平穏無事に生きる。それがオレの夢(仮題)   作:七星 煙

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前書き

前回のものを手直ししました。時間がかかってしまい申し訳ありません。
まだ多少矛盾点はあるかもしれませんが、何とか今後の展開で挽回していこうかと思います。





二章 2-4

 

◆20XX年 冬◆

 

 あの期末テストの日から既に数ヶ月が経ち、現在は12月。もう今年も終わりを迎えようとする頃、オレは一人電車に乗って遠出をしている。

 

 あの時感じた焦りは中々酷かったらしく、オレはここ最近自分がどうやって過ごしてきたかあまり覚えていない。夏休みや学校行事など目新しいものを経験しておきながら、その殆どがオレにとってはどうでもいい事のように思えて――――……。

 

 このオレの変化はどうやら随分と外面に出ていたらしく、一クラスメイトや教師達には何時通りに見えたが、仲の良い連中には見透かされていた”らしい”。

 ”らしい”というのは、つい先日その事を指摘されるまで気付く事が出来なかったからだ。

 双子の兄の弾曰く、”一時期の小学生の時の様に余裕が無い様に見える”との事だ。流石にそう言われてしまうとオレも対応を変えなければいけない。だが、かと言ってそう簡単にこの迷いは打ち払える物でもなく、オレは悶々とした日々を送り続けた。

 

 そうして気が付けば12月。もう今年も終わる頃になっていたと言うわけだ。

 さてどうしたものかと考えている時、オレはふとある事を思い付きくそ寒い中態々遠出をした。所謂気分転換を兼ねた調査だ。

 

 やがて電車に揺られること数時間。オレは目的の場所へと辿り着いた。

 そこはまるで戦場だ。否、誇張でも何でもなく、疑い様も無くそこは戦場だ。西洋東洋を問わず、様々な人種、性別、年齢の人間が己が目的の物を手にするために奮闘する場所――――東京ビッグサイト。

 

 今日は12月29日。

 日本が誇るサブカルチャーの祭典――――コミックマーケット(通称コミケ)冬の陣。その記念すべき最初の日にして、戦士達の聖戦の第一陣である。

 

 

 右を見ても人。左を見ても人。前も後ろもどこを向いても人、人、人――――……。

 極寒と呼べる外気も何のその。寧ろそれをも飲み込む熱気漂う中、オレがこの場にいるのには理由がある。

 

 一つ目の理由は、この世界の状況を再確認する事。

 ISの発表から幾らか時間は過ぎ、日本における女尊男卑の傾向は更に強まりつつある。そんな時ふと気になったのが、外国の情勢だ。

 諸外国の一般人は、果たして日本の一般人のように今の現状を受け入れているのか否か。それを確かめたかった。

 だが、流石にこの年で一人旅と洒落込むほど勇気も金銭も持ち合わせていないオレには、実際に外国へと飛んで確かめるなど到底不可能。さてどうしたものかと考えていた時、ふと思い付いた。ならばオレの行動出来る範囲で、多くの外国人が集まる場所へと赴けばいいのでは無いか、と。

 多少の偏りはあるだろうが、何もしないよりはマシだろう。

 

 二つ目の理由は、ISという存在による創作物の変化。

 ISの存在は世界に大きな波紋を呼び込んだ。それは何も軍事面だけでなく、ゲームなどの分野にも進出している。『IS/VS』等が良い例だろう。

 また、娯楽面だけでなく別の発明――――つまりはテレビ等の電化製品から活性剤治療等の医療面などの変化も知りたかったのだ。

 今回はそういった企業の展覧回などでは無いので諦めているが、別なところに焦点を当てている。それは、人々の創作意欲。

 

 先にも述べたように、ISの登場は世界に大きな波紋を呼んだ。それこそ、殆どの漫画や小説等の創作物にまでISが登場したり、女尊男卑の傾向が見られるなど。

 これは出版社や企業などの思惑もある以上仕方の無い事かも知れない。だが個々人での認識はどうなのだろう?という疑問から、オレはこの場に赴いた。

 

