艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第2話 新たな泊地と新たな仲間

 

「ここが、提督執務室か」

 

 

「そうですね、確かに扉にプレートが張ってありましたが…」

 

 

ある日、ウチは何の因果か人気のゲーム『艦隊これくしょん』を始めようとしたらいつの間にかゲームの世界に飛ばされ、そこで出会った初期艦娘の一人、漣とともにこの世界で一週間だけ提督代理として働くことになった。

現在、ウチは自分が担当するトラック泊地の提督執務室に来ているのだが、

 

 

「何というか…」

 

「これはまた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「見事に何にもない(な・ですね)」」

 

 

 

 

 

提督執務室には報告書や筆記用具などが入れられた段ボール箱が2・3置かれているだけで、ほかに家具らしいものは一切見当たらなかった。殺風景ってレベルじゃねえぞ…

 

 

「なあ、漣。鎮守府って家具がそろえられないほど貧しいのか…?」

 

「ちょっと待ってください。漣の予想が正しければ、ご主人様の元にもあれが…」

 

 

そう言って、漣がダンボールの中身を確認していると、

 

 

「あった、これです!」

 

 

ダンボールの中から小型のタブレットを取り出し、ウチの元に持ってきた。

 

 

「何だこれ?」

 

 

画面をタッチすると、そこにはゲームの母港画面が表示された。ただゲームと違って画面右側に秘書艦の艦娘は映っておらず、

『アイテム』や『任務』の横に『情報検索』といった見慣れないコマンドがいくつか現れていた。

画面左上の手紙のコマンドに「メールが届いています」と表記されていたので押してみると、横須賀鎮守府の提督・神原さんからメッセージが表示された。

 

 

 

『君がこれを見ているということは、君はトラック泊地に到着したということだろう。ようこそ、トラック泊地へ。

 本題に入るが、今君が持っている端末は艦娘のコンディションや資材のチェック、遂行中の任務を確認するためのものだ。提督を務める者は常にこれを常備している。くれぐれも紛失しないよう気をつけてほしい。 それとここではまだ家具が取り揃えていないので、アイテム欄の家具屋から必要な家具を揃えるといいだろう。 ちなみに家具の購入には家具コインが必要なのだが、今回は私の家具コインを君のところに送っておいた。少しだが、ぜひとも有効に使ってくれたまえ』

 

 

 

早速、アイテム欄を押して家具屋のページに飛ぶと、右下には所持家具コインが1000と表示されていた。

まず提督として一番必要な『提督の机』を購入、次に床張りじゃ寂しいので『ブルーカーペット』を選び、残ったコインで『エレガントボード』を揃えた。これで少しは執務室らしくなるかな?

購入完了を選ぶと10分ほどで模様替えが終わるので、それまで執務室を空けてくださいと表示された。

 

 

「えっ、誰かが模様替えをしてくれるっていうのか?」

 

「はいっ! ここでは艦娘のサポートをしてくれる妖精たちがいますので、購入がすめば、後は家具職人の妖精たちがやってくれます」

 

「妖精!? ここには妖精なんているのか!!」

 

「ここに限らず、他の鎮守府でも妖精はいますよ。 まあ、ご主人様は一般人だし知らなくても無理ないですけどね」

 

 

という事は、他の提督は艦娘に妖精のサポーターがいることは周知の事実なのか?艦これの世界って、奥が深いな…

とりあえず、もうすぐ家具職人が来るとのことなのでうちらは執務室を後にした。

 

 

 

 

 

次に来たのは艦娘や装備を建造・開発する『工廠』だ。漣の話では、ここでも担当の妖精がいるらしいが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい。ようこそ工廠へ」

 

「んっ? 漣、今何か言った?」

 

「漣じゃないですよ。あそこ、見てください」

 

 

漣が指差す先、壁際に置かれているドラム缶の上を見ると、そこには

 

 

 

「あなたが提督?建造なら任せてね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うおお、マジでびびった!!

ドラム缶の上にいたのは、身長が10センチほどの小人だった。もしかして、これが漣の言ってた妖精なのか?

 

 

「この提督さん、すごいリアクションだね…」

 

「この人は正式な提督じゃなく代理で来た人だから、妖精を見るのは初めてなの」

 

 

そして漣は一連の出来事を妖精に説明してくれた。妖精はなるほど、と言うとこちらにむいて工廠の説明を始めてくれた。こちらは、建造時間や資材の比率云々についてはゲームと同じで、ウチは説明を聞き終えると早速建造を始めた。

 

 

「まあ、最初だから最低値でな」

 

 

ウチは資材をオール30に設定し、建造開始のスイッチを入れた。

 

 

 

20分か。

 

 

 

「確か20分は駆逐艦だったよな?」

 

「そうですね。ただ、種類が多いですから何型になるかは分かりませんね」

 

「たしか建造ドックはもう一つあったよな? そっちもやってみよう」

 

 

戦力は多いに越したことはない。昨日のような事がおきないよう、もう一度最低値で建造を始めた。

 

 

今度は1時間と表示された。

 

 

