平穏無事に生きる。それがオレの夢(仮題)   作:七星 煙

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ウサミミ博士登場。
しかし原作とはちょっと違った性格に。その理由の一部は本編にて。

第一章、これにて完結。


一章 1-5

◆ 翌日 ◆

 

 母さんとお爺ちゃんに友達と用事があると断りを入れ、予定の時間よりも少し早く家を出る。

 

 駅前のカフェを目指し自転車をこぐ速度が自然と速くなる。それはまるで、はやる自分の心を表しているようだった。

 けれどそんな事を気にしていられるほど、今のオレに余裕はなかった。

 

 篠ノ之束がどうしてオレの携帯の番号を知っていたかとか、そんな事はどうでもいい。

 だが、彼女の目的が何なのか。そして――――何故一夏や千冬さんではなく、オレを選んだのかという事だ。

 それが、どうしても分からない。

 

 やがて目的の場所についたオレは、時計を見る。時間までには後三十分は余裕がある。

 

(この間に、確認するべき事を纏めておこう)

 

 そうして、脳内で様々な考えを巡らせる事暫く――――

 

「やぁやぁお待たせ♪」

「……は?」

 

 カジュアルスーツに身を包んだ、黒髪の女性が声をかけてきた。が、当然の如くオレには彼女との面識はない。

 人違いでは?と声をかけようとして――――やめた。

 いや、正確には止めざるを得なかった。

 

 彼女のオレを見つめる瞳。それはまるで、オレを見ているようでオレではない”何か”を見ているようで――――

 

 瞬間。オレは確信した。この女性が篠ノ之束なのだと。そして同時に思いだす。

 

(この女、昨日一夏の家に行く時にすれ違った女か……)

 

 一瞬の事だったので殆ど記憶に残らなかったが、恐らくそうだろう。だとすると、昨日は一夏や千冬さんにでも会っていたのか、それとも会うつもりだったのか。

 その辺りは、オレの知っている篠ノ乃束という女性と目の前の女性の姿が異なる事と一緒に、これから聞けばいい。

 

「……いや、大丈夫ですよ。それに、女性を待たせる訳にもいかないですし。早めに来るのは当然」

「……まるで男の子みたいな発言だね。まぁいいや、とりあえず入ろうか」

 

 オレの言葉に大した反応を見せるでもなく、彼女はさっさと店の中へと入って行った。

 そんな彼女の後を、オレは黙ってついていく。

 

 この時オレは、きっとこの邂逅はオレの日常に何らかの変化を齎す事になる。

 そんな、確信にも似た思いがあった。

 

 

「とりあえず、何か頼みますか」

「そうだね。それじゃあ束さんはねぇ~……」

 

 カフェに入ったオレ達は、とりあえず何か注文することに。

 元々何か食べたいものがあったわけではないので、最初からホットコーヒーと決めていたオレと違い、篠ノ之束はメニューを開いてものの数秒で決めやがり、ボタンを連打しまくった。しかも、オレが何を頼むか確認すらせずに。まぁ、最初から決めていたのでいいけど。

 

「お待たせいたしました。ご注文は何に致しますか?」

 

 と、ボタンを押してから数秒後、やってきた少々気弱そうな店女性員はボタン連打した彼女を怒るでもなく、あくまでも営業スマイルを浮かべて対応する。

 普通に考えれば及第点は与えられるだろう、女性店員。

 

 ――――が、今回は相手が悪かった。

 

「はぁ?」

 

 変装した篠ノ之束は、店員をゴミを見るような蔑んだ目で見ている。

 

「ボタンを押してから何秒経ってると思ってるの?」

「え?あ、あの……」

「あ、あの、じゃないよ。

 客を待たせるなんてどうかしてるんじゃないかな?しかもそれに対して謝罪もないなんてどうかしてるね」

「も、申し訳ありません」

「あぁいいよ別に。束さんは別に君に対してこれっぽっちも興味を持っていないからね。

 大体、君程度の低能な人間と話している時間すらが惜しいんだ。さっさと――――」

「すみません。彼女、ちょっと仕事で疲れているみたいで、気にしないでください」

 

 これ以上は流石に不味いと思い、篠ノ之束の言葉に割って入り店員の意識をオレに移す。

 困惑を通り越し今にも泣きそうな店員は、流石に不憫だ。

 

「それじゃあ――――あー……、姉さん。姉さんは何にする?」

「そうだねぇ~。それじゃあこのデラックス苺パフェってのにしようかな」

 