 そして三つ目だが、正直に言ってしまえばこれこそが一番の理由。気分転換としか言いようが無い。

 というのも、ここ最近のオレは随分と余裕が無いらしい。それはこれからの事を考えれば致命的な欠陥になりかねない。ならばここは趣味と実益を兼ね備えた上での気分転換をするべきだろう、と思い至ったのだ(他二つの理由は、自分自身に対する言い訳のようなものだし)。

 

 ついでに言うと、前世の”俺”は趣味らしい趣味を殆ど持ってなかった。というのも、バイトと勉強にばかり力を入れてきたからなのだが。そんな”俺”に前世の友人達が勧めて来たのがライトノベルだった。手軽に読めて、それでいて種類も豊富だという事で、”俺”も中々ハマっていたものだ。尤も、友人達の様にグッズを集めたり入念にアニメ鑑賞をしたり、各物語に対して討論をするほど熱心ではなかったが。

 ……こんな事を思い返す辺り、やはり”オレ”は心の何処かで前世への未練というものを持っているのかもしれない。

 

 さて。何だかんだと理由を付けたが、現在オレの頭の中からはそんなものは吹っ飛びつつある。というのも、それは周囲の熱気が異様なほど高い事に他ならない。

 

「しかし……これは予想以上だな」

 

 そう、予想以上だ。

 それは何も周囲の熱気だけでは無い。オレが驚いているのは、そう――男性が意外にも多く、そしてそれに劣らず女性も多い事だ。

 

 女性に関してはまぁ納得は出来る。

 ISの登場で急激に上がった女性の地位。これにより今まで大々的に行動をしてこなかった所謂”隠れオタク”というものが減ったのだろう。何せこの御時勢だ、女性の中でアニメ等を他の人よりも好んでいたとしても、それを男性は冷やかしたり出来ない。もしそんな事をしたら最後、多くの”勘違い”をした女性達は一気に反撃、男性は社会的に死んだも同然となる。

 

 対して男性だ。

 女尊男卑により、漫画などの娯楽面でも女性趣味に傾向が傾きつつある。だというのに男性陣が意外にも多いのは何故だろう?と考えたところで――ある一角を見て納得が言った。

 それは、IS(コスプレ)を纏っている女性を写真で撮っている集団。撮る側も撮られる側も、どちらも何とも生き生きとした顔をしている。なるほど、例え多少地位が落ちたところで、それが趣味を止める理由にはならないらしい。

 

 感心していいのかその根性を称えるべきか、はたまた呆れるべきかを考えてながら歩いていると、ドンッと誰かとぶつかってしまった。

 

「すみません。つい考え事をしてしまって……」

 

 話がややこしくなるのは面倒だと思い即座に謝罪する。すると相手もどうやら良識ある人だったらしく

 

「いや、こちらこそすまない。少々周りに気を取られすぎていたようだ」

 

 と少し低めの女性の声で謝罪が返って来た。

 彼女の声を聞き、オレは下げていた頭を上げる。すると視界に飛び込んできたのは、黒髪を肩の辺りで切り揃え、左目に眼帯をつけた少し物々しい雰囲気の女性だった。顔立ちと日本語のイントネーションから察するに、外国の人らしい。

 

(この人、どこかで……?)

 

 オレは初対面の筈のその女性を見て、しかしどこかで見たような感覚を覚える。だがどうにも思い出せ無いし何時までも人の顔を見つめたままというのは失礼だと思い直し、その場を離れようとする。が、

 

「っ、すまない。ちょっといいだろうか」

「えぇ、構いませんが……」

 

 と、意外にもぶつかった女性の方から声がかかった。何だろうと思っていると、女性は少し恥ずかしそうに案内図を取り出した。

 

「ここに行きたいのだが……日本語にはまだ不慣れでな。どうにも良く分からない」

 

 なるほど、どうやら彼女は道に迷っているようだ。ならば係員にでも……と思ったのだが、生憎近くにはそれらしい人はいない。

 特にオレはこれといった目的の物がある訳でもなかったし、直接外国の人の意見も聞けるだろうと軽く考えていたので、彼女を案内する事に。

 

「でしたら案内しますよ。オレは一通り見る物は見ましたから」

「いやしかし、それは流石に……」

「大丈夫ですよ。幸い時間に余裕はあるし、オレは今日一人で来たので」

「……そうか。ではその好意に甘えさせてもらおう」

 

 軽い気持ちで言ったこの一言。

 

