IS(インフィニット・ストラトス) 2人目の男性IS操縦者   作:スーパープルコギ

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原作より流れをやや変更





第2話 クラスメイトは女子ばっか

 

 

─あの日からこうなる運命だったのかも知れない。あの日、俺が『マリオネッタ』に乗せられた時から。─

 

 

 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー」

 

4月。この月は大体が新しくなっていく時期だ。

主にこの時期でふと思うのは進学ないし入学だろうか。日本の4月は桜が咲き、ピカピカの制服、ランドセルを背負った学生の姿が“此処”に来るまで何度も見受けられた。

俺は中学はおろか、小学校にすら行っていない。だから入学式と言うのを初めて体感したし、教室で皆同じ制服を着、学業に励むなどするとは思ってなかった。

そして─

 

「皆さん、先ずは此処、『IS学園』に入学おめでとうございます。私はこのクラスの副担任、山田真耶です」

 

そこはかとなく彼女から漂う背伸びした感。比喩的な事だ。

身長は目測で157cm程だろうか(実際は155cm)。眼鏡はややずれているし服は確実にサイズが合っていない。何だろう、物凄く『子供が無理して大人の服を着ました』感じが否めない。て言うか副担任って何だろう?

 

「じゃあ、先ずは自己紹介から始めましょうか。それでは、出席番号順に……」

 

ポフッと擬音がつけられそうに手を打ったのを合図に出席番号順に自己紹介がスタート。

先ずは女子。その次も女子、まだ女子、もっと女子、終わらぬ女子……。

 

「……はぁ……」

 

SHRと呼ばれる授業(?)開始から丸5分。俺の周りは1人を除いて女子しか居ない。その視線が俺ともう1人、織斑一夏にこれでもかと注がれている。

どれも興味津々の眼差しで、いつ自己紹介するのかと待ちわびている。

 

(何だこれは……。何故にこんな息苦しい思いをしなきゃならないんだ……)

 

目の前の織斑一夏も大分胃に来てそうだ。俺も既に12錠飲んだ。

ほれ、『第一残業胃腸薬プラス』をおすそ分けだ。因みに水無で飲めるぞ。

 

(おおっ!ありがたい!男が居るってやっぱり良いな!)

 

振り向いた彼は大分青ざめていたが大丈夫だろう。

ん?何だこの周りの女子の動き……あ、おい。何メモしてるんだ!俺は胃腸が弱いキャラじゃないぞ!

 

「……ら君。織斑一夏君っ?」

 

「あっ、はい!?」

 

ボーッとしていたんだろう。驚いたように跳ねた彼が今度は全身にくまなく突き刺さる視線に身震いしている。

 

「えっ、えーと、今自己紹介で、『あ』から始まって今『お』なんだけど……自己紹介してくれるかな……?駄目……かな?」

 

何故この人は怯えた様に言うか。

 

「だ、大丈夫です。しますから」

 

「ほ、本当ですねっ?約束ですよっ?」

 

何処まで怯えるか。

 

「お、織斑一夏ですっ。その……宜しくお願いします」

 

礼儀正しく一礼して座る。

「これで終わりか?」と言うの視線の訴えが再び彼を襲う。止せ!彼のライフはとっくに0なんだ!止めてあげてくれ!

 

「えっ?終わりですか?」

 

「……はい」

 

折れたな。

 

「じ、じゃあ次は曽我美君何だけど、大丈夫ですか?」

 

先生、何を言いますか。我々は既に5分以上前から大丈夫ではありません。胃腸しかり正気度しかり。

因みに本来なら俺はもっと後ろの席なんだが、学園のささやかな助けか、男同士が落ち着くだろうと例外で織斑一夏の後ろになっている。

 

「……」

 

立ち上がり、眼だけで少し見渡す。

な、何だ……!?このプレッシャーは!これが、ISを扱う女子の力か!?とてつもない「お前はもっと喋れるよな?」感が全身に突き刺さる!