 姉さん、と呼んだのは、ぶっちゃけオレ達の関係性を疑われるのを防ぐ為だ。それは彼女も同じだったらしく、オレのアドリブに乗ってくれた。

 だが正直、正体云々以前に意味などあって無いようなものだろうけど。

 

「すみません。デラックス苺パフェを一つ。それとホットコーヒーを一つで」

「畏まりました。ご注文を――――」

「全く。そんなものも一回で覚えられないの?君は本当に――――」

「姉さん!あの、本当にすみません……」

「い、いえ!し、失礼しました!少々お待ちくださいませ!」

 

 再びオレが割って入り、店員はまるで逃げるように席を離れた。

 これから暫くはこんな面倒な人間の相手をしなければいけないのかと考えると、……正直、気が滅入る。

 

 

「そ、それではごゆっくりどうぞ!」

 

 程なくしてやってきた女性店員は、先ほどと同じように逃げるように去って行った。

 そんな彼女など既に気にも留めていないようで、篠ノ之束は目の前に聳える馬鹿でかいパフェを頬張り始めた。……というか

 

「食べている物と貴女の格好とのギャップが酷すぎる」

「え~、そんなに酷い?」

「えぇとても。見た目がキリッとしている感じなのに童心に帰った少女のような笑みでパフェを食らう二十代とか、不思議を通り越して若干不気味です。

 ……今のその姿は、やはり貴女の発明によるものですか?」

「ピンポ~ン!別に何も難しい事はないんだけどね、簡単に言っちゃうとISの量子変換技術やらその他諸々を併用する事で意外と簡単にできちゃうんだなこれが。

 でも馬鹿な世界中の屑共はISを兵器としての側面しか見なくなったし、他の技術者達にしてもそう。探せば幾らでもある発明用途を見落として、何でもかんでもIS、IS……」

 

 ホント、馬鹿ばっかりだね、と彼女は世界中の科学者が聞けば怒り狂うだろう発言を平然としてのける。そんな彼女に、オレは少しだけ頭が痛くなる。

 

「それで?どうしてオレを呼び出したりしたんですか?」

 

 気晴らしに珈琲を一口含み、尋ねる。この質問はどうしても外せない。が、オレの思いとは裏腹に

 

「それはねぇ、君に”興味を持った”からさ♪

 うん、店員はゴミクズだけど、これはそこそこイケルね」

 

 などと簡単に答えた。……どういう事だ。 

 

「一夏から聞きました。貴女は一夏の姉である千冬さんとは親友の間柄であると。そして同時に、貴女という人についても」

 

 以前ふと話題をISについて話題を振ったとき、一夏はわりと簡単に自分と自分の姉がISの生みの親である篠ノ之束と知り合いだと打ち明けてくれた。 

 そして聞き出せた情報、特に彼女の性格などは、オレが知っている知識と殆ど違いはなかった。

 

「貴女は他人というものを認識することが出来ない。

 自分が興味を持った相手しか人として認識することが出来ない、と。ならどうして、初対面である筈のオレを貴女が認識する事が出来たのですか?オレの一体どこに、貴女は興味を持ったのだというのです?」

「あー、その事?それは簡単――――君が束さんに”似ている”からだよ」

 

 その言葉に、カップを持とうとした手が止まる。

 

「何処が?って思ってる?でも、本当は君自身気付いてるんじゃ無い?

 束さんも君も、この世界を見ているようで見ていない。まるでブラウン管越しか、或いは物語の経緯(いきさつ)を見守る”傍観者”の様にしか、この世界を見ることが出来ないってことにさ」

「………」

「初めて君を見たのは、ちーちゃんといっくんの家に向かう時だったね。

 いやぁ、あの時は本当に驚いたよ。何て言うのかな……匂い、かな。近いんだよ、君と束さんは」

 

 だから君はあの時、一度振り返ったんでしょ?

 

 そう言って笑みを浮かべる彼女の瞳は、まるで底無しの闇のように暗く見える。

 全てを見透かすような真直ぐな瞳。だというのに、オレを見ているようでまるで見ていない様にも見える。

 恐怖を感じそうな彼女の瞳を、しかし逸らす事が出来ない。何故ならあの時、確かにオレも彼女に”何か”を感じたのだから。

 

 その沈黙を肯定と取ったのか、彼女は上機嫌に笑う。

 

「じゃあ、次は束さんが質問しようかな」

「……何ですか?」

「君はどうやって、他人を認識する事が出来るの?

