平穏無事に生きる。それがオレの夢(仮題)   作:七星 煙

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【前書きの様なもの】

どうも。アシェーリトです。
初めましての人も、そうでない人もいらっしゃるでしょう。
今回こうしてこの作品を投稿するに当たった理由は、にじファンの閉鎖によるものです。要するに転載しました。ということです。

本作はISの二次創作であり、私が転生系に対して感じた疑問を解消すべく書き始めた、自己満足による作品です。
また、出来る限り内面描写をしっかりと描きたいために、物語の進行速度は遅々としたものとなっております。
ISが出てくるのは当分先になります。

また、本作品は性転換要素も含んでいるので、苦手な方は何も見なかったことにして戻られる事をお勧めします。

それでは、どうぞお付き合いくださいませ。




序章
序章 0-1


 

【第一章:序章 0-1】

 

 

【20XX年 某日】

 

 目を覚ますと、まず視界に入ってきたのは見慣れない真っ白な天井だった。

 同時に鼻腔をくすぐるのは、妙に鼻に付く薬品の臭い。仰向けになっている事と周囲の状況から、『オレ』は今病室にいることを認識する。

 が、何故此処にいるのかが理解出来なかった。現状を再確認しようと記憶を辿ろうとしたその時、小さな音を立てて病室の戸が開いた。と同時に、心配そうな顔で駆け寄ってくる20代くらいに見える女性と、その人の子供か或いは年の離れた兄弟と思われる、同じ赤毛の少年と少女の姿。

 

 口々に心配そうに声をかける彼女達を他所に、『オレ』は内心で酷く混乱していた。何故なら一瞬、彼等が一体何処の誰だか理解出来なかったからに他ならない。

 しかし驚くことに、その疑問はすぐに氷解する。他ならぬ、『オレ』の持つ記憶によって。

 

 20代と言っても通じるのではないかと言うくらいに若々しい女性は『オレ』の実の母親で、そして心配そうに引っ切り無しに声をかけてくる少年は双子の兄。泣きそうな顔をしているのは妹だ。

 だが、だからこそ『オレ』には今のこの状況が不可解だった。何故なら『俺』には、兄弟なんていなかったのだから。

 

 しかし今の『オレ』にはしっかりと彼等が家族であり、兄弟である事が認識出来る。だからこそ、この現状が理解出来ない。

 

「……此処は?『オレ』、何で……?」

 

 内心の動揺を悟られぬよう、努めて平静を装い、母に何が起きたのかを尋ねる。

 

「幼稚園にいたら、突然頭を抱えて倒れたのよ。大丈夫?まだ、頭が痛かったりしない?」

 

 そういって『オレ』の頭を心配そうに撫でてくれる母の言葉に、『オレ』はその時の状況を想い出す。

 

 何時ものように双子の兄や同じクラスの園児達と共に幼稚園での時間を過ごしていた『オレ』。体全身を使って遊び回っていた『オレ』はしかし、突然脳内に知らないはずの記憶が蘇ってくるのを感じた。

 その膨大な知識の量に、『オレ』の頭は割れるような痛みを引き起こしそして――……

 

 そこで漸く想い出した。そう、何時もと変わらないはずの日常を送っていた『オレ』は、唐突に前世の記憶と言うものを蘇らせた。理由も何もかも分からないが、それでも確かに言える事が一つだけある。

 

 それは確かに、此処ではないどこかで、『オレ』は『オレ』ではない『俺』として生きてきて、そして当時の記憶の殆どを保持していると言う事。

 

「■■?大丈夫?やっぱりまだどこか痛むんじゃ……!?」

「……ううん、大丈夫」

 

 事態を理解した事で暫し呆然としていた『オレ』を心配したのか、母が悲痛な面持ちを浮かべる。そんな彼女に対し、『オレ』に出来たのは心配をかけないようにする事だけだった。

 

 この時『オレ』は、母親であるはずの女性に対して、しかし感じていたのは居心地の悪さと気味が悪いという感情だった。

 

【数日後 自宅】

 

「それじゃあ、大人しくしているのよ?」

「うん、分かった」

 