 

「……そ、曽我美……優太です……。せ、先日までロシアの孤児院で暮らしてたので、えっと、学校その物がよく分かりません。なので……えっと、そのぉ、ごめ、んんっ。ご迷惑をお掛けするとはおもあますが』

 

噛んだ。最悪だ……。

止めろ織斑一夏。その同情するようで可哀想なものを見る目は心が折れる……。

 

「えー、ご迷惑をお掛けするとは思いますが宜しくお願いします」

 

俺も同じく一礼。もう十分だろう。今の俺は犬が腹を晒し出すように諦めているんだ。もう無理。

が、「まだ行けるだろ?」な視線が逃げ場のない俺を集中放火。もう十分だろっ?さっき「見た目ガッツリ外国人なのに名前で何か残念」感とか「何それ芸人?」みたいなこと思って満足したろうに。

あっ!このやろ織斑、お前もその視線か!

ええい、ままよ!

 

「と、特技が有ります!」

 

「お?」とも「え?」とも聞こえる。予想外の反応と待ってましたという反応両方だ。

俺は分かってる。今皆が求めてるのは見た目に反したモノ。ロシア顔してガッツリ日本人で更に意外なモノ!

孤児院でも子供達にウケてるネタだ。俺のNo.18!

 

「ほっ!」

 

耳が動く。しかも片方ずつだ。

 

「「「……」」」

 

「……」

 

世界が沈黙した。

頼む織斑!そのいたたまれない雰囲気を醸し出さないでくれ!皆も「ゴメンね」みたいなの止めろ!止めてくれぇ!

 

「……だい……以上ですか?」

 

「……以上です……」

 

俺には「異常ですか?」にしか聞こえなかった。

 

 

それから程なくしてクラス全員の自己紹介が終わり、いよいよクラスの担任が教室に入ってきた。

 

「「「きゃぁぁあ!」」」

 

「何だぁ!?」

 

突然クラス中の女子が黄色い歓声を上げる。そのせいか、つい今さっきまで落ち込んでいた俺の気分は一気に吹き飛ばされた。スッキリだ。

……嘘です。

しかしこの異様な盛り上がり様は何だ?

 

「お姉様に憧れてここに来ました!」

 

「千冬様ー!」

 

あ!こいつら俺達のメモ消すの早ぇ!何か悲しくなるわ。

 

「全く……。よくもまぁ毎年ここまで馬鹿者が集まるものだ。それとも何か?私の所に馬鹿者を集めているのか?」

 

「きゃああああ!!お姉様もっと叱って!罵って!」

 

「でも時には優しく!」

 

何て奴等だ……!それほどまで有名なのか分からないが、この盛り上がり方はジョニーズの辛子とかTOKYOとかとは別次元だ。

 

「千冬姉!?」

 

織斑が声を上げたと同時、否、僅かにそれより早く打撃音が響いた。

 

「いっ……!」

 

は?織斑の頭に何かが激突したのは確認した。が、当たったのは何でもない普通の出席簿だ。

初速から人間に当てて良いようなものではない凶器にしかなってない。教器って言っても大丈夫かな?

 

「お、織斑先生。もう職員会議は終わったんですか?」

 

「ああ、山田君。挨拶を押し付けて済まなかったな」

 

織斑?……あぁ、まぁ確かに似てるな。良かったな織斑一夏。身内が学校に居て。……どうした?

 

「で、お前は満足に挨拶も出来んのか?」

 

「いや、千冬姉俺は」

 

再度一閃。そう、最早一閃だ。しかも明らかに面ではなく角が入った。

 

「〜っ!?」

 

「織斑先生と呼べ。馬鹿者が」

 

このやり取りで漸く他の女子も2人の関係に気付いたらしく、先程よりも密度が増した視線が織斑一夏に移る。頑張れ。

 

「……さて。私がこのクラスを担任する織斑千冬だ。私の仕事は弱冠15のお前達を16までに鍛え抜く事だ。逆らうのは良いが、私の言うことは聞け。いいな」

 

有無を言わさぬ威圧感とはまさしくこの事だろう。それに先程から織斑一夏をブッ叩いて居るが─

 

(かなり強いな、この人は)

 

一目で分かった。俺だってやっていた“仕事”の都合上、相手の動き、立ち方等からある程度は実力っていうのが分かる。今まで自分でも多く手練れを見てきたが、この人は別次元だ。逆らうのは絶対嫌だ。

 

「さて、時間が無いから進めるぞ。それと」

 

頭を押さえる織斑一夏を一瞥し─

 

「早く席につけ。馬鹿者」

 

