艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第20話 漣VS軽巡ヘ級フラグシップ 絆を力に変えて

 

 

キス島海域の一角。

漣とご主人様は、お互い背中合わせに眼前の敵を睨んでいます。

ご主人様に吹き飛ばされた戦艦ル級エリートも体勢を立て直し、漣の視線の先にいる軽巡ヘ級フラグシップも腕に装備した6inch連装速射砲を漣に向けてきました。

 

 

「ご主人様、どうやら向こうも反撃してくるようですよ」

 

「らしいな。 漣、確か雷と大潮をあんな目にあわせたのはそっちの軽巡ヘ級フラグシップなんだよな?」

 

「そうです。 こちらが防衛戦に徹している隙をついて、魚雷を撃ち込まれたんです」

 

 

なるほど、という返事が聞こえると同時に漣の背中に何かが当たりました。

それはご主人様が背中越しに渡してきたものであり、漣はそれを受け取リ確認すると、思わず声を上げてしまいました。

 

 

「…えっ、これって!?」

 

「響からの預かり物だよ。 『もし漣が苦戦しているようならこれを渡して』って言われてな」

 

「響……」

 

「戦艦ル級エリートはウチがやる。 だから、軽巡ヘ級フラグシップは任せたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一艦隊のリーダーとして、仲間を傷つけた落とし前はきっちりつけてやれ、漣!!」

 

「了解。 駆逐艦漣、出るっ!!」

 

 

 

後ろから聞こえてくるあの人の言葉。

その声に自分自身を奮い起こし、漣は自分の主砲と響からの預かりものを手に軽巡ヘ級フラグシップに向かっていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーい!」

 

 

漣は主砲で弾幕を張りながら敵旗艦との距離を縮めていきました。

おそらく軽巡ヘ級フラグシップには駆逐艦の主砲はほとんど効き目がなく、倒すとなると酸素魚雷を直接撃ち込むしか方法はありません。

ですが魚雷は駆逐艦にとって一発限りの切り札、外れれば漣になす術はない…

 

 

「どうにかして、魚雷を撃つ隙を作らないと…」

 

 

漣がそう呟くと、突然頭にこすり付けられるような感覚が走り、背後に大きな水柱が上がりました。

 

それは敵艦が放った砲弾が漣の即頭部をかすったものでした。 どうやら、敵も漣の隙をついて砲撃を仕掛けてきたようです。

 

 

「あ、危なかった…。 弾幕で視界を遮られているのに、あんなに正確に狙うなんて…」

 

 

油断していました… 軽巡といえど、相手はフラグシップ。

強力な砲撃こそないものの、その分こちらの急所を的確に狙う命中精度は高いようです。

いくら駆逐艦が機動力や回避力に優れていても、あんな正確な砲撃で狙われては被弾するのは時間の問題…

一体どうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《チィッ!? チョコマカトスバシッコイ人間メ…!!》

 

「そっちこそ無駄にタフだなデカブツ…。 ほんと戦艦と闘りあうのは骨が折れるわ…!!」

 

《マッタク、ココハ氷塊ガ多クテ動キガトリヅライ…!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くから聞こえてきたご主人様と戦艦ル級エリートの会話。

確かにここは北の海ゆえ、辺りには氷塊が海面のあちこちに浮かび上がっています。

待って…、これってうまく使えば……

 

 

 

「…やって見る価値はありそうね」

 

 

 

漣は急いで周囲を確認しました。

周りにちらほらと見える氷塊。 その中でひときわ大きなものに目をつけると、漣は意を決してその氷塊に向かっていきました。

 

 

《…ッ!? 逃ゲル気カ!》

 

 

突然踵を返して離れた漣に、軽巡ヘ級も逃がすまいと追ってきました。

漣は無我夢中で氷塊に向かって走っていきました。 時折後ろから軽巡ヘ級フラグシップの砲撃が体を掠めていきます。

腕に、足に、時に艤装を直撃と、徐々に漣は追い詰められていました。 掠めた箇所からはじわじわと痛みが広がり、血が滲んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですが、漣はただ前を見て必死に進みました。

 

こんな痛み、雷や大潮が受けたものに比べればなんてことありません。

 

ご主人様だってそうです。

 

沖ノ島海域では漣たちを守るため、あの戦艦ル級フラグシップを相手に果敢に戦ってくれたんです。

 

あの人は、大事な仲間を守るためなら命がけで戦う人です。

 

ですから、今度は漣が仲間を守るために命がけで戦います。

 

戦って、勝って、守り抜いたそのときには…

 

綾波お姉ちゃんや神原さん、それにトラック泊地の皆。

 

そしてご主人様の前で胸を張って言えるようにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これがトラック泊地の初期艦、漣の本気なんです!!』 ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ… はぁっ… やっと…、ついた…」

 

 

痛む足を引きずり、息を切らしながらも、どうにか漣は目的の場所までくることができました。

 

 

場所は先ほど目星をつけた氷塊を横切り、すこし離れた所。

そこで漣は再びUターンして軽巡ヘ級フラグシップがやってくるのを待っていました。

 

 

