艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第18話 突入! キス島撤退作戦

 

 

北方海域の一角にある島、キス島。

北の海特有の寒風が吹き荒れ、海面には島と見まごうほどの巨大な氷塊がいくつも浮かんでいる。

トラック泊地の第一艦隊は島から数キロはなれた海上で、タブレットのマップを見て自分達の現在位置を確認していた。

 

 

 

 

「ここで間違いないんだね、司令官」

 

「ああ。 神原さんに確認したら、数日前に深海棲艦に鹵獲された戦艦がいるって情報があった。 本当に、あの人はすごいよ…」

 

 

ウチは頭をかきながら、照れくさそうに話す。 昨日、金剛型戦艦の二人について神原さんに聞いて見たら、大和に協力してもらい即座に調べ上げてくれたのだ。

あの人も自分の仕事があるのにウチの頼みを優先してくれたのだから、今後は横須賀鎮守府のある方角には足を向けて寝られないや…。

 

 

 

 

 

 

神原さんの提供してくれた情報によると、数日前に北方海域と西方海域で鹵獲されたという艦娘の目撃情報があったという。

誰かまでは分からなかったが、榛名の話してくれたことと照らし合わせると二人の姉である金剛と比叡の可能性が高い。

西方海域で鹵獲された艦娘はカレー洋にある島に、そしてもう一人の艦娘はここキス島に連行されたという話を聞いたのだ。

 

 

 

 

 

「皆、協力してくれてありがとうな。 作戦通り、第二艦隊の皆が動き出したらこちらも動き出すぞ」

 

 

ウチは第一艦隊の皆に声をかける。

メンバーは旗艦の漣に、響、雷、陽炎、大潮、そして雪風の6人。

 

 

「任せて司令官。 私がいるじゃない!」

 

「どーんとお任せください!」

 

「私も頑張るわ。 姉として、雪風に情けないところは見せられないしね!」

 

「しれえ、雪風も頑張りますね!」

 

「大丈夫、やってみせるさ」

 

 

皆気合十分といわんばかりに声を上げる。

いやはや、見た目はまだ少女なのに、なんて頼もしい奴らなんだろうね。

 

 

 

 

「よし、そんじゃいっちょ張り切ってやりますふぁ、ふぁ……ぶぁーっくしょい!!」

 

「そんなでかいくしゃみして大丈夫なんですか、ご主人様。 今回の作戦はスピード勝負なんですよ、今からそんな調子じゃ困りますって」

 

「いや、まさか北方海域がこんな寒い場所だとは思わなかったから。 分かってる、足手まといにはならないよ」

 

「まあ、ご主人様は風邪とは無縁な性格だから大丈夫ですね」

 

「それどういう意味だコラ!」

 

 

大口開けてくしゃみをしたウチに漣が呆れた口調で返し、その姿に思わず他の皆が笑い出す。

提督としてはみっともないけど、それでみんなの緊張がほぐれるなら安いもんさね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キス島方面から突如響き渡る砲撃音。 そしてそれに続いて聞こえてくる掛け声。

どうやら、第二艦隊が動き出したようだ。

 

 

「作戦開始です、行きましょう!!」

 

 

先頭に立って、皆に呼びかける漣。

その言葉に他の者達も頷くと、第一艦隊とウチは進行を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

今回の作戦はこうだ。

現在、キス島周辺は新しい艦娘を鹵獲したばかりで警備が厳重になっている。

そこで、霧島たち戦艦を筆頭とした第二艦隊に陽動に入ってもらうことにした。

第二艦隊が敵の主力をひきつけている間に、駆逐艦メンバーを主力とした第一艦隊がキス島に侵入し、鹵獲されているであろう戦艦金剛を発見・救出するというものだ。

駆逐艦なら機動力があり、小柄で敵に見つかりにくいので、今回のような隠密行動にあえて駆逐艦のみの艦隊を編成したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一艦隊は現在、第二艦隊が戦闘を行っている場所から大回りに距離をあけて進撃している。