 母の言葉に素直に頷いた『オレ』はベッドに入る。そんな『オレ』の姿を確認した母は、少しだけ安心した表情を見せた後、階下へと降りて行った。

 

 数日後、無事に退院した『オレ』ではあったが、数日の間は大事を取るという事で幼稚園には通っていない。だが『オレ』としてはその時間はありがたかった。

 兎に角今は、”今の”自分の状況と”過去の”自分の状況を見つめなおす時間が欲しかったから。

 

 母が部屋を出て行ったことを確認した『オレ』は、らくがき帳……もといノートを用意する。書き込む内容は――前世の自分にまつわる記憶。その中で最も重要な、■■■■としての”最後の記憶”。

 すぅと深呼吸をした後、『オレ』は意識を深く思考の海へと没頭させていく。

 

 

【2011年 某日某所】

 

 『俺』の家族は母子家庭ということもあり、経済的な状況はそれほど良くはない。そのこともあり、『俺』は出来るだけいい就職先を見つけられように、中学生の頃から努力を続けてきた。

 元々それほど頭がいいわけでもなく、寧ろ並より少し上程度ということもあったので、人の数倍の努力を重ねなければ結果は結びつかなかった。当時の自分の能力の低さには、何度も憤りを感じたものだ。

 だが勉強だけでは駄目だということは十分に理解していたので、部活にもちゃんと所属していた。因みにテニス部。

 お陰で人付き合いがそれほど悪くなることもなく、一応友人もそれなりにいる充実した日常を送ることが出来た。

 

 それから月日は流れ、大学生の頃。即ち――『俺』、■■■■の最後の時へと意識を持っていく。

 

 『俺』なりの必死の努力はそれなりの実を結び、結果として自宅からさほど離れていない三流大学へと入学することが出来た『俺』も、とうとう三年生。

 就職活動に本腰を入れてかからねばならない年になっていた。

 

「じゃあ、『俺』これからバイトだから」

「お前ほんと頑張ってんな。試験大丈夫かよ?」

「普段授業に殆ど出てない奴に言われたくねぇよ」

「それもそうだな」

 

 試験日も間近に迫ってきたこともあり、同じ学部の友人たちと勉強を終えた『俺』は、バイトに行くために彼らと別れた。その際軽口を言い合うのもいつものことだ。そうして大学を出た『俺』は、駅へと向かって走る。だがそれで怪我なんてしたらそれこそ面倒なので、周囲の安全を確認することは怠らない。

 

 その後、無事にバイト先であるコンビニについた『俺』は、同じ職場の人達と時々喋ったりしながらいつも通りの業務をこなす。そうしてシフトが終了したのは、午後11時。それから家に帰ろうとした『俺』は携帯を確認すると、数件の着信履歴。見ればそれは、数時間前に大学で別れた友人たちだ。

 

「もしもし。どうした?」

『おぉ、やっと繋がった!今繋がったってことは、バイト終わったんだろ?』

「まぁな」

 

 聞けば、これから飲まないかという誘いの電話だった。というか既に始めているらしく、電話の向こうから馬鹿騒ぎしている奴らの声が聞こえてきた。試験前なのに余裕だなと思いつつ、確かに明日は講義もないので時間はあることに気付く。

 どうするべきか悩む『俺』に、友人は少しだけ声のトーンを落とした。

 

『お前が必死になって頑張ってるのは知ってる。だから正直こんな誘いをかけるのもどうかと思ったんだけどよ……。なんつぅかさ、たまには息抜きも必要なんじゃね?あんま根を詰めすぎると、いつかぶっ倒れちまうぞ?』

「………」

 

 そこで、彼らは彼らなりに『俺』を心配してくれていることに気付く。

 確かに普段から必要以上に絡んだりしなかったのも、自分の中でどこか”良い就職先を得なければならない”という強迫概念にも似たものが邪魔をしていたからなのかも知れない。それは勉強だけでなく、バイトやサークルでの時も同じだった。

 

 恐らくそんな『俺』の姿は、彼らには何とも余裕のない奴として映っていたのだろう。これまで誰にも気付かれずにいたのだが……と思いかけ、自分で否定する。実際にはずっと前から気付いていたのだろう。そして今まで強く声をかけなかったのも、恐らくは『俺』の気持ちを酌んでのこと。

