黙り込んだ。

「オモチャじゃありません。それと…………」

 もう一度、眉間に突きつける。

 

「次は、脅しでは済みません」

 

 フィアットの手を引いて、店の出口まで一直線。

 背後から、いきりたつような怒気が迫っている。

「歩かない方がいいよ」

 警告してあげたのに、止まる気配は無い。あーあ……

 

――ビターン!!

 

 ……という音が、連続した。

「ぬがッ……!?」「うおっ!!」「ぐへっ……!」

 全員が全員、足元にズボンが絡みついている。

 

――カチンッ。

 

 左手の桜花を、鞘に収める。

 回天でコーヒーカップを切り、注意をそちらに向けて、その隙に桜花で全員のベルトを切断しておいた。

「それじゃ、ばいばーい」

 

 

「すみませんでした! 本当に、すみませんでした!」

 さっきのやり取りの意味を教えてあげたら、平謝りだった。

「いや、いいっていいって。こういうこともあるよ」

 ベンチに座り、少し冷めてしまったたこ焼きを一パック渡した。

「わぁ……いただきますっ」

 爪楊枝で悪戦苦闘しながら、一個を丸ごと口に運ぶ。

「…………あつっ!!」

 そうなるよねー。

「半分に割って、冷ましながら食べればいいと思うよ」

「最初に言ってくださいよー……べろ、火傷するかと思ったじゃないですかぁ」

 愚痴を言いながら、二つ目をちまちま食べる。

「で、美味しい?」

「はいっ! すごく美味しいです!」

 そのままの勢いで、完食してしまった。

「はー、なんか、喉渇いちゃったね」

 意外と塩味が強かった。

「そうですねー……でも、美味しかったです。あ、空の容器、捨ててきますね」

 二枚のプラスチックケースをビニール袋に入れ、ゴミ箱がある場所に歩いていった。

「…………」

『マスター…………向こうで、何者かと接触した模様です』

 なんか、デジャブを感じる展開だ。心配だから、見に行こうっと。

 

「これはまずい。あなたは、近年まれに見る凶星の下に生まれてきています!」

「え、えええっ!? そうなんですか!?」

 

 フィアット…………駄目だこりゃ。

「ええ! ですが、心配することはありません! この、スーパー魔よけのお札(150000円)を部屋に張り、ウルトラ清めの塩(150000円)を盛り付ければ、あなたには絶対の幸運が訪れることでしょう! 今なら、合わせて300000円のところを、200000円で!」

「買います!」

「買うなっ!」

 

――スパァンッ!!

 

 怪しげなローブを纏った中年女の話に、目をキラキラさせていたフィアットの頭に、チョップを叩き込む。

「いたいっ! ……あ、なのはさん」

「『あ、なのはさん』……じゃ、なぁいっ!!」

「あのですね、お札とお塩があれば、幸せになれるって、この親切な人が……」

『マスター、もしや彼女は……』

「…………うん、言わないでおこうね。一応、年上だから……」

 

――ああ、この子は駄目な子なんだ…………

 

「ええ、そうですよ! さぁ、さぁ……!」

 中年女は、ぐいぐいとお札と塩の入った容器を押し付けてくる。

「うっさい!」

 

――パカァンッ!!

 

「オゥフ……!」

 回天の鞘で峰打ちして、昏倒させる。

 フィアットは……うん、決めた。もう目を離さないように、がっつり監視しておこう。

「……じゃ、行こうか? 今日は、ずっと一緒に過ごそうね?」

「あれ、なんか、なのはさんが優しい……でも何だろう、ちょっと哀しい……」

 腕を組み、牽引する。

「ま、待つのです……! このままでは、あなたに災厄が降りかかりますよぉ……!」

 うわ、生き返った!

