艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第22話 カレー洋海戦 提督代理、最大の危機

 

 

静かに波立つ海面にたたずむ6人の艦娘たち。

漣を筆頭としたトラック泊地第一艦隊のメンバーは、向かうべき島に顔を向けていた。

 

 

漣「ついに来ましたね、カレー洋」

 

霧島「…比叡姉様。 ご無事でしょうか…?」

 

 

霧島は、まるで自分自身に言い聞かせるように言葉を漏らす。 その表情には明らかに不安の色が現れている。

 

 

金剛「落ち着くデース、霧島。 比叡は元気が取柄の娘だから、きっと大丈夫ネー」

 

 

緊張で固まっている霧島に金剛がいつものノリで肩をたたく。 妹の不安を和らげるためか、それともカレー洋に囚われているもう一人の妹を信頼しているからか、彼女に不安の色は感じられなかった。

これは、ウチも負けてられないな…

いっちょ、気張っていきますか!!

 

正也「よし、そろそろ乗り込もうか。 皆、準備はできてるか?」

 

 

漣「バッチリですよ、ご主人様♪」

 

響「心配ないよ、司令官」

 

鳥海「こちらも大丈夫です」

 

羽黒「私も頑張りますね、司令官さん」

 

 

改めて問題ないことを伝えてくる第一艦隊のメンバー。

ウチがそれらを確認していると、後ろから声をかける艦娘の姿があった。

 

 

霧島「司令…」

 

正也「どうした、霧島?」

 

霧島「このようなことを改めて言うのはどうかと思われるのですが……」

 

 

いつもの彼女とは打って変わってしおらしい様子を見せる霧島。 しかし、決意を固めたのか凛とした表情をウチに向け、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島「どうか、比叡姉様を助けてください。 お願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と共に、姉の金剛と共に深々と頭を下げる。

そんな彼女の姿を見たウチは、静かに目を閉じこう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せろっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その台詞と共に目標の島目掛けて進撃する第一艦隊。

こうして、戦艦比叡救出作戦が開始されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「んがー!! しつっこいなもうっ!!」

 

羽黒「大丈夫ですか司令官さん!?」

 

正也「大丈夫だ、問題ない。 って言ってる場合じゃない…。 ええい、あっちいけこのっ!!」

 

 

ウチは手元の槍を弧を描くように振り回し、背後から自分目掛けて襲ってきた敵の艦載機を叩き落とす。

同時に砲弾の発射ボタンに手を置き、先ほど艦載機を放った空母ヲ級フラグシップに砲弾を発射。

 

 

 

 

ズドオオオオオン

 

 

 

砲弾は真っ直ぐ空母ヲ級フラグシップに向かっていったが、即座に彼女の周りを飛んでいた艦載機がウチの砲弾にぶつかり誘爆、空母ヲ級フラグシップに当てることは出来なかった。

 

 

正也「くっそう、手強いな…。 これじゃ、攻撃を当てられんぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、ウチ等は空母ヲ級フラグシップ率いる敵空母機動部隊と交戦していた。

随伴艦である軽母ヌ級エリート2隻は霧島の先制火力と鳥海・羽黒の連撃で倒したが、旗艦の空母ヲ級フラグシップはこちらの砲撃を艦載機で撃ち落とすので、なかなか攻撃が当てられない。

「どうしたものか…」と頭をかいて思案していると、

 

 

漣「ご主人様、漣に提案があります」

 

 

敵艦の駆逐ロ級エリートと軽巡ホ級フラグシップを沈めた漣たちがウチの元に駆けつけてきた。

 

 

正也「提案って、一体どうするんだ?」

 

漣「まず金剛さんの主砲で周りを飛ぶ艦載機を撃ち落としてもらいます。 残った艦載機を漣と響で倒しますので、その隙にご主人様が直接空母ヲ級フラグシップを叩いてください」

 

正也「なるほど。 確かに、そうでもしなきゃアレは倒せそうにないな…」

 

響「それじゃ、決まりかな? 司令官」

 

正也「ああ、それで行くか。 そんじゃ、フォローよろしく!!」

 

 

斬り込み隊長となったウチが先陣にでて、後ろから漣・響・金剛が後をついていった。

空母ヲ級フラグシップもこちらに気付き艦載機を放ってくるが、同時に金剛が主砲を上に向け、構える。

 

 

金剛「ていとくー! 私の活躍、ちゃんとみててくだサーイ!!」

 

 

そういって、彼女は艤装の主砲から対空用の三式弾を放った。

空高く撃ち上げられた三式弾からは、大量の子弾がとびちり敵の艦載機を次々撃ち落としていく。

 

 

正也「おお、すごいなこりゃ。 金剛、ナイスフォロー!」

 

金剛「イエース! 私の事、惚れ直しちゃいましたカー!?」

 

正也「いや、そもそも惚れてないんだけど…」

 

金剛「ウフフ…、そんなつれない提督もグッドデース!!」

 