「あぁ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。

 オレは五反田澪。澪で構いません。こんな喋り方をしていますが、一応女です」

「ではそう呼ばせてもらう。

 私はクラリッサ・ハルフォーフ、ドイツ人だ。宜しく頼む」

 

 しかしこの言葉が先の未来を僅かとはいえ変える事になるとは、この時のオレには知る由も無かった――――……

 

 

『クラリッサさん。リストの物、買ってきましたよ』

『おおっ!すまないな澪、恩に着るぞ!』

 

 互いに自己紹介をした後、手分けして彼女の欲しい物(そのリストの中にはアレでナニな物もいくつかあったので正直焦ったが、何故か買うことが出来た。というか販売している人が鼻息を荒くしながら『同志よっ!!』とか言ってきたが全力で無視した。オレは男同士の絡みなんぞに興味はない)を買い漁ったオレ達は今、次の標的を探しに移動している。因みに彼女はまだ日本語には少し難がある様なので、ドイツ語の練習も兼ねて今はドイツ語で会話をしている。

 ホクホク顔で前を歩く彼女の様子に、オレは苦笑を禁じえない。

 

 クラリッサ・ハルフォーフ。その名前にどこか引っかかりを覚えたオレではあったが、結局思い出す事は出来なかった。こうした引っかかりを覚えるという事は、”原作”の中でも名前が出た人物なのかもしれない。が、それが重要な人物の関係者であるのか、それとも数馬の様に単なる知り合い程度の存在で済むのか分からない。

 何より今日は息抜きの為にこうして此処に来たのだ。それなのに誰も彼も疑ってかかってはキリが無いし、相手に対しても失礼だ。なら今くらいは、少し年の離れた新たな友人との時間を大切にするべきだろう。

 

『しかし、クラリッサさんは随分と日本語が上手なんですね』

『あぁ。仕事の関係上、日本語を覚えなくてはいけなくてはならなくてな』

『というと、キャビンアテンダントや通訳などですか?』

 

 単に好奇心から出た質問に、しかし彼女は答え難そうな表情を浮かべる。しまったな、プライベートに踏み込みすぎたか……。

 

『あぁ、答え難いなら無理に言わなくても結構です。寧ろ知り合って間も無いのに……すみません』

『いや、気にしないでくれ。……こちらこそすまない、気を遣わせてしまった様だ』

 

 そういって互いに謝罪したオレ達は、顔を見合わせて苦笑を零す。そしてどちらからともなく、この話題を打ち切った。

 それから再び色々な場所を巡りながら何気ない会話を交わしていると、ふとクラリッサさんが声をかけてきた。

 

『どうした?随分と嬉しそうな顔をしているが』

『え?』

 

 言われて初めて気付く。どうやらオレは、自然と笑みを浮かべていたようだ。その原因を考え、想い至ったのが一つ。それは懐かしさに似た感情。

 クラリッサさんとこうして会話を交わすのは、オレにとってどこか懐かしい気持ちを抱かせた。何故だろうと更に考えたところで、一人納得がいった。似ているのだ、前世の友人達と何気ない会話を交わした時と。

 別に彼女が前世の友人達と似ている訳では無い。寧ろ彼女ほど理知的な友人はオレにはいなかったような気がする。だがそれでも懐かしさを覚えるのは、きっと話している相手が”大人”だからだろう。普段の”五反田澪”が会話を交わす相手は、10代前半の少年少女が殆ど。彼等との間に流れる雰囲気は、どちらかというと軽く、浮ついた感じの印象がある。

 しかしクラリッサさんとの会話は違う。オレの中身が30代近い事もあるからか、彼女との会話は本当に気が楽なのだ。無理に背を伸ばす必要もなく、無理に周囲の雰囲気に合わせる必要も無い。ある意味で”素の自分”で語り合える相手なのだ、彼女は。それが何だか、嬉しくなる。

 

『特にこれといった理由ではないのですが。そうですね……クラリッサさん相手ですと、無理に気を張ったりする必要がなく話せるから、でしょうか』

 

 少し言葉を選びながら答えると、クラリッサさんは一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、クツクツと笑い始めた。……何か可笑しな事を言っただろうか?

