うたわれるもの外伝 ~天と地を繋ぐ絆~   作:もりベス

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第七話 「出会い」

 さて、ラクシャインという護衛を得て数日後。

 無事戦場をくぐり抜けトゥスクルへの旅路を進める自分達だが……。

 

『なんだか戦闘地帯が増えてきたような気がするな……』

 

 旅を始めて一日二日はまだ大きな衝突はなく、せいぜい小競り合いといった程度だった。

 しかし、トゥスクルへ近づくにつれ大きな戦闘が増えているのは目に見えて明らかだ。

 そのお陰で、脇道をコソコソと抜けようとする関係ない自分達にまで襲いかかってくる始末。

 自分はクーヤとサクヤを守ることに専念し、ラクシャインが敵を素早く斬り伏せることによってなんとか大きな戦闘は免れてはいるが……。

 

「気のせいじゃねぇぞアンちゃん。いくさ場の中でもここは最前線だからな。三國のぶつかり合いのまっただ中を"はいどうぞ"なんて素直に通しちゃくれねぇよ」

 

 ん? ちょっと今気になる言葉があったぞ。

 

『待てラクシャイン。これは三國の争いなのか? 最初の……お前と出会ったいくさ場では二つの陣営しか戦っているようにしか見えなかったが?』

 

「あっと……そういや話してなかったか。サクヤの嬢ちゃんがいる手前、こいつを話していいもんかと思ってな……」

 

「あたし……ですか?」

 

 正確にはサクヤ()だろう。

 だがクーヤは精神が幼すぎるため言っても首を傾げるだけだろうということらしい。

 

「このいくさはま、最初は昔からいがみ合っていたニ國の戦い……だったんだがな。最近そこへトゥスクルの奴らが割って入るように乱入してきたわけよ」

 

 そのことにサクヤは驚いていた。

 自國のいくさ事情について何も知らなかったことがそんなにショックだったのだろうか?

 

「まさか、あたしとクーヤ様がオンカミヤムカイへ出向いている間にそんなことが……。皆さんそのようなことはあたし達の前では一言も話してなかったのに……」

 

「まぁトゥスクルは今や広大な國だし、いくさとは関係ない田舎の一般人が知らないなら別に普通のことなんだが……嬢ちゃん達は本城に関わりのあるモンだからどうかとは思ったが。本当に知らなかったとは、嬢ちゃん達はよっぽど大事にされているってことか」

 

 うんうんと納得するように首を振るラクシャイン。

 しかし、いくさの経験や各國の内部事情などの情報をまったく持たない自分がなんとも蚊帳の外な感じがして置いてけぼりだ。

 このままでは影が薄くなっていずれ忘れ去られそうだ……なんとか自分も話に入らなければ。

 

『それで? 結局そのトゥスクルが参戦してどうなったんだ? 大國って言うくらいだから弱小國は簡単に蹂躙しちまってるって話か?』

 

「アンちゃんよぉ……それを嬢ちゃんの前で言うか?」

 

 しまった! 今の私の一言でサクヤの顔がまた暗く……。

 そりゃあれだけ信頼していた自國の者達が力に物言わせて侵略活動してるなんて酷評を呟いてるようなものだというのに。

 うぐ……クーヤもほっぺたを膨らませ、怒った瞳でこちらを見つめている……。

 

『す、済まない。別に二人の國を悪く言ったわけじゃ……』

 

「い、いえ! 別にビャクヤさんが謝ることでは……」

 

 ……き、気まずい!

 この空気、どうすればいいんだ……もともと研究一筋だった自分では女性の扱いなどまるでわからない。

 こんな時に気の利いた台詞の一つも言えない、自分はゲームかなにかの主人公ではないただの凡人なのだから当然なのだが。

 

「はっはっはっ! やっぱりおもしれえなぁアンちゃん達は」

 

 こいつは……人が困っているというのに呑気な……。

 

「ま、そんなに暗くなるなよ。別にトゥスクルに悪い噂が立っているわけじゃねぇからよ」

 

『ん、どういうことだ?』

 

 ラクシャインの言っていることがいまいちよくわからない自分は首を傾げる。

 

「トゥスクルは確かにいくさに横入りした。だがそれは長く続いていた戦いを諌めることとなった。しかも死傷者をほとんど出さず、敗れた國の難民となった民も誰一人拒むことなく受け入れているってんで、紛争に悩まされていた村なんかは大手を振るって大喜びしたらしいぜ」

 

 へぇ、そりゃ凄い。

 自分はいくさを知らない人間ではあるが、死傷者を出さないという点は傍から聞いてても簡単にできることではないのはわかる。

 

『いやぁ、凄いんだなぁトゥスクルの人達ってのは。な、なぁクーヤ、サクヤ!』

 

 ちょっとわざとらしいか……?

