艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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どうにか、次の話を投稿できました。 冬イベにかかりっきりで、書くのが遅くなってしまいました……
最近ヤンこれ物書いてないけど、今でも見てる人っているのかな…?
今まで見たくはいかないけど、また思いついたら何か書いてみたいですね。





第96話 決意の在り方

 

 

ドオン! ドオン! ドオオオオオン!!

 

 

魚雷の爆発により立ち上る水柱。 遠くからかすかにかかる水しぶきに顔を濡らしながら、ヴェールヌイは呟く。

 

 

「流石だね、司令官」

 

 

背後から次々と立ち上る水柱。 迫りくるかのように上がる水柱から、正也は全力で逃れるべく走り続ける。

 

 

「ハア…! ハア…! くっ、派手にやってくれるよヴェールヌイの奴…!!」

 

 

正也が走りながら左を見ると、そこには正也に向かって魚雷を飛ばしてくるヴェールヌイの姿。 4つ目の水柱が上がる音を聞いて、正也は素早く槍をヴェールヌイへと向ける。

 

 

「よし、今ので魚雷は撃ち切った…! ここで反撃を…!」

 

 

後はボタンを押して砲弾を飛ばすだけ…! そう思って正也はボタンに手をかけようとしたとき、

 

 

「あれ…?」

 

 

ヴェールヌイは魚雷を撃ち切っておらず、一本だけ残してある。 一瞬疑問に思ったが、何に気づいたかすぐに正也は反対側を向く。 そこには、うっすら煙を上げる主砲を構えた漣の姿があった。

あの時聞こえた4つ目の水柱の音は、魚雷ではなく漣の主砲が着弾した音。 正也を騙すため、あえてわざと外して後ろに落ちるように撃ったのだった。

 

 

「やられた…! 漣の奴……!!」

 

 

正也はすぐにその場から離れようと動き出すが、時すでに遅し。 ヴェールヌイが残しておいた最後の魚雷が正也のもとに到達。 足元から吹き出す水は、正也を巻き込み派手に立ち上るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

演習場より少し離れた港。 正也は「いてて……」と呟きながら、鳳翔に包帯を巻いてもらっていた。

 

 

「はい。 手当てが終わりましたよ、提督」

 

「ああ… ありがとう、鳳翔さん」

 

「どういたしまして。 でも、次からは自重して下さい。 実戦を想定した模擬戦闘なんて、いくらなんでも危険すぎます。 提督にまた何かあっては、皆さんとても心配しますから…」

 

 

鳳翔にそう諭され、正也は申し訳ないと頭を下げると執務室へ戻ってきた。

執務椅子に座って、外の景色を見ながらため息をつくと、一緒にやってきた漣が声をかける。

 

 

「…ご主人様、まだあのことについて納得できてないんですか?」

 

「まあ、な… 兄ちゃんや神原さんの考えも分からなくはないんだけど、ウチとしては今でも煮え切らなくてな」

 

 

昨日の事、深海提督こと笹垣が正也たちに協力を求めてきたことだった。

幸仁や神原はいくら頼まれても、さすがに深海棲艦に手を貸すわけには行かないと断った。 提督として、敵である深海棲艦に協力をするわけにはいかない。 それは正也もよくわかっていた。

だけど、いくら敵対するものでも彼らもまた、自分たちと同じようにこの戦争を終わらせたいと思っている。

そんな彼らと協力したいという気持ちが、正也の中では今でもぬぐえずにいた。

 

 

「提督としてそう考えるのが普通なんだろうけど、他にやり方もあったんじゃないかとどうにもやきもきしてしまう。 うむむ……」

 

 

椅子に座ったまま一人うんうんと正也が唸っていると、漣が顔を引きつらせながら声を上げた。

 

 

「あーもー!! さっきっからうんうん唸って、そんな辛気臭い空気出してたら執務室にカビが生えちゃうってーの!」

 

「うおおっ!? ちょ、漣…何してんだ!?」

 

 

漣はいきなり正也の首の裏を掴むと、慌てる正也をそのままドアの前まで引きずっていった。

 

 

「ほら、出てった出てった! 今のご主人様がいても邪魔なだけですから、しばらく外をほっつき歩いてて! 今日の執務は漣がやっとくから、頭がスッキリするまで帰ってくんな!!」

 

 

そう言って正也を廊下に放り出すと、乱暴に執務室のドアを閉めた。

いきなり執務室から追い出され、呆然としている正也。 そこへ、

 

 

「あれ、提督? どうしたんですか、そんなところに座り込んで?」

 

 

報告書を提出しに、潮がやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泊地の食堂。 正也から一連の事情を聞いた潮は、「そうだったんですか…」と言うと、じっと正也の顔を見つめた。

