魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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A's編 第六十八話

 

 いきなり俺のバイクで守護騎士を跳ね飛ばして現れたクロノとユーノ。

「……状況は、理解した」

 クロノは重々しく頷き、バイクを降りた。

「僕が指揮を執る」

 作戦行動の経験は、俺よりクロノのほうが圧倒的に経験豊富だ。俺が戦闘の片手間に指示を飛ばすより、よっぽど効果的であることは間違いない。

「まず、僕と秀人で、彼女……カレン・フッケバインを拘束する。ユーノは、負傷者の治療と、防御結界を」

「了解!」

 ユーノを、アーデの張った結界にまで運び、降ろす。

「はぁ、はぁ、……だれ……?」

 アーデは、かなり消耗している様子で……オウルを、抱きかかえていた。治療魔法の光は弱く、今にも消えてしまいそうだ。

「秀人の仲間だよ。……替わろう」

 ユーノ、そいつらは頼んだ。

 

「おっしゃ行くぞ! 振り落とされるなよ!?」「聞かれるまでも無い!」

 後ろにクロノを乗せ、守護騎士のところまで一気に加速!

 荒れた路面を駆け、跳ね上がる感覚。ノーヘルのまま駆け抜ける風の感触。そして……タンデムシートにかかる、人一人分の重量!

「ははっ…………やっぱ、こうでないと始まんねぇよな!!」

 戦場では定番の、クロノとのタッグだ!

「おらああああああああああああああああああっ!!」

 ジャックナイフからの……後輪パンチ!!

 

――ガゴォッ!!!

 

 守護騎士は、その衝撃を腕二本で受け流し……残る二本、槍と鉄塊で、反撃してきた。

「!」

 

――バチイイイイイッ!!

 

 だがそれは、青白い魔力刃と、バインドに阻まれる。

 四本腕。守護騎士四人分。一対四では、分が悪いが…………二対四なら、余裕で対処できる。

――ボンッ!!

 

 カレンの足元を爆破し、体勢を崩す。……普段だったら、絶対に引っかからない。

 やっぱり、このまま戦闘に参加させておくのは危険だ。

「クロノ、今だ!!」「ああ!」

 

――ギャリリリリリリリリッ!!!!

 

 チェーンバインドが、幾重にもカレンの体を拘束する。

「うああああああああああああああっ!!」

 それを馬鹿力で引きちぎるカレン。が……

 

――バチィンッ!!

 

「!?」

 チェーンバインドの破壊をトリガーにして発生させられたリングバインドが。

 

――ガキンッ!!

 

リングバインドの破壊をトリガーにしたホールディングネットが。雁字搦めに、カレンの動きを制限する。

 

「うああああああああああ!! 畜生、馬鹿にすんなああああああああああ!!!!」

 

 とうとう、癇癪を起こしてしまった。 

「……お前、あれ何重に掛けた?」

 あそこまでねちっこい拘束、初めて見た。

「26だ。事前に自動発動をセットしておいたから、さほど魔力も喰わん」

事前に……?

「おいちょっと待て。じゃあアレ、ほんとは誰に使うつもりだったんだ!?」

「………………もしもの備えだ」

 俺かよ!?

 

『グゥウオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 守護騎士が、手にした鉄塊を投擲した!

「「!!」」

 

――ギャギャギャッ……!!

 

 フルブレーキを掛け、回避。

「武器を、捨てた……?」

 クロノが訝しがる。俺も、それが不可解だった。必殺の一撃でもあるまいに……わざわざ、得物を使い捨てることなんて………………

「……しまった!」

 そうだ……あそこには、オウルが乱射しまくった武器が散らばっている!

「待ちやがれっ!! ……クロノ、撃ち落とせ!!」

 

――――ガガガガガガガッ!!

 

疾走する守護騎士を背後から追い立てる。

『グ、ガ……! ガアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 だが、追走虚しく……野獣のような雄叫びを上げ、守護騎士が、新たな得物を手にした。

「転回!」「了解!」

 今度は逆に、俺たちが追い立てられる番だった。

 守護騎士は、手頃なサイズの鉄塊を次々に投擲してきた。

「アイツをあの陣から引き離さないことには始まらんぞ!!」「ああ、このままじゃ俺たち、ダーツの的だ!」

 

――ドゴオオオオンッ!!

 

「ぐわー!!」

 いきなり後輪を掬われ、派手に滑った。

「チィッ……! 秀人、アレは使えないのか!?」

 アレって………リンカーコア結合?

いや、できるならとっくに使ってるって!

