魔法少女リリカルなのはties 作:ハルハルharuharu
いきなり俺のバイクで守護騎士を跳ね飛ばして現れたクロノとユーノ。
「……状況は、理解した」
クロノは重々しく頷き、バイクを降りた。
「僕が指揮を執る」
作戦行動の経験は、俺よりクロノのほうが圧倒的に経験豊富だ。俺が戦闘の片手間に指示を飛ばすより、よっぽど効果的であることは間違いない。
「まず、僕と秀人で、彼女……カレン・フッケバインを拘束する。ユーノは、負傷者の治療と、防御結界を」
「了解!」
ユーノを、アーデの張った結界にまで運び、降ろす。
「はぁ、はぁ、……だれ……?」
アーデは、かなり消耗している様子で……オウルを、抱きかかえていた。治療魔法の光は弱く、今にも消えてしまいそうだ。
「秀人の仲間だよ。……替わろう」
ユーノ、そいつらは頼んだ。
「おっしゃ行くぞ! 振り落とされるなよ!?」「聞かれるまでも無い!」
後ろにクロノを乗せ、守護騎士のところまで一気に加速!
荒れた路面を駆け、跳ね上がる感覚。ノーヘルのまま駆け抜ける風の感触。そして……タンデムシートにかかる、人一人分の重量!
「ははっ…………やっぱ、こうでないと始まんねぇよな!!」
戦場では定番の、クロノとのタッグだ!
「おらああああああああああああああああああっ!!」
ジャックナイフからの……後輪パンチ!!
――ガゴォッ!!!
守護騎士は、その衝撃を腕二本で受け流し……残る二本、槍と鉄塊で、反撃してきた。
「!」
――バチイイイイイッ!!
だがそれは、青白い魔力刃と、バインドに阻まれる。
四本腕。守護騎士四人分。一対四では、分が悪いが…………二対四なら、余裕で対処できる。
――ボンッ!!
カレンの足元を爆破し、体勢を崩す。……普段だったら、絶対に引っかからない。
やっぱり、このまま戦闘に参加させておくのは危険だ。
「クロノ、今だ!!」「ああ!」
――ギャリリリリリリリリッ!!!!
チェーンバインドが、幾重にもカレンの体を拘束する。
「うああああああああああああああっ!!」
それを馬鹿力で引きちぎるカレン。が……
――バチィンッ!!
「!?」
チェーンバインドの破壊をトリガーにして発生させられたリングバインドが。
――ガキンッ!!
リングバインドの破壊をトリガーにしたホールディングネットが。雁字搦めに、カレンの動きを制限する。
「うああああああああああ!! 畜生、馬鹿にすんなああああああああああ!!!!」
とうとう、癇癪を起こしてしまった。
「……お前、あれ何重に掛けた?」
あそこまでねちっこい拘束、初めて見た。
「26だ。事前に自動発動をセットしておいたから、さほど魔力も喰わん」
事前に……?
「おいちょっと待て。じゃあアレ、ほんとは誰に使うつもりだったんだ!?」
「………………もしもの備えだ」
俺かよ!?
『グゥウオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
守護騎士が、手にした鉄塊を投擲した!
「「!!」」
――ギャギャギャッ……!!
フルブレーキを掛け、回避。
「武器を、捨てた……?」
クロノが訝しがる。俺も、それが不可解だった。必殺の一撃でもあるまいに……わざわざ、得物を使い捨てることなんて………………
「……しまった!」
そうだ……あそこには、オウルが乱射しまくった武器が散らばっている!
「待ちやがれっ!! ……クロノ、撃ち落とせ!!」
――――ガガガガガガガッ!!
疾走する守護騎士を背後から追い立てる。
『グ、ガ……! ガアアアアアアアアアアアアアッ!!』
だが、追走虚しく……野獣のような雄叫びを上げ、守護騎士が、新たな得物を手にした。
「転回!」「了解!」
今度は逆に、俺たちが追い立てられる番だった。
守護騎士は、手頃なサイズの鉄塊を次々に投擲してきた。
「アイツをあの陣から引き離さないことには始まらんぞ!!」「ああ、このままじゃ俺たち、ダーツの的だ!」
――ドゴオオオオンッ!!
「ぐわー!!」
いきなり後輪を掬われ、派手に滑った。
「チィッ……! 秀人、アレは使えないのか!?」
アレって………リンカーコア結合?
いや、できるならとっくに使ってるって!