 

ひらひらと手を振りながら訂正するウチに対して、まったくぶれない金剛。

頼もしいと言うか、なんというか…

 

 

響「余所見は禁物だよ、司令官」

 

正也「おっ、悪い。 そんじゃ、後方支援よろしく!!」

 

 

ウチは背後で主砲を構える二人に声をかけ、スピードを上げる。

空母ヲ級フラグシップも残った艦載機をけしかけてくるが、先の金剛の攻撃でほとんどの艦載機が撃ち落とされており、残りは両手の指の数より少ない。

 

漣と響は主砲をまっすぐ斜め上に向け、クレー射撃のように正確にウチに向かってくる艦載機を落としていった。

ウチは二人の撃ち落とした艦載機をかわし、空母ヲ級フラグシップの正面まで接近。

あわてて次の艦載機を放とうとしたところに、海面を狙って砲撃と同時に跳躍。

着弾と同時に発生した爆風に体を乗せて、空母ヲ級フラグシップの頭上を確保。

真下に見える空母ヲ級フラグシップの頭に槍を向け、ウチは砲弾を発射。

空母ヲ級フラグシップがその砲撃音に気付いたときには、真上から飛んできた砲弾が直撃、そのまま水底へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母ヲ級フラグシップを撃破したウチが額の汗をぬぐっていると、鳥海がタオルを持ってやってきた。

 

 

鳥海「お疲れ様です、司令官さん」

 

正也「ああ、ありがとう鳥海。 でも、労いの言葉はあいつらにかけてやってくれないか? ウチが勝てたのも、漣たちのフォローあってこそだからさ」

 

鳥海「うふふ。 司令官さんって、本当に漣さんのことが大事なんですね。 沖ノ島のときといい、今回といい、いつも漣さんに来てもらってますから」

 

正也「いやいやいや、そんな深い意味じゃないって! 一応あいつこの艦隊で一番錬度高いからさ、だから今回も同行してもらっただけなんだよ、いやホント!!」

 

 

突然の鳥海の振りに完全にしどろもどろになるウチ。 だが、そんなウチに羽黒も追い討ちをかける。

 

 

羽黒「でも、漣さんって司令官さんと一番付き合いが長いんですよね? やっぱり、司令官さんにとって漣さんってそれだけ大事なんですか?」

 

正也「だーかーらー! あいつとは単に付き合いが長いだけで、それ以上の関係じゃないって!! それに、ウチにとっては艦隊の皆が大事な存在であり、大事な仲間なんだ。 誰か一人が特別だなんて認識、ウチはしてないからね!」

 

 

「はい、もうこの話終了!!」と強引に話を切り上げ、ウチはそそくさとその場を離れる。

 

後に残った鳥海と羽黒は、静かに二人顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

鳥海「司令官さんはああ言ってましたけど……」

 

羽黒「傍から見ると、司令官さんにとって漣さんはパートナーのように感じますね…」

 

鳥海「ええ、そうですね」

 

羽黒「………」

 

鳥海「羽黒さん、ひょっとして漣さんのこと羨ましいって思いませんでした?」

 

羽黒「ふぇっ!? え、えとっ…!? あのっ…!? べ、別にそんなことは……!!」

 

鳥海「本当ですか?」

 

羽黒「……ちょっとだけ、羨ましい…です…」

 

鳥海「……そうですか。 奇遇ですね」

 

羽黒「えっ…?」

 

鳥海「私も、漣さんの事が羨ましいです。 だって、彼女が司令官さんにとって一番近い存在なんですから…」

 

羽黒「…そう、ですね…」

 

 

親友同士、心の内を語り合う二人。

そして、その話の中心人物はそのことに気付くことなく他のメンバーにねぎらいの言葉をかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵空母機動部隊を撃破し、ウチと第一艦隊の皆は進撃を再開する。

 

その後はすこぶる順調に進んでいた。

敵艦隊に遭遇したときは戦艦である金剛と霧島が敵に大打撃を与え、サポートに羽黒と漣・鳥海と響のコンビで追撃を仕掛ける。

正直、先の空母ヲ級フラグシップ以降ウチの出番はまったくなかった。

まあ、そのほうがいいんだけどね。

 

 

 

 

 

戦闘と進撃を繰り返し、一行はようやく目当ての島まで接近することができた。

距離は、後数キロといったところか。

 

 

正也「よし、もう少しだ。 皆、頑張れ!」

 

 

ウチの掛け声に、元気よく返事を返す一同。

もうすぐだ霧島。 これで、お前の姉ちゃんを助けられるぞ!