 

『――――いや、気にしないでくれ。ただ、奇遇だなと、そう思っただけだ。私も君に似たような感覚を覚えていたところだ』

『貴女も、ですか……?』

『あぁ。同年代どころか、寧ろ少し年上と話している様な感覚を覚えたところだ』

 

 すまないな、と付け加え苦笑する彼女に、オレは何とも言えない表情を浮かべる。中身だけで言えば恐らく年上なのだが、そんな事言えるはずも無く。何とも微妙な空気が流れてしまったので、オレは少し無理やりに話題を変える。

 

『クラリッサさん、少しお時間を頂いてもいいでしょうか?』

『ふむ、そうだな……』

 

 チラリと腕時計を確認した彼女は、問題ないと答えた。その事に安堵しつつ、どこかで座れないかと場内を歩きながら話す。

 

『クラリッサさんは、今の世の中をどう思いますか?』

『随分と突然だな』

『えぇ、まぁ。ただ、一度外国の人はどう思っているのかと、随分前から思っていたんですよ。今はちょうど、それを聞く機会でもあるので……つい』

『ふむ、そうだな……。具体的にはどんな事を聞きたいんだ?』

『一番の疑問は、ドイツの女性が今の社会体制をどう思っているか、ですね』

 

 運良く空いているベンチを見かけたので、其処に腰掛ける。クラリッサさんは少し考える素振りを見せ、やがて口を開いた。

 

『ISが国防の要となっている以上、多少の優遇は仕方の無い事ではないか。少なくともそう考えている』

『では、行き過ぎた女性優遇についてはどう思いますか?』

『行き過ぎた……?』

『例えば……そうですね。買い物に来ていた男性が、見知らぬ女性に声をかけられ、吟味していた服を片すようにと命じる。それに断ると警備員を呼ばれ暴力を振るわれたなどと有りもしない事をでっちあげられ、挙句その男性は裁判にかけられ敗訴。職も失ってしまうといったケースです』

 

 これは実際に日本国内であった事件で、この時は後の調べで男性に非が無い事が明らかになったものの、結局男性は再就職する事が出来ず、周囲からは白い目で見られてしまい最終的に自殺をしてしまった、というものだ。

 こうして明るみになった事件は数少ない。が、その裏では未だに同じ様な愚かな行為が続けられているのだ。幾らISを運用出来るのが女性だけだからといって、許される行為では無い。

 

『……確かに、そういった事が起こっているのは事実だ。だが、女性にしかISを動かすことが出来ない以上、仕方が無いのことでは?』

 

 まるで当然の様に言う彼女に、僅かに頭に血が上る。が、それを何とか押さえ言葉で反論する。

 

『確かに女性にしかISを運用する事は出来ません。ですがそれは、あくまで資格を持っているだけであって、全ての女性に対して優遇されるべき絶対的権利ではないと思います。

 事実、世の中の女性の大半以上はISに触れる事すら無い。だというのに、その資格をチラつかせ宛(あたか)も自分が特別な存在になったかのような振る舞いをするなど……愚かと言うしか無い』

 

 吐き捨てるように言った言葉に、クラリッサさんはふっと表情を和らげた。

 

『なるほど……全くその通りだ』

 

 ふと表情を和らげたクラリッサさんは頷いた。そして試すような事を言ってしまってすまないな、と謝罪をする彼女に、オレは口ごもる。別に謝られるような事じゃ無いし、寧ろ試されているだなんて気付いていなかったんだが……。

 しかしそんなオレの心の内を彼女が分かるはずもなく、言葉を続ける。

 

『……確かに、今の世の中の多くの女性は今の社会体制を誤解している。本来であれば宇宙開発に使われる筈だったISだが、今は完全に国防の要となってしまった。そしてその力は強大であるが故に、現在はスポーツという形で落ち着きを見せているが……正直、いつその均衡が崩れてもおかしくは無い』

『………』

『それに、女性にしかISを動かすことが出来ないという事は、万が一ISによる戦争が起こった場合真っ先に徴兵されるのが女性だという事に一体どれだけの人間が気付いていることか……』

『恐らく、多くの女性はそんな事すら考えていないでしょう。それでいて万が一戦争が起こり、優秀なパイロット達が命を落とし、IS学園にいる生徒達まで命を落としていったら……。後は片っ端から適正の高い人達が候補としてあがる。その時きっと彼女達は……』

