うたわれるもの外伝 ~天と地を繋ぐ絆~   作:もりベス

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ラストバトルです!



第十七話 「機械仕掛けの大神」

手に入れたるは万物を生み出し作り変える力。

身に纏うは鋼で作られし大いなる存在の模倣。

そして振るうはすべてを超越せし"神"の威光。

その名は“機械仕掛けの大神(マキナネミテア)

 

けれどただひとつ変わらないもの……それは"心"。

今ここにいる存在は、皇白夜そのものだということだ!

 

 

 

 

 

 

 ラクシャインから放たれた拳は、自分の手に掴まれ硬直していた。

 そう、これは自分の手。

 

「コレハ……クッ!」

 

 目の前の光景に驚愕しつつも、異質な気配を感じ取ったラクシャインは手を振り払って拘束から逃れ飛び退く。

 

「ビャクヤ……貴様ソノ姿ハ……!」

 

 驚くのも無理は無い。

 本来ならばもうこの地には現れないはずの大いなる力を持ちし存在。

 例え模倣とは言え、仮面(アクルカ)を持たない自分がその姿を宿すなど考えられないことだから。

 

『どうした、ラクシャイン? 決着をつけるんだろう』

 

「……オォオオ!」

 

 返事もなしに突進してくるラクシャイン。

 だが、その程度の体調な動作ならば……

 

『……フッ! らぁ!』

 

 突き出された腕をフットワークで避わし、そのままこちらの拳をがら空きの腹へねじり込む!

 

「グ、ガァァ……」

 

 悪いがこと肉弾戦においてはこちらの方が圧倒的に有利だ。

 元々仮面の者(アクルトゥルカ)というのは大いなる存在の模倣をベースに元のマルタの性質を組み込んだ姿を成すものであり、普段使いなれないまったく異なった肉体を操るのと同義だ。

 故に100%の本来の動きを出すことができない。

 

 だが自分は逆、元のロボットの身体をベースに生み出した鋼の肉体に大いなる存在を注ぎ込んだもの。

 最終的な姿は大いなる存在に近づこうと変化はするが、身体の動きを今までどおりの方法で100%引き出すことが可能だ。

 元々付いていなかった尻尾にはどうも違和感を思えるがな……。

 

『このままもう一発……!』

 

「サセルカヨォ!」

 

『ッ!?』

 

 いきなりラクシャインの体より突風が吹き出し押し返される。

 見ると、腕の外骨格がいつの間にか以前見た刀のような形状へ変化しており、それを振るったことで発生したのか。

 自分の身体はその風に押され、柱を何本も倒しながら吹き飛ばされていく。

 

『がっ……!』

 

 やがて部屋の壁に衝突すると、やっと身体に自由が戻った。

 不味いな、相当離されてしまった、クーヤが危ない。

 

『しかし今のは……』

 

『ふむ、これも仮面の者(アクルトゥルカ)の性質の一つだね。自らの内に宿る属性神の影響が色濃くその力に影響される』

 

 心の中から先輩の声が聞こえる。

 どうやら先輩も無事にこの身体で意識を持つことができたようだ。

 それも自分が望んだからかもしれない……が今はそんなことより……

 

『それって……自分も使えたりします?』

 

『いや、元来属性神はアイスマンを元にしたマルタのみが得ることのできた特異な性質。元が純粋な人間である我々には持ち合わせていない』

 

 なら、状況は不利……? いや、そんなことはない。

 元来この力には、そんなものに頼らずともあらゆる自然現象を超越した力を持ち合わせているはずなんだ。

 

『白夜、おそらく君が考えてることが正解だ。君は君の使いたい力をイメージし、創造すればいい』

 

 そうだ、力が足りないなら生み出せばいい、武器が無いなら作り出せばいい。

 何も相手と同じ土俵で戦う必要はない……自分が最も得意とする分野で自分らしい戦いをすればいい。

 

『しかしどうにも……無から生み出せるのは今の自分ではこの身体が精一杯だ。ま、足りないところは他から頂戴すればいいだけだ』

 

