IS(インフィニット・ストラトス) 2人目の男性IS操縦者 作:スーパープルコギ
─あのままでは人に戻れなくなってしまう!─
「優太……その格好……」
「みなまで言うな……誰が好き好んで着るとでも?」
「は、はは。いやぁ……曽我美君はこ、個性的、だね……」
ISスーツでは駄目だと言われた俺はすぐにエイシャを探しに校内を駆けまくった。
しかし、今回は本気で逃げ隠れているようで、遂に見付けることは出来なかった。結果、織斑先生に相談。帰った来た答えは─
「私に言うな」
だった。
くそぅ、教師を頼ったらこれかよ……。で、どうしようとクラスメイトと多数決を取った結果、女制服を着るが99%。怒られるのを覚悟でISスーツがセシリア1人だった。
無論、多数決とは言え否定はした。が、「着るまで出さない」と全ての出入り口を塞がれた俺は渋々着ることになったのだ。幸いにも、カツラと黒いストッキングがあったので遠目では女子にしか見えない。
それで何とか騒がれること無く屋上に来れたのだが……目の前の2人の反応が痛い。
「んんっ。まぁ、こんな格好で悪いが自己紹介がまだだったな。俺は曽我美優太。呼び方は何でも良いよ」
「よろしく。僕も何でも良いよ。優太」
「よろしくなシャルル。そう言えばデュノア社のご息子だそうで……お手柔らかに頼む……」
「そんなのじゃないよ」
自己紹介が済んだらカツラを取って屋上に備えられた芝生に腰を下ろす。
「んじゃ、他も自己紹介終わったし昼飯食おうぜ」
「はい。此方が今回お持ちした物ですわ」
そう言って差し出されたのはバスケットに綺麗に収まったサンドウィッチ。
真っ白な食パンにサンドされた卵や野菜の色が鮮やかで、まるでプロが作ったようだ。
「へぇ……今回はサンドウィッチか。喉渇きそうだな……」
ちょっくら飲み物でも買ってきようかな。
「それなら心配要りませんわ。今回はわたくしがこのサンドウィッチを造りましたし、これに合うお飲物を作ってきましたわ」
「ん?今回は?」
「……お恥ずかしながら、わたくしこの前のお弁当はナギさんが作って余った物を頂いたのですわ。わたくし1人では食べきれなかったもので……」
「そうだったのか。後でナギナギにお礼言わねぇとな。しかしプロみたいだなぁ……」
「だな。凄いなセシリア」
「本通りに作っただけですわ。どうぞ食べてくださいな」
本通りに作っただけでこんなに綺麗に出来る物なのか?
もしかしてセシルってお嬢様でIS動かせて国家代表候補生で料理も出来ちゃう?
「お言葉に甘えて……頂きます」
卵サンドを手に取り、口へ運ぶ。
おお、食パンの柔らかさと卵のスクランブルな感じが何とも……
タタタタッ!タタタタッ!
「Огонь!Огонь!」
(撃て!撃て!)
「Aaaaa!Меня подстрелили!Помогите!」
(あああああ!撃たれた!助けてくれ!)
「はぁ、はぁ!」
「Тaaaaaaнк!」
(敵の戦車だぁぁぁぁぁ!)
「!?砲撃くるぞぉぉぉ!待避ぃぃぃぃ!!」
ドォォォン!
「うぐぁっ!くっ……そ!何だってんだ!サンドウィッチが急に進軍を開始するなんて……!うぐ!」
「おい!優太!大丈夫なのかよ俺達!すぐそこまでサンドウィッチ軍が迫ってるんだぜ!?」
「そんなの見りゃ分かるよ一夏!今はここが!俺達が守るここが最後の防衛ラインなんだ!何としてでも守り徹すぞ!」
「おう!」
「Yuuta!Я за тобой!」
(ユウタ!俺はアンタについていくぜ!)
「Я тоже!」
(俺もついてく!)
「Я тоже!」
(俺も!)
「Ла!Следуйте за мной!Ураааааааа!!」
(勿論だ!行くぞおまえら!うらぁぁぁぁぁぁ!!)
「「「Урааааа!!」」」
(うぉぉぉぉぉぉ!)
俺達は己を鼓舞し、奮い立たせ、再び立ち上がる。あの忌々しいイギリスからの侵略者(サンドウィッチ軍)を叩き潰すために!
「God dammit! Somebody draw their fire!」
(畜生!誰か射撃をひきつけろ!)
「Fuck me!」
(クソッタレ!)
「Frag out!」
(グレネード!)
「Дерьмо Граната!」
(クソッ!グレネードだ!)