「……はい、織斑先生」

 

 

1時限。IS基礎理論を容赦なく頭に詰め込まされた優太と一夏はこの休み時間で既に死にかけていた。

 

「……もう無理。ギブ……」

 

一夏も優太もISの知識なんて持ってる訳もなく、ただただ教科書にマーカーを引くだけで精一杯だった。

更に教室の内外から更に増した視線でグロッキー状態。そんな中、優太は心の傷を何とか減らそうと一夏に話し掛ける。

 

「織斑一夏君……大丈夫かよ……?」

 

「あぁ……。何とかな。えっと君は……」

 

「曽我美優太。優太でいいよ」

 

「おう。宜しくな。俺も一夏でいいよ」

 

「宜しく一夏」

 

傷付いた者同士硬い握手を交わし、メールアドレス、電話番号を交換する。これで孤立することは先ず無くなったと安堵する双方。

 

「お前、孤児院に居たんだってな。此処に来る経緯みたいのって聞いても良いか?」

 

「いやぁ、あれはちょっと……」

 

「ちょっと良いか?」

 

優太がどうするものかと思案していると、窓際に居た女子が一夏に話し掛けてきた。

ポニーテールが印象的な何処か鋭い雰囲気を纏った彼女を見た一夏がやや驚いたように見上げる。

 

「ほ、箒?どうした?急に……」

 

「話がある」

 

箒と呼ばれた彼女は一夏の腕を掴んでそそくさと教室を出ていく。

 

「……嘘ぉ……」

 

一夏が居なくなった事で全女子の視線を浴びる優太。

 

(トイレ行きてぇ……)

 

当然トイレを使おうにも此処は生憎女子高なのだ。望みは薄い。

 

「ちょっと宜しくて?」

 

(うぁぁぁぁ!!)

 

「……な、何でしょうか?」

 

既に正気度が限界を振り切った所に高めの声がかけられる。振り返ると腰に手を当て、仁王立つ女子が居た。

ブルーの瞳にロールが僅かにかかった金髪。

口調も雰囲気も高貴、そして如何にも男は自分以下と言った考えを持ってそうな彼女はややつり目。

 

「ん?あれ、同じクラスだった……か……な……?」

 

自己紹介のショックで他人の事は右から左だった。その結果、優太は目の前の女子が自分の一番後ろに居た生徒だと理解するのに大変な時間を要した。

すると、それを聞いた彼女は大仰に─

 

「まぁ!貴方わたくしを知りませんの?」

 

「ご、ごめん……覚えてなくて……えっと……」

 

(思い出せ!記憶を探れぇ!)

 

「ゲ、ゲルニカ……さん?」

 

「「「だぁぁっ」」」

 

一斉に他の女子達がずっこける。

やってしまった。優太は変な汗が止まらなくなっていた。

 

「あ、あ、貴方、わたくしを馬鹿にしてますの……?」

 

「いやいや!そんなつもりは!」

 

直ぐ様体の影で座席表を表示。一瞬振り向いて確認。

 

「セ、セシリア・オルコットさん!そう、思い出したよ!」

 

「ふん。まぁ、下々の者としては上出来ですわ」

 

「どうも……所で、俺に何の用で?」

 

相手の態度にえらく冷静になった優太は座席表と同時にセシリアの情報を検索していた。

 

(イギリス代表候補生……そう言えばさっきそんな事も言ってたな。しかし、こんな奴が本当に居るとはなぁ……不機嫌にすると何されるか分かったもんじゃねぇな)

 

優太の返答にセシリアが何度目かの「まぁ」から話始めた。

 

「よくもまぁ、ISの事を何も知らずに入学出来たものですわね」

 

「そりゃぁ、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんと比べれば俺の知識なんてねぇ……?」

 

「そう!私は代表候補生、エリートなのですわ!」

 

突然代表候補生と言われて機嫌を良くしたセシリアはまたも大仰な身ぶり手振りで自身の試験話をし始める。

 

「そんなわたくしとクラスが同じなんて、幸運だというのをもう少し理解していただけます?」

 

「そうか」

 

「……貴方、馬鹿にしてますの?まぁ?私は優秀ですから、貴方達のような無知の者にも手を差し伸べる位はしてあげないこともないですのよ?何しろわたくし、試験で唯一教官を倒したエリートですから!」