「何でか分からんけど、使えねーんだよ!」

 蒼炎も出せないし……いや、なんつーか、使い方を思い出せないっつーか……

「そういえば、レジアス少将が……」

 なにやら、考え込むクロノ。そして、何を思ったか……

 

――――ガンッ、ゴンッ、ガンッ!!

 

「ぎゃ、あだっ、ぎゃー!!」

 三回、S2Uで俺の後頭部を殴打しやがった!!

「何すんじゃボケェ!!」

「君の体内に残っている、忘却剤の毒素を除去する!」

 レジアスのオッサンめ! いらんこと教えてんじゃねぇ!!

「…………なるほど、この程度ではダメージにならないか。いっそ、エクスキューションシフトを口の中にブチ込むか……?」

 頼むから手段と目的を摩り替えないでくれ!

「……ふむ。逆転の発想もありだな」

 

――ビキィイイイイイイイインッ!!

 

 俺の両手が、バインドで拘束され、抗議するより先にクロノがハンドルを握り……何を思ったか、守護騎士の陣に向かって、逆走を始めた!

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 咆哮を上げ……鉄塊を投擲する守護騎士。

「おいクロノ! 冗談は止せ!! おい!! おいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」

「攻撃を喰らいたくない? 逆に考えるんだ。

 

――――喰らっちゃってもいいさ、と考えるんだ!」

 

 鉄塊が、ぐんぐん近づいてくる!

 

「いけっ……『秀人バリヤー』!」

 

 クロノは俺を、射線上に放り投げた!

 

「ぎゃああああああああああああーーーー……………………!!!!!!!!」

 

――――めきょっ。

 

 ………………俺は、木の葉のように舞った。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「………………普通に死ぬわあああああああああああああああああああっ!!」

 キレて立ち上がる秀人。

 だが、そのダメージから回復するために、秀人の体は治癒し…………副産物として、僅かに沈殿していた毒素を、完全に消し去った。

 なにはともあれ……

「ふんっ!!」

 

――バシュッ!!

 

 魔力のラインが、秀人からクロノに伸びる。

「成功したようだな」

「おかげさまで!!」

 リンカーコアの接続も、問題なく成功した。

「クソッ……もう一生、煙草なんて吸わねーぞ…………!」

 飛来した鉄塊を、バイクで回避する。

「あの陣の鉄塊を破壊する!」

「おう!」

 秀人の、命中精度イマイチだが、威力はなのな並の砲撃。それを、クロノが補正し、コントロールすれば……

『オオオオオッ!!』

 また、10m級の鉄塊が投擲される。

 

――ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

「ディバインバスター…………!!」

 巨大な魔力スフィアが、秀人とクロノの前に生成される。

 その制御を、クロノが行い……

 

「……エクスキューションシフトッ!!!!」

 

――ズバババババババババババババッ!!

 

 幾重にも枝分かれし、敵陣に降り注ぐ!

『グ、オオオオオオオオオオオオオオオッ!!?』

 守護騎士は、懸命に迎撃を試みた。

 だが……腕が四本になり、多彩な技能を振るう守護騎士とはいえ……そのベースは、ベルカの騎士。その本質は、『近接・対人』。

自ら距離を開いてしまったことで……『遠距離・広範囲』を得意とするミッドチルダの魔法に、対抗する手段などそう多くは持ちえていなかった。

 

――バゴオオオオオオオオンッ!!!

 

 オウルが突き立てていった鉄塊の山は、粉々のスクラップとなり……得物になり得そうなサイズのものは、何一つ残らなかった。

『グ、グ……!!』

 守護騎士は、怒りに震えるような声を漏らし…………大剣と槍を、再び装備した。

 秀人は手に魔力刃を展開する。

「はぁっ!!」

 魔力刃を飛ばし、斬撃!

 

――バシィッ!!

 

 が、そこは守護騎士もさるもの。斬撃を完全に相殺し、槍の穂先から、鋭い射撃を撃ち、反撃してみせた。

 

――バキンッ!!

 

「くっ……!」

 ハンドルを握るクロノが、顔をしかめる。先ほどの射撃で、フロントホイールを撃ち抜かれてしまったらしい。タイヤどころか、ホイールの一端が砕け散っていた。

「降りるぞ!」

 雪崩式にホイールは砕け散り……ガリガリと、鼻先から地面に叩きつけられていく。

 スレイプニルを使用することも考えたが…………あの暴力的なまでの性能を、完全に御し切れているとは断言できない。

 あの時は、未熟な主が相手だったから不意を突けたが……この守護騎士相手には、通用しないだろう。せいぜい、すれ違いざまに切り伏せられて終わりだ。

 そうとなれば……正攻法しかない。

「だぁああああああああああああああっ!!」

 クロノの援護射撃をかいくぐりながら、守護騎士へ挑みかかっていく!

