いやー、本当に久しぶりの投稿になりますね…! ほとんど小説書くモチベーションが上がらず、続き出すのにここまでかかってしまいました…(汗
次も、早めに出していかないとな……
提督達の集まったトラック泊地の執務室。 正也は神原たちと同じように、信じられないと言わんばかりの表情で目の前の男を見つめていた。
この男がいるはずがない。 何故なら、彼はすでに死んでいる。 戦艦棲姫に捕まり、電たちの目の前で撃ち殺されたからだ。
「どういう、ことなんだ……? アンタは殺された、そうなる瞬間を電たちは見た! そう話していたぞ!!」
正也と幸仁が横須賀鎮守府で聞かされた話では、彼女たちの提督は戦艦棲姫の砲撃で跡形もなく消し飛ばされた。
正也がそう叫ぶと、笹垣は軽く頷いてみせた。
「そうだね。 確かにあの時あの場にいた電たちからすれば、そう捉えても無理のない話だ。 だけど……」
「結論から言うと、僕は死んでいない。 あの時、僕は捕まり殺されそうになったが、間一髪海中に引き込まれ助けられたんだ。 そこにいる彼女、港湾棲姫にね」
笹垣が微笑みながら隣にいる姫を見ると、港湾棲姫と呼ばれた深海棲艦は頬を染めながら、気恥ずかしそうに笹垣から視線を逸らした。
「僕も最初は何が起きたか分からなかったよ。 突然海中で誰かに手を引かれ、気が付くと僕は見知らぬ島の海岸に彼女とともにいた。 そこでようやく気付いたよ、彼女が僕をここまで連れてきたんだとね」
「状況が理解できずにいた僕に、彼女は自分たちの指揮官になってほしいと頼んできた。 それを聞いて、ますます僕は混乱したよ。 なぜ、彼女は敵であるはずの僕にこの様な頼みごとをしてきたのかと…」
「それは俺も気になるとこだな。 俺も以前、戦艦棲姫に拉致されたことがあった。 奴は自分たちをまとめる優秀な提督が欲しいと言っていたが、その港湾棲姫とやらもそのためにアンタを生かして連れてきたのか?」
幸仁が目つきを鋭くしながら質問すると、笹垣は首を横に振って否定の意を見せた。
「自分たちをまとめるために提督が欲しいというなら正解だよ。 ただ、その理由は君が思っているものと違うと思うよ」
「……ということは、その深海棲艦の目的は艦娘たちを狙ってではないと?」
「そうさ。 確かに、彼女は僕に提督になってほしいと頼んだ。 でもそれは艦娘達を倒すためではなく、暴走した他の深海棲艦たちを止めるためのものだったんだ」
「暴走した深海棲艦を止める? 一体どういう事…?」
正也が首をかしげていると、笹垣に代わって港湾棲姫がその質問に答えた。
「私達ハ貴方達カラスレバ、人ヲ襲ウ艦娘達ノ敵ト思ワレテイルノデショウガ、全テノ者ガソレニ当テハマルワケデハナイノデス」
「私達ニハ艦娘達ヲ敵視シ襲ウ過激派ノ者ト、戦イヲ好マナイ穏健派ノ者達ガイルノデス。 貴方達ガ戦ッテキタノハ、ソノ過激派ニアタル者達ダッタノデス」
「なるほど。 だが、いくら穏健派とはいえお前たちも深海棲艦。 艦娘と戦ったり沈めたこともあるんじゃないのか?」
幸仁の厳しい指摘に、港湾棲姫は気まずそうに口ごもる。
そこへ、彼女をかばうように笹垣が割って入ってきた。