 

「……分かった。今日位は、『俺』もハメを外すよ」

『……そっか。それじゃあ俺の家に来てくれ!』

「あぁ、了解」

 

 結局その日は友人宅で皆のと飲み明かす事に。

 誘ってくれた友人宅で馬鹿騒ぎをしながら過ごしたあの時は、『俺』が今まで経験したこともないような大切な日で――――……

 

 

「――……くそっ」

 

 拙い字でノートに書きだせた過去の記憶を見て、思わず舌打ちしてしまう。

 結局思い出せたのは、皆と騒ぎながら飲んでいる時の光景のみ。それ以降の事は、何一つ思い出せない。

 

 あの後何が起こったのか、何が原因で”この世界”に来てしまったのか……全て分からず仕舞いだ。

 

 続いて現状について書きだそうとして、出来なかった。

 というのも、今の『オレ』の肉体は幼稚園児のそれそのもの。故に自分で考えているよりも体にかかる負荷というものは大きい。もう鉛筆を握る力を込めることすら億劫に感じるほどにだ。

 

 そしてそれが、『オレ』を更に苛立たせる。

 今は少しでも早く状況を確認したい、情報を手に入れたい。そうしなければ最悪、命の落とす危険が間近に迫っているのだ、”この世界”では。だというのに、思い通りにいかない現状が、何と腹立たしいことか。

 

 だがそんな『オレ』の思いとは裏腹に、肉体のほうは休息を求め始める。

 瞼は重くなり、頭にぼんやりと霧がかかるように睡魔が襲ってくる。抵抗しようと試みるも、それは徒労に終わってしまう。

 気がつけば『オレ』は、いつの間にか眠りについていた。

 

 

【一年後 20XX年 某日】

 

 前世での記憶を取り戻してから早一年。幼稚園卒業を一年後に控えた『オレ』はしかし、自分の置かれた状況を少しでも好転させるべき材料を未だ持ち合わせてはいなかった。寧ろ、問題は積み重なったと言ったほうが適切だろう。

 

 それは、『オレ』に対する両親、そして祖父が向ける視線だ。

 

 前世の記憶を取り戻した『オレ』は、その知識を使い可能な限りの情報を集め始めた。全ては”この世界”で可能な限り平穏無事な生活を送るために。しかしそんな『オレ』の姿は、両親達にはさぞ不気味に思えた事だろう。

 

 幼稚園を卒業する年になったとは言えまだまだ手の掛かる年頃の子供。そうであるはずの存在が、親の助けを殆ど必要とせず、それどころか到底その年齢で関わろうとはしない筈の新聞や難しい本を読み漁る様は、はっきり言えば異常だ。

 

 人間という生き物は、自分達と違う存在と言うものを嫌い、そして畏怖する。それは例え、実の子供であろうとも変わらない。どころか、他の二人は年相応だと言うのに何故この子だけが、という想いの方が強いだろうか……。

 だがそれで『オレ』は放り出されるような事になっては堪らない。だから『オレ』は己の内にある羞恥心やらをかなぐり捨て時に子供らしく振舞ったりもした。しかしそれは、行動に移すには遅すぎたようだ。

 

 次第に『オレ』を見る目が変わってきたのだ。それでも何とか育てていこうという意志を見せるのは、親としての感情故か。

 

 この事を期に、ある日『オレ』は身の振り方をどうするべきか考える。

 

 このまま徐々にではあるが、周りの子供達にレベルを合わせていくか。

 それとも、今のまま……いや。今以上のペースで知識の習得に当たるか、だ。

 

 前者を取れば、何れは他の子供と同じになることで”普通よりも早熟した子供”として、今後家族からそういった忌避の目で見られることはなくなっていくだろう。だがそのデメリットとして、後者の選択肢が完全に潰える事となる。それは『オレ』にとって、大きな痛手となる。

 

 数分か、下手をすれば一時間ほど考え込んだ『オレ』は――

 

 

【一年後 20XX年 某日】

 

