明かりが落とされた室内には空中投影ディスプレイが大きく浮かんでいた。どうでもいいけど薄暗い部屋で画面見ると目が疲れる。
「現状を説明する」
そんな中で織斑センセから現在の状況を伝えられる。代表候補生や箒さんは何故か落ち着いて座っているが俺は浮き足立っているのが自分でもわかる。一夏も少し落ち着かない様子だ。こういった事態への耐性はないんだ、当然だろ。
「ハワイ沖で試験稼働中であったアメリカとイスラエルで共同開発されていた第三世代の軍用IS“
ISって暴走とかするもんなのか? 以前に、コアに意識があるとは習ったが、暴走に至るほど自我が強いパターンが存在するとは聞いたこともない。
いや、それよりも軍用IS、軍用って聞こえたぞ。アラスカ条約でISの軍事利用の禁止が定められていたろうに、なんでそんなもんを開発してんだよ。ルールは破るためにあるとか言っちゃう痛い系なのか。
「銀の福音は50分後、2km先の空域を通過する。それを阻止することが私たちの役目だ」
……あー、軍事利用はせずに開発だけしてたとかそういう屁理屈か。まかり通らねぇだろと言いたいところだが通すんだろうな。情報公開や共有も義務だったはずだがされてなさげだし、まだ試験段階の完成品じゃないとかそういった詭弁。情報公開と共有に関してはしてないところも多そうなもんだが、結局のところ軍事利用もそうなのかもしれねぇんだな。
「学園の教員は訓練機での空域及び海域の封鎖を行う。そして専用機持ちだが」
あぁ、クソ思考が追いつかねぇと悪態をつきつつ、不自然に言葉を切った織斑センセに顔を合わせる。合わせて驚愕、センセが苦虫を噛み潰したような面をなされていた。
緊急事態に織斑センセらしくないと全員が疑問を抱くも続く言葉で合致した。
「代表候補生、いや海外の専用機持ち組は旅館及び周辺海域の防衛に当たれと各本国からの指示が来ている」
海外の専用機持ち組は待機ね……日本の代表候補生、簪さんは残念ながら今回の臨海学校には不参加。
それってつまるところだ、俺と一夏と箒さんしかいねぇってことじゃねぇか。これは遠回しな死刑宣告かなにかか。
──しかし、学園は外部からの干渉云々は何処へ行ったのだろうか。学園への干渉でなく、代表候補生と雇い主の国としてのやり取りみたいな屁理屈出ちゃうか。屁理屈まみれだな。
「銀の福音についてのスペックデータは私の一存で公開させてもらう。ただしアメリカ・イスラエル二国間の機密のため口外はするな」
「……ちょいちょい引っ掛かってたんですけど、ISについての情報は公開義務がありませんでしたっけ?」
「ああ、そうだ。軍事目的の使用も禁止で我々が対処することすら本来おかしいことだろうな」
織斑センセの表情からはなにも読み取れない。表情翻訳家のシャルロットならわかるのだろうか。
交戦が不可能に近い代表候補生や教員は、銀の福音の情報をもとに相談を始めている。
「恐らく篠ノ之が紅椿を、第四世代のISを手に入れたと知ったのだろう。
それで今回のトラブル。自国の代表候補生と専用機を投入して力を貸した際の損失と利益、それを天秤にかけた結果がこれだ。遠巻きからの銀の福音と紅椿、男性操縦者のデータ収集が一番だと判断されたらしいな」
紅椿のことを知ったって、ついさっきお披露目されたばかりだってのにどこから──どこからもなにもないか。まぁ、他の生徒だわな。篠ノ之博士がいて第四世代があって、そういう目的ありきで来てる生徒なら報告するよなまあ。
「俺と桐也、箒だけしか出れないって、無茶じゃないか?」
「本当にそうだよな……ああ、クソ。世の中いい方向に転ぶことの方が少ないってことですか」
