艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

31 / 108
ここから第2章に入ります。
こういった話も前から書きたかったので、ぜひ見てってください。 オナシャス!


北方・西方海域編 Part2 打倒、ブラック鎮守府編
第26話 オリョール海の出会い、夕雲の独白


 

 

とある大海原を駆ける一隻のクルーザー。

空は青く澄み渡り、まばらに散らばる雲と群れを成す海鳥の姿が蒼一色の空を綺麗に着飾っている。

運転席には、横須賀鎮守府の提督である神原駿が舵を取り、デッキには3人の提督と2人の艦娘の姿が見える。

提督は3人とも女性で、そのうちの一人は舞鶴鎮守府の提督であり給糧艦『間宮』こと槙野瀬美也子の姿があった。

 

 

間宮「今日は本当に天気のいい日ね。 こういう日に外で食べるお食事はとってもおいしいし、ふふ… 今からトラック泊地に着くのが待ち遠しいわ♪」

 

綾波「司令官ってば、よっぽど今日の食事会が楽しみだったんですね。 まあ、そういう私も今から中峰さんと漣に会うのが楽しみですけど」

 

 

子供のように嬉しそうにはしゃぐ間宮に、彼女の秘書艦である綾波がそう話しかける。

彼女達はこれから、トラック泊地の提督である中峰正也に会いに向かっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

数日前、金剛姉妹の所属許可をもらうため連絡してきた正也。

神原はその件について了承すると共に、現在正也が元の世界に戻る方法について調べた結果を報告した。

 

結論から言うと、収穫は全くなし。

なにせ今いる世界から別の世界に行くなんてファンタジーのような方法を調べるなんて、普通はとても無理な話だ。

神原は「力になれなくてすまないね…」と話すが、正也は「とんでもない! ウチは神原さんに十分すぎるほど世話になっています。 感謝はあれど怒る理由なんかないですよ!」と、素直に感謝の意を述べていた。

そんな生真面目な彼を思ってか、神原の秘書艦である大和がこんな提案をした。

 

 

大和「今度、間宮さんたちと共にトラック泊地に遊びに行きませんか? 内緒で行って、中峰さんたちを驚かせて上げましょう」

 

 

こうして、大和の提案に同意した神原は間宮を含む後輩の提督達を連れてトラック泊地に向かっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、トラック泊地の提督もあたし達と同じ適合者なのよね? 要するにあたし達の後輩ってことか」

 

「神原さんの話では、私達適合者の中では異例の強さを持つ青年だと言ってました。 確かにどんな人か気になりますね、栞さん」

 

「ちょっと、恵ってばまた敬語で話してる。 あたし達親友同士なんだし、普通に呼び捨てでいいじゃん」

 

「ああ、すみません。 つい、任務娘と呼ばれてるときの癖が…」

 

 

丁寧な口調で話しかけられたことにしかめっ面で指摘するピンク髪の女性提督。

対する黒髪ロングの女性提督も、あわてた様子でぺこりと頭を下げた。

 

 

ピンク髪の女性。 佐世保鎮守府の提督、赤羽栞(あかばね しおり)は『分かればよろしい』と言わんばかりに指を振ると、黒髪の女性、大湊警備府の提督、大道寺恵(だいどうじ めぐみ)も安心したのか、照れ笑いを浮かべていた。

 

この二人も間宮同様、神原駿の後輩提督であり彼からリングを受け取り力を得た適合者である。

しかし、二人もまたリングの力を得ても深海棲艦と戦うには弱く、栞は趣味の機械工作を生かし『工作艦 明石』として、恵は情報集めが好きな性格のため『軽巡洋艦 大淀』として、艦娘たちをサポートしているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神原『間宮君、明石君、大淀君、もうすぐトラック泊地に着くよ。 大和、準備を頼む』

 

大和「了解です、提督」

 

 

 

神原は操舵室から通信機でデッキに連絡し、それを聞いた大和は操舵室に向かって敬礼をすると、上陸できるよう準備を始めた。

彼女の手には今日の食事会のために用意したバーベキュー用のガスコンロや食材を刺すための鉄串、そして調理するための食材などが見受けられた。

 

 

大和「うふふ…。 今日のために食材の下ごしらえはバッチリだし、これで提督も元気になってくれるかな?」

 

綾波「大和さん、お荷物運ぶの手伝いますよ」

 

大和「ありがとう綾波ちゃん。 それじゃ、こっちの食材を持ってもらっていいかしら?」

 

綾波「はい、了解ですっ!」

 

 

二人は手分けして食事会に使う道具を運び出し、一行はトラック泊地に到着したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「おっ、あそこが例の戦う提督くんのいるトラック泊地ね」

 

 

島に上陸して港からやってきた一行。

先頭を歩く明石が嬉しそうに声を上げて、目的地であるトラック泊地に到着した。

彼女達の前には執務室や食堂がある中央建物があり、右手側には艦娘たちの寝泊りする艦娘寮、左手側に妖精たちの働く工廠が見えており、寮や工廠から聞こえて来るにぎやかな声がなんともアットホームな雰囲気をかもし出していた。