「しまっ─」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ご……ぉぁ……っ、うぶっ……!」
「ど、どうしましたの優太さん!大丈夫ですの!?」
「ちょ、セシリア!一体何混ぜたんだよ!」
「え……ガチで白目剥いて痙攣起こしてるんだけど……」
「イヤァァァ!ユーが盛られたぁぁぁぁ!!」
「わたくしは何も盛ってませんわ!」
サンドウィッチを一口口に含んだ優太が突然白目を剥いて痙攣し始める。
口からは咀嚼しかけたサンドウィッチと泡が溢れ、芝生に仰向けで苦しそうにもがいている。
「んぐっ!ん!うぶ!ん!んぐっ!ん!」
「き、きっと喉に詰まったんですわ!優太さん!こちらを飲んでくださいな!」
喉に詰まった応急措置としてセシリアが特性の紅茶を優太に流し込む。
刹那、一段と大きく仰け反り跳ねた優太がそれっきり微動だにしなくなる。
「……殺したわね……」
「……死んだ……」
「……え、トドメ……」
「……殺ってしまったかセシリア……」
「……ま、まずいよセシリア!」
鈴、一夏、ルイディナ、箒、シャルルが動かなくなった優太を見て確信した。
一方セシリアはまだ心臓の鼓動が聞こえる、と更に流し込む。流石に一同がセシリアの凶行を抑えに掛かる。
「何をしますの!」
「それはこっちのセリフよ!流石に殺しちゃまずいって!」
「優太起きろ!起きろぉぉぉ!」
「イヤァァァ!お兄ちゃん!死なないでぇぇぇ!」
流石のルイディナも気が動転してしまい、皆の前では絶対に言わない「お兄ちゃん」と呼んでしまう。
箒と鈴の2人がかりでセシリアを押さえ、シャルルが他に屋上に居た女子が近付いて来ないように何とかしている。
「優太!死ぬなよ優太!」
優太!
優太……!
優……太……!
……!
─ドクンッ─
「ォォォォオオオオオオオ!!」
「きゃっ!」
「な、何だ!?」
突然、優太が跳ねるように仰け反り起きた。
その眼は赤く、否、紅く輝き、仰け反りながら獣のような咆哮を上げる。
「これは……!」
「暴走!?」
「曽我美君!」
いつの間にか数が増えた野次馬からそんな声が飛ぶ。
心なしか、BGMが「THE BEATS」に代わったと思う若干名。
「え、何だよこれ!」
困惑する一夏達を置いて、野次馬の女子達は頻りに何かを叫んでいる。一夏にはほんの一部「400%」というワードしか聞き取れない。
優太もただ仰け反っているだけではなく、口を半開きにし、眼を爛々と光らせたまま四つん這いになり、気味の悪い動きで柵へと近付いていく。
「駄目よ!あのままでは人に戻れなくなってしまう!」
誰かが叫ぶ。それが嘘か真か分からないが、今の優太の挙動は常人のそれとはかけ離れている。
「ォォォォオオオオオオオ!!」
再び咆哮し、高出力の義腕で柵を破壊。そのまま屋上から宙へ身を投げ出した。
「キャァァァァ!」
校舎の高さは10m。そんな高さから落ちれば助かる見込みはほぼない。だが今の優太には10mだろうが20mだろうが変わらなかった。
四つん這いのまま着地した優太は何かを探す獣のように辺りを首だけで見回すと、グラウンドを突っ切って何処かへ這っていく。
グラウンドには昼休みにも関わらず部活やIS操縦の為のトレーニングを行っている女子達も居り、彼女らは突如目の前を横切った優太に驚いて悲鳴を上げたり腰を抜かしたりしている。
「ォォォォオオオオオオオ!!」
「キャァァァァ!初号機よ!」
「いやぁぁぁぁ!」
「……」
「……セシリア……」
「わたくしは何も盛ってませんわ!冤罪ですわ!」
「でも」
恐ろしい物を見るような眼差しの箒に比較的冷静な鈴が柵から離れてセシリアのバスケットに触れる。
そして中から別のサンドウィッチを取り出し、食パンをペロリと舌先で舐めてみる。
「あばgj@,rcなdがい%☆らyお!!?」
「うわぁ!鈴!大丈夫か!?」
「う、へへへ。へへへへへへ( ☆∀☆)」
「鈴さんが壊れましたわ!」
鈴も眼をギラギラと光らせ、奇声を上げる。
これには流石のセシリアも自身の料理の最中に何か混じっのでは無いかと心配になり始め、『ブルー・ティアーズ』のハイパーセンサーとリンク。
すぐにサンドウィッチの毒物反応がないか調べる。だが、何度やっても結果は同じで毒物1つの検出されない。
「どういう事ですの?」
(どういう事もなにも、セシリアの料理が常軌を逸した不味さを誇ってるとしか……)
その場に居たセシリア以外全員がそう思った。
「っぱふ!?はぁ!はぁ!あたし何を……」
「鈴!?良かった、元に戻ったんだな!」
「元に……そうだったわね。あたしの一舐めでこれなんだから、一口食った優太はもう……」
「な、何を言いますの鈴さん!優太さんなら生きてますわ!ほら、こんなに元気……」
セシリアがブルー・ティアーズのコアネットワークを介し、優太の位置をマップにだす。