「そうだな……ただ織斑、篠ノ之、出路。これは実戦であり、お前たちは代表候補生でもない。もしも辞退するというのならば、それでもいい」
じゃあ辞退します。なんて即答しかけたが喉元まで来たそれを飲み下す。
織斑センセがそう言ってくれているということは俺たちが出なくても無茶を通せば、なにかしらの手段は講じることが出来るんだろう。
でも、その無茶を通せなかったら、その手段が通じなかったら。
銀の福音がもたらす被害は未知数。ここは防衛できたとしても超音速で素通りされるようなことがあったとしたら。街で無差別に被害を広げるようなことがあるとしたら。
そんな
別に見知らずの人たちへの被害を心配している訳じゃねぇ。残念なことにそこまで人間出来てない。
ただ、隣街にはたまたま偶然どうしてかバイトをしに来てる友達がいるんだ。家族だってどこにいるのかわからない。この近辺にいる可能性だってある。面倒事なんてなるべく避けて楽して生きたいのに困ったもんだ。
──恨まねぇけど今度会ったら愚痴くらい聞いてもらうぞ。
「俺は、やります。やってみせます」
腹をくくってる間に一夏が決めてしまったようだ。俺も続いて意思表明してやらぁな。
「俺もやります。まぁ、俺と打鉄でどこまでやれるかはわかりませんけど」
「そうか、篠ノ之は」
「自分の尻拭いもせず、漏らした糞を投げつけたあげくに処理まで任せられている現状に疑問が尽きないのですが、一夏たちも行くなら私も行きます。他人の尻拭いをすることに疑問が尽きませんが」
「二度も言うな……よし、では──」
こうして暴走した銀の福音への作戦は始まった。
超音速飛行中でたあるの福音へのアプローチは一回きりが限界。つまり一撃必殺が必要とされる。
一撃でという単語で歯噛みをしていた専用機持ち組や俺の視線が一夏に向かった、向けてしまった。
「一撃必殺なら白式の零落白夜、だよな」
「そうなるが……織斑、本当にいいんだな」
攻撃の要として白式が適任なのは誰から見ても明らかだが織斑センセは再度参加の意思を確認する。何故、二度も確認するかはわかりきっていることだがしかし、一夏の意思も固いようで頷くことで肯定の意を示す。
それを受け止めた織斑センセは一度だけ目蓋を落とし、すぐに開く。
「では目標への接近方法だ。繰り返すようだが銀の福音は超音速飛行中、よって同等の機動力が必要となる」
「高速機動パッケージが入り用ですかね?」
「わかっているなら上等だ。だが出路」
「わーってますよ。今日使ったばっかのパッケージを俺が使いこなせるはずないですし」
でもやらなきゃならねぇならやる。義務感でも正義感でもなんでもねぇ。愛国心なんて欠片ほども存在しねぇ。なんならIS学園入学前の騒動で日本というか政府はちょっと嫌いになったくらいだ。ついでに銀の福音開発国はたった今嫌いになった。
友達が危ないならなんとか出来るかもしれない俺が動くだけ。不安がないわけでもない。けど、たっつんが俺が寂しがってるかもと会えるかもわからないのに来てくれたのと変わりゃしねぇ、別に寂しがってなかったけどな?
なーんて考えてると突然の声が割り込んできた。
「はぁん、出来もしないことをやるっていうのは無能をひけらかすこととなんら変わりないって、どうしてわからないかな? あ、無能だからだね」
「おい、束どこから入ってきた」
「上だよ」
天井から篠ノ之博士が落ちてきて見事な着地を決めた。尚、下着は逆光により見えなかったので罵倒されただけとなった。それよりもなんか急に絡まれたんですけど、しかも割りと痛いところをつつくなよ。
「さっきようやく安定飛行出来始めたばかりのくせに軍用ISにいっくんを乗せてどうにか出来ると思ってるの?