 今後の身の振り方をどうするべきか本格的に悩み始めたその日から既に一年。小学生へと進級した『オレ』は、双子の兄らと別れて市内の図書館へと足を運んでいた。比喩ではなく毎日図書館へと足を運ぶのは、既に『オレ』の日常と化していた。

 

 あの日、『オレ』が選んだのは周囲に合わせることではなく、少しでも良い未来を手繰り寄せることだった。出来るだけ家族には心配をかけないよう、それなりの人付き合いをしつつも、一線を引くような態度をとり続ける。周囲の子供達はその幼さ故に無邪気に笑い、遊びまわっている。『オレ』はそんな彼らを冷めた目で見つめていた。

 

 前世での記憶があるせいか、それともこの世界の”今後”を知っているからか……。少しでも知識を集めようとする『オレ』には、どうしても彼らのようには振舞えない。寧ろ遊びに付き合う時間があるのなら、それら全てを成長のために費やそうと本気で思っている。

 確かに幼少期の子供というものは、友達を作ったり遊んだりすることでコミュニケーション能力を培い、養う。だが過去の記憶というものを持ち合わせているが故に、『オレ』にはそんなことをする必要は無い。というのも考えの一つだ。

 

 だが同時に、『オレ』は周りの幼い友人達を見ると、どうしても思ってしまう。本当に、どうしようも無い位”幼い奴等”だと。

 

 だがそれは当然の事だ。『オレ』と違い、彼等は本当に幼い。寧ろ『オレ』のような存在の方が異常なのだ。だというのに、心の何処かでは彼等を見下している自分がいる。それに気付いた時、『オレ』は自分の愚かさと醜さを知った。

 

 それこそが、『オレ』が皆から一歩引いた立ち位置にいる理由。

 彼等と一緒に過ごしていると、自分の愚かさを、醜さをまざまざと見せ付けられるようで……。要は、『オレ』は彼等と過ごすことで自覚する自分の負の側面を見ることが嫌だった。本当の理由なんて物は、ただ、それだけ。

 けれどそれを認めるだけの勇気も無く。誤魔化すように今日も図書館へと足を運び、知識の収集に没頭する。今はこうする事でしか、自分を保つ術を知らないから――……

 

「……くそ、こんなんじゃ駄目だ」

 

 一度考え出すと、まともに集中する事が出来無い。深い溜め息を吐いた『オレ』は、気分転換に小説でも読もうかと席を立つ。

 

 前世での娯楽というものも、小説やライトノベルを読む事だっただけに、苦痛を感じる事は無い。それに”この世界”は前世の時よりも少し未来である為に、『俺』の知らない本があるのは大いに助かった。

 そんな訳で目に付いた本を数ページ読み、気に入ったものがあれば読むというスタイルを取る『オレ』だったが、ふと手を止める。視線の先にあったのは、何の変哲も無い、只の新聞紙。

 

 だが、何故だろう。その時は妙に気になったのだ。

 

 何かが起こる。そんな予感めいたものを感じた『オレ』は、新聞を手に取る。ザッと見て行く限り、特に変わったような事は無い――……

 

「――っ」

 

 筈だった。

 

 だが、『オレ』は見つけてしまった。

 政治家やら事故の記事の一面の中に紛れた、本当に小さなその記事を。

 

 

 ”天才少女、篠ノ之束。宇宙空間での活動を想定したマルチフォームスーツ、IS<インフィニット・ストラトス>を発表。しかし世界中の著名な科学者達はこれを否定。机上の空論と一笑した。”

 

 その時『オレ』は、聞いた気がした。

 

 運命が――世界が変わる、その音を――……

 

 







後書き

初の転生物を書くにあたって疑問に思った事。

・果たして過去の記憶を持っているのに、他の人間を”親”だと素直に受け入れることができるのだろうか?
・転生したからといって、すぐにその世界で生きていくことを決められるだろうか?

などの点を重視して物語を展開していこうと思います。
ですのでこの物語には最強やらチートというものはありません。

とまぁ、とっつきにくいでしょうが、暫くはこんな感じで物語が進んでいきます。
原作開始まで辿り着くのは、もう暫くかかりそうです。


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