IS(インフィニット・ストラトス) 2人目の男性IS操縦者 作:スーパープルコギ
誤字報告、及び修正。誠にありがとうございました。
お恥ずかしながら、今まで全く気が付きませんでした……。
─私の手料理が食えない、と?─
「……ユウの様子は?」
「まだ起きてない」
「そう……皆には変な気遣いさせちゃってごめんね」
「……」
ルイディナさんに家族が殺された事が発覚してしまった。
優太が再び記憶の混乱を起こして倒れたのを皮切りにルイディナさんに突き詰められ、話してしまった。
前にシンモラさんから『まだ言うのは駄目。私が頃合いを見て言うから』と言われていたから優太が暴走した理由もうやむやにしていたんだが……。
「ごめん……」
「気にしないで。本当に……だぃ……」
「ルイディナさん……」
やっぱり聞いてからずっと我慢していたんだろう。
涙を流して嗚咽してしまうルイディナさん。こういう時、何て声をかければ良いのか分からない自分に腹が立つ。
「……一夏さん……優太さんが」
「……どうした?」
「……シンモラさんが─」
◇
「悪いわね皆。私が迷惑かけたみたいで」
「気にしないで下さい」
「本当にアンタシンモラなの?」
「その筈よ。私の記憶が無い間に何があったか知らないけど……私の欲しかったパジャマがあったしあまり気にしないわ。セシリアさんも気を落とさないでね」
泣き崩れたルイディナさんをラウラと鈴が外で宥めている間、俺達は病室の中でシンモラさんと面会していた。
どうやら昨日優太……と思い込んで行動していたことも何もかも覚えていないらしく、初めは酷く混乱していたが今は落ち着いている。
「それで……私が何かやらかしちゃったのね?ルイディナさんの様子から優太の家族の事が……」
「はい……」
「……そう。彼女、パラライズのパイロットの事を恨んだりしないであげて。彼女は殺してないしそんな人間じゃないわ」
「パラライズの……ケイシーさんでしたっけ」
そう言えばあの人どうしてるんだろう?
学園がまだ捕らえたままらしいけど……敵にバレたりしないのか?
「彼女は可哀想な娘なの……」
◇
「ほほっ!?あの織斑氏と曽我美氏がこんな……!」
「……」
「やっべ……そこに……?ほぉぉぉぉ!スンゴィ!たまらないわ!」
「……少しは静かに出来ないか」
学園地下のとある特殊なエリア。そこでは特殊加工で対物ライフルでも貫けないガラスを挟んで千冬と、何か薄い本を手にして興奮状態で落ち着かないケイシー・ドナルドが居た。
この本はここに来る道中、千冬が生徒から色々あって没収した代物なのだが、ケイシーが寄越せ寄越せと駄々を捏ねたため与えたところこうなった。
「……どうしてこうなった……」
「いやぁー。やっぱりイケメン×イケメンが王道ですなっ。しかし他の女生徒との絡みもまた現実味があって良し……なんてけしからん本を描いてしまったか!」
「五月蝿いぞ」
「ただあの暴走した曽我美氏はやっぱり秘密なんですか?誰も私が暴走した曽我美氏に滅茶苦茶にされてお嫁に行けなくなってしまうシチュエーションが無いんですけど……あっ。何なら私がここで拘束されてそのまま卑猥なマシンで快楽に溺れるのでも─」
「止めろ!品がないのか!?」
ケイシーは千冬の正気を疑うような目を見て少しムッとするが、それ以上変なことを口走る事無く再び読書に没頭する。
「……お前はこの状況を分かってるのか?」
「えぇ。あれから少し経ちましたが……私が体内のナノマシンで“処理”されてない所を見ると、戦闘で私のナノマシンが曽我美氏に破壊されて“本部”では恐らくKIA(作戦行動中死亡)扱い。だとするならパラライズのデータが弄られたりしないです」
「それが?」
「パラライズのデータが遠隔で弄られた以上、本部がこの学園にパラライズがあることをとっくに突き止めています。だから奪いにやって来る。確実に」
「……お前はどうする?」
千冬が問うとケイシーは本を閉じて何も無い天井を仰ぐ。
「……もうあんなブラック企業なんか戻りたくないですよぉ。どのみち死亡扱いで助けに来ないならこのままブッパしてやります。そしてちゃんとした雇用があれば……」
「……」
チラチラと何かを求めるような視線を千冬へと送るケイシー。
千冬はそれに対してため息混じりに立ち上がり、ケイシーに背を向けて出口へと歩きながら答えた。
「お前はまだ信用できない。だから暫くはそこで大人しくしていろ」
「そんなのどうでもいいんで定期的に本を持ってきてください!」
「知るか馬鹿者」
◇
「可哀想な娘……?」
「えぇ。実はパラライズも奪わされたりとか結構辛い仕事ばかり流れてきたみたいでね。今回のもギリギリまで知らなかったのよ。だから許してあげて」
「そうは言われましても……」