 君と束さんはね、似ているけど決定的に違う部分があるんだ。ついでに言うと、さっき君と束さんは同じように世界を見ていると言ったけど、実際は違う。

 

 束さんと違って、君はどこか傍観していながらも、”しきれていない”。時々自分が見ているはずの物語に参加しているというか、そんな感じ。まぁつまり……”中途半端”なんだよね。

 でもね、束さんにはそれ――――君と束さんとの間にある”決定的な違い”ってのが何か”分からない”。だからこそ、それを知りたいんだ」

 

 彼女の言葉に、一瞬返答に困る。

 彼女の言う”決定的な違い”とは一体何なのか。オレにはそれが理解出来なかったからだ。

 

「そんなもの、オレが分かる筈が――――」

「お願い」

 

 分かる筈が無い、という言葉すらも躊躇われた。

 何故ならオレを見る目はどこまでも真剣で。なのに彼女の瞳は、まるで道に迷っている子供の様に見えたから。けど、やはりその答えを出す事はオレには出来ない。

 

 何故ならオレは、”篠ノ乃束という一人の人間”について、全く知らないのだから。

 

「……その質問に答えられるか分からないんですけど、幾つか質問させてください。もしかしたらそれが、貴女の問いへの答えになるかもしれない」

「……そう、いいよ。それじゃあ君は、どんな事が知りたいのかな?」

 

 互いに目を逸らさず相手を見つめる中、一つ一つ言葉を選んでいく。

 

「貴女は自分が興味を持った人しか他人を認識出来ないと言っていましたが、その判断基準は?」

「そのままだよ。私が興味を持てるのは、ちーちゃんといっくん、それと妹の箒ちゃん。あぁ、後は君ね。それ以外はどうでもいいゴミ屑にしか見えない」

「御両親は?」

「う~ん……。”アレ”は辛うじて家族としか認識出来ないかな。まぁ一応、人としては認識出来る、その程度。第一、”認識の仕方が違う”からね」

 

 ……駄目だ、判断材料が少なすぎる。

 

「じゃあ質問の仕方を変えます。

 貴女はどうやって、一夏の姉である千冬さんを認識することが出来たのですか?」

「ちーちゃんはね、束さんに近い存在なんだよ。方向性は違うけれど、一つの”天才”の完成形といってもいい存在。だからかな」

「なら、一夏は?彼も確かにポテンシャルは良いかもしれないけど、彼の姉ほどでは無いはず」

「それでも、いっくんはいっくんで光るところがあるからね。少なくとも、ちーちゃんの弟だからってだけが理由じゃ無いよ」

「なら……妹さんは?」

「箒ちゃんは、束さんの大切な妹だから。

 可愛い可愛い妹を、お姉さんの束さんが認識出来ないはずはないんだよ」

 

 それまでとは違い、柔らかな笑みを浮かべる篠ノ之束。そんな彼女を見て、本当に妹の箒を愛しているのだと理解する。

 だからこそ、理解出来ない。

 

 一体、箒と彼女達の両親に対する線引きとは何なのか?と。

 

 暫く考え込み――――一つだけ思い付いた事があった。だがこれは、正直質問する事自体が憚られる。けれど、聞くしかない。

 

「もう一つ追加で質問です。

 貴女の御両親は、貴女を”一人の娘として”愛していたと思いますか?」

 

 その問いに返って来たのは、沈黙と言う名の否定。推測は確信に変わった。

 

「これはオレの勝手な推測なんです。

 貴女はもしかして、”天才”などという肩書きではなく、”一人の人間として”見てくれる相手しか認識することが出来ないんじゃないですか?」

「どうしてそう思うの?」

「……才能のありすぎる人間というのは、集団からは浮きやすい存在です。それが、他に類を見ないほどで、それもかなり幼少の頃からその片鱗が現れているとしたら。

 周囲が示すのは期待ではなく……恐怖。

 

 人間と言うものは、”未知”の存在に恐怖します。

 それは、自分達とは明らかに違う才能を持つ存在に対しても、同じなのではないかと。そう思ったんです。そう考えれば、貴女が認識出来る人間が限られるのは納得がいく」

 

 これも推測でしかないですけど

 

「貴女が千冬さんを認識出来るのは、先ほど貴女自身が仰った様に彼女もまたある種の”天才”であったからなのでは?そしてそれ故に、どこか通じるものがあった。

 そして、両親に対しては辛うじて程度の認識なのに、妹さんと一夏は認識出来ると言う事。これは、二人が幼いが故に貴女を恐れなかったからではないでしょうか」

「それだと、さっきと言ってる事が矛盾してるよ?」

「……失礼、言い方が悪かったです。

 これも推測でしかないのですが、妹さんが貴女を恐れなかったのは単(ひとえ)に貴女が姉という存在だったからかと。自分に対して優しく接してくれる大好きな姉が、世間では”天才”と謳われている。これも一役買ったのかと」