 そのまま、フィアットの腕にしがみつき、怪しげな脅しを掛けていて、非常に迷惑だ。

「あ、あの……お気持ちは嬉しいのですが、あいにく、持ち合わせが足りませんので……」

 冷静になってみれば、30万円なんて大金、所持しているわけが無い。

「ローンがあります……! さあ、あそこのキャッシングマシーン『無限くん』に……!」

 ぐいっ、と、反対側の腕を、中年女が掴んだ拍子に……

 

――ばりっ。

 

「…………………………」

 ほつれていたセーターの袖が、千切れた。

 繊維が千切れ、セーターがただの毛糸の塊になるまで、まるでスローモーションのように、私と、フィアットの目には映っていた。

「あ」

「さぁ、さぁ……!」

 中年女は、未だにしつこくフィアットを引きずろうとする。

「いい加減に……!」

 そろそろ、我慢の限界だ。その胡散臭い装束、細切れにして……!

 

「うえええぇえええええええん…………!!!」

 

 ……その泣き声に、一気に頭を冷却された。

「セーターが……おかあさんがくれた、セーターがああああぁ……!!」

 大の大人が、場も憚らず泣く光景が異様に見えるのか……通り過ぎるだけだった人たちが、立ち止まってじろじろ見てきた。

 押し売りの女は、しつこくフィアットを勧誘する。

(……ぶっ殺す)

 ああ、イラつくを通り過ぎて…………ぶちのめしたくなってきた。っていうか、ぶちのめそう。決めた。この場でぼっこぼこにして、素顔が判別できないレベルにまで……!

 

「そこまでよっ!!」

 

 芝居がかった声が、回天桜花に伸びかけた私の手を止める。

「腕を引いての客引き行為は、条例違反だよっ! そして何より……泣いている子に、何やっとんじゃあっ!!」

 一言一言ごとに、身に着けたアクセサリーが、じゃらじゃらとけたたましく鳴る。

「……奈々、さん?」

 あの、アクセサリーショップの店長、田上奈々さんだった。

「あなたには関係ないことよっ! さぁ、この魔よけの」

 

「ライ○ーキィック!!」「ぶげらっ……!!」

 

 ……蹴った。思いっきり助走をつけて、真正面から顎を蹴り上げた。

あれ……出番無くなっちゃった。

 

「ふっ……正義は」「何をしとるかああああああああああああっ!!」「勝……ぅおわああああああっ! ポリスメェンッ!!」

 

 誰かが呼んだのか、警察官が駆けつけてきた。

「ヘイ、逃げるぞサムライガール!!」

「へ? えええええええっ!?」

 奈々さんは、フィアットを背負って……何故か、私の手を引いてダッシュした!

 

 裏道へ逃げ込み、非常用梯子をよじ登り、ビルからビルへジャンプし、フェンスを飛び越え…………どこの特殊部隊だと言いたくなるようなアクションを繰り広げて、ようやく、奈々さんのお店までやってきた。

 かちゃん……と、裏口の扉が閉まった。

「いやー、災難だったね」

「……奈々さん、言いたくないけど、とばっちりです」

 正直、あの場で逃げ出す必要は殆ど無かったと思う。

「え? あはは……疲れちった?」

 ……そりゃ、肉体的にも、精神的にも。

 というか、なぜ奈々さんは平然としているのだろう。フィアットという人一人を背負っての逃走劇だったというのに。

「なはは。おまわりさんから逃げるのは、よくあることだし……あれくらいは出来ないと、女一人で流しの旅なんて出来ないわけさ」

 どんだけレベル高い旅ですか……

 

「……っと、そろそろ重いな。下ろすよ」

 フィアットをソファに座らせた。

「………………」

 フィアットは、さっきからずっと動かない。

「……どしたの、この子」

「ええ、実は……」

 ……説明を聞き終えた奈々さんは、ぽんっ、と手を打った。

「よし、奈々ちゃんに任せなさい」

 任せるって、直してくれるのだろうか。でも、フィアットはがっちりと握りこんでいて、手放しそうも無い。

 と、奈々さんは、ポケットからマッチを取り出して、しゅぼっ、と火を点けた。

「…………」

 それを、フィアットの前に翳して、ゆらゆら、ゆらゆら、と揺らす。

「…………ほいっ」

 シュッ……と火が消えるのと同時、フィアットが、コテン、と倒れた。

「よーし、成功」

……今の、ナニ?