「何でか分からんけど、使えねーんだよ!」
蒼炎も出せないし……いや、なんつーか、使い方を思い出せないっつーか……
「そういえば、レジアス少将が……」
なにやら、考え込むクロノ。そして、何を思ったか……
――――ガンッ、ゴンッ、ガンッ!!
「ぎゃ、あだっ、ぎゃー!!」
三回、S2Uで俺の後頭部を殴打しやがった!!
「何すんじゃボケェ!!」
「君の体内に残っている、忘却剤の毒素を除去する!」
レジアスのオッサンめ! いらんこと教えてんじゃねぇ!!
「…………なるほど、この程度ではダメージにならないか。いっそ、エクスキューションシフトを口の中にブチ込むか……?」
頼むから手段と目的を摩り替えないでくれ!
「……ふむ。逆転の発想もありだな」
――ビキィイイイイイイイインッ!!
俺の両手が、バインドで拘束され、抗議するより先にクロノがハンドルを握り……何を思ったか、守護騎士の陣に向かって、逆走を始めた!
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
咆哮を上げ……鉄塊を投擲する守護騎士。
「おいクロノ! 冗談は止せ!! おい!! おいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
「攻撃を喰らいたくない? 逆に考えるんだ。
――――喰らっちゃってもいいさ、と考えるんだ!」
鉄塊が、ぐんぐん近づいてくる!
「いけっ……『秀人バリヤー』!」
クロノは俺を、射線上に放り投げた!
「ぎゃああああああああああああーーーー……………………!!!!!!!!」
――――めきょっ。
………………俺は、木の葉のように舞った。
◆ ◆ ◆ ◆
「………………普通に死ぬわあああああああああああああああああああっ!!」
キレて立ち上がる秀人。
だが、そのダメージから回復するために、秀人の体は治癒し…………副産物として、僅かに沈殿していた毒素を、完全に消し去った。
なにはともあれ……
「ふんっ!!」
――バシュッ!!
魔力のラインが、秀人からクロノに伸びる。
「成功したようだな」
「おかげさまで!!」
リンカーコアの接続も、問題なく成功した。
「クソッ……もう一生、煙草なんて吸わねーぞ…………!」
飛来した鉄塊を、バイクで回避する。
「あの陣の鉄塊を破壊する!」
「おう!」
秀人の、命中精度イマイチだが、威力はなのな並の砲撃。それを、クロノが補正し、コントロールすれば……
『オオオオオッ!!』
また、10m級の鉄塊が投擲される。
――ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
「ディバインバスター…………!!」
巨大な魔力スフィアが、秀人とクロノの前に生成される。
その制御を、クロノが行い……
「……エクスキューションシフトッ!!!!」
――ズバババババババババババババッ!!
幾重にも枝分かれし、敵陣に降り注ぐ!
『グ、オオオオオオオオオオオオオオオッ!!?』
守護騎士は、懸命に迎撃を試みた。
だが……腕が四本になり、多彩な技能を振るう守護騎士とはいえ……そのベースは、ベルカの騎士。その本質は、『近接・対人』。
自ら距離を開いてしまったことで……『遠距離・広範囲』を得意とするミッドチルダの魔法に、対抗する手段などそう多くは持ちえていなかった。
――バゴオオオオオオオオンッ!!!
オウルが突き立てていった鉄塊の山は、粉々のスクラップとなり……得物になり得そうなサイズのものは、何一つ残らなかった。
『グ、グ……!!』
守護騎士は、怒りに震えるような声を漏らし…………大剣と槍を、再び装備した。
秀人は手に魔力刃を展開する。
「はぁっ!!」
魔力刃を飛ばし、斬撃!
――バシィッ!!
が、そこは守護騎士もさるもの。斬撃を完全に相殺し、槍の穂先から、鋭い射撃を撃ち、反撃してみせた。
――バキンッ!!
「くっ……!」
ハンドルを握るクロノが、顔をしかめる。先ほどの射撃で、フロントホイールを撃ち抜かれてしまったらしい。タイヤどころか、ホイールの一端が砕け散っていた。
「降りるぞ!」
雪崩式にホイールは砕け散り……ガリガリと、鼻先から地面に叩きつけられていく。
スレイプニルを使用することも考えたが…………あの暴力的なまでの性能を、完全に御し切れているとは断言できない。
あの時は、未熟な主が相手だったから不意を突けたが……この守護騎士相手には、通用しないだろう。せいぜい、すれ違いざまに切り伏せられて終わりだ。
そうとなれば……正攻法しかない。
「だぁああああああああああああああっ!!」
クロノの援護射撃をかいくぐりながら、守護騎士へ挑みかかっていく!
