魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第六十四話

 

 ――ドゴオオオオオオオオオオッ…………!!!!

 

「んっ……!!」

 スレスレを通過していく砲撃に息を呑みながら、距離を詰めていく。

「おらぁっ!!」

 

――ガギイイイイイィンッ!!

 

魔剣が防御を削り取る。

が、それはやはり、微々たるもの。開いた穴は即座に修復され、また堅牢な防御が構築される。

「ふんっ……!!」

 

――キュゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 アクセルシューターのような誘導弾を、ブラッディダガーで迎撃する。そしてまた、焔の魔剣で斬りつけるのだが……

 

――ガキンッ!!

 

「チッ……!」

 破ろうと思えば、破れるのだろうが……そのためには、虎の子のカートリッジを消耗しなくてはならない。防御を破るのはあくまで、本体にダメージを与えるための過程であって、主目的ではない。

 やはり、リーゼを呼びつけるか……とも考えたはやてだったが、すぐに頭を振った。

「この程度……タイマンで凌げないんじゃ、その程度ってことだ!」

 リーゼと……秀人との修行。その成果が試されている。

「自分の下僕風情に勝てないんじゃ……秀人(アイツ)になんて、一生勝てないッ!!」

『鉄槌』の敵討ち。そして……秀人への雪辱戦。それらの前には、この程度の些事、自力で対処できなければならないのだ。

『…………』

 守護騎士は、杖の先端を、地面に向けて……

 

――ゴゥッ!!

 

 砲撃が、拡散した。

 守護騎士を中心にした円状に、炎を伴った波濤が押し寄せる。

「……!!」

 はやてのバリアジャケットは、運動性を重視した軽装。広範囲攻撃で、一点へのダメージは少ないとはいえ……直撃はマズい。

「スレイプニル……!!」

 

――バサッ……!!

 

 一対の闇の翼。それが、大きく、大きくたわんで……

「……りゃあぁッ!!」

 

――バオオオオオオオオオオオオォッッッッ!!!

 

 凄まじい突風を巻き起こし、熱波を跳ね返した。

『……!』

 まさか、跳ね返されるとは想定していなかったのか……僅かに驚愕したような気配を見せ、まともに直撃を食らった。

「なるほど……こういう使い方もアリなのか」

 翼を畳み、気配を探る。

「大方、オートマチックな反射で発動するように設定して、処理能力を節約してんだろうな……」

 防御が自動化できたのなら、攻撃だけに専念できる。

「……いやー、それにしても本当にこんなことが出来るとは」

 スレイプニル。かつては、飛行魔法の発動補助として使っていて、自力での飛行が出来るようになってからは、殆ど使わなかった。

 だが、改めて闇の書の記述を読み返してみると、この魔法だけはやけに難解な部分があり……その一部を運用してみた結果、魔法を反射させることが出来た。

 

――ガゴッ……!!

 

 立ち上がり……横転していた自動車を、苛立ち紛れに殴りつける守護騎士。

「はン……なんだよ、感情あるんじゃねぇか」

 はやては、焔の魔剣を構え……

「おらああああああああああああああああっ!!」

 加速。

 

――パキッ!! パキイイイイインッ!!

 

 進路上にセットされたバインドを切り崩し、本丸へ。だが、このままではこれまでと変わらない。ただ、自動防御に阻まれてしまうだけだ。

「1、2の…………3っ!」

 

――ビュオンッ!!

 

 はやては……主兵装である、焔の魔剣をブン投げた!!

『……!』

 

――ヴンッ!

 

 自動防御が発動してしまう。守護騎士は、なんとか立て直そうと、まだ間合いにいるはやてに砲撃を発射する。

 

――ジュウゥッ……!!

 

 はやてはそれを、限界まで引き付けてから、頭を反らして回避。

頬を焼いた代償に……はやては、守護騎士の懐に飛び込んだ!

 剣を振るうには近すぎる。攻撃魔法を発動するには遅すぎる。ならば……!!

