うたわれるもの外伝 ~天と地を繋ぐ絆~   作:もりベス

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フミルィル可愛いですね
立派になって……

「二人の白皇」発売がさらに楽しみです


第十一話 「穏やかな時間」

 

 

……

 

………

 

 ゆらゆらと……揺れている。

 ゆっくりと、ゆっくりと蘇ってくる記憶……。

 そこでは クーヤが 泣いている

 そこでは 誰かが 死んでいる

 

 くーやガソのウゴカナクなッタにくカイヲみつメテナイテいル

 

(違う、これは自分の記憶じゃない……)

 

ノゾメ……

(望まない……)

 

 クーヤの心が壊れていく。

 そんな彼女を自分はただ見つめることしかできない。

 

 もシあのムスめノウンメイをかえルことがデキれバ?

 

(自分はそんなことは考えていない……)

 

ノゾメ

(望まない)

 

 その姿は、あまりにも……痛々しくて。

 見ているだけで、胸が締め付けられるような……。

 

 そんナカナしいカコをカエることができタとシタラ?

 

(やめろ)

 

 かなナシミなどドコにもナいアタタカなミラいがホシイとハおもワないカ?

 

(やめろ)

 

ノゾメ!

(自分は……!)

 

 

 

 

 

 

 

『ハッ!? 自分は……』

 

 まるで夢から覚めたかのように意識を取り戻す。

 

(今のは……なんだ。よく思い出せない。でも誰かが泣いて……そうだ、クーヤ!)

 

 途端に先程までの出来事を思い出す。

 スリを追いかけようと走りだそうとしたその瞬間、クーヤが真に迫る勢いで泣きついてきたのだ。

 

「う……ぐす……」

 

 どうして、この子はこんなにも怯えているのだろう……。

 

『クー……ヤ』

 

 その震える小さな体をそっと抱きしめる。

 何故か、そうしなければならないと、この時はそう思えた。

 

「行かないで……。クーヤを一人にしないで……」

 

 クーヤの過去に何があったかなんてどうでもいい。

 自分はこの腕の中の小さくて、儚げな少女を守りたいと、強く感じている。

 

 ただ……

 

(想いはこんなにも近くにあるというのに……。自分達の距離はあまりにも遠すぎる……)

 

 今はただただ、この鋼の身体が恨めしいと思うばかりだった。

 

『ごめんなクーヤ……。こんな冷たい身体で……。人の温もりを与えてやれなくて……』

 

 そう言うと、クーヤの震えが徐々に治まっていき、こちらを優しく見上げる瞳には、もう涙は流れていなかった。

 

「……ううん、あったかい。クーヤね、今すごくあったかい気持ちに包まれてるの。ビャクヤの温もり、あったかくて気持ちいいよ……」

 

 その言葉に心が熱くなる。

 なぜだろう……もしかしたら、自分も一人じゃないと実感できたからなのかもしれない……。

 あまりにも遠く、心さえ届かないと諦めていた自分という存在を、クーヤは見つけてくれたから。

 もし泣けるのなら、自分は思いっきり号泣していただろう。

 

「ありがとね、ビャクヤ」

 

(それは……こちらの台詞だ)

 

 言葉には出さなかった。

 それは嬉しくもあり、同時にちょっぴり恥ずかしくもあったから……。

 

 

 

『そろそろ、落ち着いたか』

 

「うん……でも、お金なくなっちゃったね……」

 

 そうだった、自分達のお小遣いは先程のスリが持ち去ってしまい、今は一文無しだった。

 

「サクヤ……怒るかな。クーヤのこと嫌いになっちゃうかな……」

 

 そう言って再び泣きそうな顔になるクーヤ。

 クーヤは、自分に親しい者がいなくなることに異常なまでの恐れを抱いている。

 けれど、きっとサクヤなら大丈夫だ、彼女なら何があってもクーヤを見放したりしな い、どうしてか自分はそう確信している。

 

 あ、でもちょっぴり怒られはするかもしれない……。

 

『泣きそうな顔をするな、自分も一緒に謝るから。一生懸命誤ればサクヤだって許してくれるさ』

 

「……ホント?」

 

『ああ、だから今日はもう戻ろう』

 

 せっかくのお出かけだったが、お金がないんじゃお買いものは出来ないし。

 だからせめて、遠回りして帰ろう。

 クーヤと一緒に、この町を見ながら。

 

「いこ、ビャクヤ!」

 

 クーヤが自分の手をとって走り出す。

 その顔に先程までの恐怖はもうない、夕日がさらさらとした金色の髪に当たってキラキラと輝き、その笑顔をより一層引き立てていた。

 

 

 

 

 

「もう、駄目じゃないですか!」

 

 宿に戻り事情を説明すると、やはりサクヤに怒られた。

 

「ごめんなさい……」

 

『すまないサクヤ。だがクーヤを責めないでくれ自分がキチンと注意していればこんなことには……』

 

 自分はどうにかクーヤに矛先が向かないように必死に事情を説明しようとするが……

 

「当たり前です。あたしはクーヤ様には怒っていません。ビャクヤさんにだけ怒ってます」

 

『……』

 

 心配するまでもなくすべて自分のせいになったようだ。

 

「ビャクヤさん、ちょっとこっちに来てください。あ、クーヤ様はそこで待ってて下さいね」

 

 問答無用で部屋の隅に連れて行かれる自分。

 

「そもそも、あたしはビャクヤさんに"クーヤ様をお願いします"と言ったはずです」

 

『……はい、そうです』

 

「それなのに、クーヤ様の目が少々赤いのはどういうことなんですか」

 

『……も、申し訳ございませんでした』

 

 返す言葉もない。

 幸いなことにお金に関しては不問にしてくれるということだが、サクヤからの信頼はダダ下がりというところか……。

 

「それに、これも最初に言ったじゃないですか、頭の外套は取らないようにしてください、と。帰ってきた時」

 

 ああそういえば、あのフードは取らないよう言われていたな。

 スリからのクーヤ大泣きでそんなことすっかり忘れてしまっていた。

 

『スマン……何か不味いことがあるのか?』

 

 自分にとっては何気ない質問。

 しかしサクヤは少々困った顔をして

 

「あ、いえ、こうして無事にクーヤ様が戻ってきたのならいいんです……」

 

 どこか歯切れが悪い。

 つまりクーヤには理解できないが、フードをかぶる……つまり身を隠すことで身の安全を保障するということ。

 

(思い当たる心当たりはひとつある……だがそれは今聞くべきことでもないだろう)

 

「むー、サクヤ……」

 

「と、とにかくですね、クーヤ様に万が一のことがないように……ってクーヤ様!? ど、どうなさいました」

 

 見ればいつの間にか自分の足元に立っているクーヤ。

 そしてそのまま両手を開いて自分の腰辺りをしがみつくように密着して……

 

「……サクヤ、ビャクヤを独り占めしすぎ」

 

 と、頬を膨らませながら少々不機嫌気味にサクヤを見つめる。

 

「え!? ひ、独り占めって……。ビャクヤさん! これはどういうことか説明してください!」

 

『じ、自分がか!?』

 

 説明しろと言われてもどうすれば……。

 クーヤはそんなこちらの気持ちもお構いなしに自分を抱きしめてご機嫌だし。

 

「むふふー、ずっと一緒ー……」

 

「ビャクヤさん!」

 

『あーもう……どうすりゃいいんだー!』

 

 この後、騒ぎすぎたせいでみんな仲良く宿の店主にこっぴどく叱られましたとさ。

 

 





とりあえずここらでほのぼのは終了ですかね……
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