『魔力反応は、一切無かったのですが……』

 だよ、ねぇ……?

「企業秘密♪」

詳しく聞く前に、セーターの残骸を持って、工作部屋と思しき個室に入っていった。

 

「はい、お待たせ」

 意外と早く出てきた。

 ばさっ、と、テーブルの上に広げられたセーターは……ほぼ完全に、修繕されていた。

「わ……すごい! 元通りだ!」

「サービスで、色々やっておいたよ」

 よし、フィアットを起こそう。

 揺り動かすと……少しして、むくっと起き上がった。

「…………わ、私の……!!」

 寝ぼけ眼できょろきょろして……セーターが目に入った瞬間、それに飛びついた。

「直ってる……?」

 不思議がるフィアット。

「奈々さんが直してくれたんだよ」

「いえーい」

 Vサインで遊ぶ奈々さんに、フィアットはがばっと頭を下げた。

「あ……ありがとうございます! ありがとうございますっ!! なんとお礼をしたらいいか……」

 何はともあれ。

「よかったね、フィアット」

「はいっ!」

 ごしごしと目元に残った涙を拭う。

「あの、お代は……?」

 財布を取り出し、おずおずと聞いた。

「んー……それは、いいんだけどさ……」

 が、奈々さんははっきりしない。そして、「ちょっと待ってて」と言い残し、工作部屋から、何かを持ってきた。

「……ねぇ、君。これ、握ってみ?」

 差し出されたのは、製作途中の、銀細工の原型のようなものだった。

 長方形の、きわめて薄い…………栞?

「え? ……はい」

 フィアットが、その栞を握る。ぜんぜん全く、力を込めているようには見えなかったというのに……

 

――――ぱきんっ。

 

 ……真っ二つに、割れた。

「あ……すみませんっ!!」

 おろおろと、二つに割れた栞を手に慌てる。

「いや……なんとなく、こうなるような気がしてたんだ」

 割れた栞を、『失敗作』というラベルの書かれたゴミ箱に放る。

 そして、ころっと態度を変え、またおちゃらけた奈々さんに戻った。

「ま、せっかくだから、ほとぼりが冷めるまでウチにいなよ」

 表通り、おまわりさんがいるから……と、空恐ろしいことを言った。

 

 そのまま、お茶をご馳走になったり、何故か店内の模様替えを手伝ったりしているうちに、夕方……帰る時間になってしまった。

「それじゃ……そろそろ、帰ります」

 帰り際、奈々さんに呼び止められた。

「あ、そうだ、なのはちゃん」

「はい?」

 

「吾妻くんに、『仕上がったから取りに来て』……って、伝えておいてくれるかな?」

「……………………ええ、まぁ、了解しました」

 ただ今絶賛家出中です……とは言えず、お茶を濁した。

「それと……フィアットちゃん」

「はい?」

 きょとん、と首を傾げるフィアットに、奈々さんは……どこか、苦い表情で、言った。

 

「……『忘れる』っていうのも、幸せの一つだよ」

 

 ……? どういうこと?

「………………………………………………」

 それを聞いたフィアットは……気弱な笑みのまま、硬直した。

「……………………それじゃ、お世話になりました!」

 …………まるで、聞いたという事実を認識していないかのように、不自然に快活な挨拶をして、店を出た。

 

「それじゃ、なのはさん。わたしはこの辺りで」

 転送ポートが開くらしい場所の前で、フィアットにお別れをする。

「うん、今日はありがとうね」

 なかなか、楽しくて有意義な一日だった。

「とんでもない! わたしのほうこそ、とても楽しかったです! では、またアースラで!」

 フィアットは、意気揚々と帰って行った。

 

「…………ふう」

 見送ってから、携帯電話の電源を入れる。

「…………着信、14件」

 …………全部、先生からだった。

 

――平日にサボるなんて、久しぶりだった。

 

 

 

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