IS(インフィニット・ストラトス) 2人目の男性IS操縦者   作:スーパープルコギ

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めっちゃ間開きました……
次からは前くらいの期間に何とか戻していきます。



第26話 夏の終わり

 

 

 

 

 

 

─デュフフ……ンゴ?─

 

 

 

 

 

 

夏休みも残すところ5日。祖国から戻ってくる者や最後に遊びにいこうと計画する者。全く手を付けていなかった宿題に頭を抱える者。

皆各々過ごしている。そんな中、学園の秘密地下施設に1人の生徒が歩いていた。

 

「こんな所があったとはなぁ……」

 

本来、その地下には学園の職員であっても1部の者しか知り得ず、入ることが許されていない。

それを知ってか、その生徒は常に周りを警戒しながら歩みを進めていく。

 

「電波は届かず通信の類いは許されない。随分厳重な場所だな……」

 

彼、優太は圏外となった携帯を仕舞うと通路に顔を出して様子を窺う。

 

(もしバレたら織斑先生の鉄拳か?だが!これでも単独任務を生業としてきたんだ。こんなセキュリティがザラな所で見付かるものか)

 

義腕、義脚を今一度アジャストして通路に踏み出す。

 

『ねぇ。どうするつもりよ?』

 

「……急に話し掛けるのは心臓に悪いから止めてくれ……」

 

『何なら私がそこら辺見てきても良いわよ』

 

優太は考える。

今までバックアップこそあったが、誰かを連れて隠密行動は初めて。まだユグドラシルも誰に見えて誰に見えないかも分からない為、あまり動き回ってほしくないのもある。しかし自分が見えない所を警戒してもらえるのは心強い。少し考えた優太は結局死角をユグドラシルに任せ、奥へと進んだ。

 

『ねぇ。『シンモラ』の調子は?』

 

「分からない……最近会うことが無くなった。いつもなら寝てるときに会えてたんだけど」

 

『その『S.U.R.T.R.』ってシステムが影響してるのは確かよ。それにしても随分物騒なのを作ったわね』

 

「確かに物騒だ。が、使えなくするのは惜しい」

 

『……システムが安定しない限りは使うのを止しなさい。いくら貴方が強靭な生物であったとしても使用を重ねれば死ぬわ』

 

「分かっ─」

 

(声!)

 

刹那的な動きで薄暗い通路の天井に義指を突き刺して隠れるように張り付く。

ユグドラシルも遅れて天井に張り付いたようにすると優太の顔を覗き込んで一応小声で話し掛ける。

 

『……どうしたの?……』

 

「……声が聞こえた。いや、鼻唄か。取り敢えず警戒しながら進む……」

 

『……了解……』

 

周囲の安全を確保してから飛び降り、声がした方へ。

 

 

「……正解。次だ。えー……カルヴァイロン式フレームのお陰で第2世代型は第1世代型よりも機動力も柔軟性も優れたものとなった。それは覚えてるな?」

 

「うん」

 

「じゃあそのカルヴァイロン式フレームが多く採用された理由として大きいのを答えられるか?」

 

「カルヴァイロン式は第1世代型のアンエネイト式よりも遥かに軽量。だから先ずパワード・スーツとしての確立を目指して何とか形になった第1世代型と違って、より人の体に合わせて装甲を減らせた事でコストパフォーマンスが向上した」

 

「完璧だな。これだけ出来てれば学園の編入も余裕だろ」

 

8月も後半でやや肌寒くなってきたロシアは『元気な里 老人ホーム』スタッフルームで健康的な褐色肌にアッシュブロンドの少女と筋肉でタンクトップがピッチピチになった大柄な男が机を挟んでノートと教科書にペンを走らせていた。

 

「もう優太より頭が良いんじゃねぇか?」

 

「そんな事無いと思う」

 

「でもよ。実際優太が昏睡状態だった3週間でロシア語を殆ど話せるようになってたじゃんか。優太は1年掛かってたらしいぞ」

 

大柄な男、ゲンリフ・イヴァーノヴィチ・ドブロホトフは褐色肌の少女、エレノーラの頭を大きな手で掻き撫でる。前よりも短くなった髪の毛がクシャクシャになるのを嬉しそうに受け入れる。