作戦が功を奏してか、こちらには深海棲艦の姿は見受けられず、キス島との距離はどんどん縮まってきた。

 

 

「うむ、どうやら向こうがうまく敵を引き付けてくれてるみたいだな。 これなら、うまくいくかもな」

 

 

ウチが目指す島に目をやっていると、隣にいる漣からいきなりチョップされた。

 

 

「あいてっ! 何だよいきなり!?」

 

「言ったじゃないですか、調子に乗るとブッ飛ばしますよって。 『慢心、駄目、ゼッタイ!』新米の提督や初めて艦隊に所属する艦娘に最初に送られる言葉です。 今のご主人様がまさにそれですね、油断せずに行きましょう。 金剛さんを見つけて海域から出るまでが作戦なんですから」

 

「うむむ…、漣にしては珍しく真面目なこと言うな」

 

 

まるで、家に帰るまでが遠足という教師のようだが、漣の言うことももっともだ。

ウチはこの艦隊の提督、その提督の油断一つでこいつらの命が左右されてしまうんだ。 最後まで気を引き締めてかからないとな…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで司令官、さっきから気になってたんだけど…」

 

 

ウチの後ろにいた響が怪訝な声を上げる。

彼女は先ほどから周囲に敵の影がないか連装砲を構えながら警戒していたが、今彼女の視線はウチの背中に注がれていた。

 

 

「その荷物は一体何なんだい?」

 

 

響はウチの背中、そこにぶら下がっている袋に釘付けになっていた。 黒いナップザックのような袋で、中身こそ見えないものの袋自体は中身の量のせいかパンパンに膨れていた。

 

 

「んっ? ああ、これか。 これは…」

 

「もしかしてお弁当ですか、しれえ♪」

 

 

ウチの言葉を遮るようにひょっこり顔を出す雪風。 いや、遠足じゃないんだから…

だが、ウチが返事をするより早くギャラリーが沸き立ってきた。

 

 

「もう司令官ってば、お弁当なら私が作ってあげるのに」

 

「さっすが司令官! こんな状況でも、お弁当を用意するだけの余裕があるんですね」

 

「おかずは何? 私としては卵焼きが入ってると嬉しいな♪」

 

「しれえ、雪風はミートボールが食べたいです!」

 

 

「いや違うから! ってか、何でお弁当一つでここまで盛り上がれるんだよ!?」

 

 

 

 

ナップザック一つで大盛り上がりする第一艦隊の面々。

一体どうすればここまでテンション上げられるんだろう、本当に……

そんな中、凛とした声が後ろから響いてきた。

 

 

「落ち着いて皆。 今は作戦の最中、おしゃべりで盛り上がっているときじゃないよ」

 

 

クールな顔で他の皆に注意を促す響。

彼女の一声で雪風たちは現状を思い出したのか、少し気まずそうに沈黙した。

流石はこの艦隊古参の艦娘、彼女だけは冷静さを忘れないな。

ウチがそう感心したときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに司令官、ピロシキはおかずに含まれるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響――――――おまえもか――――!!!

 

まさか彼女に真顔でボケられる日が来るとは思わなかったよ… 完全に一本とられたよ…

ウチは苦笑しながらも再び島に向かおうと正面を見ようとしたとき、隣にいた漣が急に声をかけた。

 

 

「敵水雷戦隊です! 雷巡と駆逐艦が3隻、それぞれ一隻ずつエリートとフラグシップがいるようです!」

 

「何っ!? くそっ、敵の主力を引き付けても雑兵はまだ残っていたか!」

 

「どうします、ご主人様?」

 

「こうなりゃ強行突破だ! ウチが戦線をこじ開けるから、漣たちはサポートを頼む!!」

 

「了解です!!」

 

 

すかさず連装砲を構え戦闘体制に入る漣。

それに続いて他の皆も主砲を取り出し単従陣の陣形を取る。

ウチは軽く息を整えると、即座に敵の艦隊目掛けて槍を向け、砲弾を放った。

 

