艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第13話 舞鶴鎮守府、明かされた真実 (前編)

 

 

綾波救出のため、沖ノ島海域に出撃して数日後…

 

 

 

「うおー、でかいなー!」

 

 

ウチことトラック泊地の提督中峰は、現在舞鶴鎮守府の正面玄関に来ていた。

目の前に見える舞鶴鎮守府は、横須賀鎮守府と同じように海岸から少し離れた内陸地に建てられている。

正面には主に執務室があるであろう一番大きな建物があり、右側の建物には妖精たちが忙しなく働く姿が見える。 おそらく工廠だろう。

左側には艦娘たちが集団生活を行うための艦娘寮が建てられており、中央の建物に続く渡り廊下には数人の艦娘が楽しそうに談笑している。

 

 

 

 

 

「うーむ…、他所の鎮守府ってこんなに規模がでかかったのか。 ウチのトラック泊地とは天と地だな…」

 

 

一人他所の鎮守府との落差に感嘆していると、正面玄関が開き一人の艦娘が姿を見せる。

 

 

「この舞鶴鎮守府はかなり初期に建てられた場所ですから、その分他の鎮守府より設備が充実しているんですよ」

 

 

正面玄関から現れた艦娘、駆逐艦綾波はにっこり微笑みながら補足説明をしてくれた。

 

 

「ようこそ、中峰さん。 ご来訪、心より歓迎いたします」

 

「あっ、こりゃご丁寧にどうも」

 

 

丁寧な物腰で挨拶する綾波に思わず腰が低くなる。 やばい、これ田舎者感丸出しだよ…

綾波はそんなウチを見てか、クスリと笑みをこぼすと中に案内してくれた。

 

 

 

 

 

「それにしても、今回は中峰さん一人なんですね。 てっきり、漣と一緒に来ると思ってたんですけど」

 

「提督が不在になる以上、秘書艦まで離れるわけには行かないからね。 今回は漣に提督代理を務めてもらってるんだよ」

 

 

建物にはいって両脇に伸びる長い廊下を歩きながら、ウチと綾波はおしゃべりをしている。

 

本当は漣も連れて行くつもりだったのだが、先の理由で同行しないと断られてしまった。

ウチは茶化すつもりで、本当は姉ちゃんにすがり付いて泣きじゃくったことを思い出すのが恥ずかしいからじゃないか、と言ったら

顔を真っ赤にした漣に連装砲片手にむちゃくちゃ追い回された。 どうやら図星だったらしい…

 

 

そんな他愛のない会話をしていると、3階の廊下の奥、目的の場所である提督執務室に到着した。

 

 

 

「秘書艦、綾波。 トラック泊地提督、中峰さんをお連れしました」

 

 

コンコンという軽いノックの後、事務的な口調で綾波がドアに向かって語りかける。

すこしすると、ドアの向こうから「いいよー、はいんなよー」という声が返ってくる。

えらく気の抜けた口調にウチは一瞬唖然としたが、綾波は失礼します、とあくまで礼儀正しくドアを開けて部屋に入って行った。

ウチも綾波に続いて「お邪魔します」と一声かけながら執務室に入る。

 

 

 

部屋の内装は提督用の執務机とテーブルは自分のところと同じだが、床に花小柄のカーペットが引いてあり、執務机の後ろの壁には鮮やかなアレンジメント。

机の右脇にある書斎本棚には報告書やファイルの他に、趣味なのか料理のレシピ本やお菓子作りに関する本が何冊か見受けられる。

執務机の両脇には二人の艦娘がウチ等を出迎えてきた。

 

 

「へえ、そっちの人が提督? あたし北上っていうの、よろしく」

 

「はじめまして、大井です。 よろしくお願いします」

 

 

出迎えてくれた二人の艦娘、北上と大井は手をひらひらと振りながら挨拶してきた。

 

 

 

 

 

 

「トラック泊地提督、中峰正也だ。 よろしくな」

 