 

 自分には、誰もが褒め称える自慢の姉がいるんだぞ、というように。

 

「それじゃあ、いっくんは?」

「一夏の場合は……単純な鈍感さが発揮されたのかと。

 でも同時に、変なところは鋭いですから。もしかしたら、本能的に貴女をそういった色眼鏡で見る事を嫌っていたのかもしれません」

 

 アイツは本当に可笑しな位変なところは鈍感で、変なところでは勘が鋭いからな。可能性は否定出来ない。

 黙って聞いていた篠ノ乃束は、再び口を開いた。

 

「……ふぅ。いやぁ、流石に束さんも吃驚だね」

 

 まぁちょくちょくヒントは出してたしね、と苦笑する彼女の姿に、オレは反応に困った。

 何故なら今の彼女の姿は、小説に書かれていた人として”壊れている”ような人間ではなく、何処にでもいる”普通の人”のような反応を示しているのだから。

 

 でも、これで納得がいった。

 

 恐らく、彼女が興味を持つ判断基準とは、色眼鏡無しに”自分を一人の人間として見てくれる人”。或いは

 

「自分を”篠ノ乃束という一人の人間として愛してくれる人”……」

「だいせいか~い!おめでとう、やったね♪まぁ、景品なんて出ないんだけど。

 そんじゃあ束さんは質問に答えたから、今度は君がさっきの質問に答えてくれないかな?」

「……オレは、確かに他の人と自分は違うと思っている部分があります。

 でもそれも、家族や友人がいるお陰で今では大分変わってきています。だからオレは、他の人を自分とは違うからと蔑む事はなくなってきたし、認識出来ないわけでもない」

 

 それが、オレの答えです。

 

 

「……そっか、うん。君と束さんとの違いが良く分かったよ」

 

 オレの話を聞き終えた篠ノ之束は、小さく呟いた。

 その表情は一見して変わらないように見える。が、その瞳にはどこか寂しさを含ませている様にも見える。その理由までは、オレでは分からなかった。

 

「うん!中々有意義な時間が過ごせてよかったよ!」

「……それはどうも」

 

 が、そんな感情はすぐになりを潜め、元のハイテンションに戻った。そんな彼女に、オレは苦笑するしか無い。

 

「おおっといけないもうこんな時間かい!?いやぁ楽しい時間が過ぎるのは早いものだねぇ」

「これからまた、逃亡生活ですか?」

「まぁそんな所だね。他にも色々と理由はあるんだけど……今は内緒かな?」

「そうですか。まぁオレも、貴女の様な”似た”人間と話せたのは、色々な意味刺激的でしたよ」

 

 主に心臓に悪いという意味でだが。尤も流石にそこまで言えるほどの度胸はなかったので、黙っておくことに。

 

 そう言って同時に立ち上がるその時に、スッと伝票を手に取る。

 すると目の前のウサミミ博士(今は変装中だが)は、少しだけ不思議そうな表情を浮かべた。というか、大人が子供の分も金を払うくらいの考えは持ち合わせているんだな、と一人納得。

 

「一応それなりにお金は持ってきていますから」

「いや、でもねぇ君」

「第一、女性に払わせるのは気が引けるんですよ。

 それと、今日は色々と話を聞くことが出来たので。そのお礼と言うことで、オレに払わせてください」

「……君、本当に変わってるねぇ。ていうか、変に男前だね?似合ってるのがまた何とも言えないけど」

 

 それはどうも。というか

 

「変わっていると言う言葉は、貴女にだけは言われたく無い。そのままお返ししますよ」

「ぶぅ、ちょっと失礼だな君は。まぁ……いっか♪」

 

 クスリと笑いあった後、オレ達は店を出た。

 

 

「今日は付き合ってくれてありがとね!ホント、他人とこうやって話したのって何時以来かな?」

 

 そういって体を解している彼女に、オレは何もいえない。

 彼女が他人と話していない事なんて知った事では無いが、それでもどうしてそうなったのか位は気に掛かる。だがそれも、今聞いたところで答えてはくれ無いだろう。

 

「あ、そうだ!ねぇ君」

「はい?」

 

 一人考え事をしていたオレに、彼女は突然話をふる。というか、急いでいるんじゃなかったのか?