 

 

 

 

 

 

こちらの先制攻撃で敵の艦隊を半分撃沈させることに成功し、ウチは一気にキス島に向かって突き進んだ。

漣たちも連装砲で牽制しつつ、ウチの後についてきた。

島との距離は縮まってきたが、同時に敵の深海棲艦もどんどん増えてきた。

漣と響、雷と大潮、陽炎と雪風の二人一組で左右後ろから迫ってくる深海棲艦を沈め、ウチは正面から襲ってくる敵を砲弾で吹き飛ばし、時に槍でなぎ払いながらどうにか島に到着することが出来た。

 

 

 

「うっし! どうにか到着できたな」

 

「それじゃ、これから金剛さんを探しに行くんですね?」

 

「そうしたいところだが、こっちもこっちでまずいな…」

 

 

そういって、ウチは先ほどまで自分達が通ってきた海面に目を向ける。

背後には先ほどから追手の深海棲艦たちがぞろぞろと集まってきている。

ほとんどが駆逐艦などの小型のものだが、数だけはかなりのものだ。 このままじゃ、退路をふさがれ脱出できなくなるかもしれない…

 

 

「…行ってください、ご主人様」

 

「…漣?」

 

 

気づくと、漣がウチを肘で小突いて呼びかけてきた。

 

 

「ここは漣たちが時間を稼ぎます。 だから、その間に島にいる金剛さんを助けてきてください」

 

「おいおい、さすがにそれは無茶だろ。 相手が駆逐艦とはいえ、この数はさすがにまずいぞ!?」

 

「それを言うなら、人間であるご主人様に戦わせるほうがよっぽど無茶というものですよ。 それにもし誰かが被弾するところを見たら、怒り出して力尽きるまで暴れそうですから」

 

「うっ、否定できん…」

 

「だからここは漣たちが請け負います。 霧島さんと約束したんでしょう?『必ず助け出す』って。 だから行って、必ず金剛さんを連れてきて下さい。 漣たちの役目はそれをサポートすることですから」

 

「漣…」

 

 

真っ直ぐな瞳でウチを見つめる漣。

ああ、そうか。 覚悟を決めていたのはウチだけじゃないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、聞いてくれ!! ウチはこれからキス島に突入して戦艦金剛を救出する。 だが、このまま周りを囲まれれば脱出は困難になる。 だから、ウチが戻ってくるまで皆にはここで撤退のための海路を確保してほしいんだ。 厳しい防衛戦になると思うが、やってもらえるか?」

 

 

我ながら無謀としか言いようのない注文だが、そうしなければこの作戦は失敗。 そうなればウチも皆もここで海の藻屑と化すだろう。

正直、やらせたくないというのが今の気持ちだが、それはここにいる第一艦隊の皆を侮辱するに等しい行為だ。

響・雷・大潮・陽炎・雪風 そして漣。

ここにいる皆が皆、作戦を成功させるための覚悟と決意を持って来たんだ。

ならウチも、提督として…仲間としてこいつらの覚悟に答えなくちゃな!!

 

 

「心配しないで司令官。 私がバッチリ守って見せるわ!」

 

「司令官、困ったときこそ大潮を頼ってください!」

 

「そんな不安そうな顔しないで。 陽炎がいるんだから、大船に乗ったつもりでいてよ!」

 

「大丈夫です! しれえには雪風がついていますから!!」

 

「司令官、私達は司令官を信じている。 だから、司令官も私達を信じてくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

「皆……」

 

「そういうわけですよ。 行ってください、ご主人様。 ここは漣たちに任せてください!」

 

 

 

彼女達の決意のこもった言葉と眼差しにウチは思わず目頭が熱くなる。

でも、今は感動に浸るときじゃない…

あいつらはあいつらのなすべきことをするように、ウチはウチのなすべきことをするときだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん、ここは任せた!!」

 

 

そう言ってウチはキス島に上陸した。

戦艦金剛を救出するため… あいつらとの約束を果たすために…!!

 

 

 

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