『恐らく泣き喚き、命乞いするだろうな。そして最終的にはこれまでの恩恵を忘れ、ISと、それを開発した篠ノ之博士を恨むだろう』

 

 そう言ってクラリッサさんは重い溜息を吐く。彼女の表情からは明らかな呆れや情けなさというものが見え隠れしている。どうやらドイツの人間の中にも、そういった馬鹿な考えを持っている人間がいるのだろう。

 さて。とりあえず一人だけとはいえこういった考えを持っている女性がいる、という事を知れたのはオレにとって嬉しいことだ。しかしこの話題を振った事で、何だか空気が悪くなってしまった。

 

『……すみません。折角遊びに来ている貴女に、気分の悪くなるような話を振ってしまって』

『いや、気にする必要は無い。私の知り合いは少々特殊な人間が多くてな、学生がどのような意見を持っているかなど、聞く機会自体が少ない。その事を考えれば、こうして君と話せた事は私にとっても十分意味のあることだ』

 

 だから気にする事では無い。彼女の言葉は、オレにとって有難いものだった。

 

 

『今日は有難う御座いました。色々と貴重なお話を聞く事が出来て良かったです』

『こちらこそ。案内だけでなく買い物に付き合ってもらって感謝している』

 

 帰国の便の関係からそろそろ帰らなければならないというクラリッサさんと共に、今は会場の外にいる。買った物の中身には多少……では済まないが抵抗する部分があったものの、こうして異国の人と意見を交わすことが出来たのは本当に幸運だった。

 

『空港までの道は分かりますか?』

『……流石の私でもその辺りは把握しているよ』

 

 会場内で迷っていたので少々心配になったのだが、流石にそれは大丈夫だったようだ。少し傷付いた様な表情を浮かべる彼女に、苦笑しつつも謝る。

 

『それじゃあオレはこれで』

『あぁ、ちょっと待ってくれ』

 

 ではそろそろオレも帰ろうかと思い別れを告げようとしたその時、クラリッサさんが呼び止める。どうしたんだろうと思い振り返ると、何やらメモ帳にサラサラとペンを走らせている。かと思えばそのページを切り取り、オレに手渡してきた。

 

『そこに書いてあるのはドイツの情報交換サイトだ。そこから音声チャットや科学サイトなど、様々なサイトに飛ぶ事が出来る。それともう一つは私のプライベート用のアドレスだ。折角こうして知り合えたのだし、よければこれからも友人としてやっていきたい』

『……いいんですか?』

 

 正直、彼女の提案には驚いた。情報交換サイトとかならともかく、簡単にプライベートの連絡先を渡すなどと……。少々無用心に思えるのだが。

 

『心配いらない。これでも私は人を見る目があるのでな。君ならば大丈夫だと思ったからこそだ。それに……日本のサブカルチャーを愛するものに悪人はいないからな』

 

 そういって誇らしげに胸をはるクラリッサさんに、僅かな呆れとそれに勝る嬉しさを感じる。それにこうまで言われてしまっては、こちらも断るわけにもいくまい。仮に迷惑メールなどが来るようであれば、その時はアドレスを変えるなりすればいいだけの話だ。

 

『……分かりました。有難く頂戴します。後でメールしますので、その時に登録してください』

『うむ。では、気を付けてな』

『はい。クラリッサさんも』

 

 そうしてそこで彼女とは別れた。帰りの電車の中、オレはドイツには他にどんな意見を持っている人達がいるんだろうと、少しだけ期待に胸を膨らませていた。

 

 




後書き

IS世界の女性達に対する個人的な疑問。

・もしISを用いた戦争が起こった場合を考えているのか?

少なくとも原作を読む限りでは、その辺りの心配をしている人はほぼ皆無、といった感じですよね。ですが、流石に現役軍人であるクラリッサがその事に気付いていない筈も無い。と思ったので、その辺りの描写を入れてみました。

・澪は情報サイトのURLをゲットした!
・澪はクラリッサのプライベートアドレスをゲットした!
・ロリッ娘黒ウサギとのフラグが知らないうちに立ってしまった!

感想・指摘等お待ちしております。

※2013.5/12 誤字修正

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