《マダ逃ゲルツモリカ駆逐艦? コッチハコレ以上キサマトノ鬼ゴッコニツキアウツモリハナイゾ》

 

「…そうですね。 これで終わりにしましょう」

 

《ヨウヤク諦メタカ。 ナラ、ココヲキサマノ墓場ニシテヤロウ!!》

 

 

軽巡ヘ級フラグシップは、腕の6inch連装速射砲を真っ直ぐに漣に向けてきました。

ですが、漣もおとなしく撃たれるつもりはありません。

軽巡ヘ級フラグシップが砲撃を放つ前に、即座に手元の主砲を構え砲弾を放ちました。

 

 

「いっけえー!!」

 

《グッ、何ノ真似ダ!?》

 

 

突然の漣の砲撃にひるむ軽巡ヘ級フラグシップ。

無駄うちとしかいえないような連射で、漣はひたすら撃ち続けました。

何発かは軽巡ヘ級フラグシップに命中していましたが、明らかに外れた弾のほうが多いうえ、当たった砲撃もたいしたダメージにはなっていませんでした。

 

 

主砲の砲撃を終えた漣は、肩で息を切らしながら自分の手元にある主砲に目をやりました。

主砲は弾を撃ちつくしたせいで、せいぜい鈍器として殴るぐらいしか使い道はありません。

対する軽巡ヘ級フラグシップは先の弾幕で防御体制をとっていましたが、漣の砲撃が終わったことに気づくと再び腕の主砲を向けてきました。

 

 

《ココマデキテ悪アガキトハ…。 往生際ノ悪イヤツメ、コノ状況デマダヤルツモリカ?》

 

「あなたには雷と大潮を大破された仮がありますからね。 その落とし前はきっちりつけないと」

 

《ホウ…。 ダガ、ドウヤッテソノ落トシ前トヤラヲツケル気ダ? ソノ主砲ハモウ使イ物ニナラナイダロウ》

 

「見くびってもらっては困ります。 駆逐艦の武器は主砲だけじゃないんですよ!!」

 

 

 

 

 

すかさず、漣は足に装着されている酸素魚雷を一斉に放ちました。

魚雷は真っ直ぐに軽巡ヘ級フラグシップのいるほうに向かって進んでいきました。

魚雷の破壊力は主砲より上。 これさえ命中すれば、軽巡ヘ級フラグシップも撃沈させることが出来ます。

得意げに笑みを浮かべる漣。 しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ヤハリナ…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対する軽巡ヘ級フラグシップも、ニヤリと笑うと少し横にずれるように移動しました。

その瞬間、漣の放った酸素魚雷が軽巡ヘ級フラグシップの横を素通りしていきました。

 

 

《ソンナコトダロウトハ思ッテイタ。 ダカラ、コチラモオマエノ魚雷ヲカワセルヨウ距離ヲトッテイタンダ》

 

《ダガ、ソレ以上ニオマエノ狙イ方ガアマリニ雑ダ。 ソンナ撃チ方デハ避ケテクダサイト言ッテルヨウナモノダゾ》

 

《結局、悪アガキノママ終ワッタナ。 頼ミノ酸素魚雷モ狙イヲ外シテハ意味ガナイカラナ》

 

 

勝ちを確信したのか、得意げに向上を述べる軽巡ヘ級フラグシップ。

そんななか、漣はゆっくり向こうに顔を上げると一言だけ言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、一つ勘違いしてます」

 

《ナニ…?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漣の魚雷は狙い通りの場所に命中しましたよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオオオオオオン!!!!

 

 

 

《ナンダ、今ノ音ハ!?》

 

 

突然背後から鳴り響く轟音。

あわてて背後を振り返る軽巡ヘ級フラグシップ。

そこには、背後に浮かんでいた氷塊が漣の酸素魚雷により砕けちり、そして氷塊の一部だった氷の破片が雪崩のように自身に降り注いでくるところだった。

 

 

《グッ…! クソ、サッキノ砲撃ト酸素魚雷ハ氷塊ヲ破壊スルタメニワザト外シタノカ!!》

 

「そうです。 そして、距離をとったのも漣が氷塊の破片に巻き込まれないようにするためです。 さすがに、その状況では身動きが取れないでしょう?」

 

《ヤッテクレタナ駆逐艦!! ダガ、丸腰ノオマエニ攻撃スル術ハモウナイ。 コッチガコノ氷塊ノ雨ヲシノゲバ、オマエノ負ケダ!!》

 

「それはどうでしょうか?」

 

 

漣は軽く微笑むと、ゆっくりと左腕を軽巡ヘ級フラグシップに向ける。

そして、そこにあったものを見た軽巡ヘ級フラグシップは思わず声を上げました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《サ、酸素魚雷……ダト…。 キサマ、一体ドウヤッテ…?》

 

「この酸素魚雷は漣のパートナー、響が貸してくれた物です。 彼女の助けがなければ、漣はあなたに勝てませんでしたよ」

 

《ソンナ…馬鹿ナ…。 コノ私ガ、駆逐艦ゴトキニ負ケルナンテ……》

 

「それじゃ、最後に覚えておいてくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、漣たちの本気なのですっ!!」

