今回からは、話の展開的に大分流れが遅くなりそうなんですが、大目に見てもらえると幸いです。
深海提督の登場。 そして、正也と幸仁をはじめとした仲間たちがどうなるか。 楽しんでもらえれば幸いです。
正也が深海提督と遭遇した次の日。 トラック泊地では朝からここへと訪れた提督、幸仁と神原の姿があった。
二人の後ろでは間宮・明石・大淀も各々の秘書艦を連れてきた。
表情は皆真剣だが、そんな中で神原はいつもの穏やかな表情で正也に挨拶をする。
「おはよう、中峰君。 我々も幸仁君から話を聞かせてもらった。 件の深海提督との話し合い、私たちも同席させてもらうよ」
「ありがとうございます、神原さん。 間宮さんたちもすみません、わざわざ来てもらって」
「いえ、むしろこれは深海棲艦側の情報を得られる絶好のチャンスですし、何より櫟谷という男の居場所を知れるかもしれません。 この戦いに終止符を打つためにも、ぜひ私たちも加わらせていただきます」
凛とした表情で間宮はそう言い放つ。
いつもは給糧艦として艦娘たちのサポートをしている彼女も、今は舞鶴鎮守府の提督として気合いが入っている。
明石や大淀たちともひとしきり挨拶を終えると、朝から周囲を警戒していた空母部隊から報告があった。
『提督、私の艦載機がこちらに向かってくる深海棲艦の艦隊を見たとの報告があったわ!』
「本当か、飛鷹!? 規模はどれくらいだ…!」
『見たところ、例の深海提督と姫クラスの深海棲艦に、ル級とタ級の随伴がついてるみたい。 あと、提督の報告にはなかった小柄な深海棲艦も一緒にいるわ』
「そうか、分かった。 とりあえず、こちらから艦載機を出してついてくるよう誘導してくれ。 泊地の港に着いたら、例の深海提督と随伴の深海棲艦を一人だけ通して、残りは港で待つよう伝えてくれ」
『分かった。 じゃあ、また何かあったら連絡するわね』
正也は指示を終えると、「ふう…」と小さいため息をつく。 普段はこういった指示はないため、やり慣れない指示をこなし、緊張していたのだ。
「それじゃ、ウチと兄ちゃんで一足先に深海提督を迎えに行ってきます」
「神原さんたちはここで待機を。 …もし、万が一のことがあったら、他の艦娘たちに指示をお願いします」
「ああ、分かった。 任せたまえ」
神原の返事を聞いた正也と幸仁は、執務室を出て中央建物から外に出る。
すると、そこには待ってましたと言わんばかりに二人の初期艦である漣と叢雲が待機していた。
「あー、やっぱりここで待ってたのか…」
「当然ですよ。 提督であるご主人様がいく以上、秘書艦である漣が同行するのは当たり前じゃないですか」
「まあ、そうなるな。 じゃあ叢雲、よろしく頼むぞ」
「アンタに言われなくてもそのつもりよ。 ほら、さっさと行くわよ」
4人は港に通じる獣道を通り、港へとやってきた。
そこには迎えの為に待機していた長門たちが、すでに深海提督達を出迎えていた。
ただ、警戒のためか艤装は身に着けたままで、敵である深海棲艦たちを目の当たりにしてか、空気が少しピリピリしていた。
そんな中、深海提督は正也と幸仁を見ると、軽く会釈をしてから手を差し出した。
「本日は、僕たちをお招きいただきまことに感謝しています」
深海提督はにこやかに微笑むが、幸仁は手を出さず、深海提督の前に来ると首を横に振った。
「礼を言うのは早いですよ。 我々も話は聞きますが、承諾するか否かはまだ決めていませんので」
「ああ… 確かに、そうでしたね」
幸仁の手厳しい言い分に、深海提督も思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「…ソレニツイテハ、急ナ来訪ヲ持チカケテシマイ、申シ訳ナイデス。 デスガ、正直ナ所、私タチモソレダケ窮地ニ立タサレテイルノデス…」
「そっちも必死… 一体どういうこと何だい? 深海棲艦側では、いったい何が起きてるっていうの?」
「まあ、ご主人様。 ここで話しててもしょうがないですし、とりあえず続きは執務室で話しましょうよ」
正也が首をかしげていると、漣が話をまとめ、一行は提督執務室へと移動することになった。
深海提督と港湾棲姫を挟むようにして、前を正也と漣、後ろを幸仁と叢雲が入る形になった。 万が一にでも不穏な動きがあったとき、すぐに対応できるようにするためだった。
だが、そんな心配も杞憂に終わり、正也たちは何事もなく執務室へとやってきた。
「それじゃ、入りますね。 こちらが連れてきた提督達は、すでに中で待っています」
「分かりました。 どうぞ」
深海提督に勧められ、正也はドアを開けて執務室に入る。
正也たちに続いて深海提督も入り、正也は神原たちに深海提督がやってきたことを報告した。
「やあ、君が件の深海提督か。 初めまして、私は……」
神原は間宮たちとともに彼へと挨拶しようと手を差し出そうとしたとき、深海提督の顔を見た彼は……
「えっ……あっ……!?」
絶句したまま立ち止まった。
「神原さん、どうかしたのですか!?」
彼の異変に、間宮たちも心配そうに声をかけたが、彼女たちも深海提督の顔を見た瞬間、
「う…… う、そ……?」
同じように固まってしまった。
「ど、どうしたんですか神原さん!? 間宮さんたちまで、いったい何があったんですか!?」
突然の神原たちの豹変ぶりに、正也は困惑の色を隠せず尋ねるが、彼らは目を見開いたまま何も言わない。
そんな彼らとは裏腹に、深海提督はクスリと笑うと、神原たちの前にやってきて、言った。
「お久しぶりです。 神原少将」
深海提督の言葉に、正也と幸仁も耳を疑った。
彼は今確かに、名乗ってもいないはずの人物の名を呼んだのだから。
「ど…どういう、ことだ? 何で、あんたが神原さんを知っているんだ!?」
その問いかけに、深海提督は神原から正也の方に顔を向けると、
「中峰提督。 君については、電を助けてもらい本当に感謝しているよ。 カスガダマ沖の戦いで、あの子の無事を知ったときは、僕も心から安心したからね」
「一体、どういうことなんだ…? お前は…いったい何者なんだ!?」
あろうことか神原のことでなく、電のことまで知り尽くしている深海提督に正也だけでなく幸仁も動揺を隠せずにいる。
二人は深海提督に何者なんだと叫ぶが、その問いに答えたのは彼ではなかった。
「……中峰君。 前に、私が横須賀鎮守府で話した提督のことを覚えているかね?」
「神原さん…?」
答えたのは、震える声で言葉を絞り出す神原だった。
彼の言った話に、幸仁が返事を返す。
「それって、トラック泊地に来るはずが、訳あって呉鎮守府に異動となった提督の話、ですか…?」
「そうだよ。 彼が呉鎮守府の提督としてあそこに行き、最後は戦艦棲姫に撃たれて死んだ。 ………そう思っていたんだ。 彼がここに現れるまでは…」
粛々と話す神原に、徐々に正也と幸仁も目を見開いていった。
神原が何を言いたいのか理解した二人は、ゆっくりと深海提督の方を見た。
周りの提督や艦娘たちから注目される中で、彼は正也の前に来ると、かぶっていた海軍帽を脱ぎ、正也に改めて会釈をした。
「改めてご挨拶を… 初めまして、中峰少佐。 僕は深海提督改め………」
「元呉鎮守府提督、笹垣昌平です」