 幸いにもここには壊れたアベル・カムルが大量に投棄されている。

 大いなる父(オンヴィタイカヤン)……人間が作り出した兵器の残骸なら、自分の頭の中にある武装の設計図の素材にはまさにうってつけというものだ。

 

 時間もあまりない、まずは……

 

『《分解(アナライズ)》』

 

 かざした手の先、壊れたアベル・カムルが粒子となって分解していく。

 やがてそれは自分の下に集まり一つの大きな光の塊に変わる。

 

『《設計(プランニング)》』

 

 自分はそれに情報を加えていく。

 今必要なもの、この状況を打開するための設計を自分の頭からひねり出す。

 

『《再構築(ビルド)》……』

 

 そしてすべての工程が終了する。

 粒子は形となり、この身体へと装着される。

 

 作り出した物は……

 

『なるほど、ブースターか。エネルギーは大丈夫なのかい』

 

『この身体から溢れてくるんで、問題ないです……よ!』

 

 背中と足へ生み出したブースターを稼働させ、飛ばされた時の倍以上のスピードで元の場所まで飛び出す。

 そして飛び出して数秒でラクシャインの背中が見える。

 

(腕を振りかぶっている……あいつやっぱりクーヤを!)

 

 ならば今すぐにでも止めさせる必要がある。

 

『余所見するんじゃねぇ! ラクシャイイイイイン!』

 

「ッ!? バカナ、モウ戻ッテキタダト!」

 

 狙い通り、ラクシャインは攻撃対象をこちらへ変えてきた。

 

「ダッタラ、マタ吹キ飛ンデモラオウカァ!」

 

 腕を振るわせまたあの風の斬撃を飛ばしてくる。

 しかし、それはもう対策している!

 

『《再構築(ビルド)》! 連結エネルギーシールド!』

 

 ここへ飛んでくる途中、すでに自分は数体のアベル・カムルを《分解(アナライズ)》させてもらった。

 そして生み出したのはエネルギーシールド……以前ロボットの身体に備え付けられていたものを強化したものだ。

 しかもただ単に防御面を強化しただけではない、一つの発生器から生み出せるエネルギーは限界がある。

 なので今回は身体に直接装着するものではなく自立型のホバリング機能を追加し、それを数個用意すいることで重ねればより強固に、拡散すればより広範囲を守れるよう作り出した。

 

「バカナ、何故斬レネェ! 何故飛バネェ!」

 

『ここだとクーヤに被害が及ぶ……離れるぞ』

 

 風の刃が勢いを無くした隙を突き、ブースターで加速した蹴りを炸裂させる。

 

「グオォ……!?」

 

 今度はラクシャインの巨体が部屋の奥へと吹き飛んでいく。

 そして、それを逃さないように再びブースターを稼働させ距離を縮める。

 

『《再構築(ビルド)》……さぁラクシャイン、決着をつけよう』

 

 残っていた粒子をさらに組み上げ、腕に装着する。

 それは、熱の力で対象を切り裂く武器、ヒートナイフ……いや、これはもうヒートブレードと呼ぶべきだろう。

 

「イイゼ……ダッタラ見セテヤルヨ。俺ノ本気ヲナァ!」

 

 途端、急に飛び上がったラクシャインの体から力が溢れてくる。

 辺り一帯を包む風は、巨大な乱気流をいくつも生み出し、もはや立っていのが精一杯だ。

 

「力ヲ……根源ノ力ヲ……モット」

 

 気流はさらに勢いを増し、壁を、柱を、天井を破壊し城を裸にしていく。

 

『これは……自らの許容量以上に仮面(アクルカ)の力を開放しているな。おそらく多くの寿命を犠牲にしているだろうが、もうそんなことはお構いなしか』

 

 先輩の言葉どおり、今のラクシャインからは先程よりも強く根源の力を感じられる。

 このままこの威力の乱気流を出され続けたら流石にこちらの身体も危ない。

 

『なら……《分解(アナライズ)》』

 

 巻き上げられたアベル・カムルを分解し粒子を引き寄せる。

 

