最近ヤンこれに没頭してましたが、やっぱりこっちも書いていきたいので、ぼちぼちやっていきますよー!
第88話 中峰兄弟VS一航戦
トラック泊地より少し離れた海上。 そこは泊地に所属する艦娘たちが演習や模擬実戦を行う際によく使われている場所だった。
しかしこの日ここにいた艦娘は二人だけ。 向かいには二人の青年が艦娘たちと相対する形で着水していた。
「………」
青年のうちの一人はこのトラック泊地の提督、中峰正也。 もう一人は、タウイタウイ泊地を務める提督、中峰幸仁。
二人と対峙している艦娘は、二人の泊地に所属している一航戦。 赤城と加賀の二人だった。
赤城と加賀は隙のない様子で艤装の弓を構えこちらを睨み、正也と幸仁もまた、すぐに動けるよう武器である槍と刀を構え二人の出方をうかがっていた。
お互い無言のまま静寂だけが支配するこの空間。 だが、それは突然終わりを告げる。
「来るぞっ!」
静寂を破る幸仁の一喝。
同時に、赤城と加賀の二人が艦載機である矢の切っ先を二人に向け手を離す。
バシュッ!という音とともに二人の放った艦載機が正也と幸仁をめがけ飛来し、正也と幸仁も赤城と加賀目掛け一気に突撃していった。
「うおおおおおおっ!!」
槍を片手に一気に海上を駆け抜ける正也。
だが、彼の進む先には加賀の放った艦攻が正也に迫っていく。
このまま突っ込めば衝突することは免れない、が…
「甘いぞ加賀っ!」
海面ぎりぎりの高さで突っ込んできた艦攻を正也はジャンプで飛び越す。
そのまま進む先にいる加賀に特攻を仕掛けようとしたが、
「甘いのは貴方ですよ、提督」
正也の飛び越した先には別の艦攻が着地点に合わせて飛来。 そのまま正也にぶつかろうとしていた。
だが、正也も大人しくやられるつもりはない。
「なんのっ!!」
正也は自身の槍を下に向けて砲撃。 砲弾を放った反動で正也の体は浮き上がり艦攻の上を通過していく。
宙に浮かび上がったままの姿勢で、正也は再び槍の切っ先を加賀に向けて第二撃を放った。
ズドオオオオオン!!
正也が放った砲弾は真っすぐ標的である加賀目掛けて飛来していく。
彼の狙いは正確で、このまま飛んでいけば、彼女に直撃するのは誰の目から見ても明白だ。
だからこそ、正也は油断していた。
正確に飛んでいくということは、相手に砲弾の軌道を読ませているということに……
「いいっ…!?」
なんと、赤城が放っていた艦爆が正也の砲弾を狙い、撃ち落としたのだ。
突然の出来事に思わず素っ頓狂な声を上げる正也。
同時に艦爆は空中に飛んだままの正也に狙いを向ける。
今度は加賀ではなく正也の方が的になってしまっていた。
だが…
「ふっ!」
「なっ!?」
赤城と加賀が正也に気を取られている一瞬の隙をついて、幸仁が斬撃を放ち、艦爆を両断。 おかげで、正也もどうにか被弾せず着水することに成功した。
遠く離れた位置から艦爆を両断するほどの強力な斬撃を放つ幸仁の腕に、加賀も素直に感嘆の声を漏らす。
「あの距離で赤城さんの艦載機を斬るなんて、その腕は素直にほめてあげるわ。 でも…」
幸仁は加賀が何か言っていることに気づき顔を向けようとするが、同時に足元に違和感を感じた。
何やら、水面に映る影がおかしい。
自分の影にしては少し大きい。 それどころか、徐々に影が大きさを増している。
そして即座に気づく。 これは、頭上から何かが自分に接近しているんだと。
「なにっ!?」
幸仁が上を見上げると、そこには正也が躱したはずの加賀の艦載機が一直線に突っ込んできていた。
「私の狙いは、最初から提督ではなく貴方よ」
「兄ちゃんっ!?」
幸仁のピンチに思わず正也も心配するが、
「慢心ですよ、弟さん」
幸仁に斬られずに残った赤城の艦爆が、正也を狙って飛来。 そのまま彼目掛けて爆撃を放った。
「…やりましたかね、赤城さん」
加賀はじっと正也と幸仁のいた場所に視線を向けたまま、赤城に尋ねる。
二人のいた場所は艦爆の爆撃と艦攻の攻撃で水しぶきが上がり、二人の姿は見えない。
だが、あの距離からの攻撃は躱しようがない。
赤城もまた、何も言わず水しぶきの上がった場所を見つめていたが、
「…っ!? 構えて、加賀さん!!」
血相を変えて加賀に呼び掛ける赤城。
同時に、水しぶきの上がった場所から何かが飛び出した。