皆に見えるように空中投影ディスプレイを出すと優太の位置を示すバイオレットの点が学園内を凄まじい速度で動き回っているのだ。
最早人を超え、逝ったと思った一同はそのディスプレイからそっと目を背け、バスケットを静かにセシリアに押し返した。
「「「……」」」
無言の圧力がセシリアの顔を蒼白にさせていく。ブルー・ティアーズの気遣いか、ディスプレイが勝手に閉じ、サンドウィッチの成分を事細かに標示している。
「……わたくしに、食べろと……?」
それ以外何があると誰かから言われ、腹を括ったセシリアが遂にサンドウィッチを取った。
既にブルー・ティアーズはサンドウィッチに対して『未確認兵器確認』と兵器扱い。仕舞いには『警告』をけたたましく出す始末。
(わたくし……死にましたわね)
自嘲気味に目を瞑ったセシリアがサンドウィッチを口に含む。
「……あら?美味しいではありませんの」
意外にも、味は悪くない。それどころか自分のイメージしていた味と変わらない。完璧な出来栄えだ。
それを兵器だ毒だなどと、騒いでいた皆に憤慨したくなる。勿論ブルー・ティアーズにもだ。
「ほら、大丈夫ですわよ。寧ろ美味しいですわ」
誰にも届かぬ声で自慢げに勝ち誇っていた。
後にセシリア自身、何処からが現実なのかは分からなかったと言う。
その頃優太は依然として学園内の至る所に出没し、新聞部の黛薫子の手によってナルガ○ルガの如く眼光が尾を引く写真が出回ることとなった。
同時にセシリアの料理が人外に導くとも広まった。
◇
「えーと、よろしく一夏」
「おう。よろしくなシャルル」
「ところで優太は同じ部屋だったんじゃないの?」
「ああ。それなんだけど、あいつが『死にたくないから部屋を譲る』ってさ」
時刻は22時。
今日も箒、鈴、優太、セシリア、そしてシャルルとの特訓で汗を流した一夏は同室になったシャルルと部屋に居た。
今回、昼休みから午後の授業の途中まで暴走を続けた優太は報告を受けた千冬の手によって見事に沈黙させられた。
その後、精密検査を受けてから授業に合流した優太が「シャルルに部屋を譲りたい」と千冬に進言。何とかして1人部屋を獲得することに成功。因みに優太は千冬にしか話していないが、理由は「毎朝殺されかける」「流石に転校生が来てすぐにはカオスにならない」「俺よりも美男子キャラだから理不尽な事にはならない」等々。
もっとも、本当の理由は優太がシャルルに何かあると察知したからだ。面倒事に巻き込まれるのは御免だと一夏に1人押し付けた形になる。
「明日は土曜だな。シャルルは何か用事あるか?」
「別に無いよ。どうかしたの?」
「明日は朝から優太と特訓するんだ。もしシャルルが暇だったらマトモな専用機持ちのアドバイスとか欲しいと思ってさ」
「マトモって、他はそうじゃないの?」
「あぁ。箒は擬音しか喋らないしセシリアは小難しくて何言ってるか分からないし鈴は言葉足らずだし優太は俺と同じレベルでISの知識無いし……」
「あ……はは。大変だね。良いよ、僕で良ければ力になるよ」
「おお!有り難い!」
シャルルは確かに他のメンツと比べても高い実力と知識を持っている。しかも教え方が上手い。そんな人物が教えてくれるとなれば一夏だけではなく優太も喜ぶ。
因みにルイディナは戦闘面では管轄外だと拒否。
「よし、じゃあ寝るか」
「うん。おやすみ一夏」
◇
「チェルシー……わたくしどうすれば良いんですの……」
一夏達が寝たのと同時刻。
部屋着のまま夜風が涼しい寮外のベンチでセシリアが珍しく長電話をしていた。
相手はチェルシー・ブランケット。セシリアの幼馴染みで専属のメイド。歳は少し離れており、チェルシーは18歳。セシリアが憧れ、目標としている人物でもある。
「……という訳ですの」
「成る程……。その曽我美様の暴走を引き起こし、あまつさえ自分の料理下手が露見してしまったと……確かに絶対防御が発動するレベルは凄まじいですね』
「えぇ……わたくし恥ずかしくて……」
『曽我美様は何と?』
「『え?俺ロシアで一夏と戦ってたんだけど。え?何とってイギリスのサンドウィッチ軍とだよ。セシリアは関係無くね?』だそうで、前後の記憶が曖昧なのですわ」
『それはまた……』
脳に相当なダメージが入ったのか、優太はサンドウィッチを食べる前からと千冬に捕獲されてから暫くするまでの記憶が曖昧なのだ。
その割には死の間際で見ていた幻想は良く覚えており、本人と周りの混乱をもたらしていた。しかも、不運にも暴走の後遺症があり─
「しかも優太さん……後遺症で人が変わってしまったのですわ」
『変わった?どのようにですか?』
「それは……」
◇
「おはようございます皆様。本日も大変穏やかで良い日となりそうです」
翌朝。
特訓の為に一夏がシャルルと途中で合流したセシリア、鈴で優太の部屋に行くと、既にISスーツに着替えていた優太が大仰な挨拶をしてくる。
左手は腰に回し、右手は5指の末節部だけが胸に当たるように真っ直ぐ張り、ピエロのような挨拶。