 

 

「ああは言ってるけど、お姉ちゃんも提督の事気にかけているんですよ。 提督があんな調子じゃ、こっちも調子が狂っちゃうってお姉ちゃんいつも言ってますし」

 

「提督のお兄さんの言ってることは間違っていないと思います。 でも、それでも助けを求められたら、助けたいって思う提督の気持ち、私にもよくわかります」

 

「私からはこんな事しか言えませんけど、提督は提督がそうしたいと思ったことをしてください。 潮は、最後まで提督の味方ですから…!」

 

 

潮はそう言ってにこやかに微笑むと、遠征のため食堂を後にする。 正也は潮が去った後、椅子に座ったままぼんやりと天井を眺めていたが、

 

 

「……。 このまま、立ち止まってちゃいかんよな」

 

 

建物を出て港に来ると、そのまま海に飛び出し泊地を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は昼過ぎ。 太陽が西に傾き始める時間、ある鎮守府の正門の前に正也はいる。

正門を挟んで正也の向かい、鎮守府の庭には緑の長い髪をたらした艦娘が正也を睨み付けていた。

 

 

「一体何の用だ? 言っておくが、今回はここへ来るという報告は受けていない。 私に蹴り倒されても文句は言えんぞ」

 

 

ここに所属する艦娘、長月は腕を組んで正也に警告する。

対する正也の方は、何も言わずに真剣な顔つきで長月を見ていた。

しばらく正也を睨む長月だったが、正也の表情に何かを察したのか、短いため息をつくと、正也に背を向けた。

 

 

「…ついてこい。 一葉なら中にいる」

 

 

正也も無言のまま、長月の案内に従い鎮守府に入っていく。 長月が執務室のドアを開けると、そこには駆逐艦に囲まれながら相手をする伊月提督がいた。

 

 

「んっ? 誰かと思ったら、この前の中峰提督じゃないか。 どうした、アポは来てないんだが…?」

 

 

突然の来訪に首をかしげる伊月提督だが、じっとこちらを見る正也の姿に何かを察したのか、

 

 

「……長月」

 

「ああ」

 

 

長月に声をかけ、他の艦娘たちに出てもらった。

二人だけになり、静かになった執務室で、伊月は正也に座るよう促した。

 

 

「それで、俺に何を聞きたいんだ?」

 

 

執務机に手を置きながら、樹は正也に尋ねる。

正也は伊月に顔を向けると、ようやく口を開いた。

 

 

 

 

 

「伊月提督。 もしあなたが敵対してる者から助けを求められる。 そんな状況になったら、貴方はどうします?」

 

 

交渉を断った時からずっとぬぐえずにいたこの疑問。

幸仁たちは提督として受けられないと言っていたが、自分は賛同できなかったこの疑問。

もし、他の提督だったらどう答えるのか?

正也の質問に、伊月は少し間を開けると、こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けるだろ」

 

「…えっ?」

 

 

予想とは裏腹に、あっさりそう答える伊月に呆然とする正也。 彼の話は続く。

 

 

「敵の事情は知らんが、敵である俺たちに助けを求める時点でそれだけ深刻な状況だったのは分かるからな。 だから、まずは助けて話を聞く。 あとのことはそれから考える」

 

「もちろんタダでは助けない。 助ける代わりにこちらも情報など見返りを求めるし、それ自体が罠だと分かれば即刻叩き潰す。 俺だったらそうする」

 

「そ、そうなんか……」

 

 

思った以上に拍子抜けな回答に、正也はただそう言うことしかできない。 そんな正也をはじっと見返す。

 

 

「お前こそそうなんじゃないか、中峰提督?」

 

「えっ?」

 

「お前達が俺の鎮守府に初めて来たとき、深海棲艦の襲撃を聞いて、お前は意の一番に名乗りを上げた。 お前はまず、考えるより先に行動するタイプだろ」

 

「そういう奴は理屈が正しくても、納得ができなければ動かない。 だからお前は自分の納得できる答えが欲しくてここへ来た。 違うか?」

 

「………」

 

 

まるで、何もかも見透かされたかのような伊月の言葉に、正也は黙りこくる。

まさにその通りだった。

幸仁たちの言うことは理屈の上では正しいと分かっている。

だが、そんな理屈で納得できるほど、自分は賢い人間じゃない。

提督としての理屈で自分の心を殺すなど、自分にはできなかった。

だから自分はここに来た。

自分や幸仁以外の提督も、提督としての理屈を優先するのか? その答えを知りたくって。

 

 

 

 

 