 

 

 

 

(…………)

 守護騎士と戦闘する秀人を、じっと見つめる目があった。

(……秀人、お前は…………)

 オウルだ。

 腹部に致命的な大穴を開けられて……今は、ユーノの治療を受けている。

 生命に関わるほどの怪我を負いながらも、オウルは、それに慌てるでもなく、秀人の戦いを観察していた。

(カレンを、止めたのか…………?)

 カレンの暴走癖は、オウルたちも重々承知していた。

 これまでは、いつもオウルが止めに入っていたのだが、今回はそのオウルが一番に倒れてしまった。アーデルハイドは言うに及ばず。ラーファ、クライアは…………本人たちが聞けば激怒するだろうが、とても暴走するカレンを止められる技量は持ち合わせていない。

 それだけ、カレンの戦闘能力は…………異端者の集まりである凶鳥部隊の中であっても、異質なまでに高いのだ。

 だが、その分その強さは諸刃の剣で……暴走すると、とたんに判断能力を忘れ、猪突猛進な特攻戦法に走ってしまう。

(…………だが、あれでは)

 あの乱入してきた執務官が施した拘束。確かに厄介だが、いつまでもカレンを拘束してはおけないだろう。

 

――ごそっ。

 

 と、オウルは、袂の下で、一振りの懐刀……刃渡り15センチほどの、小ぶりな刃物を握る。

(……ダメだ。まだ、使えない……)

 

――オウルの、切り札。そして、呪いの具現。

 

 コレを使用するにはまず…………自身の体が、満足に動かせることが必要だ。今、使おうとすれば……制御することができず、何も出来ずに死ぬことになるだろう。

(………………見られたく、無いなぁ……)

 使用した姿を知っているのは……アーデルハイドだけだ。双子にも、カレンにも、見せたことは無い。……オウル自身が、見せたくないと思っているからだ。

(そうも言ってられないか……)

 オウルは、ユーノの回復魔法の光に、再び身をゆだねた。

 

 

 

 

「うおおおおおおっ!」

『ガアアアアアアッ!』

 秀人と守護騎士の拳が、火花を散らす。

 他の得物を握る二本の腕は、クロノが拘束し、動きを鈍らせていた。

 ……クロノの援護により、『腕が四本』というアドバンテージは封じられ……ほんの僅かだが、秀人が押してきている。

 もちろん、守護騎士が弱いわけではない。

 一撃一撃は、確かに秀人に届いているし、際どいところを突いている。

 

――バキンッ!!

 

 また一撃、守護騎士の槍が秀人の防御を砕く。

「、だああああっ!!」

 

――ゴキンッ!

 

『ガフッ…………!』

 カウンターが、兜の頬当てを凹ませる。

 

――バチンッ!!

 

 クロノの魔力刃が、守護騎士の腕を一本、切りつけた。

『グガァッ!!』

 腱を斬られたのか……だらりと垂れ下がる。

『グ、グ………………』

 

 だが、不思議なことに……守護騎士は、不思議な高揚を感じていた。

 それが例え、束縛され、使役され、その身を異形に歪められているとしても……………………こうして、強敵と矛を交えられるのは、騎士としての誉れだ

 例え、ここで倒れようとも……悔いは無かった。

願わくば、ひと時でも長く、この強敵たちとの腕比べを………………

 

――そう、願っていた筈だった。

 

『何をしている』

 

 ……守護騎士の脳裏にのみ、響く声があった。

 聞き間違えようの無い、闇の書の読み手だ。

『何のために、わざわざ調整を加えてまで、貴様を使役したと思っている。アレを使え』

(イヤダ……ワタシハ……!)

 誇りだけは汚すまいと、拒否する守護騎士。

 だが、読み手はそんな事情など考慮はしない。

『……守護騎士システム、自動制御から、能動制御に切り替え』

(ヤ、ヤメロ……!!)

 バツンッ……と、守護騎士は、体の自由を失った。

「なんだ?」

「……魔力の流れが、変わった?」

 様子を伺う秀人とクロノ。

 そして……

 

『イ、ヤ、ダ………………』

 

「「!!」」

 はっきりと、発声した。

『ワタシハ……ホコリタカキ、ベルカノ……ベルカ、ノ、キシ…………オ、オオオオオオオオオオオオ…………!!』

「おい……どうした!?」

 秀人など、状況も忘れて声を掛けてしまう。

 頭を抱え、フェイスガードを掻き毟り…………苦悶に歪む声で、絶叫した。

 

 

『テラー・フィールドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

――ドロオオオオオオオオオオオオオオオオオッ………………!!

 

 ………………守護騎士の足元に、漆黒の波動が……染み出した。

 

 

 

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