「あー……おはよう優太」
「え、えぇ。今日もいい天気ですわね」
生憎外は曇りである。
「……なぁ。やっぱり後遺症が……」
「……止めてください!……」
「……セシリア何とかしなさいよ……」
「……そう言われましても……」
「おやおや。何を皆様話してらっしゃるのですか。早く特訓と参りませんか?」
今までの優太とは思えない言動に若干戸惑う一同。だが優太は「今までこうでしたが?」と、さも当然かのようにしている。
治すにはセシリアの料理しか無い。だがその料理が新たな混沌を呼ぶのではないか。そう思うと実行できない。
「ささ。参りましょう。ところでセシリア様」
「な、何ですの?」
「本日のラッキーカラー拝見!」
「へ?」
刹那、セシリアのドレスライクな制服のスカートが巻き上がり、下着が露になる。
「ほぅ。ガーターベルトでございますか。この黒のストッキングと黒いパンティは中々眼福ものです」
セシリアの下着は黒いパンティ。セクシーなガーターベルトから伸びるストッキングも同じく黒で統一してあり、15の少女ながらに西洋人の魅力を充分に引き出している。
「な……な……!」
「おっと失敬。写真も撮らせて頂きました。やはりこの艶かしい足で踏んで貰いたいですな」
瞬速のカメラアクションで写真もバッチリ。
優太は変わってしまっていた。
「むふぅ。では参りましょう」
満足した様子の優太に嘆息する一夏と予想を遥かに越えた奇行に絶句したセシリア。
優太は変わってしまった。脳にダメージを負った事で、更に馬鹿になってしまったのだ。
◇
「んんー、甘いですよセシリア様。ビットの制御で手一杯なのは分かりますが回避も出来なければブルー・ティアーズ(雫)が涙を流してしまいますよ」
セシリア様と私はビットの制御の訓練をしていた。
セシリア様も代表候補生と言えどまだ試験段階でしかないビットを扱うのはそう簡単ではない。実際、ブルー・ティアーズその物が試験機なのだ。
「そうは言いましても……優太さんのビットは独立機動武装だから気にしないで動けるんですわ」
「これでも思考制御出来るんですよ。無人機戦で1回だけですが『リコリス・モード』で何とか」
「優太ー。俺ちょっとシャルルと飲み物買ってくるわ」
「畏まりました。私達はここで訓練を続けております」
どうやら一夏様達はお飲物を買ってくるようですな。
この際、私のも頼んでおきましょう。
「さぁ、セシリア様続け……おや?鈴様、どうなさいました?」
「……アンタキモいわ……兎に角、あたしもビットの訓練混ぜなさいよ。その内セシリアと戦う事にもなりそうだし、対策しておきたいしね」
「成る程。私は構いませんが……どうやら我々に熱い視線を送っているお方が居るようですね」
ピットから感じた視線に振り向く。
そこに居たのは明らかな敵意の籠った視線を送るラウラ・ボーデヴィッヒさん。んんー、その突き刺すような目付き、たまりませんなぁ。もっともっと。
「ラウラ・ボーデヴィッヒさん。何用で御座いますか?」
「……」
無言のままピットの奥から出てきたラウラ・ボーデヴィッヒさんは制服姿。どうやら練習に熱心なお方では無いようですね。
しかも痺れるような敵意……どうやら私達に喧嘩を売りに来たようですね。
「曽我美優太。私と戦え」
「おや。これはこれは……突然宣戦布告ですか。困りますねぇ、私は面倒なのでセシリア様、鈴様御2人にお任せしても?」
「馬鹿?」
鈴様の近接武装《双天牙月》で後頭部を叩かれる。
ああ、駄目です鈴様!もっと強く叩いて頂かないと私興奮しません!
「……知っているぞ。貴様の秘密を」
「え?優太さんの秘密?」
「おやおや。私の秘密ですか?んふふ……困っちゃいますねぇ!もしそんなのが知られてしまうと思うとたぎってきてしまいます!」
私は腰を振るように動き、クネクネと動きながらラウラ・ボーデヴィッヒさんに寄っていく。
「んふふふふ」
「うわぁ……セシリア、あいつ終わったわよ」
「あんな優太さん見たくありませんわ……」
「ああ!良い!良いですぞ、その蔑むような目!もっと私を見てください!」
「……遺伝子強化試験体……」
ラウラ・ボーデヴィッヒさんが近付いた私にだけ聞こえるような声であっさり私の秘密を言う。おやおや……。
「んふふふふ。貴女もでしょうラウラ・ボーデヴィッヒ?ホラホラ、同胞同士仲良くしましょう。ホラホラァ!」
私は更に激しく腰を振る。すると流石のラウラ・ボーデヴィッヒも私の勢いに負けたのか、少し後退る。
「優太さん!秘密って何ですの!?」
「んふふふふ。知りたいですかぁ?それでしたら私の息子にでも聞いてみて下さい」
「息子?優太さん、何を言ってますの……?」
「セシリア。あまり気にしない方が良いわよ」
「やや!鈴様は意味をお知りで?」
「し、知らないわよ!」
まさか鈴様が息子の意味をお知りとは……ちんちくりんの割には知識は大人ですなぁ!ギャップに萌えますぞ!