ケイシーがどんな境遇であったにせよ、優太を襲ったことは事実だ。そして優太が死にかけた原因を作った本人である。
その事がどうしても許しきれない。ただ同情してしまうと、一同は困惑していた。
「会う機会が必ずあるから、その時までにはね」
「アンタが言うならそうなんでしょうね」
「鈴……」
いつの間にか病室に戻ってきていた鈴がそう同意する。
鈴は他のメンバーよりもシンモラに対して寄せる信頼が強い。
「ありがと。ルイディナさんは?」
「ここ……」
声に一同も振り返ると泣き腫らした赤い目のルイディナがドアから丁度入ってきていたところだった。
「……どうして、黙ってたの……」
「優太が望んでたからよ。暴走しながらも貴女の事を心配して……そして優太が新たな“目的”を完遂するまで黙ると覚悟したから」
「目……的?」
「今回襲ってきた謎の勢力を壊滅させること。ようするに復讐よ」
それを聞いた瞬間、病室の中で一気に緊張感が増した。
前に優太が“仕事”をこなしていた大目的と次目的は聞いていたため、何となく予想は出来ていたが……。
「また……あいつは復讐に走るのかよ……」
「ごめんね。優太は……決めたら最後まで“やらないと”気が済まないから」
「そのやらないとってのにどんな意味が含まれてるのか、大体察しはつくわ」
悲しいことに、優太自身も気が付かないところで生粋な生体兵器としての特徴が現れていたのだ。
『目的を遂行する為に手段は問わない』ようするに自分が『こう』と決めたら自然と人殺しも出来てしまう。癖のようなもので、意識していても無駄なことが多い。
特に感情的になったときは─。
「可哀想なのは優太もね……皆には理解してくれとは言わないわ。優太の行動は許されるものではないのだから」
そう語ったシンモラは誰から見てもどこか悲しげだった。
◇
その後、シンモラも少し休みたいとの事で一夏達は昼食を摂りに食堂へと赴いていた。ルイディナはまだ気持ちの整理がつかない、と自室へ。
食堂はまだまだ夏休みに入って少ししか経ってないからか、やはり生徒の数が多いのが目立つ。
「はぁ……」
「そうガッカリするなよラウラ。何で訊きたいのか知らないけど、直接優太に訊けば良いじゃんか」
「そんな簡単に出来たら苦労しないぞ一夏……」
ラウラは優太、と思っていたシンモラに普段じゃ訊けない事を質問しようと思っていたのが無理になって残念がっていた。
「ところで一夏。アンタがもし千冬さんが殺されたりとかしたら……優太みたいに力があったとしたらアイツと同じ思いになる?」
「……俺、優太の気持ちがわかんねぇ。いくら遺伝子教化試験体だっつっても、何も殺しに走るなんて」
周りに聞こえないように小声で一夏が発した。
「一夏。何故動物は教わってもないのに繁殖できる?」
「な、何だよラウラ急に……」
「答えろ。その理由は何だ?」
ラウラが一夏に突然質問を投げ掛けた。
それに答えなんて有るのだろうかと思った一夏だが、ラウラの鋭い眼差しを受けて返答した。
「いや……本能じゃないのか?」
「それだ。私達人間に果たして本当に本能なんてものがあるのか分からないが、遺伝子教化試験体は完全に“設定”されて生み出される存在だ。そう言う本能的な物を埋め込まれても何ら不思議ではないだろう」
「それと経験ね。優太が受けてきた訓練は話を聞くかぎり常人じゃこなせない高度なものよ。しかも“任務を確実に遂行する為”のね」
鈴もスプーンで空をすくうようにしながら答える。
行儀が悪いと箒に注意されてからも再びその調子で鈴がラウラをスプーンで差す。
「で、現役の軍人から見てどう?もし優太みたいな奴が粛清されずにもっと居たら」
「……はっきり言って優太のレベルは異常だ。実践配備なんてされた日には軍事力が傾くだろう。IS乗る乗らない問わずな」
「そんなにか……」
「今更驚くの?」
驚いた箒に逆に驚いた鈴。その様子を見ながらもミートソーススパゲティを食べていた一夏がふと、顔を上げた。
「あれ?セシリ……ぁ?」
見ると食堂の入り口からバスケット片手に笑顔のセシリアが歩いてきていた。練習だと言っていたサンドウィッチを作り終えたのだろう。
いつも通りの笑顔。だが、一夏の言葉に疑問符が付いたのはいつもと雰囲気が違ったからだ。いつものロール掛かったボリューミィな金髪はポニーテールのように後頭部で纏められて垂れており、長い前髪はそのまま下ろされている。そして最近よく見るようになった主張の激しい青いサングラス。
「……セシリア。アンタサンドウィッチ食べたの?」
「私が何でもかんでも毒物を口に含むような言い方は解せんぞ、鈴」
「「「「へぁ!?」」」」
「確かに前回のサンドウィッチも失敗に終わった。が、今回は問題ない。味見してから一切の手は加えてないからな」