(…………)
守護騎士と戦闘する秀人を、じっと見つめる目があった。
(……秀人、お前は…………)
オウルだ。
腹部に致命的な大穴を開けられて……今は、ユーノの治療を受けている。
生命に関わるほどの怪我を負いながらも、オウルは、それに慌てるでもなく、秀人の戦いを観察していた。
(カレンを、止めたのか…………?)
カレンの暴走癖は、オウルたちも重々承知していた。
これまでは、いつもオウルが止めに入っていたのだが、今回はそのオウルが一番に倒れてしまった。アーデルハイドは言うに及ばず。ラーファ、クライアは…………本人たちが聞けば激怒するだろうが、とても暴走するカレンを止められる技量は持ち合わせていない。
それだけ、カレンの戦闘能力は…………異端者の集まりである凶鳥部隊の中であっても、異質なまでに高いのだ。
だが、その分その強さは諸刃の剣で……暴走すると、とたんに判断能力を忘れ、猪突猛進な特攻戦法に走ってしまう。
(…………だが、あれでは)
あの乱入してきた執務官が施した拘束。確かに厄介だが、いつまでもカレンを拘束してはおけないだろう。
――ごそっ。
と、オウルは、袂の下で、一振りの懐刀……刃渡り15センチほどの、小ぶりな刃物を握る。
(……ダメだ。まだ、使えない……)
――オウルの、切り札。そして、呪いの具現。
コレを使用するにはまず…………自身の体が、満足に動かせることが必要だ。今、使おうとすれば……制御することができず、何も出来ずに死ぬことになるだろう。
(………………見られたく、無いなぁ……)
使用した姿を知っているのは……アーデルハイドだけだ。双子にも、カレンにも、見せたことは無い。……オウル自身が、見せたくないと思っているからだ。
(そうも言ってられないか……)
オウルは、ユーノの回復魔法の光に、再び身をゆだねた。
「うおおおおおおっ!」
『ガアアアアアアッ!』
秀人と守護騎士の拳が、火花を散らす。
他の得物を握る二本の腕は、クロノが拘束し、動きを鈍らせていた。
……クロノの援護により、『腕が四本』というアドバンテージは封じられ……ほんの僅かだが、秀人が押してきている。
もちろん、守護騎士が弱いわけではない。
一撃一撃は、確かに秀人に届いているし、際どいところを突いている。
――バキンッ!!
また一撃、守護騎士の槍が秀人の防御を砕く。
「、だああああっ!!」
――ゴキンッ!
『ガフッ…………!』
カウンターが、兜の頬当てを凹ませる。
――バチンッ!!
クロノの魔力刃が、守護騎士の腕を一本、切りつけた。
『グガァッ!!』
腱を斬られたのか……だらりと垂れ下がる。
『グ、グ………………』
だが、不思議なことに……守護騎士は、不思議な高揚を感じていた。
それが例え、束縛され、使役され、その身を異形に歪められているとしても……………………こうして、強敵と矛を交えられるのは、騎士としての誉れだ
例え、ここで倒れようとも……悔いは無かった。
願わくば、ひと時でも長く、この強敵たちとの腕比べを………………
――そう、願っていた筈だった。
『何をしている』
……守護騎士の脳裏にのみ、響く声があった。
聞き間違えようの無い、闇の書の読み手だ。
『何のために、わざわざ調整を加えてまで、貴様を使役したと思っている。アレを使え』
(イヤダ……ワタシハ……!)
誇りだけは汚すまいと、拒否する守護騎士。
だが、読み手はそんな事情など考慮はしない。
『……守護騎士システム、自動制御から、能動制御に切り替え』
(ヤ、ヤメロ……!!)
バツンッ……と、守護騎士は、体の自由を失った。
「なんだ?」
「……魔力の流れが、変わった?」
様子を伺う秀人とクロノ。
そして……
『イ、ヤ、ダ………………』
「「!!」」
はっきりと、発声した。
『ワタシハ……ホコリタカキ、ベルカノ……ベルカ、ノ、キシ…………オ、オオオオオオオオオオオオ…………!!』
「おい……どうした!?」
秀人など、状況も忘れて声を掛けてしまう。
頭を抱え、フェイスガードを掻き毟り…………苦悶に歪む声で、絶叫した。
『テラー・フィールドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
――ドロオオオオオオオオオオオオオオオオオッ………………!!
………………守護騎士の足元に、漆黒の波動が……染み出した。