 だが、どうやらクーヤは自分がトゥスクルの人を褒めたことにご満悦のようだ。

 

「うん! ぼぼろも、かうらも、べないーも、えっと……皆強くて優しいもん!」

 

「クーヤ様の言う通りです。……でも、どうして今このようなことになっているのかが疑問です」

 

 サクヤの不安はまだ残っているようで、自分はまだ何か情報はないものかとラクシャインをチラッと見るが……。

 

「悪いが俺も知ってるのはそこまでだ。これ以上を知りたかったらあとは自分で聞く方が早いだろ」

 

「そう……ですね。わかりました」

 

 確かに、丁度いまトゥスクルへ向かっているのだから聞くのはそこからでも遅くはないだろう。

 

「っつーわけで旅の再開といこうぜ……と言いたいが、まずは俺がこの先の道は安全か確認してくるから、アンちゃん達はそこら辺に隠れてな」

 

『ああ、頼む』

 

 センサーに頼りっきりの自分とは違い、人の気配に敏感なラクシャインに先行してもらい安全確保してから進むのが今のスタイルだ。

 まぁ、クーヤ達もそろそろ歩き疲れているだろうし、休憩は必要だからな。

 

 

 

 

 

「ラクさん……遅いですね」

 

 サクヤの言うラクさんというのはラクシャインのことだ。

 クーヤがはじめにラクシャインという名前は長くて言いづらいとのことでラクと呼び始めたのがキッカケだ。

 

「すぅ……すぅ……」

 

『しかし言われるとそうだな、クーヤも眠ってしまったし』

 

 安全確認へ向かったラクシャインが中々帰ってこず、クーヤもこの通りだ。

 どこかで道草でも食ってるのか? それとも道中でバッタリ敵と遭遇して危険な状態に……いやでも、ここ数日あいつと共に旅をしているが、ラクシャインが相当な手練だということはよくわかった。

 だから今までの安全確認でも心配していなかったのだが……。

 

「ここまで遅いと流石に心配になりますね……。あたしが様子を見に行きましょうか……」

 

『いやいや、サクヤが出て行くのは危険だって! ここは自分が前に出て敵を探りながらラクシャインを探すから、サクヤはクーヤを乗せたウマ(ウォプタル)を連れて離れないようについてきて』

 

 こうして自分達はラクシャインを探しながら進み始める。

 だがサクヤ達を危険な目に合わせるわけにはいかない……センサーフル活用で辺りを探りながらゆっくりと進んでいく。

……すると。

 

(む、この先に熱源反応が三つ……しかも)

 

 サクヤを静止させ、音を立てないよう合図する。

 そして、この身体の集音機能を最大値に引き上げ、熱源のあった方角へ耳を済ませると……。

 

キンッキン!

 

『これは……金属がぶつかり合う音だ』

 

 おそらくこの先で戦闘が行われている。

 それがラクシャインによるものかどうかはわからないが、確かめなければならないことに変わりはない。

 

『自分が様子を見てくる、サクヤ達はここでじっとしているんだ』

 

 サクヤ達を茂みに隠れさせて自分は音のする方向へと向かう。

 進むにつれて段々音が大きくなるり、その先に林の中に不自然にポッカリと何もない開けた場所へたどり着いた。

 そこで見た光景は……

 

「はあああああ!」

 

ギィン!

 

「おおう、危ね!」

 

 予想通り、そこにラクシャインはいた。

 

(だがあいつは何をやってるんだ……)

 

 どうやらあいつは戦闘中のようだが、それに対峙するのはどちらも美しい二人の女性だった。

 二人と言っても、内一人は自分と同じように少し離れた場所で酒のようなものを飲みながらお気楽そうに眺めている。

 だがそれよりも目についたのは……

 

(てかなんだよあの大剣は、身の丈……いやそれ以上はあるな)

 

 もう一人は、今まさにラクシャインと熱戦を繰り広げているなんとも凛々しい武士のような女性。

 猛禽類のような耳に赤い髪のポニーテールが剣を振る度に揺らめき、思わず美しいと感じてしまうほどに。

 

 ……こんなことを考えてる場合ではなかった。

 どうにかしてこの戦いを終わらせなければ。

 

『ラクシャイン! お前何やってるんだ!』

 

「アンちゃんか! スマネぇが今取り込み中だ!」

 

「 !? 」

 

 こちらの存在に気づいたのか、女武士は一瞬で距離を取る。

 

「仲間がいたのか……。だが、たとえ相手が何人であろうと貴様だけは必ずこの場で仕留めさせてもらうぞ、悪漢ラクシャイン!」

 

 彼女の殺気がこの仮初の身体でもひしひしと伝わってくるようだ。

 

『ラクシャイン、彼女知り合いなのか?』

 

「いや、エヴェンクルガ族に知り合いはいねぇし恨まれる覚えもないけどなぁ……」

 

『だけど、彼女明らかにお前に恨みを持ってるみたいだぞ? 本当は何かしたんじゃないのか?』

 