フゥー!フゥゥゥゥ!
「フルスロットルゥゥゥ!上げてきますよぉぉぉ!」
「……貴様、私を嘗めているのか!」
と、ここでラウラ・ボーデヴィッヒさんが我慢の限界に達したようで、ISを展開。
ドイツの第3世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』は名の通り全身が黒く、右肩の上には巨大なカノン。あれが噂に聞くレールカノン《ブリッツ》ですか。
うーん、中々格好いい……。
「嘗めてなど……寧ろその肢体を舐めたいですな!」
腰を振りつつ、私を狙うレールカノンの斜線上に入らないようにフェイントや瞬間加速(イグニッション・ブースト)を使ってラウラ・ボーデヴィッヒさんとの距離を縮めていく。
何と狙いが甘い……そんな立派な砲を持っているのなら相手を1発でおとせるテクニックがあって然るべきことでしょう。
「ほぉれ。狙いが甘い甘い」
「くっ……ちょこまかと!」
苛立ちを隠せないラウラ・ボーデヴィッヒさん。
んー……しかし、私はドイツと言えばもうちょっと……。
「彼の有名な総統閣下が申したらしいではありませんか。お○ぱいぷるんっぷるん!と。ですのに貴方ときたら……慎ましやかなその胸。頂けませんねぇ!」
「何を言っている!」
「んふふふ─くっ!?」
何だ……?急にお腹が……!
「優太さん!」
何でしょうか?お腹が急に痛みだしてラウラ・ボーデヴィッヒさんから意識が逸れる。
それが命取りとなってしまった。プラズマ手刀を展開したラウラ・ボーデヴィッヒさんが私に肉薄。辛うじて斬撃は避けたが、ほぼ零距離に持ち込まれる。
「死ね」
「っあ!」
衝撃。
レールカノンの1発は想像よりも高い威力で、しかもほぼ零距離。シールドエネルギーが持っていかれ、続けてシュヴァルツェア・レーゲンの脚が脇腹に叩き込まれる。
ISで肉弾戦をすると基本的にシールドバリアはアクティブにはならない。
「─」
運悪く腹痛な所に命中。
そのまま不覚にも意識が……。
「お……の、れ……」
「トドメだ」
最後に覚えていたのはラウラ・ボーデヴィッヒのその一言だった。
◇
「なぁ、お前は誰だ?」
気が付くとそこは瓦礫の山。見覚えのある場所だ。
何せ、俺が初めてあの人、篠ノ之束に会った場所でもあり、俺が2肢を失った所でもある。
そこに俺は立っていて、目の前には背を向けた女性の姿。バイオレットで地面に付きそうなくらい長い髪。
その髪は先付近だけ纏められていて、全体的にふんわりとした印象。
服装は右腕と右脚だけ長袖の珍しいデザイン。
「……私?」
「あぁ。夢にしては余りに記憶にない人物が出てるものだから気になってな」
「……そうね。確かに貴方は私を知らないわ。けど、貴方は私を知ってるし、私は貴方をとても良く知ってる」
「?」
知らないのに知ってる?謎かけか?
しかし振り返らないから普通に話してるけど顔を見なきゃ分からないぞ。
「あら、ごめんなさい。ちゃんと顔合わせしておかないとね」
少し笑って、振り返る。
長い髪がふわりと翻り、いよいよ彼女と面を向かい合う。
「……」
「ピンと来ないでしょう?それとも、驚いた?」
「えっと……」
いざ向かい合うと、前髪で右目が隠れていて大人びた独特な雰囲気が強くなる。
さっきまでタメ語で話していた自分が恐ろしい。
「すいしあま……すいません。何か、想像よりも歳上だと思って」
「ふふ。貴方より生まれたのは早いのよ。さ、もう少しお話ししましょう。歳とか関係無く、いつもの貴方通りに」
そう言われて歩き出した彼女についていく。
こんな足場の悪い瓦礫でもヒールで歩くんだな……あ、そう言えば。
「すい……ごめん、名前まだ聞いてないんだけど……」
「名前?私は……うーん、順番が逆じゃない?普通は名乗ってから聞くものよ」
「や……俺を知ってるって言うから大丈夫かなって……」
「ふふ。じゃああそこに座りながら話しましょ」
彼女が指差すのは風景がガラリと変わった森の丸テーブルと切り株の椅子。童話みたいだなぁ。
「よいしょ。えーと、知ってると思うけど、俺は曽我美優太。えー、一応国籍はロシア人で……」
「元々居たのはイタリア、でしょ?」
「……何でそれを……」
「知ってるわよ。私もイタリアに居たもの」
イタリアに居た?まさか、ニー……ナはこんなに大人びる分けないもんな。どっちかって言うとオツムが残ね……取り敢えず先ずニーナは無いな。
「あら。考えちゃう?でも私は貴方とこうして顔合わせをするのが今回初めてなのよ?」
「だよなぁ……イタリアのどこから?」
元々俺が生まれたのはイタリアだ。この前モーガンの野郎が叫んでいた「ヴェントゥーノ・オット」ってのはその時の名前、と言うか管理番号的なものだ。意味は知らない。
しかし、イタリアで……?んー……。
「イタリアの……とあるホールで、かな?」
「とあるホール……?」
思い当たるのはあの時の、さっきまで居た場所の崩れる前のホールだけだが……あそこには女の人はトレース元の操縦者と数人だけだった。誰だ?