「難しく考えすぎなんだよ。 答えなんて、人によってみんな違う。 10人いれば、10通りの答えがある。 大事なのは、そのうえで自分がどうしたいかなんだよ」

 

「納得できないなら、理屈の上で自分の納得いくよう動けばいい。 それが正しいかどうか、それはその時考えろ」

 

 

飄々と話す伊月に、クスリと笑顔を見せる正也。

その表情に、さっきまでの憂いはみられなかった。

 

 

「漣から言われたことを思い出しましたよ。 『バカのくせに難しいこと考えるな、ウチはウチらしくやればいい』って。 それが正しいかどうかは、いつも皆が教えてくれるのに、何考えこんでたんだろ、ウチは」

 

 

正也は伊月に顔を向けると、深々と頭を下げた。

 

 

「伊月提督、ありがとうございます。 おかげで、スッキリしました」

 

「ああ、いいってことよ」

 

 

お礼を済ませた正也は、トラック泊地に戻ろうと伊月に背を向ける。 だが、

 

 

「おいおい、どこ行くんだ?」

 

「えっ?」

 

 

突然伊月に呼び止められ、正也は首を傾げた。

 

 

「俺はさっきまでそっちの話に付き合ってやったんだ。 だから、今度は俺の話に付き合ってもらうぞ」

 

「あっ、はい…… まあ、確かにそうなんだけど」

 

 

椅子に戻り、再び腰を下ろす正也。

 

 

「まあ、そう固くなるなって。 たぶん、そっちにとっても興味深い話になるからな」

 

「…っていうと、いったいどんな話を……?」

 

 

困惑気味になりながらも、伊月に尋ねる正也。 伊月は机に肘を置き、両手を前に組みながら、少し目を細めて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「対アンノウン計画… お前たちのそのリングに関する話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ…! ハアッ…!」

 

 

水平線広がる大海原を、北方棲姫は一人走り続ける。

笹垣と港湾棲姫達の手引きでどうにか逃げることができたが、先のダメージが体を蝕み、徐々に足取りは遅くなっていた。

 

 

「ウウ、足ガ痛イ… 体ガ重イ… 苦シイヨ……」

 

 

ついに動くことができず、その場で力尽き倒れこんでしまう。 波間に揺れながら、北方棲姫は空を見上げた。

 

 

「オ姉チャン… 提督… ホッポ、ココデ沈ンジャウノカナ…?」

 

 

うっすらと涙を流しながら、北方棲姫はそのまま気を失ってしまう。

そこへ現れたのは、北方棲姫を追ってきたと思しき深海棲艦たち。

気を失い、海に浮いてる北方棲姫を確認した彼らは、そのまま砲撃で沈めようと構える。 その時だった。

 

 

 

 

 

 

「見つけましたわ! 航空隊、発艦始めなさい!!」

 

 

突如空を飛んできた水上爆撃機の攻撃に不意打ちを食らい、思わずたじろぐ。

一体どこから攻撃が来たんだと周囲を見回していると、

 

 

「敵艦隊見っけた! 暁ちゃん、やっちゃうよ!!」

 

「もう、子ども扱いしないでってば!!」

 

 

砲弾がリ級を直撃し、爆発。 そこへ畳みかけるように数本の魚雷が当たり、派手に水しぶきを上げた。

思わぬ奇襲に分が悪いと判断したのか、追手は反撃せずその場を後にしていった。

 

 

「どうやら、向こうは逃げたみたいだね。 何体か取り逃がしちゃった」

 

「追い払えただけ良しとしましょう。 どうも、あの深海棲艦たちはこの子を襲おうとしてたみたいですし」

 

 

深海棲艦を追い払った艦娘、鈴谷達は海に浮いてる北方棲姫を保護しようと近寄るが、彼女が深海棲艦であることに気づき、驚きの声を上げた。

 

 

「えっ、ウソ!? この子って、もしかして深海棲艦じゃないの!?」

 

「な、何で!? 深海棲艦が深海棲艦を襲うなんて、意味が分からないわよ!」

 

「わ、私だって理解できませんわ! 一体、何がどうなっているのか…!?」

 

 

深海棲艦が深海棲艦を襲う。 あまりに異常な出来事に、彼女たちは困惑を隠せずにいたが、

 

 

「今はそんなことを話してる場合じゃないのです! このまま放っておいたら、この子はまた襲われてしまうのです! 早く鎮守府に連れ帰って、手当てしてあげたほうがいいのです」

 

 

鶴の一声でみんなを説得した艦娘、電の意見により、鈴谷達は戸惑いながらも傷だらけの北方棲姫を背負って、自分たちの所属する呉鎮守府へと戻るのであった。

 

 

 

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