 

 

《クソ、クッソオオオオオオオオオオオ!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左腕の魚雷発射管から放たれた魚雷は、目前の軽巡ヘ級フラグシップに向けて突撃。

氷塊の雨に動きを封じられ、避ける術のない軽巡ヘ級フラグシップは四発の酸素魚雷に艤装を吹き飛ばされ、そのまま崩れた氷塊と共に海の底へと沈んでいきました。

 

 

 

 

 

「はあっ… はあっ… ご主人様。 漣、勝ちました……」

 

 

ここへ来る途中で受けた傷が痛み出し、朦朧とした意識の中倒れこむ漣。 そして、その隣には…

 

 

「ああ。 かっこよかったぞ、漣」

 

 

戦艦ル級エリートを撃退し、漣の下に駆けつけた提督の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キス島沖の作戦外部領域の海上。

そこにはトラック泊地からの移動手段として使った一隻のクルーザーが待機しており、陽動としての役目を終えた第二艦隊と金剛を含む第一艦隊がキス島方面を眺めていた。

だいぶ前からずっと艦載機を放ち続けていた飛鷹がおもむろに声を上げた。

 

 

「いたっ! こちらにやってくる影が二つ。 間違いないわ、提督と漣よ!」

 

「…よかった」

 

 

飛鷹の傍らでずっと二人を探していた響も、思わず安堵の息を漏らす。

 

皆が眺める先には、負傷した漣を背負ってクルーザーまでやってくる提督の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆の下までやってきたウチは、現在クルーザーの中で艦隊の皆に囲まれながら今までの出来事を話していた。

陽炎や雪風は目を輝かせながら聞いて、鳥海や羽黒は少し困り顔になっており、飛鷹や山城に至ってはまたか…、といわんばかりに呆れ顔になっていた。

 

 

「まったく。 提督もそうだけど、漣も無茶しすぎよ。 たった一人で敵の旗艦と戦うなんて」

 

「そう言わないでくれよ飛鷹。 出来ることならあいつの勇姿を皆にも見せてやりたかったな」

 

「でも、漣さんを守るために自ら戦う提督も素敵です。 この扶桑、提督の艦隊に所属できたことを改めて嬉しく思います」

 

「あ、あのー扶桑さん? それはいいんだけど… ちょっと、くっつきすぎな気がするんですがねえ……?」

 

「私の前で堂々と姉様を寝取ろうなんて、いい度胸してるわね……」

 

「誤解だ山城、主砲をこっちに向けるな怖いから!!」

 

 

山城に殺意のこもった視線と砲塔を向けられたウチは、あわててその場を離れ甲板まで逃げてきた。

甲板には漣と響が二人で海を眺めていて、感謝の言葉を述べる漣に対し、響は気にしなくていいというかのように小さく首を横に振っていた。

 

 

「…良かったな、漣…」

 

 

小さくそう呟きその場を離れようとした時、突然ウチを呼び止める声が聞こえてきた。

 

 

「そこにいましたか、司令」

 

「おっ、霧島。 榛名に金剛さんも一緒か」

 

「このたびは本当にありがとうございます。 提督のおかげで金剛お姉様を助けることが出来ました」

 

「気にしなさんなって。 今回はウチが助けたくて勝手にやったんだ、お礼を言う必要はないぞ」

 

「ノー! 私達にとって、提督は命の恩人デース! たとえ提督が良くても、私達の気が済みまセーン!!」

 

「お、おお…。 いや、金剛さんはまじめだなー…」

 

「提督ー、もう一ついいですカー…」

 

 

そう言ってウチの前までやってくる金剛。 ジト目で睨みつける彼女に、とまどいながらも「何…?」と聞くと…

 

 

「私のことは金剛と呼び捨てで呼んでほしいデース!!」

 

 

その言葉と共に、ウチは金剛に押し倒され甲板に叩きつけられた。

まるで人懐こい犬のようにじゃれ付く金剛に困惑していると、不意に頭上から聞きなれた声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほうほう、扶桑さんの次は金剛さんに浮気ですか…。 英雄色を好むとはよく言いましたね……」

 

「さ、漣……」

 

 

仰向けになりながら見上げた先、そこにはにっこり微笑みながら主砲を携える漣の姿があった。 あれ、これなんてデジャブ…?

 

「ご主人様、さっき漣の勇姿を皆に見せてやりたいって言ってましたね? ご要望にお答えしたいと思いますので、ぜひご主人様も協力してください♪」

 

「あるぇ~? なんかすごく嫌な予感がするんですがそれは……」

 

 

ジャコンッ!! と凶悪な音を鳴らす漣の主砲。

今の状況を察したウチは、軽く微笑むと強引に金剛を引き離し、そして…

 

 

 

 

 

「イヤダー!! シニタクナーイ!!!!」

 

 

 

 

 

全力ダッシュで目の前の海に飛び出した。

 

 

「これが、漣の本気なのです!!」

 

 

同時に背後から聞こえてくるデストロイヤーの声。

だが、今のウチには背後を確認する余裕などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、北方海域の海上では主砲の発砲音と、「アバ―――!!!!」という男の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

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