「まだ分からないかしら?」
「あぁ……ごめん」
「ううん。仕方がないわ。じゃあ……これなら分かるかしら?私に乗ったの、思い出せない?」
「の、のっ─あ」
思い出した。乗ったは乗ったけど、え?嘘だろ?こんなことは有り得るのか!?
「『マリオネッタ』……なのか?」
「正解。シンモラって言わない辺りが悔しいわ」
「マジかよ……ISと話せるなんて事が……」
「ISには意識のような物があるって習ったでしょ?私も例外じゃないわ。あ、因みにシンモラに体は替わったけどコアは初期化されなかったからマリオネッタのままなのよ」
まさか俺のシンモラにマリオネッタのコアが使われていた事に驚いたが、まさかISと話せるとは……驚いた。
しかし、マリオネッタもといシンモラがこんなにも人間らしいとは。しかも美人。
「この服装の理由はね、貴方の引き千切ってしまった事を忘れないようにする為なの……。ねぇ、あの時の怒ってる?」
「そんなわけ無いだろ。あれは仕方のない事じゃん。まぁ……正直それでISが余り好きじゃないんだけどな……」
「……私、あの時は度重なった実験のせいで調子が悪くて……何でか良く分からないけど、貴方が乗って絶対防御を発動させる為に動くことが出来たわ。ただ、一杯矛盾抱えてたから、私……」
「異物処理みたいなもんでしょ?人間だって自己免疫疾患で自分に攻撃する事があるしな、気にするなって」
改めて思うと、束さんでも動いた理由は良く分からないと言っていた。分かってるのは、あの時に一応操縦者であった俺を守る為に矛盾しながらも起動したって事だけ。
だがシンモラ自身も分からないと言うのであればもうお手上げだ。
「そう言って貰えると救われるわ。ねぇ、何か聞きたい事とかある?」
「うーん……何で俺ここに来たの?」
「貴方はシュヴァルツェア・レーゲンに負けて、更に前日食べた未確認兵器で意識を失ったの。夢なんかじゃないわ。貴方の意識は確かに私(シンモラ)の所にあるわ」
「未確認兵器……?何じゃそ─くっ、頭が……何だ……映像が流れてっ!」
ノイズが走りながら頭に映像が流れてくる。
屋上で俺がセシルからバスケットを受け取り、中のサンドウィッチを食べて……そうか……俺死にかけたんだな。
「シュヴァルツェア・レーゲンが『問題児でごめんなさい』って泣いて謝ってるわ。ブルー・ティアーズも『あんなの作るパイロットでごめんなさい』って泣いて謝ってるわ……許してあげて」
「……何つうか……皆苦労してそうだな……」
「まぁね。貴方達で言うコア・ネットワークでのやり取りは、私達にとっては話ししてるようなものよ。仲良いコアとかも居たりするわ。私はブルー・ティアーズと仲が良いのよ」
シンモラの話によると、どうやらISには意識がちゃんとあり、人と同じくコア同士で会話したりしているようだ。ただ、彼女らの行動は俺達にはハイパーセンサーに表示される『○○完了』や『警告』等でしかない。何とも悲しいものだ。
例えばシンモラが「何か遠くから来てるわ!」と言っていたとしても『接近警報。対象不明』にしかならない。
「今度ブルー・ティアーズがビット制御のデータが欲しいから乗ってって言ってるわ」
「お、良いね。俺も完全思考制御のビットやってみたかったんだ」
「分かったわ、伝えとく。他に私に聞きたいはない?」
「一杯ある。まだ時間大丈夫か?」
「大丈夫よ。貴方が起きるのが遅くなるけど」
◇
職員室。
千冬の散らかったワークデスクの前に立たされたラウラは頭に大きなタンコブを作っていた。
「話すことは分かっているなボーデヴィッヒ」
「はい教官」
「教官と呼ぶな。私はもう教官ではないしそのつもりもない。話を戻すぞ。お前がやったことは校則違反に留まらず国際問題にも発展しかねない事なんだぞ。が、幸いにもここは学園だ」
「しかし教官。あいつは─」
ゴッという鈍い音にラウラの頭が揺れる。
少し鑪を踏むラウラだがすぐに背筋を張って体勢を整える。
「分からなかったか?もう良い……部屋に戻れ。お前は謹慎処分だ。今度こんな事をしたらただでは済まさんぞ」
「……きょ……先生。何故あんな奴がここに居るのですか」
「曽我美の事か?あいつの事を知ってるのか?」
「あいつは遺伝子強化試験体です」