「いやぁ、俺はただちょろっと道を聞いてる最中にこのネーチャン達の瞳の輝きが今まで見た奴らの中でも最高峰のモンだったからよ、ちょいと斬ってもいいか? って尋ねただけなんだがよ」

 

『いやそれだろ絶対!』

 

「いやだってよ、凄いんだぜこのネーチャン達! 瞳の奥にある絶対に揺るがないだろう忠誠心と愛、それがこんな輝きを放つモンは今まで見たことねぇ!」

 

 あーくそっ! 今まで何の問題もなかったから失念していたが、ラクシャインはこういう奴だった……。

 

『す、すみませんお二人共、実はこいつちょっとばかし頭がおかしくて……』

 

「貴殿には悪いが此奴の名を聞いた瞬間からそのようなことは重々承知している。今は亡きクッチャ・ケッチャ國の(オゥルォ)オリカカン殿の(あだ)である貴様が狂っていることはな!」

 

「うへぇ……よりにもよって義兄(アニキ)の知り合いかよ……」

 

 今の言葉を聞いて、どうやらラクシャインにも心当たりがあるようだ。

 そういえばこの間聞いたな……ラクシャイン(このバカ)が自國を混乱に貶め、王様でもある義理の兄に追われていたって話だったよな。

 

「鎧の者よ、お主も其奴に加担するとなれば容赦はしないぞ」

 

 まいったな、未だトゥスクルへたどり着けていない自分達にとってラクシャインの存在はまだ必要だ。

 

『おいラクシャイン、どうにかして隙を作り彼女から逃げ出せないのか?』

 

「スマン無理」

 

 なんでやねん!

 

「悪ぃが実力が違いすぎてな……実はさっきのもこっちは全力なのにあっちはまだ余裕を残してやがる。それに……あっちの酒飲んでるネーチャンもエヴェンクルガのネーチャンと同じか、それ以上の実力だと見て間違いない」

 

 ラクシャインがここまで言うなんて……つまり逃げることは難しく、戦闘は避けられないのか。

 それもほぼ勝ち目のないような戦いに……。

 

(だけど、ここでやらなきゃクーヤとサクヤを無事に送り届けられるかわからない。ここはやるしか……!)

 

「まったく……騒ぐのはいいですけれど早めに終わらせてもらえないかしら? 私達は急いでる身だということを忘れないでほしいですわ。……それに、お酒も切れてしまいましたし」

 

 な、なんだ? 後ろでお酒を飲んでいた女性がこのピリピリとした雰囲気をぶち壊して文句を言い出したぞ?

 なんというか……その態度に武士の女性もご立腹のようだし。

 

「またお前は! 目の前に仇敵がいるんだぞ! それを無視するというのか! それにいつも余計なことをして(それがし)達の旅路が遅くしているお前がそれを言うな!」

 

「あら、私にとってその方は仇敵ではありませんし。それに余計なことなどしてませんわ、どれも必要なことよ」

 

「お前の飲み代のためだろ!」

 

 あっれー? なんか自分達そっちのけで口論始めちゃったぞおい。

 

「なぁアンちゃん……」

 

『ああ……』

 

 もしかしなくても今なら逃げるチャン……

 

「逃がさん!」

 

『うおお!』

 

 あ、危ない……。

 逃げようと後ろを振り返ろうとした瞬間に切りつけられた。

 反射的に飛び退いてエネルギーシールドを展開しなければこの身体であっても確実に切られていたであろう鋭い太刀筋。

 

 そして、そのエネルギーシールドでさえ切り裂かれもう使い物にならない。

 

「貴殿は妙な術を使うな……恨みはないが、その男を擁護するというのなら仕方ない」

 

(だ、駄目だ……!)

 

 もう身を守る術がない……ここで、終わりか……。

 

 

「待ってください!」

 

 

『 ! 』

「 !? 」

 

 最後の一振りは、降ろされること無くその場で留まった。

 突如茂みから現れた人影、その者に全員が驚いたように視線を向ける。

 

 そこにいたのは……

 

『馬鹿! サクヤ、じっとしてろって言っただろ!』

「サクヤ殿!? どうして貴殿がこのような場所に!」

 

 あれ? 女武士さんも驚いて……ってかどうしてサクヤのことを知って……。

 

「トウカさん、カルラさん、お久しぶりです。この人達は敵じゃありません……どうか剣を収めてください」

 

え、え? も、もしかして……お知り合い、デスカ?

 

 




ついに偽りの仮面のアニメが終わってしまいましたね……。
クオンの真の力の描写がなかったりと、アニメでは描写しきれなかった部分もありましたが、キッチリ終わってよかった。

そして新PV! より一層『二人の白皇』が楽しみになりました!

このお話も、発売前に終わらせたいなぁ……

3/29誤字報告ありがとうございます!
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