 

「これで……私も学園に行ける」

 

「あぁ。その事何だが……エレノーラ。明日その学園への編入試験が日本で行われる」

 

「?話では来週だって……」

 

「カリーニンのおっさん、カレンダー読み違えたらしい……」

 

「そうは言っても……まだ書類の偽造が出来てないんじゃ」

 

エレノーラは当然の事ながら学歴はおろか、国籍も存在しない宙に浮いたような存在の娘だ。幾ら超高難易度の編入試験の受験に寛容なIS学園であっても、そんな居る筈の無い人を受け入れることは出来ない。それに、受験して仮に通ったとしても、過去にIS関連の学習及び開発・研究・テストに携わっていた期間が3年以上。そしてその学校や企業、軍から政府へ申告し、政府から極秘の手順を経て発行される証明書が無いとどんなに学歴が高くても弾かれてしまう。

だからこそ、完璧とも言える偽造書類の作成が不可欠なのだ。

 

「安心しろって。抜かりはないからよ」

 

「どっちみち政府にここの仲間が居れば可能な話。現に、ユーの学園でも性別を偽ったフランス人が居た」

 

「な。あれのお陰でこっちがやや苦労する羽目になったが……伊達に賄賂天国と呼ばれちゃいねぇよこの国は」

 

「お金でやったの?」

 

「少しな。大体は仲間が居るから頼んである。さ、続きだ」

 

 

「……あの女は」

 

『いやぁまたけしからん薄い本が最高ね。ドンドン画力が上がってるわ』

 

『何あれ?』

 

「いや、俺が訊きたいわ」

 

あれから少し走ってからたどり着いた部屋。さっきまで誰か居たのか、部屋の鍵は開けっ放しでやや涼しい。

そしてその部屋からまるで刑事ドラマのようにマジックミラー越しに見えるいかにも腐な女。俺はその女に見覚えがあった。……『パラライズ』の操縦者だ。

俺の家族を殺した“奴等”の仲間……今すぐにでもガラスをブチ破ってその細い首を握り潰してやりたい!……なんて思わなかった。

 

『何読んでるか気になってる?』

 

「……んにゃ。大体分かるから寧ろ知りたくない。入り口はどこだ?」

 

『あそこ。だけど鍵がかかってるわね。3重かしら』

 

「……壊すか。もうここまで入ってきたなら怒られるのは変わんないだろ」

 

3重にかかったロックを無視して貫手でドアを破壊。中でギャーギャー騒ぐ声がするがそれも無視してもう1度貫手。何度も貫手を繰り返して、段々へたれてきたドアを最後に引っ張り、丁度人1人通れるくらいの穴を空ける。

 

「ギャー!何よ!何なのよ!私何もしてないでしょ!?─え?そ、そそ曽我美氏!?」

 

「っす」

 

「何!?ま……まさか私が知ってることを洗いざらい吐かせながら快楽堕ちさせるつもり!?……良ぃ///……じゃなかった!わ、私は全てを吐いたわよ!は!?まさか─家族の復讐を先ず私の体で……!?良い///!あっ、でも駄目!私……まだ処女なの!……でも初めてで滅茶苦茶にされて開発されちゃうのもまた……///あぁん!でもぉ!」

 

『うわぁ……』

 

「よし帰るか。じゃヾ(´・ω・`)」

 

1人でクネクネしながら頬を赤らめた様子の女操縦者に急に関わりたくないと思い、逆再生よろしく戻る。

 

「デュフフ……ンゴ?あ待って!」

 

「……何ですか?」

 

「いや、それ私が訊きたいんだけど!?」

 

特に拘束されてる様子の無い女操縦者が立ち上がって片腕を伸ばして静止を求める。

そこで俺は初めて気付いた。その彼女の右腕が肩口から無いのだ。それに薄着の隙間から見える火傷や傷の痕……俺は彼女を倒したような記憶は無いが、その沢山の傷痕は俺がつけてしまった物だとすぐに分かった。顔にも大きいものではないにしろ、左目下から耳にかけて薄い痕がある。

 

「す、すみません。その傷痕……俺が」

 