 

フレンドリーな北上の言葉遣いについこっちも素で反応してしまう。

だが、そんなウチに臆することなく北上は中央にあるソファに腰掛けなよ、と手招きしてきた。

 

 

「ああ、ありがと」

 

「いやいや、あたしらこそ秘書艦を助けてもらったからね。 感謝してるよ」

 

 

にしし、と笑いながら感謝を述べる北上、気さくな彼女の態度にウチも思わず会話が弾んでいた。

だが、そんな時…

 

 

 

 

「…ファッ!?」

 

 

ソファで向かい合って座っている北上の背後からすさまじい殺気を感じる。

殺気の発生源、大井はにっこり微笑んだままウチに殺意の波動を送ってきた。

 

『あんまり北上さんに馴れ馴れしいと、魚雷撃ちますよ…?』

 

口では言わずとも、目がウチにそう語りかけてきている。

ヤバイ!! ウチの命がマッハでヤバイ!!

頼む、提督さん早く来てくれ――――――!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチの願いが天に通じたのか、扉を開ける音とともに、一人の女性が中に入ってきた。

 

 

「お待たせしてすみません、他にも客人がいらしているので対応に時間がかかってしまいました。 お勤めご苦労様、綾波」

 

「いえ、司令官こそお疲れ様です」

 

 

ついに来た、舞鶴鎮守府の提督。 ウチも綾波と一緒に執務室のドアのほうに顔を向けた。

その瞬間、ウチは自分の目にしたものに驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ? あの人、間宮さんじゃ…」

 

 

 

 

 

 

真っ白な割烹着に赤いリボンで束ねたポニーテール、そしてクレーンのついた独特の艤装。

間違いなく、ゲームで見た給糧艦『間宮』本人であった。

 

間宮さんもウチに気づいたらしく、ウチの前に来ると凛とした顔つきで挨拶してきた。

 

 

「ようこそ、中峰さん。 このたびは秘書艦綾波を助けていただき、本当にありがとうございます。 舞鶴鎮守府提督として、心からお礼申し上げます」

 

「……え? 間宮さん…今、なんて?」

 

 

提督? 間宮さんが…!? この舞鶴鎮守府の……!?

 

動揺を隠せないうちの様子を察してか、間宮さんは話を続けた。

 

 

「中峰さん、あなたにはお伝えしなければならないことが二つあります。 一つ、給糧艦『間宮』は私の仮の名です。 本名は槙野瀬 美也子。 舞鶴鎮守府の提督で、艦娘ではなくれっきとした人間です」

 

「に、人間!? 間宮さんが…ですか…!?」

 

「もう一つ。 中峰さん、私とあなたは同じです。 同じ目的のため、同じ道を選んだ人間なんです」

 

 

そういって、間宮さんはウチに左手を見せる。

ウチも彼女の左手を見たとたん、彼女が言った意味を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そのリング…。 間宮さん、もしかしてあんたも…!?」

 

 

彼女の指に納まっているリング。 自分があの時つけたものとまったく同じものだった。

奴らと戦うために…皆を守るためにつけたあのリングと…

 

 

「そうです。 私も、艦娘を守るためにこのリングをつけ力を得た、『適合者』と呼ばれる人間です」

 

「…適合者?」

 

「このリングをつけた時、リングが身体能力を上げるため体に負荷を与えることはあなたも知っていますね?」

 

 

確かに、初めてリングを指にはめたとき、全身にすさまじい激痛が走り、内臓ごと吐き出すんじゃないかというほどの吐き気に襲われたことは覚えている。

 

 

「その負荷に耐え切って、力を得た者を『適合者』と呼んでいます。 中峰さん、あなたもまた適合者の一人なんです」

 

「…ウチが…適合者…」

 

 

間宮さんの話が終わり、ウチはただ困惑するばかりだった。

彼女がこの舞鶴鎮守府の提督だということ。

そして、自分と同じリングをつけた人間だということ。

でも、ウチには一つ分からないことがあった。

 