「……っく、ぁああああああああああああああああ!」

 

――ゴシャァッ!!

 

守護騎士の兜に、はやての拳がめり込んだ!

 

 ……リーゼとの特訓で得た、限界での見切り。そして、秀人との組み手で学んだ、超至近距離での格闘。その二つを、見事に披露してみせた。

「……発見、二つ目だ。その防御は……純然だる物理攻撃に対しては、防御力を発揮できない!」

 魔力で編んだ焔の魔剣は阻まれたが……生身の拳は、届いた。

 

『…………』

 べっこりと凹んだ兜から、アイガードが落ち……青く、戦意に輝く瞳が覗いた。

 

――ガキンッ、ガキンッ!!

 

 ……カートリッジを二発、ロード。魔剣、鉄槌に備わっているのだから、守護騎士である目の前の者が保有していても、おかしくはない。

 魔力を吸収した敵の杖は……鋭角的な、槍のような形状へ変形を果たした。

「ふぅん……?」

『鉄槌』の得物と同じく、攻撃力も爆発的に増大していることだろう。

「まさか、『さっきまでは本気じゃなかった』……とでも、言う気?」

 拳を構え……ファイティングポーズを取る。

「ま、いいケド…………」

 武装を強化して尚、警戒に身を固める守護騎士。

『……』

 先ほどの一打がよほど強烈だったのか……一片の気配さえも見逃すまいと、魔力察知の探査魔法を何重にも張っていた。

 

「ほらよっ」

 

 それだけに……警戒をいとも簡単にすり抜け、唐突に目の前に現れたはやてには、

対処が間に合わなかった。

『!? ……っ!』

 慌てて、炎を纏った拳を突き出す守護騎士。だが……

 

――ガゴッ!!

 

 クロスカウンターが、先ほどとは反対側の頬に直撃した。

 そして、守護騎士が反撃に移る時には既に、射程の外へ退避してしまう。

(さっすがジジイの直伝……)

 大家直伝の……喧嘩殺法。

そのうちの一つが、これ……縮地。摺り足からの、『初動を察知されない』歩法である。

 だが、これを使うには、一切の魔力を使わず、意識を集中しなければならないので……いつでも使えるというわけではない。

 大家から似たような技法を習得している秀人や、百戦錬磨のクロノであれば、ロクに効果は無いだろう。

(……広範囲への拡散攻撃に対してのみ、魔法防御。それ以外は、体捌きと、肉弾戦で対処)

 ……それが、この守護騎士へ対抗する手段。

「……」

 

――ゴバァアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 再び、広範囲への拡散砲撃。

「ははっ……今度はノーモーションか!!」

 威力も段違いだ。だが……

「おらぁあああああああああああああっ!!」

 

――バオオオオオオオオオオオオッッ!!

 

 跳ね返すことは出来なくとも……軌道を逸らし、無力化することはできる。

 即座にスレイプニルを収納し……再び、縮地。

 

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 事前に発動されていた誘導弾の雨が降り注ぐ。縮地を使っている今、魔法防御は出来ない。

「っ……いてッ……!」

 はやては……ヒットしそうな弾だけを見据え、バリアジャケットで受け流した。

再び、間合い。狙うのは、水月。いかに守護騎士とはいえ、人体を模している以上、弱点もまた同様の筈。

勝利を確信したのだが……

 

――――ズンッ……!!

 

 渾身の一打は、受け止められてしまった。

「……!」

 なのはを模した守護騎士。彼女を守るように……新たな守護騎士が、現れていた。

「テメェらもか……………………『剣』、『盾』」

『…………』

 増援に、二体の守護騎士。これで、三対一。さすがに少々、分が悪い。

 

――ザ、ザザザザザザザザザザザザザザッ……!!