 

やたら自分が優秀だと主張してくるセシリアにこっそり嘆息した時、その一言に優太が意外な反応を示した。

 

「ん?教官?それってISで戦う奴か?」

 

「それ以外に何がありますの?」

 

「いや、俺も倒したぞ?」

 

「は?」

 

「いや、3分マッチのヤツだろ?倒したよ?ああ、あと一夏も倒したって」

 

「わたくしだけと聞きましたが……」

 

「知らんよそんなの……」

 

何かが狂ったのか、ブツブツと独り言を始めたセシリアに「まぁまぁ」と落ち着かせているとチャイムが鳴って続々と皆が席に着いていく。

 

「くっ……!また後で聞きますわ!逃げないことね」

 

「いや、逃げられない……はぁ……」

 

この後絶対良くないことが起きる。優太はもはや確信していた。

 

 

「この授業では各種装備について説明する」

 

また専門用語やらなんたら現象、なんたら効果の話をされるのか……。

 

「いや、その前に再来週のクラス対抗戦に出る代表者も決めないとな」

 

ふと、思い出したように織斑先生が言う。

クラス対抗戦は入学時点での実力推移を測る行事だ。クラスの代表者は選ばれると1年間変われないやや面倒臭そうな役だ。

 

「さて、早速だが誰か居るか?推薦でも立候補でも構わんぞ」

 

多分これは関わらない方が身のための奴だ。ここは穏便に済ましたいので代表候補生のセシリア・オルコットに推薦を─

 

「はい。私は織斑君を推薦します!」

 

「じゃあ私は曽我美君を」

 

しまった。出鼻を挫かれた。物珍しさで推薦は此方としても大変困る!一夏も俺もISに疎いというのに。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

一夏が立ち上がって拒否の体勢を取る。よし、俺も便乗して。

 

「俺もはn「席に着け、邪魔だ」はい。すみません」

 

もう駄目だ!おしまいだぁ!この無責任な推薦を止めてくれ一夏!彼女達の「何とかしてくれそう」な考えを破壊してくれ。

 

「俺はそんなのやらないぞ!」

 

流石だ一夏。お前のお陰で俺も助かりそうだ。

 

「推薦された者に拒否権など存在しない。良いから黙って席につけ織斑」

 

あー。駄目だなこれは。

 

「納得いきませんわ!」

 

そこでセシリア・オルコットが声を上げた。

来た!来たぞ代表候補生!あまり期待はしていないが、お前が立候補して俺達を論破してくれれば全ては解決するんだ。

GO!

 

「何故イギリス代表候補生のわたくし、セシリア・オルコットではなく、物珍しさでこんな極東の猿に任せますの!」

 

……猿?

 

「実力でもわたくし、セシリア・オルコットがやって当然でしょう!それを、こんな無知な彼等に任せて……サーカスでもやって恥をかきますわ!」

 

これは予想外だ。

……黙って聞いていれば好き勝手言ってくれてまぁ。

 

「それに、このわたくしがどうしてこんな極東の遅れた国なんかで……」

 

「……イギリスだって、世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

あ、一夏キレたな。しかもその一言は相当ヤバイぞ。

このままだと俺の目論見がぁ!

 

「なっ……!」

 

「止めろ一夏!イギリスにだって良い料理は有るぞ!えっと……」

 

「……」

 

暫く沈黙。

 

「……あれ?無いわ(笑)」

 

「あ、貴方達!私の祖国を侮辱しますの!信じられませんわ!」

 

「それは此方の台詞だ」

 

一夏も大分頭に来てるみたいだ。頼む、頼むから穏便に済ましてくれ!

 

「〜っ!決闘ですわ!貴方織斑一夏と言いましたわね!わたくしに逆らったことを後悔させてあげますわ!」

 

うわ!決闘申し込まれてる!最悪の事態だ……!