「確かに、僕たちも艦娘と交戦したことはある。 だが、一人も沈めてはいない。 僕は彼女たちの指揮をとって、艦娘達を大破させ追い返すようにしていたんだ。 もし艦娘を沈めるようなことになっては、より彼女たちの敵意を上げ、狙われる恐れがあるからね。 そうならないよう、僕は彼女たちの提督を買って出たんだ」
「……。 そうか…」
笹垣の話を聞いた幸仁は納得したのか、それ以上反論はせずに素直に身を引いた。
それを見て、港湾棲姫は話を続ける。
「私達穏健派ハ、戦ウコトハ望ンデオリマセン! タダ、コノ海デ静カニ過ゴシタイダケナノデス。 ソノタメ、私達ハ今マデ艦娘ヲ追イ返スダケニ留メ、人ヤ艦娘ヲ襲オウトスル過激派ヲ抑エテキマシタ」
「ソレハソレデ大変デシタガ、私達ハ私達デ平和ニ過ゴシテイマシタ。 アノ男ガ現レルマデハ……!!」
しばらく淡々と話していたが、話が変わったとたん港湾棲姫は黙り込み、グッと拳に力を入れる。
その急変ぶりに正也は動揺し、幸仁は何も言わずに話の続きを待った。
「アノ男… 櫟谷ガ過激派ニチカラヲ与エタ途端、パワーバランスハ崩レ、過激派ハモウ私達デハ止メラレナイホド強クナッテシマッタノデス。 ソコデ、私達ハ提督ニ
「デモ、貴方達ガ過激派主力ノ一角デアル西ノ姫ヲ倒シタト聞キ、私達ハ各地デ貴方達ノ事ヲ調ベ、ソシテ確信シマシタ。 貴方達ナラアノ男ニ対抗デキルト!」
「そして、僕たちはこうして君たちに接触することを決めたんだ。 奴を倒し、この戦いを終わらせるために!」
話を終えた笹垣と港湾棲姫は、正也と幸仁に顔を向け、深々と頭を下げた。
「どうか、僕たちとともに戦ってほしい! 奴を倒せば、残った深海棲艦は僕たちで止められる。 そして、これ以上この戦争をさせないと約束する!」
「私カラモオ願イシマス! コレ以上、提督ヤホッポ達ガ戦ウ事ハ望ンデイマセン。 ドウカ、貴方ト艦隊ノ皆サンノチカラヲ私達ニ貸シテクダサイ!」
必死に懇願する二人に呆気にとられる正也。 しかし、同じ敵と戦うのなら、彼にとっても断る理由はない。
正也は二人の前に来て、すっと手を差し出した。
「うん、分かった。 そういうことならウチらも……」
「断る」
正也は唖然とした表情で、差し出した手を押さえ自分に代わって返答した人物、幸仁に顔を向けた。
「兄ちゃん… 何を…?」
そんな正也の質問に答えることなく、幸仁は正也を後ろに下げると笹垣たちの前にやってきた。
「そちらがこうして出向いた以上、それだけ切羽詰まった状況だということは分かった。 だが、それだけじゃこの話が本当かどうかの確証がない。 何より…」
「艦娘と深海棲艦、本来敵同士の者に手を貸すなんて、あってはならない。 それが俺の意見だ」
幸仁の話に正也は言葉が出ず、神原も険しい表情で笹垣に言った。
「申し訳ないが笹垣君、私も提督として彼の言い分に同意する。 君の気持ちも分からなくはないが、深海棲艦が相手では私も手を貸すわけにはいかないんだ」
「ソ、ソンナ……」
共闘を断られ、狼狽する港湾棲姫。 それに対し、笹垣は必死に食い下がった。
「待ってください! 今まで奴の配下である深海棲艦たちと戦ってきた貴方達ならわかるはずだ! 奴の力を得たらどれほど危険かを!?」
「このままでは我々だけでなく、そちらの艦娘や市民の人たちにも危険が及んでしまう。 そうなる前に、なんとしてでも奴を倒さなくてはならない! そうではありませんか!?」