どうにかなると思ってるの? なにかヒーローみたいにシチュエーションに合わせて才能が開花するとでも?」
本当、この天才はズケズケと。
「状況に浸って浮かれて死ぬならひとりで死んでくれないかな。いっくんを巻き込んであの世への片道切符とか嘲笑ものだよ」
不安に思ってたところを的確に突いてくれる。
そりゃそうだろ。俺が高速パッケージに振り回されてから半日も経っていない。そんな短期間どころか短時間の間に何が出来るようになったって、安定した飛行だけ。
その安定した飛行も戦闘を考慮したものではなくただ飛ぶだけの動作。回避行動や複雑な機動なんて一切やっちゃいない。スポーツカーを乗用車のように乗るか、直進でしか進めないとでも例えりゃいいのか。
「それでも」
「それでもやるしかないならやるって言うつもりかな。ちーちゃんの話聞いてた? 無理強いはしないって言ってたはずだけど。
出来ないことを出来ないって言わずに周りに迷惑をかける。それは間抜けを絵に描いたような無能だよ」
ボロッカスに言われてらぁな……しっかし反論の糸口はないな。むしろ口を開けば片っ端から正論に押し潰されちまう。それはもう誰もいないなら泣いて枕を濡らしそうなほど論破されてしまった。織斑センセや他の面子がなにか言おうとしてたみたいだが、両手を上げて降参のポーズを取る。
一応、別の案があるのかだけ聞いて、いやあるんだろうけど聞くだけ聞いてもう黙ろう。この人に勝てる気がしねぇや。口で負けるとか結構へこむ。
「貴女の言う通りです。けど、でも対象への接近には拙くても高速パッケージがある俺が乗せた方が、エネルギー効率としてもマシに思えたんですよ。けど、貴女にはより安全な策があるんですよね」
「あるよ。別にちーちゃんや箒ちゃん、いっくん以外はどうなってもいいけど」
「おい束、いい加減にしろ。私の生徒に絡みに来ただけなら殴るぞ」
「ちーちゃんがわざわざ警告するなんて珍し……あ、本気だね。ちょちょいと待ってよ」
篠ノ之博士は織斑センセから半歩下がりつつ、箒さんに近づいた。
「あのね、ちーちゃん。箒ちゃんに渡したISは第四世代で万能型なんだよ?」
「つまり、高速パッケージとしての展開も出来ると」
「そういうことだよ」
「しかし、篠ノ之は出路よりも高速パッケージの使用回数は少ない。と言うよりも皆無だろう」
「高速機動の経験は少ないどころかゼロ、でもそれより箒ちゃんの方が慣れにおいても戦闘においても分が上がるはずだよね」
やってらんねー。嘘偽りない真実に心ズタズタ、出したやる気を投げ出して、身も投げ出してゴロンと寝転がる。微妙に複数人から気遣う雰囲気が感じられて更に居たたまれねぇ、むしろ寝転がったことを注意しろよ。放置されるとちょっと気まずいじゃねぇか。
「ちーちゃん、私は難しいこと言ってないはずなんだけど。弱いやつより強い箒ちゃんに任せた方が勝算が高いっていう小学生でもわか──」
「姉さん、それは違います」
不意に、今まで黙り通していた箒さんが口を開いた。
「そこの男は、出路桐也は弱いやつではありません」
「箒ちゃんが友人を庇うのはいいけどさ」
「庇うなんて行為を私がするとでも?」
「……あー、そうだね。箒ちゃんはそういうことしない。だって」
「貴女の妹ですから。貴女より少しばかり社会に生きやすくなったのが私です」
「うんうん、なら私が間違えてたね。箒ちゃんに免じて弱いわけじゃないことだけは認めようじゃないか」
不覚にも少し、さっきと別の意味で泣きそうに、いやいや俺別にそんな泣きっぽくないし。
けど箒さんがわざわざ姉に向かってそう言ってくれたことは嬉しかったりした。篠ノ之博士も数度なにか納得したように頷いて口を開く。
そして──
「でも箒ちゃんの方が武力的に強いじゃん?」
「それはそうですね」