 

「君の名前を教えてくれない?そういえば聞いてなかったからさ」

「はぁ……。五反田澪です。お好きなように呼んでください」

「澪ちゃんか。なら……れーちゃんだね♪うん、決定!あ、因みに束さんの事は束さんって呼んでくれると嬉しいかな?」

「了解です。束さん」

 

 若干疲れたように返事を返す。何というか、この人――束さんと話していると無茶苦茶疲れる。しかしそんなオレと対照的に、彼女は至って元気そうだ。

 

「うんうん♪宜しくね、れーちゃん。

 あ、そうだ!折角こうして知り合えた事だし、もう一つだけ質問していいよ?何か気になる事位あるんでしょ?」

 

 彼女の言葉は、オレにとってかなり有難い事ではあるが、同時に難しい選択でもある。

 聞きたい事は幾らでもある。だがその中で答えてもらえるのは、現状ただの一問のみ。となれば――――

 

「じゃあ最後に一つだけ」

「うん!何でも良いよ?さぁさぁ、質問をぶつけてごらん?」

「貴女はどうして、ISをあんな形で発表したんですか?」

 

 オレの持つ原作知識と一夏から聞いた篠ノ之束を統合し一言で言ってしまうと、彼女は自分の興味のある人間以外には、全く興味を持つことが出来ない人格破綻者だ。

 

 だが、それ故に疑問が残る。

 

 自身の興味を持っている対象――愛情を向けている対象である千冬、一夏、そして箒達の事を本当に想っているのなら、あんな形でISを発表する必要はなかった筈だ。

 それこそ、勝手に宇宙にでも行ってそこから衛星に介入、映像を全世界に配信するといった形も取れたはず。

 

 だが、実際には彼女はしなかった。

 それどころか、彼女の行動は言葉と矛盾している。あんな”兵器”としての側面を前面に押し出すようなお披露目をすれば、それこそ世界に与える影響。そしてそれで家族がどうなるかなど目の前の女性が気付けない筈がないのだから。

 

 そんな思いを込めた一言は、どうやら正しく彼女に伝わっていたようで。

 

「なるほど、いい質問だね」

 

 彼女は心底嬉しそうに笑う。

 

「けど……そうだね。今の時点でそれを答える事はちょっと出来ない、かな」

「それは何故ですか?」

「まぁ色々あるんだよ!……って答えじゃ納得しないよねぇ」

 

 当然だ。オレは小さく頷くことで彼女の次ぎの言葉を促す。

 

「う~ん……。ゴメン、やっぱり詳しく答える事は事は出来ないかな」

「……そうですか」

「でも、そうだね。一つだけ”真実”を教えてあげるよ」

 

 束さんはオレに近づきすれ違い様に

 

「あの日の出来事、”白騎士事件”。あれはね」

 

 ――――束さんの意思によるものじゃないんだよ

 

 耳元で小さく呟いた。

 ハッとなって振り返るも、既にそこには彼女の姿はなかった。

 

「……最後の最後で、とんでもない爆弾を残していきやがったな」

 

 告げられた彼女の言葉に、オレはその場で立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

 小説<インフィニット・ストラトス>においても謎の多い人物、篠ノ乃束。

 彼女との接触、そして齎された言葉は、オレには原作以上の波乱を齎す預言の様に聞こえた。

 

 

 




個人的な篠ノ之束という人物の考察。

・自分を篠ノ之束という”個人”として見てくれる人しか認識出来ない
・過去に何かあった為に、両親の認識が箒とは異なる

と言った点を題材に今回の話は進みました。ぶっちゃけ原作と別人といっていい中身してます。

さて、こう考えたのには理由があり、それは本編でも書いたように、彼女の行動と発言に矛盾があるところですね。

・千冬、一夏、箒は認識出来る
・彼等を害するものは実力で排除する
・なのに彼等を巻き込むよう様な世界の変革を行った

これらの理由から、ちょっと彼女という人物を変えてみました。

つまり、この話における束=自分を何の肩書きも無しに見てくる、愛してくれる人しか認識出来ない人間

と考えていただければ結構です。

ですので、文中にあるように”白騎士事件”の黒幕も別につくっています。それが明かされるのは大分先のお話。

さて。これにて第一章<あの時オレは小学生(ガキ)だった>はこれにて終幕。
次回からは第二章<少し前まで女子中学生(ガキ)だった>に突入します。
ここから大分オリジナルの話を盛り込んでいく事になると思いますが、どうぞお付き合い下さい。

また、考えを纏める期間を要する為、更新が少し遅れます事を、先にお詫び申し上げます。
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