あ、でも済まない一夏。俺は関係ないから頑張っ─

 

「それと曽我美優太!貴方も同じですわ!」

 

「え……いや、お、俺は関係ないからっ……」

 

「何を言いますの……まぁ、貴方にはチャンスを差し上げますわ。貴方は男性ですけど、特別に私の下僕、いえ、奴隷になると言うのでしたら許してあげなk「却下だ」んな!?」

 

チャンス?特別?男性ですけど?……ふざけるな。

 

「何の権限があって俺にそんな事言ってやがる。代表候補生だ?確かに凄いよ。だけどな、それを理由に他人を従えようとするのは間違いだろ。俺は確かにお前とは違って高貴な身分でもなければ誰かさんに嵌められてなかったら此処に居ないさ。それに、男だから立場が無いとか、寝言は寝てから言え!俺は人間だ!お前もだろ!人権を剥奪されて、実験動物みたいに使い捨てで扱われる者の痛みが!苦しみが!恐怖がわかるか!」

 

「貴方……何を言ってますの……」

 

「そうやって自分が他の人を支配できると思ってふんぞり返ってる奴が俺は大っ嫌いなんだよ!」

 

不味い……。抑えないといけないのに、言葉が止まらない。

 

「一夏!ここは俺に譲れ!」

 

「ゆ、曽我美……?」

 

大分引かれたな。間違いない。しかし自分でも驚く位怒鳴っちまった……。参ったぁぁ。

 

「い、良いですわ!受けてあげますわ!」

 

もう話す事はないとセシリア・オルコットが席に着く。

……勢い怖ぁ!

 

「……ふむ。話は纏まったか?では来週の月曜日。放課後に第三アリーナで行う。曽我美とオルコットは準備をしておくように。それでは授業を始める」

 

(くっそぉ……。やってしまった)

 

俺は動悸が激しくなった胸を押さえて、怒鳴ってしまった事を後悔しながら授業に頭を切り替えた。

 

 

「駄目だぁ……わからない」

 

「大丈夫だ一夏……俺もさっぱりだ」

 

放課後、俺と一夏は山田先生に教室で待つように言われて、帰ってくるまで夕陽が暖かい中授業の復習。

イメージ・インターフェイスとか大気圏内における荷電粒子の摩耗とか……もう並の物理じゃないぜ。

まだIS乗ってドンパチする方が楽で良いや。

 

「そう言えば優太さ、さっき滅茶苦茶怒ってたけど、何かあったのか?」

 

「……別に。ただ、俺はそういう目に昔あってなぁ……。そういう目にあった奴も大勢知ってる……。そいつらのことを思うと、つい、ね」

 

「悪い。変なこと聞いて……」

 

気にするなよ。と再び教科書に視線を落とす。

最低限予習をしないと破滅する。間違いない。

 

「はいー。お待たせしました。漸く部屋に案内出来ますよー」

 

とそこで山田先生がルームキーを持って帰って来た。

漸くだ。なんでも、俺達の部屋は今日の今日までモメていたらしい。もし男独りだけだったらと思うと寒気がする。男2人だけとはいえ、とても心強いな。

 

「分かりました。行こうぜ優太」

 

「ん」

 

部屋問題はクリア。学習面はこれからやっていくしかない。取り敢えず今の問題は来週のセシリア・オルコットとの試合だ。

 

(勢いで言っちまったけど……仕方ない、少し聞くか)

 

「ちょっと電話してきます」

 

「じゃあ待ってますね」

 

教室から離れて通話履歴から例の人物を出す。

いやぁ、出るかなぁ……。

通話ボタンを押すと直ぐにコールが始まり、2回ほどで目的の人物が出た。

 

『はぁーい!もすもす?珍しいねぇ、ゆー君から電話なんて。知ってるよ、喧嘩売ったんでしょ?だーい丈夫、もう手は打ってあるよー。待っててねー』

 

相手は天災束さん。テンション高いねぇ……。

あと、俺が聞きたいのはそれじゃなくて……。って言うか!何で知ってるのかねこの人は! それに手を打ったって何だし!?怖い!

 

「はぁ……束さん。俺、勝てると思いますか?相手は代表候補生ですし」

 

『そんな事?大丈夫大丈夫ー。だって“このISは今の今までゆー君の事をシミュレートしかしてなかった”からねー』

 

「ん?このIS……?」

 

『あっちゃぁ……。また今度ね!』

 

「え、ちょ!」

 

切れた。しかも“このIS”って……まさかとは思うけどあの人それはやらないよな……?いやまさかな……。

 

「はぁ。……ごめん、待たせた」

 

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