加賀もそれに気づくと即座に手元の弓を構える。
水煙の上がる水面から現れたのは、ギリギリで艦載機を捌いた正也と幸仁だった。
二人は一気に赤城たちと距離を詰めていく。 正也は赤城に、幸仁は加賀へと標的を定める。
加賀は幸仁を狙い、再び艦載機を放つ。 群を成して飛んでいく艦載機は幸仁に向かいまっすぐ進んでいくが、
「燃え散れ! 薄刃陽炎!!」
幸仁は両手の刀を振るい、加賀の艦載機を斬り付ける。
撫でるように斬り付けられた艦載機たちは、その摩擦熱で燃え上がり、コントロール不能になってしまった。
「しまっ…!!」
加賀は動揺しながらも再び攻撃を仕掛けようとするが、時すでに遅し……
「かっ…!?」
幸仁の突きが加賀の腹を直撃し、その衝撃で加賀はそのまま後ろへと吹っ飛ばされていった。
「加賀さんっ!? くっ…!」
赤城は急いで正也を仕留めようと艦爆を向ける。
まだ距離的にはこちらに分がある。 このまま反撃する隙を与えまいとしたが、
「させるかっ!!」
正也は赤城が攻撃する前に正面の水面に砲撃。 放たれた砲弾は巨大な水柱を舞い立たせた。
「しまった! これじゃ、艦載機で狙いを定めることができないっ!」
咄嗟の正也の行動に狼狽する赤城。
正也の上げた水柱のせいで、相手がどこにいるか分からないだけでなく、爆風から発せられる向かい風のせいで、艦載機を放つこともままならない。 完全に赤城は攻撃を封じられていたのだ。
そこへ…
「でやーっ!!」
爆風に乗って飛び上がった正也が、赤城の頭上目掛けて勢い良く槍を振り下ろしたのであった。
トラック泊地の港。
そこには先ほど戦った4人が集まっており、周りには他の艦娘たちも4人に励ましの言葉をかける。
「うむ。 お互い良い試合だったぞ」
4人の戦いを観戦していた艦娘、長門は素直に称賛の言葉を贈る。
赤城は、いまだに痛む頭をさすりながら呟いた。
「いたたた…… また負けちゃいましたね」
「こうまでして勝てないとは、流石に気分が落ち込みます…」
加賀もまた、落ち込んだ様子でため息を吐くが、
「何言ってんのよ! 誉ある一航戦ともあろう者が、そんな弱気な事言わないでよ!」
長門と同じく、試合を観戦していた艦娘。 タウイタウイ泊地所属となった五航戦、『瑞鶴』は憎まれ口をたたきながら加賀を睨んだ。
「瑞鶴、何てこというの!? 先輩に向かって失礼でしょ!」
妹の無礼を慌てて止めようとする五航戦の姉。 妹と同じくタウイタウイ泊地所属となった『翔鶴』は、瑞鶴をしかりつける。
だが、当の加賀は、
「…まあ、五航戦如きじゃ提督に手も足も出せずに負けるのが落ちだけど」
「な、何ですって―!?」
お互い睨みあいになっている加賀と瑞鶴を差し置いて、赤城は正也たちと今回の戦闘について話し合っていた。
正也と幸仁の二人も、勝ったとはいえその恰好はボロボロで、二人もまた苦戦した様子がうかがえた。
「いやー、今回は流石にウチもひやっとしたよ。 艦攻が2回続けてきたと思ったら、まさかの三段攻撃だったんだから」
「加賀さんと事前に打ち合わせしてたんです。 二人一緒に相手は流石に厄介だから、先に片方に狙いを定めようと」
赤城がそう言うと、幸仁は特に表情を変えず、
「やっぱりな。 そう来るだろうと思って、俺たちもどちらかが集中攻撃を受けたらフォローできるよう決めてたんだ。 今回は正也を狙ったようだが」
「加賀がそのあと兄ちゃんを狙ったのも、あれは打ち合わせてなの?」
「ええ。 もし集中攻撃が失敗したら、その時は隙を見せたもう片方を狙うようにって。 まあ、それもやぶられちゃいましたけど…」
「まあ、ウチ等からすればそれを捌けなかったら負けてたかもしれないんだから、二人も十分強いよ。 特訓に付き合ってくれてありがと、それじゃウチ等は戻るね」
「こちらこそ、手合わせしていただきありがとうございます。 では、また機会があったらよろしくお願いします」
「ああ。 赤城と加賀も入渠したら、ゆっくり休んでくれ」
「は、はい…///」
幸仁にそう言われ、赤城も若干照れながら返事をし、二人はその場を後にしていく。
その様子を、加賀は何も言わず遠目に眺めており、
「ちょっと、どこ見てるの!? ちゃんとこっちを見なさいよ!!」
瑞鶴は未だ怒りをむき出しにしながら、加賀に絡んでいた。