ウチが心の中で歓喜に震えていたときだった。

 

 

 

 

ウチは提督として、大事なことを失念していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獲物を捉えた瞬間が、一番標的が油断するときだ。 ということを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はるか上空から風切音を上げ飛んでくる砲弾。

 

それは第一艦隊の頭上を飛び越え、先頭を行く人物であるウチ目掛け飛来してきた。

 

 

霧島「…っ!? 司令っ!!」

 

正也「えっ…? うおわっ!?」

 

 

突然の呼びかけにウチは砲弾の存在に気付いたが、すでに砲弾はウチの目と鼻の先まで飛んできており、避けることはほぼ不可能だった。

 

そのとき、霧島はとっさにウチの近くの水面に砲弾を放ち、爆発させる。

爆風によりウチは吹き飛ばされたが、おかげでウチは上空からの砲撃を受けずにすんだのであった。

 

 

 

 

でも、この助け方はどうなのよ…

 

 

 

 

海面に叩きつけられたウチは、痛む体を上げながら先の砲弾の発射元を確かめるために周囲を見回すと…

 

 

 

正也「あいつか、さっきウチを狙ってきた奴は…」

 

 

 

 

目的の島から少し離れた海上。

白いロングヘアーを海風にたなびかせ、緑に光る瞳をこちらに向け睨みつけてくる一隻の深海棲艦。

ただ、その姿は今までの深海棲艦より一段と人の姿を模していた。

 

 

《…残念。 モウチョットデ仕留メラレソウダッタノニ…》

 

鳥海「あれは、戦艦タ級じゃないですか!?」

 

金剛「私達の提督にむかってなにをするデース!!」

 

 

怒りをあらわにして、金剛は艤装の砲塔を戦艦タ級に向け砲撃する。

だが、戦艦タ級はまるでステップをふむように華麗に金剛の砲撃をかわしていく。

 

 

 

 

タ級《アラアラ、オ粗末ナ砲撃ネ》

 

霧島「下がってください姉様。 今度は私が行きます!!」

 

 

 

 

 

続いて霧島が金剛の砲撃をよけた瞬間を狙い、一点集中で砲弾を放つ。

さすがにこれは避けることが出来ずタ級も直撃を受ける。

 

だが……

 

 

 

 

 

 

タ級《…サスガニ、今ノハ驚イタワ。 イイ腕シテルジャナイ、アナタ》

 

霧島「そんな…、全然効いていない……」

 

 

戦艦タ級の体には傷一つついておらず、タ級自身も涼しい顔でこちらを眺めているだけだった。

 

 

これは相手が悪すぎる…

現状艦隊主力の二人でもまるで歯が立たないとは、戦艦タ級っていうのはここまで強いのかよ…!

いや、落ち着けウチ。

今回の目的はあくまで戦艦比叡を救出することで、こいつを倒すことじゃないんだ。

なら、やるべきことは分かってるだろ?

 

 

正也「ここはウチがあいつと戦う。 漣たちは早く島に向かってくれ!」

 

羽黒「そんな!? 危険すぎますよ、司令官さん!!」

 

正也「心配すんな羽黒! あくまで時間を稼ぐだけだ、比叡救出は任せたぞ!!」

 

 

 

そう言って装備妖精が整備を行ってくれた愛用の槍を携え、ウチは戦艦タ級に突っ込んでいく。

 

 

 

だが、ウチはもう一つ大事なことを失念していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『慢心、駄目、ゼッタイ!』新米の提督や初めて艦隊に所属する艦娘に最初に送られる言葉です。

 

 

 

キス島で言っていた、漣のあの言葉を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…うおっ!?」

 

 

突然ウチの動きが止まる。 前に進もうとしても進めない。

訳が分からないまま足元を見たとき、ウチはその原因が分かった。

 

 

 

水面から長い髪をたらしながらウチの足を掴む深海棲艦が2隻。

まさか、こいつら……

 

 

正也「…潜水…カ級?」

 

 

直後、潜水カ級2隻はウチの足を引っ張り水底に引きずり込む。

あまりにとっさの出来事にウチも対応するまもなく、足元から海の中へ沈められていった。

 

 

 

 

金剛「テイトクー!?」

 

霧島「司令っ!?」

 

鳥海・羽黒「「司令官さんっ!?」」

 

響「司令官っ!?」

 

 

 

目の前の出来事に戸惑う中、一人だけ駆け出してウチの手を掴もうとした一人の駆逐艦。

 

しかし、ほんのわずか間に合わずにウチの手は海の中に引き込まれ、彼女の手は空を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ああ……。 ご、主人…様。 あ、あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああ――――――――――――――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人だけ正也の手を掴もうと必死に駆け出した駆逐艦の少女、漣は空を切った手を伸ばしたまま、絶望の雄叫びを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一艦隊に起きた悲劇を一人傍観していた戦艦タ級。

 

その表情はなぜか少し哀愁に溢れていた。

 

 

 

 

《アア、可愛ソウニ…。 サッキノ男ハ、アナタニトッテ本当ニ大事ナ人ダッタノネ…》

 

《…デモ、心配シナイデ。 アナタモ寂シクナラナイヨウ…》

 

 

 

 

 

《仲良ク、同ジ水底ニ沈メテアゲルワ……!》

 

 

 

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