「ラッキーですねご主人様!! いきなり軽巡洋艦を引き当てるなんて!」

 

「ああ、これは助かるな」

 

 

膳は急げといわんばかりに高速建造剤を使う。 建造時間のカウンターはすごいスピードで減っていき、あっという間にゼロになった。

 

 

「ご主人様、新入りみたいよ?」

 

「よし、早速あってみよう」

 

 

一つ目の建造ドックのドアが開くと、そこには小柄な体に銀髪のロングヘアーが特徴的な少女の姿があった。

右側には主砲と魚雷が積んであり、少し眠たげな目からはクールな印象を感じさせた。

 

 

「君が司令官か?」

 

「正確には代理だけどね。 ウチは中峰 正也(なかみね まさや)。 こっちは秘書艦の漣だよ。そっちも自己紹介してくれるか?」

 

 

少女は軽く頷くと、自己紹介を始めた。

 

 

 

 

 

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

「不死鳥とはまた頼もしいな、よろしく頼むよ」

 

 

ウチが響と会話していると二つ目の建造ドックも建造が終了したらしく、ドアから二人目の艦娘が出てきた。

こちらは茶色の長い髪にアホ毛が特徴的な艦娘で、彼女はこちらに気づくと手を振りながら挨拶してきた。

 

 

 

「クマー。よろしくだクマ」

 

「クマーって変わった挨拶だな。それで、名前は?」

 

「っ? クマはクマだクマ」

 

「司令官、クマは彼女の名前だよ」

 

「えっ、マジで!?」

 

「失礼だクマ。『球磨型 軽巡洋艦1番艦 球磨』 それがクマの正式名称だクマ!」

 

 

球磨と名乗った少女はむくれながらこっちを睨んでくる。うっ、正直すまんかった…。

 

 

「ご主人様、新入りの名前はちゃんと覚えましょう」

 

 

うぐっ、漣からもダメだしされてしまったな…。ゲームを楽しむためどんな艦娘が出るか調べずに始めたのがアダになってしまった。

その後、必死に謝ってどうにか球磨も機嫌を直してくれた。

 

 

 

 

 

 

「これで艦隊のメンバーも3人になったし、そろそろ出撃してもらうぞ」

 

 

現在、ウチは漣・響・球磨とともに提督執務室にいる。

内装は注文したとおりに机やカーペットが敷かれており、ついさっきまでダンボールしかなかった場所とは思えないほどの変わりようだった。

今回行うのは南西諸島沖警備。 南西諸島沖に接近する敵艦隊を撃破するのが目的だ。

 

 

「今回は漣に旗艦を担当してもらう。漣は前回の戦闘で錬度が上がっているが、響と球磨はまだ戦闘経験がない。敵艦隊と戦って危ないと思ったら素直に引き返すんだ」

 

「はい、ご主人様」

 

「了解、司令官」

 

「分かったクマー」

 

「よし、説明は以上だ。では皆、出撃だ!!」

 

 

こうして、わが艦隊の最初の出撃が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『漣、そっちの様子はどうだ?』

 

「今のところ、異常ありません。敵艦隊の姿も見えませんね」

 

『分かった、そのまま進んでくれ』

 

 

漣たちは今、南西諸島の海上を移動している。目の前には広大な海とそれを照らす太陽以外何もなく、海を泳ぐ生物の姿も見えなかった。

 

 

「どうやら、まだ敵艦隊はそれほど進撃していないみたいだね」

 

「でも、ここまで何もないと退屈だクマー…」

 

 

周囲を警戒する響を尻目に愚痴をもらす球磨。まあ、確かにここまで何もないと退屈する気持ちは分かるなー。

 

 

 

…っと、どうやら探し物が見つかったみたいね。

 

 

「前方に敵艦隊発見!! 数は3、うち1隻は軽巡洋艦みたい!」

 

 

漣の声に反応して二人もこちらを振り向く。漣は二人に合図して、すぐに戦闘準備に入る。

敵艦隊もこちらに気づいたらしく、まっすぐに向かってきた。

 

 

「二人とも行くよ。 これが、漣の本気なのです!」

 

 

漣は主砲をまっすぐ敵艦に向け、即座に発射。弾は狙い通り敵駆逐艦に被弾、中破させた。

 

 

「さすがだね」

 

 

響も駆逐艦の機動力を生かし、敵艦隊の側面に回りこむ。もう一隻の駆逐艦が響に気づき照準を定めるが、響のほうが先に主砲を構えていた。

 

 

「遅いよ」

 

 

響の主砲は敵駆逐艦にクリーンヒットし、見事一撃で撃沈させた。

 

 

「二人ともすごいクマねー。 こっちも負けてられないクマー!」

 

 

球磨は敵軽巡に正面から主砲を叩き込む。球磨の攻撃は確実に敵艦に当たりダメージを蓄積させたが、敵艦も負けじと球磨に砲撃を放つ。

 

 

「おぉー!」

 

 

敵の放った攻撃が球磨に被弾・小破するが、

 

 

「なめるなクマー!」

 

 