「ん?あ、これ?スッゴく痛かったわよ。ヤになっちゃうわ」

 

「……」

 

「でも気にしないで。元々私がちょっかい出したのがいけなかったのよ。それに貴方にコテンパンにされたお陰で結果的に私は死なずに済んだもの」

 

いつの間にか彼女は俺の頭に手を置き、髪をクシャクシャにしている。彼女からは敵意を感じなければ俺に対する怒りや憎しみも感じない。

俺は自分が恥ずかしくなった。正直、彼女に対する復讐心が全く無かった訳ではない。もし反省の様子が無ければその時は……とも思っていた。それなのに彼女は俺を許し、あまつさえ自分が悪いと言っているんだ。

 

「ごめ……さい。ごめんなさい……」

 

泣いた。色んな事が溢れてきて……家族を思い出して……ただ泣いた。情けない。

 

「わちょ、え?何で泣いちゃうの?」

 

「貴女は……悪い人だとは思えない……教えて下さい。貴女の知ってることを」

 

「……良いわよ。あんなブラックな所を潰してくれるなら私も協力するわ。慰謝料寄越せっ!てね」

 

「ありがたいです」

 

それから彼女、ケイシー・ドナルドさんと数十分に渡って話した。俺が長いこと追っている組織と幾つか共通点が見られたがまだそうとは断言できない。するには情報が足りなさすぎる。ドナルドさんもあまり長く居なかった為かそこまで有力な事は知らないようだ。しかし俺はそれでも充分だ。

組織は流動的で幾つにも別れたリーダーが居るらしい。そいつらは常に同じ目的の為、1つを潰してもダメージは大きくない。蟻を殺しても巣を潰さなければ幾らでも湧いてくるのと同じだ。無論、それは数で圧倒すれば良いのだが出来たら苦労はしない。

 

「ところで、曽我美氏の右目どうしたん?」

 

「これ?右眼は昔事故で駄目になってたからナノマシン入れてたんですけど、この前の暴走でそのナノマシンが破壊されちゃったみたいで……外すとこんな真っ赤なので友人に貰った眼帯で隠してます」

 

「うわっ……怖い。じゃあその手足も事故で?」

 

「一応。腕と脚はもげちゃったんですよ。でも義肢を作ってくれた人に助けてもらって今も義肢でお世話になっ……りたくはないですねなるべく」

 

「へぇ。私も義腕欲しいわー」

 

ふと思う。俺が束さんに頼めば1つくらい義腕を作ってくれるのではないか?ドナルドさんがこれからどう対処されるのか分からないが、協力するのであれば片腕だけだと色々心配だ。でもあの束さんが全くの他人の為に作ってくれるとは思えないんだよなぁ……俺も他人だけど。

 

『て言うかあんなに派手にドアブチ破ったのに誰も来ないのね』

 

「確かに」

 

「でしょ?片腕だけだと本も読みづらいのよ」

 

「えっ、あぁ。そうですね」

 

やっぱりドナルドさんにもユグドラシルは見えていない。ユグドラシルは誰に見えて誰に見えないのかサッパリ分からないって言ってたけど……この様子だとまだ俺だけしか見えていない事になるな。

 

「ねぇ。その人紹介してくれない?お金は……あ。私の口座使えないじゃない!死亡扱いなのにお金が減ったらおかしいもん!」

 

「んー」

 

1度駄目元で束さんに電話してみるか。

そう思い、フューチャーフォンを取り出すとミハイルさんから着信が1件。ここ電波届くんだ……。

 

「ちょっと待ってて下さい。………………あ、もしもし?おじさん?電……はい。え?本当ですか?凄いです!でそ……はい。……はい。あ、分かりました。物凄くタイミングが良くてありがたいです。……そうなんですよ。丁度適当な人が居て……いや、色々あって……。エイシャと他1人か2人お願いしても良いですか?……ありがとうございます!来週ですか?大丈夫です。はい。……はい。入り口で待ってるので。……分かりました。ありがとうございます」

 

「もしかすると私の義腕が見付かったとか?」

 

「来週俺の別の知り合いがテスト用ではありますけど義腕を持ってきてくれます。手術は軽いんでここでも出来ますよ」

 

何とも都合よくドナルドさんの義腕提供が叶った。テスト用ではあるが、その内ちゃんとした物に代えられるだろう。元々俺でテストをしたかったらしいが、全くの未経験者でやるのも良いんじゃないだろうか?