 

 辺りの空気が、ざわついた。これは……

『ア、アアアアア……』『ウウウウウ……』『ア、ア…… 』『グ、ウ……』

 雑魚騎士たちも、現れた。

「チッ……もう、なりふり構わないってこと? あーあ……」

なのはを模した守護騎士へ目を向ける。

 

「失望したよ。お前は、騎士失格だ」

 

 それが、彼女の本意だったのかどうかはともかく……真剣勝負に割り込みが入るなど、騎士の名折れだ。

『……!!』

 それは、彼女にしてみても同様だったのか……屈辱に震えている。

 

(とはいえ……さすがに、ちょっとまずいか?)

 雑魚騎士は、単体や群体として見れば、戦力は微々たる物。だが……あの泥騎士のように、雑魚騎士を吸収・パワーアップしてしまうとなれば、敵は残機を用意しているのと同じだ。長引けば長引くほど、不利になる。

『リーゼ、聞こえてるか?』

『…………はい、わが主』

 はやては、その声が不自然に緊張していることを察した。

『今、どんな状況だ』

 仕方がないから、リーゼを使うことにしたらしい。が。

 

『…………現在、敵性因子と交戦』

 どうやら、足止めを食らっているらしい。

『即刻、こちらを片付けて主のもとへ参ります』

『おう。ヘマこくんじゃねぇぞ』

 念話を切った。

……リーゼが来ないとなったなら。

「やるっきゃないか……!」

まずは、スペアパーツである雑魚騎士を駆逐した後、守護騎士を潰す。厳しいどころの話ではなくなった。泣き言を言いそうになる自分を叱咤し、魔剣を握る。

 そして、にらみ合いが崩れ……互いに戦闘を開始しようとする………………………………………………………………………………直前。

 

 

「まてええええええええええええええええぇい!!」

 

 

 …………素っ頓狂な声が出鼻を挫き、はやてと雑魚騎士はずっこけた。

「……、こ、この声は、」『……?』

 仰ぎ見る空。

 とあるビルのテラスの縁に、ふんぞり返る人物がいた。

 やたら服の裾が風にはためき、不敵な笑みを演出していた。

「ボク、さんじょ…………へ、へっくしっ!!」

 ……11月の寒空の中、風に吹かれていればこうなる。

「さ、さむい…………もういちまい、なんかきてくればよかった……ずずっ」

 まさかの私服だった。

「だからやめようって言ったじゃないか!」

「えーだって、こっちのがカッコイイ……」

「い・い・か・ら! 早くバリアジャケット着な! 風邪ひくよ!?」

「はぁい……」

 

「アホ金髪……それに、その使い魔……?」

 確か、レジアスに連行されて行った筈。

「アホってゆーな!! ……とうっ」

 飛び降り、はやての隣に着地する。

「何しに来た?」「たすけにきた!」「いらね。帰れアホ」

 予定調和のように、ぽんぽんと軽口が出てきた。

「なんだよそれー!」

「うっさい。私はあのバカどもを叩きのめすんだから邪魔すんな」

「あのバカ……って、こいつ?」

 くいっ、と指差された先……

「そうそう、そいつ……」

 

――守護騎士が、剣を振りかぶっていた。

 

「……って、うおおおお!?」「ぎゃー!?」

 

――ジャキンッ!!

 

 スレスレで回避したはやての頭上を、『剣』の一撃が凪いだ。

「チッ……特撮みたいに、待っててくれるわけじゃないか」

 そんな表現が出てくるあたり、はやても大概、秀人たちに毒されている。

「とにかく! ヤガミは、なのはモドキとたたかいたいんだろ!? だったらそのあいだ、ボクたちがザコのあいてしてやるよ!」

「だから、いらんと言っている……」

 辟易してそう言うはやてに、フェイトは、必死な感じで言った。

 

「なにもしないでかえったら、レジアスのおっちゃんにおこられるんだよっ!!」

 

 怒られるのが怖い…………そんな子供っぽい理由で、助けに来たらしい。

「それに、ひでともかえってくるからねっ!」

「……な、なにっ!?」

 これには仰天した。慌てて、アルフに目で確認を取る。

「……本当だよ。いま、クロノとユーノが向かってる」

「ま、マジでか………………って、高町は?」

 誰よりも先に駆けつけたいだろうに…………

 その疑問には、フェイトが答えた。

 