『できればこれは作りたくなかったが……《設計(プランニング)》』

 

 今は好き嫌いを言っている状況ではない。

 自分の頭の中にあるこの気流をどうにかできる唯一の兵器……その情報を粒子へと流しこむ。

 

『さぁいくぞ……《再構築(ビルド)》!』

 

 瞬間、自分が作り出したそれ(・・)は、周囲の気流を払い、気候を安定させる。

 

「ナン……ダト!? 何ガ起キ……」

 

 驚愕するラクシャインに考える暇を与えない。

 自分は左腕に作り上げたモノ……世界を一度ならず壊した兵器、その極小版を構えラクシャインへと狙いを定める。

 

 

 

『さぁ、放てミニアマテラス。“浄化の炎”!』

 

 

 

 それは無慈悲な一撃。

 この世界の"自然環境"を統べるアマテラス……その複製品。

 乱気流をそよ風に変えることなどたやすく、圧縮した数億度の熱を一点に向けて照射することだって造作も無い。

 

「ガ……アアアァァ! クソガァァ! ビャクヤアアア!」

 

 が、やはり1/100にも満たないサイズでは仮面の者(アクルトゥルカ)を消滅させるには至らなかったようだ。

 外骨格の刃に風を纏わせ突進してくるラクシャイン。

 

 次の一撃ですべてが決まる。

 

 自分の身体も先程の乱気流ですでにボロボロだ。

 ヒートブレードを構え、エネルギーシールドを展開し、ブースターを起動させる。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

『ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 自分達の気迫は地に木霊し、天を貫き、そして……

 

『「――――――!」』

 

 二人の身体がぶつかり合って、すべてが弾けた。

 ラクシャインは仮面の者(アクルトゥルカ)としての力を維持できず、人の姿へ。

 そして自分は作り上げた模倣の身体が粉々に砕け、その破片が宙を舞う。

 

(だけど……終わりじゃない)

 

 ラクシャインがもう一人の先輩と繋がっている限り、悲劇はまた起こる。

 だから……そのために自分は……

 

「ちっ……体の自由が効かねぇか。まったく、損な役回りを任されたもんだろ、アンちゃん?」

 

『ああ……お互いにな』

 

 巨大な鋼の身体から飛び出した小さなロボット。

 それを操作する自分はゆっくりとラクシャインへ近づく……その手に宝刀クトネシリカを構えて。

 

「ハッ……あんな約束を覚えてるたぁ、やっぱアンちゃんはとんでもねえお人好しだな」

 

 ラクシャインと出会って間もないころ、こいつの過去を聞いた夜に交わした約束。

 

『ラクシャイン……先に地獄で、待っててくれ』

 

「馬鹿野郎、んなとこ行くのは俺一人で充分だ。アンちゃんは嬢ちゃん達と一緒に天国に行きな……」

 

 こいつと最後にこんな軽口を言い合えて、自分はどこか安心していた。

 確かに自分達の出会いは仕組まれたものだった……けど、その後に築き上げたものは本物だったから。

 

『……じゃあな』

 

ザンッ……!

 

 ラクシャインの心臓へその刃を突き立てる。

 

「ゴフッ……! ああ……これでやっと死ねるなぁ……。俺の知り合いにゃ地獄(ディネボクシリ)に落ちるような奴はいねぇだろうし……死出の一人旅と……行かせてもらうぜ……」

 

 人斬りとして生き、生涯を自らの欲望に捧げた男。

 人からすれば、まさに地獄に落ちるに相応しい者……けれど

 

『ラクシャイン……お前は自分にとっての友だった。今なら、そう言える』

 

「そうかい……そいつは嬉しいねぇ……。ビャクヤ、もう嬢ちゃん……泣かすんじゃねぇ……ぞ……」

 

(ラクシャイン……お前は自分達の仲間だった、その事実はいつまでも自分の胸に残るだろう)

 

 絶命を確認し、剣を引き抜く。

 この剣は人を殺めたという自分の罪の証。

 

(地獄の底からこの剣を通して見ていてくれ、自分がこれから何を成すのかを)

 

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