言葉を失った一同の前に、声こそ変わらないが口調が完全におかしくなったセシリアがバスケットを置いた。
その瞬間、一同は揃って鼻をつんざく匂いに険しい顔になった。バスケットから、中のサンドウィッチから光を曲げんが如くドス黒いオーラが冷気のように溢れ出ている。
「……お、おい。これは……」
「そうだな……鈴。食べてくれ。お前にはいつも世話になっているからな」
「はぁ!?っざっけんじゃないわよ!」
「……ほぅ?私の手料理が食えない、と?」
雰囲気が変わった。いつものセシリアからは絶対に想像できない鋭い視線が鈴を刺し、反抗出来なくさせる。
誰もが気付いていた。セシリアの状態も眼前の毒物によるもの……。
誰が好き好んでそれを口にし、己の命を危険に晒そうか。
「くっ……」
「安心しろ。今回は問題ないのだ」
「……問題ありまくりよ……!」
呻く鈴をフォローしたくても、下手に手を出して自分が被害を受けるのは御免こうむりたいと沈黙が続く。
そんな中、遂に誰かが手をあげた。
「私が食べてもいいか?」
「ラウラ。お前は信じてくれるのだな」
(こんな兵器……誰が安全だなどと信じられるか。だが、ここで誰かが行かないと共倒れになる可能性もある。ならば私でなければ─)
ラウラも遺伝子教化試験体。最悪、常人より頑丈である事で何とか凌ごうとこの手に至った。
「ぁむ」
「「「「……」」」」
「今度こそ大丈夫ですわ」
「何でいきなり元に─」
「こっ……これは……!」
ラウラが声をあげ、全身を震わせる。
脈動をより強く感じるようになり、熱くなってくる。
「うああああああああああああああ!!!」
ラウラが喉を押さえながらもがき始めた。
同時に一同の額に嫌な汗が大量に滲む。
今までセシリアのデス・サンドウィッチは食べてからすぐに人格に影響が出て奇声をあげるものだった。だが、目の前のラウラの状態は苦しそうにもがいている。今度のはヤバイと一同が完全に理解した頃には……ラウラは既に事切れていた。
「そんなに旨そうに食いやがって……嬉しい限りだ」
「ラウラァァァァァ!!」
「シャルロットも食え。旨すぎて逝くなよ?」
「止せ!死ぬぞ!」
一夏の制止を聞かずにセシリアがシャルロットへとターゲットを定めた。
シャルロットは今にも逃げ出したい思いだが、ラウラの断末魔で腰を抜かして満足に逃げられない。
「駄目だセシリア!」
「私が食べるわ」
「─鈴!?」
「ふん。何も無しに食べるわけじゃないわ。ちゃんと考「ほら」んぐむぅ!?」
容赦なく鈴の口にセシリアのサンドウィッチが詰め込まれる。
「オオオオオオオオオオ!!」
眼から。口から。鼻の穴から。耳の穴から。穴という穴から青い光が溢れる。
「鈴まで─」
「箒!」
「ちゃんと噛めよ」
「んんっ!」
箒も同様に口に滑り込まされ、噛むまでもなく断末魔の叫びと共に倒れた。
「な、何て……」
「一夏!皆が─」
「「「ホピャァアアアアアアア!!」」」
かつての優太が暴走した時のように、事切れていた筈の3人が突如として立ち上がった。
眼や口から怪光線を放ち、とても人間とは思えない。
「皆そんなに旨そうにしてくれちゃって……感激だ!シャルロット!一夏!2人も食えよ!」
「一夏!」
「うあ!」
3人が一夏に飛びかかった瞬間、シャルロットが一夏を突き飛ばし、代わりに取り押さえられてしまった。
もがこうにも並外れたパワーで身動きが取れない。
「逃げて一夏ぁ!」
「シャル!」
「はい。あーん」
「……こ、来い!僕は絶対に負けたり─」
「やめろぉぉぉぉぉ!」
「んむぅ!?くつ……ぁあ!」
一気に噴き出す汗と定まらない焦点。シャルロットは即座に吐き出したが、既に手遅れだった。
「呑ま……れっ……」
「駄目だ!」
シャルロットも倒れた。食堂は危険を察知した他の生徒がとっくに逃げており、誰もいない。
「オオオオオオオオオオ!!」
セシリアから。箒から。鈴から……その毒物を食べた者達から謎のオーラが迸る。
「はぁ……はぁ……で、伝説の……超─」
何かを言いかけた一夏の口が止まった。否、口だけではない。全身のありとあらゆる動きが止まった。
(……なっ!?何……だと……)
いつの間にか、一夏の口にはサンドウィッチがあった。
不味いと思って何とかしようにも、とっくに手遅れだった。
息が出来なくなり、瞬きも、身じろぎも何も許されない生きながらに味わう死の苦しみ。
涙が溢れて視界がボケて、眼球が震えて何も見えなくなってきて─。
(お、俺……は……)
そこで一夏の意識は完全に途絶えた。
「ホピャァアアアアアアア!!」
優太「前回のサイコロは結果的にゴスペルになったんですが連続で入れても話題が無いので今回は見送りです。毎回間が開きすぎて申し訳ありません」