「それはお前もだろう。それに、そんな事は既に分かってる。あいつがお前と違う遺伝子強化試験体だってこともな」
「何故得体の知れない男の入学なんかを許したのですか?あいつは危険です」
「何故危険だと言える?」
千冬が椅子に座り直す。その僅かな仕草にもラウラはビクリと体を震わせる。
千冬の恐ろしさはラウラも良く知っている。それ故の反応だった。
「あの男は特殊な訓練を受けています。恐らく諜報や潜入に為にかと」
「それも知っている。あいつが誰に助けられて、誰が学園に行くように仕向けたのもな……で、お前が知ってるのはそれだけか?」
「……ですが─」
「それだけならもう行け。2度も言わせるなよ」
「……分かりました」
それっきりラウラは反論を止め、踵を返して職員室を出ていく。
「はぁ……。全く、曽我美といいデュノアといいボーデヴィッヒといい……問題児共め」
◇
「……」
ラウラはひたすら自室に向かって歩いていた。
自室には誰も居ない。何しろ同居者は人数が合わなくてラウラ1人だからだ。
「曽我美優太……何者だあいつは」
ラウラも遺伝子強化試験体だ。故に同胞がどれだけ優れているかも知っている。先刻の戦闘でも手抜きはしていない。
だが、ラウラの知る遺伝子強化試験体と優太とでは同胞か疑いたくなるくらい能力の差を人知れず実感させられていた。
(しかし……私はあんな遺伝子強化試験体が居るとは聞いてないぞ)
世界に居る遺伝子強化試験体はそもそも数が多くない。
一時期開発が盛んになった事もあったが非人道的やら人権問題やらで大体が秘密裏に処理された。
それが原因か、遺伝子強化試験体というと「可哀想な人」や「自然に逆らった産物」果てには「人の紛い物」とまで言われる事がある。
同胞の事は全て聞いた。だが、目の前に例外が表れた。これを危険としなくてなんとするか。
(どのみち、今後の接触には一層注意を払わなければ)
廊下から見える夜空を見上げ、左目を隠す眼帯を取る。
眼帯の下には金色の瞳、『ヴォーダン・オージェ』。疑似ハイパーセンサーとも言われるそれは、かつてのラウラにとって負の代表だった。
「……私は、あの人のように強く……」
手を伸ばした先には雲1つ無い星空が広がっていた。
◇
「なぁ。優太ってまだ起きないのか?」
「そうみたいですわ……。幸いにも寝てるだけみたいですし」
「呑気な男よね。やっぱ阿呆」
「そもそもセシリアの料理が腹に当たったのだろう?」
「うっわ……箒それどストレート過ぎ……」
「うぅ……止めてください」
食堂で今夜の腹を満たした一夏達は各々の部屋に帰る前に優太の様子を見に行こうとしていた。
優太は幸いにも戦闘におけるダメージは殆ど無く、どちらかと言うとセシリアの料理のダメージが大きかったようだ。
今は安定した為自室に移動になったが一同(特にセシリアとルイディナ)が心配でならないと見に行くことになったのだ。
「そう言えば、どうしてデュノアは先に帰ったんだ?」
「先にシャワー浴びたかったらしい。何かよそよそしいんだよなぁ」
「あー、はいはい。アンタがホモじゃない事を祈るわ」
「何だよ鈴」
『おや、皆様どうなさいました?』
いつの間にか優太の部屋に着いたようで、ドアの前にエイシャが立っていた。が、服装はいつものメイド服ではなく、優太の制服だった。
「……えっと……」
『あぁ、無理に反応なさらなくても大丈夫ですよ。私が満足すれば充分ですので。すぅぅぅぅ……はぁぁぁぁ』
目一杯、制服をフィルターに息を吸い込み、恍惚とした表情で吐く。
それを目の当たりにしてもう手遅れだと判断したルイディナが惚けているエイシャをどかし、ドアを開けて中に入っていく。
「あちょ、ルイディナ!」
「私は兄妹だから良いの。入るねユウー」
「ンキョォォォォォホォォォォアァァァァ!!」
ルイディナがドアを開けた瞬間、暗い部屋に眼光が走ったかと思うと四つん這いで手足が回るよう
└(┐卍*Д*)卍ドゥルルル←こんな感じ
で優太が迫ってきた。
「いぎゃぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!優太が今度こそ壊れたぁぁぁ!」
「怖いですわぁぁぁ!」
「ちょっと何あれ!マトモじゃないわ!」