 

 

漣「ありゃっ、お客さんですか?」

 

 

艦娘寮のほうから聞こえてきた声。

やってきたのはトラック泊地所属の艦娘、漣だった。

 

 

綾波「元気そうね、漣。 また会えて嬉しいわ」

 

漣「綾波お姉ちゃんっ!? それに神原さんもっ! どうしたんです、一体…?」

 

 

突然の来訪者に驚きを隠せない漣。

その質問に答えるべく、大和が漣の元へとやってきた。

 

 

大和「実は、私の提案で提督の知り合いと一緒にトラック泊地へ遊びに来たんです。 提督の後輩の方達にも中峰さんを紹介しようと思いまして…」

 

漣「ありゃ~、そうだったんですね…」

 

 

嬉しそうに話す大和とは裏腹にどこかばつが悪そうな様子の漣。

神原は漣の態度に疑問を抱くと、漣にたずねた。

 

 

神原「さっきから何か気まずそうだが、何かあったのかい?」

 

漣「いえ、それがですね~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漣「ご主人様、以前勝手に資材使い込んだ罰として霧島さんに資材集めさせられてるんですよ。 今頃、オリョール海で資材をかき集めてると思います……」

 

 

その言葉に、沈黙が場を支配する。

なにせ、彼らにとってもそんな提督は前代未聞だから……

 

 

明石「艦娘に資材集めさせられる提督って… すごいのか、すごくないのか…」

 

大淀「あ、ある意味すごいじゃないですか!? ほら、そんな提督って今までいませんでしたしっ!」

 

間宮「お食事会… どうしましょう…」

 

大和「て、提督!? お気を確かにっ!!」

 

 

思い思いの心境を話す一同。

神原は大和に励まされる中、帽子で目元を隠しながら静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

神原「中峰君… 強く、生きたまえ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、オリョール海に浮かぶ島。

真っ白な砂浜が広がり鬱蒼とした木々が生い茂るその島で、ウチことトラック泊地の提督中峰正也は腕組をしながらニヤリと微笑んだ。

 

 

正也「ふっふっふっ… 霧島め、今まで散々人をこき使いやがって」

 

正也「だが、天は我に味方した!! ようやく、あいつに一矢報いることが出来るぞ!!」

 

 

ウチは高笑いしながら目の前の物を見る。

そこには…

 

 

正也「どうだ、この資材の量! 燃料・弾薬、優に1000は超えてるだろうなっ!」

 

正也「今からあいつのたまげる顔が目に浮かぶぜ…。 よーし、首洗って待ってろよ霧島―――――!!」

 

 

目の前にはオリョール海でかき集めた燃料入りの小型のドラム缶や弾薬入りの木箱がごろごろと転がっていた。

ウチはいつも海に浮かんでいる資材をかき集めていたが、今回は特に実入りがよくあちこちで資材が大量に見つかって上機嫌なのだ。

なんか、いいように順応させられてしまった気もするが、あえてそこは突っ込まないでおこう。

 

 

ウチは一昔前の泥棒スタイルのように集めた資材を風呂敷に包み背負うと、意気込みながらトラック泊地に戻ろうと着水したときあるものが視界に入る。

 

 

小波がせめぎあう波打ち際。

そこを歩く一人の艦娘の姿を…

 

 

 

 

 

 

艦娘はよたついた足取りで歩いており、手には単装砲とこの海域で見つけたであろうわずかばかりの資材。

目はうつろで口からは微かに何かいっているのが聞こえる。

 

 

艦娘「…待ってて巻雲さん… 今…も…ど……る…」

 

 

その言葉を最後に倒れこむ艦娘。

ウチはあわててその艦娘に駆け寄っていった。

 

 

正也「オイ、大丈夫か!? しっかりしろ!!」

 

 

ウチが声をかけると、艦娘は意識があったのかゆっくりと瞼を開ける。

 

 

艦娘「……誰?」

 

正也「大丈夫か、飲めるか?」

 

 

ウチは持参してきた水筒から水を差し出すと艦娘は一気に水を飲み干し、同じように持ってきたおにぎりを上げると勢いよく食べ始めた。

その姿にウチは驚いていると、艦娘は落ち着いたのかウチを見るとぺこりと頭を下げてきた。

 

 

艦娘「…あの、ありがとうございます。 おかげで助かりました」

 

正也「あ、ああ…。 元気になったようで良かったよ」

 

艦娘「えと、自己紹介まだでしたね。 私は夕雲型一番艦、夕雲といいます」

 

 

夕雲と名乗った艦娘はウチに水筒を返すとやんわりとした笑みを浮かべる。

こっちも夕雲に挨拶しようと自分の名を名乗ろうとした、そのときだった。

 

 

正也「ウチはトラック泊地の提督で…」

 

夕雲「……て、提督っ!?」

 

 

笑顔から急に何かを恐れるような険しい表情になる夕雲。

ウチはどうしたのかと声をかけようとしたが、

 

 

夕雲「も、もう平気です! 夕雲、急いでるのでこれで失礼します!!」

 