笹垣は声高々にそう主張するが、幸仁は冷静な口調を崩さなかった。
「では、もしそちらの言う通り共闘を受けたとしよう。 そちらはどこまで奴の情報を掴んでいる? 奴の居場所は? 兵力は? 俺たちが共闘して、勝算はどれほどある?」
「悪いが、俺はそんな雲をつかむような話にあいつらを出したくはない。 提督としてなら、なおさらだ」
「………」
「何言ってんだ兄ちゃん!? そんなこと言ってたら、いつまで経っても櫟谷に勝つなんてできっこない…!」
「正也、お前こそ忘れたか? お前が勢いのまま戦艦棲姫に挑み、そしてどうなったかを…」
「そ、それは……」
かつて自分が犯した失敗に口ごもる正也。
カスガダマ沖の戦い。 戦艦棲姫と一騎打ちをし、最後の最後で皆との約束を破り漣をかばった。 それが、どれほど皆に辛い思いをさせることになったかを忘れたわけではなかった。
「結論から言わせてもらうと、俺たちはそちらに協力するつもりはない。 生憎だがな…」
きっぱりと提案を断られ、笹垣は無言のままその場に立ち尽くしていたが、すっと顔を上げると穏やかな表情を見せた。
「……。 そうか、君たちの協力を得られればと思ったんだが、できないのであれば致し方ないか。 話を聞いてくれてありがとう。 それじゃ、僕たちはこれで失礼するよ」
「ただ、一つ頼みを聞いてもらえるのなら、どうか電たちに僕のことを話さないでほしい。 彼女たちにとって、僕はもう死んだ人間だ。 まして、深海棲艦の提督になったなんて、知ってほしくないんだ」
話を終えた笹垣は、正也たちに会釈し執務室を出ていく。 正也は何も言わず、その背中を憮然とした表情で見送っていた。
トラック泊地から遠く離れた海上。 港湾棲姫は大きなため息を吐いた。
「困リマシタネ、提督…… コチラニトッテハ、彼ラガ最後ノ希望デシタノニ……」
「…オ姉チャン、大丈夫?」
悲しげな顔を見せる姉を心配する北方棲姫。 そんな彼女に、笹垣は頭を優しく撫でた。
「大丈夫だよ、ほっぽ。 ちょっと、向こうの人たちにお願いを断られただけさ。 僕たちの事なら心配いらないよ」
笹垣は後ろにいるル級達に振り向くと、次の指示を出した。
「彼らの協力を得られない以上、仕方がない。 僕たちは僕たちで、他に協力してくれる穏健派の者を探そう。 時間はかかるが、それが今の僕たちにできる最善手だ」
「……。 分カリマシタ、提督ガソウオッシャルノナラ」
ル級はそう返事をし、皆がそこから移動しようとした時だった。
「果タシテ、ソウウマクイクカシラネ?」
突如笹垣たち目掛け飛来してきた物体。 それは深海棲艦が使う黒い艦載機だった。
急な不意打ちに笹垣は気づくのが遅れ、咄嗟に彼をかばった港湾棲姫は肩を撃たれ、その場でうずくまった。
「クッ、ウゥ……!」
「港湾!?」
「オ姉チャン!?」
痛む肩を押さえながら、港湾棲姫は艦載機が飛んできた方を睨む。 そこには、艦載機を放った張本人が不敵な笑みを浮かべていた。
「ヨウヤク見ツケタ。 前カラアノ御方ヲ嗅ギマワル連中ガイルト聞イテ探ッテミレバ、ヤハリオ前達穏健派ノ仕業カ」
「シカシ、我々ニ敵ワナイカラトイッテ、艦娘達ニマデ協力ヲ申シ出ルトハ、呆レタモノダナ」