 

 

 

 

 

「間宮さん、あなたが艦娘じゃなく人間だということは分かりました。 でも、どうしてリングのことやウチがこれをつけた事を知ってるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは私が彼女に話したからだよ」

 

 

間宮さんの後ろ、ドアの向こうからその声は聞こえてきた。

ドアから姿を見せたのは、横須賀鎮守府の提督、神原さん。

そしてもう一人、彼の傍らに寄り添う艦娘の姿があった。

 

 

「久しぶりだね、中峰君。 綾波捜索の件、本当にご苦労だった。 感謝しているよ」

 

「神原さん…? それに、後ろの女性は…」

 

 

茶色の長髪をポニーテールにまとめ、服装は紅白のセーラー服と赤いミニスカート。

背中には戦艦を彷彿とさせる巨大な艤装に、手には赤い和傘。

その艦娘はウチの前に来ると、軽い会釈の後名を名乗った。

 

 

「初めまして、中峰さん。 横須賀鎮守府提督の秘書艦、大和といいます。 あなたのことはいつも提督から伺っております」

 

 

大和って、あの戦艦大和!? これほどの艦娘をつれているなんて、神原さんはウチが思っているよりずっとすごい人だったのか!?

いや、それより……!!

 

 

「知ってたんですか、神原さん…!? リングのことも、ウチがこれをつけたことも…!」

 

「ああ、知っていたよ。 リングの力についても、君がこれをつけて鎮守府海域の空母ヲ級、そして沖ノ島海域で戦艦ル級フラグシップを撃退したこともね」

 

「…っ!? どうして…そこまで…?」

 

「それについてはまず、なぜ私がこのリングについて知っているのかを説明させてほしい」

 

 

神原さんは間宮さんと一緒に向かいの席に腰をおろし、秘書艦の綾波と大和は二人に寄り添うように後ろで待機していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「理由は簡単、そのリングを開発したのが私だからだ」

 

「えっ……?」

 

「言ったままの意味さ。 正確には、私とある一人の妖精なんだがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は昔ある艦娘と恋仲だった。 だが、彼女はある日鉄底海峡攻略という大規模作戦の旗艦を任されることになってね…」

 

「『すぐにお前の元に戻ってくる、勝利と言う名の手土産をもってな』 それが、彼女の最後の言葉だった…。 彼女が去って1週間後、私の元にきたのは彼女が敵の旗艦と相打ち、轟沈したという一通の知らせだった…」

 

「…それ以来、私はショックで数年間廃人同然と化していた。 戦線からは外され、自宅の庭で静かに海を眺めるだけの日々を送っていた。 だが、大和がつきっきりで私の世話をしてくれたおかげで、私はまた立ち直れたんだ」

 

「もうあのような悲劇は繰り返させない。 私はそう心に誓って、かつて自分が勤めていた横須賀鎮守府の提督として復帰したんだ。 今度は指揮官としてではなく、新しく戦線に出る艦娘を指導する立場としてね」

 

「同時に私は彼女の艤装として一緒だった装備妖精と共に、このリングの開発に着手したのだ。 指揮をとって艦娘を守るのではなく、同じ戦場に立って艦娘を守るための、『戦う提督』を生み出すリングを作るために」

 

 

 

涙混じりに話す神原さんの姿に、ウチはただ唖然としていた。

この人がリングを作った張本人だということ。

そして、その理由にそんな悲しい過去があったことに。

 

 

「大丈夫ですか、提督…?」

 

「あ、ああ…。 すまない大和、つい君の妹の事を思い出してしまって……」

 

「…妹?」

 

 

不意に出た神原さんの言葉を、ウチは無意識のうちに口に出し、それに気づいた大和はウチに顔を向けてきた。

 

 

 

 

 

「そうです。 提督と恋仲だった艦娘の名は『大和型戦艦2番艦 武蔵』。 私の…妹です…」

 

 

 

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