「なのは、このまえアースラであばれたから、こっちに配置されるんだってさ」

 

 …………リンディによる、生殺しである。

「ヴィータとアイは、リーゼのおうえん!」

 どんな敵かは不明だが、その三人で手こずることは、きっと無い。

これで、物量は押し返せることが確定した。

「そういうわけだから、かってにやらせてもらう! アルフ、いくよっ!!」

「じゃ、アタシはあの青いのを」

「ボクはむらさきのヤツ!! ……こんどはかつ!」

 以前、はやての傘下にいた『剣』と戦闘した際には、闇の書が一時封印されたため、お預けになってしまっていた。

「そんじゃ、けいきづけのぉ……!!」

 

――バチッ、バチバチバチッ…………!!

 

 魔力光が輝き…………空の曇天に、雷雲が発生していく。雷雲は、ゴロゴロと不吉な鳴動を始め……そして。

『 Thunder Fall 』

「サンダー…………! フォーーーーーーーーーーーーーール!!」

 

――ッバゴオォォオオオオオオオオオオオオオオオォォォオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

 新生したバルディッシュの処理能力もあるのだろうが……やはり、フェイトの魔法の感性は図抜けている。

 

落雷は閃光を伴いながら……雑魚騎士たちに降り注いだ!

『ギャアアアアアアアア……!!』『ガアアアアアッ……!!』

「あっはっは!! てつはでんきをよくとおすね!!」

 物量で押す雑魚騎士と、マップ攻撃で『面』を制圧できるフェイト。相性的には、

最悪だった。

『……!』

 雷撃に耐え、『剣』と『盾』が突撃する。

「はあああああああああああああっ!!」

「っしゃあああああああああああっ!!」

 

――ガギイイイイインッ!!!

 

 フェイト達が参戦した中……

「…………」

『…………』

 守護騎士とはやては、再び一対一の状況に戻っていた。

「……どうする、仕切りなおすか?」

『…………。』

 守護騎士は、こくん、と頷いた。

 

 向こうの戦闘区域と離れた、別の通りにやってくる。

 拳を握るはやて。杖を構える守護騎士。

 

――ゴゴンッ…………ズンッ……

 

 戦闘音が、遠くに聞こえる。

「なぁ、お前」

はやては、守護騎士に対話を試みた。

「私の…………知り合いに、秀人ってやつがいる」

『……?』

 聞いている。そう判断し、話し続ける。

「そいつの魔法は、闇の書の呪縛を焼き滅ぼすことができるんだ」

『…………』

 黙りこみ……いや。微かだが、確かに逡巡している。

「だから、お前」

 ふっ……と、優しい笑みを見せて、言った。

 

「――私が勝ったら、下僕になれ」

 

 ……と。

「前にもね、いたんだ。守護騎士のくせに、妙に感情っぽくて……面白いやつ」

『鉄槌』こと、ヴィータのことであろう。

「ああ、間違いの無いように言っておくけど……代わりにしようってわけじゃない。ほんと単純に、お前のことが気に入ったんだ」

『…………』

 

――ジャキッ……

 

 守護騎士は、黙って杖を構える。

 交渉決裂か……と、はやてが嘆息する。

 そして、次の瞬間に起きたことは……全くの、予想外だった。

 槍の先端を、自動防御を司っていた兜に押し当て…………

 

――――パキィンッ!!

 

 粉々に、破壊した。

 ばらばらと欠片が落ち、現れたのは…………

 

――――――高町なのはと、同じ顔だった。

 

『…………いいでしょう。わたしを打倒し得たのであれば、あなたを我が王として認めます』

 

 

 なのはと同じ声質で、やや感情薄く…………はっきりと、喋った。

「…………」

 喋れないと決め付けていただけに、ぽかん、と口を開け唖然とする。

 

『守護騎士が一体……『殲滅者《デストラクター》』、参ります』

 

「!!」

 

 ……主従を掛けた戦闘が、始まった。

 

 

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