 

『あ、誰か来た』

 

「誰か来た?」

 

おうむ返しで応えると穴が空いたドアの先に、顔をひきつらせた織斑先生がコーヒーの紙コップを持ちながらワナワナと震えていた。

それに思わず仰天した俺は椅子を倒して立ち上がり、どんな言い訳をすれば良いのか思考を巡らせていた。

 

「……お、おはようございます……織斑先生……」

 

「……貴様は何をしているんだ?このドアの有り様は何だ?5文字以内で説明してみせろ」

 

「えっと……あの……」

 

俺は死んだ。

 

 

「どう言うことだ?」

 

「……走ってきた青い髪の生徒にぶつかってよろめいたらこの地下に踏み入れてました」

 

「物理的にどうしたら入れるのか説明しろ」

 

「分かりません……」

 

こっぴどく怒られて正座をしていると俺にぶつかった……と言うよりは突き飛ばした生徒を思い出した。

リボンの色を確認していない為、学年は分からないが髪の毛が青─って言うか水色か。兎に角その生徒は何だが他と雰囲気が違っていた。

 

「青じゃなくて水色でした」

 

「……あー、その事はもう良い。大体誰かは察しがついた。後で私が言っておく」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

「が、お前ならその入り口ぐらい何とかして開けられただろう。興味本位で足を踏み入れてこれだ」

 

指差されたドアはひしゃげて使い物にはならない。最近学校の物を壊しすぎて感覚が麻痺していたが、俺の行動はマトモではない。自重します……。

 

「それで?お前はコイツに何をしようとしていた?」

 

「何もしないですよ」

 

「嘘つき!私の体をあんなに弄んでおいて……!」

 

「ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!?」

 

「カメラを見ればすぐに分かる。手間を省きたいから冗談は止せケイシー・ドナルド」

 

「……私が居た組織について少し。他は私の義腕提供とかですよ」

 

「曽我美……お前は遺伝子強化と束のテクノロジーで確かに常人を遥かに上回る身体能力を持っている。だが、お前はそれでも1人の人でありここの生徒だ。決してその組織と戦おうとは思うな」

 

それを言われることは分かっていた。敵の組織『リベレーター』は想像より遥かに強大だ。俺1人やおじさん達の力を借りても敵わないだろう。だが、それはあくまでも真っ向から仕掛けた場合。実際は俺の得意分野である単独潜入・破壊工作でやっていくつもりだ。

 

「……分かりました」

 

(ま、コイツがこれくらいでは諦めないだろう。全く……面倒を次々と増やしてくれる)

 

(曽我美氏がこれくらいで引き下がるとは思えないなぁ。私も準備出来る事はやっておこ)

 

(兎に角今は謝って諦めた事にしておこう。ドナルドさんの話だと敵は必ずやってくる……。そいつを捕らえて─)

 

織斑先生とドナルドさん2人の視線を受けながら、俺は捕らえた時にどう吐かせてやるかを頭の中でシミュレートしていた。

 

「ところで曽我美。お前最近心霊スポットに行ったか?肩が重かったりしないか?」

 

「行きましたけど……肩ですか?んー……確かに最近肩が変な気が……」

 

「……そうか。ち、近い内に神社とか寺に行っておけ」

 

(何で急にそんなこ─そうか!織斑先生にはユグドラシルが見えてるのか!だからユグドラシルを幽霊と勘違いしてそんな事を言ったのか)

 

「えと……俺に幽霊とか憑いてます?」

 

「きっきすな……気にするな」

 

(よーし。怖がらせてやれユグドラシル)

 

(これはマズイ。私が見てきた中で一番気持ち悪い……こんな……こんな血みどろで腹が裂けた男の霊)

 

『ねぇ……彼女、私じゃなくてモノホン見えてるみたいよ。多分、滅茶苦茶ヤバイのが 』

 

─え?

 

 

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