この姉妹は平然とそんな会話を続けた。
くっそ、なんか色々台無しになった気がする。なんか一気にテンション下がった。不貞腐れ気味に姿勢を変えようとするとシャルロットと目が合った。器用にも表情で災難だったねって伝えてくる、本当器用だな。
でも知ったこっちゃないのでそのまま体勢ごと視線を降下、シャルロットの太ももロックオン……よし、心のゲージが回復した。なんか若干の怒気が伝わってくるが気のせいだろ。世界中の誰もが信じなくても、俺はバレてないって信じてるから。
正座して真面目に話の続きを聞く姿勢を取る。専用機組に背を向ける方向になったのはたまたまだ。別にやましいとかそんなことないから。
「け、けど展開装甲ってそんなに便利なんですか?」
おっと一夏が急な話題転換。たぶん俺を気遣ってのことだろうけど気にしてないぞ。事実にショックを受けただけでもう復活したから。変わりに後ろで怒ってるかもしれない奴をどうにかしてほしい。パンツは見てないし許してくれよ。
「うん、便利。調理器具がひとつで片付くって言ったらいっくんもわかりやすいでしょ?」
「あ、それは凄い」
「まぁ、いっくんの白式にも展開装甲って使ってるんだよ?」
「えっ、えぇ!? 白式に!?」
「言ってなかったっけ?」
篠ノ之博士はとぼけたように語る。
「いっくんの白式、正確には雪片弐型は展開装甲だよ。元々欠陥機として投棄されてたのを束さんがちょちょいと弄ったんだけどね。
当然の帰結として紅椿は全身のアーマーが展開装甲だから最大稼働時のスペックは比類なく強いよ? 敢えて最強とは言わないけど」
「私の方をチラチラと見るな」
「あっはっはー、白騎士の話までしてもよかったんだけどねー。これ以上関係ない話をしたらちーちゃんが真剣に怒りそうだしおーしまい」
「チッ……」
「舌打ち!?」
察しのよさに対して不機嫌さを露にしたのも
ここからの話はトントン拍子。銀の福音のスペックを確認するも、広域殲滅を目的とした特殊射撃兵装付の第三世代。オールレンジ攻撃と高速機動を特化させた機体とのことだが、速攻で落とせるのが最善のためプランに変更はなかった。
なので、銀の福音へのアタックは最新鋭の紅椿が高速で白式を運び、攻撃力ならピカ一の零落白夜で一撃必殺で決定となった。
「そして出路だが、紅椿と白式から僅かに遅れての出撃だ。万が一に備えろ、やれるか?」
「やります」
篠ノ之束の顔が露骨に歪んだ。不愉快そうにしているのが俺でもわかる。
けど蔑むような目はなんだかんだ慣れている。ほら、女尊男卑のご時世だから否応なく学園とかで時折感じるんだわ。あれだけの人数がいれば当然と言えばそうだし、感じるっていっても快楽的な意味じゃないけど。俺はマゾじゃねぇし、察しているって意味だから。
まぁ、なので気後れせずに、しっかりとお目目は合わせて向かい合う。目と目が合っても十中八九、いや十中十で恋は始まらないやつだ。けど、だからどうしたってんだ。学園の生徒と目の前の女の何が違うってんだ。
トップクラスとはいえ山盛りいる才女か、世界を手のひらで転がせるオンリーワンかの差だな。よし、やっべーわ。最悪の場合は箒さんに土下座して助けてもらおう……助けてくれるよな? 助けてくれ。
「おい、なにボーッとしてるんだよ」
「あ、なにか」
「私と正面向き合っといて、なにかじゃないだろ……さっきの話をもう忘れちゃったのかな?」
「単純記憶には自信あるんで覚えてます。割りとキたんで余計に」
「じゃあなんでお前は出ようとしてるのかな」
「友達を助けたいからですよ。微力でも、全力で」
隣街にいるやつとか、どこに居るのかわからんやつとか……まぁ、ここにいるやつらとか。あと俺の両親も何処にいるかわかんねぇんだ。
「邪魔になるとしても」
「ならねぇようにします。俺はヒーローでもなんでもねぇです。だからこそ、身の丈でやれるだけ全力で。