「化け物か!?」
『皆様逃げて!』
エイシャの切羽詰まった雰囲気の一言で一夏達が悲鳴を上げて逃げ出す。
それを追うように優太の瞳がギラギラと光を放ち、涎を撒き散らしながら天井や壁すらも足場としている。
「ンキョォォォォォ!!」ドゥルルル
「私は部屋に戻るぞ!」
箒が宣言通り自室に飛び込むように逃げて即座にドアロック。箒を諦め、標的を絞った優太が再び駆け出す。
「もう駄目だ!あとは任せた!」
「はぁ!?逃げんじゃないわよ一夏ぁ!」
「同じ男として止めてくださいな!」
「無茶言うなよ!」
一夏も奇跡的な早さで自室のドアを開け、必要最低限の間から身を滑り込ませる。
一瞬一夏を捕まえようとした鈴だが素早い判断でそれを止め、セシリアの首根っこを背伸びで掴み、体格差を感じさせない見事な体捌きで背負い投げた。
「えぇぇぇ!?」
「後は任せたわセシリア!」
「んぶぉkgふぇtp@mんっぐ!ォォォオオオオ!」
「い、や……!やぁぁぁぁ!!」
◇
「はぁ……はぁ……危なかった……」
部屋へと逃げ仰せた一夏はドアの覗き穴から目の前で繰り広げられる惨状を目の当たりにして息を飲む。
倒れたセシリアをターゲットにした優太が跳びかかり、咄嗟にブルー・ティアーズを展開したセシリアのカウンターアッパーを喰らって天井に突き刺さった。
『今ぁ!』
これを好機と鈴も『甲龍』を展開。『衝撃砲』で天井からプラプラしている優太に容赦なく叩き込んむ。
撃たれる度に跳ねる体が痛々しく、トランクス一丁になってもなお砲撃は止まない。オーバーキルとはこの事だろう。
「……ひでぇ……鈴のやつ、本気かよ」
もうこれに関わるのは止めよう。そう思い、ドアから離れる。
「あれ?シャルルのやつ、まだシャワー浴びてるのか?」
随分長いシャワーだ。聞いたら優太が怒るな。と後ろでオーバーキルされている人物が怒る姿を想像してみる。
『シャワワワワワワ!』
「はっ!?……ヤバい、優太のイメージがさっきのに上書きされてる」
└(┐卍^o^)卍シャワワワワ
「……もう考えるのは止そ……ん?シャンプーか?おーい、シャルル。シャンプー忘れてるぞー」
靴箱の上に忘れたのか、置きっぱなしのシャンプー。
「聞こえてないのか。おーい、シャルル」
部屋の入り口すぐ左の脱衣室のドアを開けて呼ぶが返事はない。どうやらシャワーの音で聞こえてないようだ。
ならば仕方がない、と一夏は浴室ドアに手をかけた。
「シャルル。シャンプー忘れ─」
「……い……ちか……?」
「─へ?」
シャルル・デュノア。声や雰囲気からその本人であることに間違いない。だが、男の筈のシャルルにはある筈の無い物があった。
それを見た一夏は己の目を疑った。しかし、湯気で隠れてはいるが確かにそこにあるのだ。
男の胸板と違う、たわわに実った果実が。
「シャ……ルル?」
「あ、う……わぁぁ!」
漸く自分の状況を把握したシャルルが一夏からシャンプーを奪い、浴室ドアを勢い良く閉める。
一夏も少し遅れて我に返り、自分が何を見てしまったのかハッキリと理解する。そして一夏も感じていた違和感の原因も判明した。
「シャルルが……女……?」
◇
学園地下特別区。
そこは学園内の人間でも数人しか入る事を許されていない特別なエリア。そこには原形を殆ど留めていない全身装甲(フルスキン)のISと上半身の殆どが捻切れたようにひしゃげた同じく全身装甲のISが吊り下げられていた。
「……山田先生。どうですか?」
「やっぱり、未登録のコアが使用されていました。それで、無事なコアは1つだけ。片方のは曽我美君のライフルを至近距離で受けた為完全に破壊されてました」
「そうか。こいつらの遠隔操作の可能性は?」
「無きにしも非ず、ですね。自律行動の可能性がかなりあります。ですがこちらも機能中枢の損傷が激しくて解析が殆ど出来ませんでした」
「成る程……ご苦労山田先生。後はコアを保管してお仕舞いにしましょう」
千冬が無人機に近付き、ひしゃげたボディに触れる。
かなり大型化した各所だが、どれも無駄な所など1つも無い。
未知のテクノロジーが盛り込まれたそれを、千冬は一目で開発者が誰か分かり、深く溜め息を吐いた。
「……あのキチガイめ……この学園を使って何をするつもりだ……」