白く長い髪をたらす深海棲艦、空母棲姫はすっと手を上げると、次の攻撃を放つべく艦載機たちに指示を送ろうとする。
「マアイイ。 ドノミチオ前達ニウロツカレテハ面倒ダ、サッサト捕ラエルトシヨウ」
「ソウハ…イカナイ…! 提督ヲ引キ渡シタリハ、シナイ…!!」
負傷した身で、どうにか反撃を試みる港湾棲姫。 そこへ、ル級とタ級の二人が彼女の前に現れた。
「姐サンハ下ガッテ! ココハ、アタシラガ行クヨ!!」
「全砲門、構エ… 撃テー!!」
二人は一斉に主砲から砲弾を放つ。 だが、空母棲姫は自分目掛け飛んできた砲弾に向かうように手を振ると、艦載機は砲弾に向かって飛んでいき、空中で砲弾もろとも自爆した。
「ソ、ソンナ…!?」
今度はル級達目掛け艦載機が飛んでくる。 対応しようと身構えると、ル級の背後から別の艦載機が空母棲姫の艦載機にぶつかり、攻撃を阻止していった。
攻撃を防がれ、顔をしかめる空母棲姫。 ル級の後ろには、空母棲姫を睨み付ける北方棲姫の姿があった。
「オマエ、嫌イ! 提督ヤオ姉チャンヲイジメルナ!!」
「ナンダ、奴以外ニモ姫ガイタノカ。 迂闊ダッタナ」
おどけた様子で肩をすくめる空母棲姫。 北方棲姫は怒りを露わにしながら空母棲姫へと艦載機を飛ばそうとする。 だが…
「…!? ほっぽ、危ない!!」
「エッ? …キャアア!!」
突如北方棲姫へと飛んでくる無数の子弾。 それは、彼女が苦手とする三式弾だった。
避けることもできず、子弾の雨を食らった北方棲姫は、海面を転げまわりその場で苦しそうな声を上げた。
「マア、コッチニモマダ戦力ハイルノダガ…」
ちらりと横目で視線を向ける空母棲姫。 そこには先ほど三式弾を放った、長い髪をたらす深海棲艦の姿があった。
「マッタク、コノ役立タズガ…! ソイツラ捕マエルノニ、何時マデカケル気ダ!」
三式弾を放った深海棲艦……重巡棲姫は、悪態をつきながら空母棲姫のもとにやってきた。
「ソウ癇癪ヲオコスナ。 セッカクノ戦闘ダシ、少シクライ肩慣ラシヲシテモバチハ当タラナイダロ」
「ソレデ他ノ連中ニ手柄ヲ盗ラレタラドウスル? サッサトコイツラヲ鹵獲スルゾ」
重巡棲姫は北方棲姫を捕えるべく、再び三式弾を放とうとする。 しかし、それは横から飛んできた砲弾によって阻止された。
「ホッポニ手ヲ出サナイデ!」
「オ姉チャン!!」
ダメージを負いながらも戦闘態勢に入る港湾棲姫たち。 笹垣は北方棲姫を起こすと、彼女の肩を掴んだ。
「いいかいほっぽ、ここは僕たちが食い止める。 だから、君は急いでここから離れるんだ。 いいね?」
「エッ? ジャア、提督ヤオ姉チャン達ハ…?」
「心配いらないよ。 僕たちもホッポが逃げたのを確認したら、此処から離脱する。 だから、いつもの泊地に先に帰ってておくれ」
「……分カッタ。 早ク、戻ッテキテネ」
笹垣に諭され、悲しげな顔をしながらも北方棲姫は笹垣の言いつけ通り、その場を離脱した。
「オイ、一匹逃ガシタゾ。 ドウスル?」
「放ッテオケ。 姫トハイエ手負イノガキダ、後デ追手ニ始末サセレバイイ」
「チッ、手柄ガ減ルノハ気ニ入ランガ、今回ハソレデ妥協シテヤルヨ」
重巡棲姫は空母棲姫の言葉にしかめっ面になるが、目の前の笹垣たちを捕えるべく、主砲を向け戦闘に戻るのであった。