誰に誇れなくても自分だけは納得できるように生きるってのが信条なんで」
「アホくさ……あっそ、精々箒ちゃんたちを巻き込まないようにしろよ」
拝啓オヤジ殿、貴方の言葉を史上最高に天才な女に呆れ顔でアホくさいと言われつつも俺は元気です。世界相手に余裕こいてる天才に臆せず向かい合えるくらいに元気です。
膝が震えてるのはこれからのことを考えてな。間違いなく武者震いだ。脚部限定武者震いであって、断じて篠ノ之束にビビってたわけじゃねぇし。
▽▽▽▽
ISを知るものならどうしても逆らわずにへつらいたくなる相手に意地を張った出路桐也。その事実だけをくりぬくなら中々どうして大したものなのだが、やはりというか少しばかりの震えが見てとれた。
──周囲の友人が声をかけるも本人は虚勢を張るのだが。
「桐也、大丈夫か?」
「おう、銀の福音でもなんでも
「や、やる気は十分だな!」
まぁ、あくまでも虚勢なのだが果たして語感から
「箒さん、わたくし高速機動の経験があるので不要かもしれませんが軽くレクチャーを」
「いや、頼む……希望を述べるならなるべく噛み砕いて教えてほしい」
「善処致しますわ」
各々が準備を始める、実戦に駆り出される準備を。
「嫁、桐也よ。実戦は生きて帰れば一人前だぞ」
「ははっ、ラウラ少佐が言うなら間違いないな」
「むぅ、冗談ではなくてだな」
「わかってる、わかってるさ。なぁ、桐也?」
「そりゃもう、命あっての物種だ」
「ならばよしだ!」
どこか満足げなラウラを見て笑う一夏と桐也の後ろへ忍び寄るツインテール。両手を振りかぶり──バチンッ!
「気合い注入ゥ!」
「「イッデェ!?」」
「おっし、あたしからは以上よ!」
「おい説明、背中を思っくそ叩いた説明」
「やぁね、説明とか不粋じゃない。察しなさい!」
ジト目を意にも介さず箒の背中も叩きに行き、危うく投げられそうになる鈴。
「あっぶ!?」
「なんだ鈴か」
反射で投げる箒も大概だが見事着地を決める鈴も大概だった。鈴は、ちぇーとか言いながら箒とハイタッチ。そのまま、箒は一夏や桐也へと寄ってくる。
そうして三人が揃ったところでシャルロットが声をかけた。
「無茶だけはしないでね? 桐也も一夏も箒も皆、意地になりそうな性格してるから心配だよ」
「言われてるぞ桐也」
「言われてんぞ箒さん」
「言われた通りだな一夏」
「…………」
なんとも言えない沈黙が場を支配する。シャルロットは額に手を当ててため息を吐くが、呆れられた対象の三人は揃って解せないといった顔をしていた。
「はぁ、取り敢えず無茶は厳禁だよ? 最悪、三人が取り逃がしちゃったときにはさすがに私達も動けるから」
「あいよ、任せろオカン」
「誰がオカンなのさ」
「帰ったら寝たいし布団よろ」
「だーかーら! オカンじゃないし!」
少しからかいつつ、その余裕があるなら上等だといつものように言い聞かせる桐也に、それを知ってか知らずか付き合うシャルロット。その様子を眺めていた一夏と箒もノってくる。
「ははっ、じゃあ俺は風呂沸かしてくれ」
「私は食事の用意を頼む」
「あぁもう……わかったから気を付けてね! いってらっしゃい!」
わらわらと要望を寄せてくる三人の背中を押しつつ、いってらっしゃいという姿はさながらオカンそのもの。
ただ行ってきますと返すのは何となく照れ臭かった桐也は無言で敬礼とかいう、なんとも不安を掻き立てる演出を残していったのであった。
ここまで読んでくださった方に感謝を。
【没ネタ】『もしもし私銀の福音、今あなたの後ろにいるの』
・展開装甲:超便利。実は燃費はよくない。
・強い:力だけじゃない。
・正論:つつかれると痛い。
・ドンと来い:Don't来い≒来んな。
・オカン:オカン。
・無言で敬礼:フラグ。