球磨もひるむことなく止めの一撃を放ち、敵艦の撃沈に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら漣。たった今敵前衛艦隊と交戦、勝利しました」

 

『やったな。そっちの被害状況は?』

 

「クマが被弾したクマー…」

 

『だ、大丈夫か? 球磨』

 

「これぐらい平気クマ! 安心するクマ!」

 

 

球磨は元気アピールするため腕をぶんぶん振ってる。…って、それじゃかえってやせ我慢してるように見えるよ。

 

 

『まあ、今日はもうすぐ暗くなるし、そろそろ皆帰還してくれ』

 

「分かりました」

 

「了解」

 

 

ご主人様から撤退命令があったし、それじゃ引き返そうとすると先ほど敵艦隊がいた場所に誰かの影が見えた。

もしかして、まだ敵が潜んでたの!?

 

 

『どうした、漣!?』

 

「敵艦隊がいた場所に怪しい影を確認! すぐに戦闘準備を…!」

 

 

でも、次の瞬間その必要はないことが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ! もしかして、そこにいるのって球磨姉っ!?」

 

「その声、その喋り方。 お前、もしかして…」

 

 

漣が見つけた影の主は、二人の脇をすり抜け一直線に球磨の元に駆け寄ってきた。

 

 

「やっぱり球磨姉だにゃ! あえてうれしいにゃあ!」

 

「多摩っ! こんなところにいたのかクマ!」

 

 

球磨にうれしそうにじゃれ付いてるのは、彼女と同じ『球磨型 軽巡洋艦2番艦 多摩』だった。彼女の話によると敵艦隊に捕まり連れて行かれそうになったところを、偶然通りかかった漣たちに助けてもらったとのことだった。まあ、無事でよかったけどね。

 

 

『おーい漣! 影の正体は何だ!? そっちは無事なのか!?』

 

 

あっ、いけない! ご主人様と話してたことすっかり忘れてた。

 

 

「すいません、ちょっちドタバタしてたんで。 こっちは大丈夫で…」

 

「漣、見て!」

 

 

急に響に話しかけられ、あわてて彼女の指差すほうを向くと、そこには新たな敵艦隊がいた。しかもさっきより数が多いところを見るとあれって…

 

 

「間違いない、あれが主力部隊だよ」

 

 

敵の数は5か。頭数ではこっちが不利だけど、幸い向こうはまだこちらの存在には気づいていないみたいね。

 

 

『漣、聞こえてるかってばよ!! さざな…』

 

「ご主人様、静かに…! こちら、主力部隊と遭遇しました。 数は5、軽巡2に駆逐3です」

 

『何だって!? さすがにそれはやばいな…。どうするか…』

 

「でもご主人様、こちらにも付け入る隙はあります」

 

『…? どういうことだ…』

 

「まず、向こうはこちらの存在に気づいていません。 奇襲を仕掛ければこちらに分があります。そして…」

 

『そして…?』

 

「ご主人様言ってましたよね。 『もうすぐ暗くなる』って」

 

『…ああっ! なるほどね』

 

「それでは、許可していただけますね?」

 

『いいぞ。 漣、響、球磨、ジェットストリームアタックを仕掛けてやれ!!』

 

 

 

 

 

ご主人様の許可も下りたし、始めますか!

 

 

「徹底的にやっちまうのね!」

 

「ウラー(Урааааа)!」

 

「追撃戦に移るクマー!」

 

「撃つにゃ!」

 

『よしいけ皆!……って、今のにゃって誰だ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       我、夜戦に突入す!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「軽巡、多摩です。 猫じゃないにゃ」

 

 

いや、どう見てもしゃべり方が猫じゃないか。と突っ込みたくなったが、球磨のときみたくふてくされたら困るので言わないでおこう。

あの後、漣たちは敵主力部隊の迎撃に成功。その後、新しく発見したという艦娘をつれて戻ってきたのだ。

 

 

「それじゃ、これからよろしく頼むよ」

 

「了解。こちらこそよろしくだにゃ」

 

 

そういって、ウチが多摩と話していると扉の向こうからバタバタという足音が聞こえてくる。

 

 

「ここが提督さんのお部屋だね! 第一印象が大切だから、張り切っていかないとね!!」

 

「な、何だ? この騒がしい声は!」

 

「あ、そう言えば敵主力部隊を撃退したとき新しい艦娘がいたから一緒に連れてきたにゃ」

 

 

この声、ウチは前にゲームで聴いたことがある。まさか、新しく来た艦娘って…

そう思った瞬間、執務室のドアが勢いよく開き、騒々しい声の主が姿を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー。よっろしくぅ~!」

 

 

で、出たー!!解体のアイド…げふんげふん、艦隊のアイドル!!

いろんな意味で有名なこの艦娘がこんなに早く来るとは…。

 

 

「あれっ、提督さん疲れてるの? ほら、那珂ちゃんがいるから元気出して!」

 

 

むしろお前のせいで疲れてるんだよ!!

はあ、この調子で一週間も持つだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

そんな調子でウチの提督代理2日目は幕を閉じたのであった。

 

 

 

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