正也「何言ってんだ、そんなボロボロの体で! ろくに補給もしてないし、また深海棲艦に襲われたらどうするんだ!?」

 

夕雲「本当に大丈夫ですから、ほっといてください! これだって、別に深海棲艦に襲われたわけじゃないですから!!」

 

正也「なおさらほっとけないよ!! 深海棲艦に襲われたわけじゃないなら、どうしてそんな姿に…!?」

 

 

突然取り乱した夕雲の言葉を聞いて、ウチは「まさか…」と思った。

深海棲艦に襲われたわけでもないのに、補給も入渠もしていない状態。

他に可能性があるとすれば、結論は一つしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕雲、君は…」

 

 

 

「ブラック鎮守府に所属してるんだね…」

 

 

 

 

 

 

 

ウチの言葉を聞いて、夕雲は驚きのあまり目を見開き静かにこちらに顔を向ける。 返事はないが、今の彼女の姿がそれが事実であることを物語っていた。

 

 

 

この世界に来る前、妹から聞いたことがある。

ゲームで新しくドロップした艦娘を使い捨ての駒のように酷使するプレイヤーがいる、と…

そのようなプレイングをする鎮守府を総称して、『ブラック鎮守府』と呼ばれている。

あるときは遠征で使いまわして、用が済んだらそのまま解体。

またあるときは弾除け代わりに随伴艦として出し、轟沈させることもお構いなし。

ゲームとはいえそんな非道なことをする人がいると聞き、ウチも衝撃だった。

 

 

だが、ブラック鎮守府の存在はゲームの中だけではなかった。

今こうして、目の前にそのブラック鎮守府に酷使されている艦娘が目の前にいる。

胸の奥から激しくこみ上げる怒りを抑えていると、夕雲のほうから胸襟を開いてきた。

 

 

夕雲「…はい。 あなたの言うとおりです…」

 

正也「そう、だったのか…」

 

夕雲「妹を…巻雲さんを人質に取られているんです…」

 

正也「…なんだって?」

 

 

 

 

 

夕雲「夕雲はカレー洋で鎮守府の提督と出会い、所属しました。 姉妹艦である巻雲さんもそこにいると聞かされ、はじめはそこへ行くのを楽しみにしていたんです」

 

夕雲「ですが、実際行ってみたらそこは地獄でした。 夕雲達のような駆逐艦は昼夜問わず四六時中資材集めに駆り出され、他の皆さんは戦果を上げるため強引に出撃。 負傷しても無理やり戦わされ、口答えしようものなら即刻他の皆に轟沈処分させられます。 抵抗したくても、すれば自分が轟沈させられるという恐怖と、自らの手で沈めたという罪悪感に苛まされ誰も抵抗できないんです…」

 

夕雲「他の駆逐艦の子たちも恐怖と疲労で衰弱していますが、鳳翔さんと龍驤さんが励ましてくれるおかげでどうにか耐えているんです」

 

 

聞けば聞くほど胸糞悪くなるような話をウチは静かに聞いていた。

艦娘を使い捨ての駒にした挙句、他の仲間に手を下させるなんて…。 これほど、心からふざけるなと叫びたくなったのは初めてだった。

しかし、それ以上の衝撃を与える言葉が夕雲の口から語られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕雲「こうして資材集めをさせられているのは夕雲だけじゃないんです。 睦月さん… 如月さん… 白露さん… そして、潮さん……」

 

 

 

 

 

潮。 その名前を聞いたとき、ウチはそれが初めて聞く名じゃないことに気付いた。

確か、どこかでその名を聞いたような…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「……っ!? そうだっ!!」

 

夕雲「きゃあっ!? ど、どうしたんですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

そう、ウチは潮と言う名を聞いたことがある。

バシー島で、漣が山城に語りかけたときだ……

 

 

 

 

 

『漣もいまだお姉ちゃんたちに会えません。 綾波お姉ちゃんや敷浪お姉ちゃんに妹の潮…』

 

 

 

 

 

潮、綾波型の十番艦で…

 

あいつの…漣の妹の名前だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何の冗談だよくそったれ…!

あいつの妹までブラック鎮守府に囚われているっていうのか!?

 

 

ふざけやがって! ふざけやがって!! ふざけやがって!!!

 

 

ウチの中の堪忍袋がはじけとんだ。

もう、躊躇する理由なんてない!!

 

 

正也「夕雲…!」

 

夕雲「は、はいっ!」

 

正也「ウチを、そのブラック鎮守府に案内してくれ!!」

 

夕雲「えっ…?」

 

正也「さっき話してくれた潮って子は、ウチの仲間漣の妹なんだ。 だから、ウチは助けに行く。 いや、助けたいんだ!!」

 

夕雲「潮さんを、ですか…?」

 

正也「違う…」

 

夕雲「では、巻雲さんを…?」

 

正也「違う…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「ブラック鎮守府にいる艦娘全員だ!!」

 

 

 

 

 

もう、限界だった。

艦娘を道具のように扱うなんて話を聞かされた挙句、あいつの妹もその一人であるなんて事実を知った以上、黙って見ているなんて真似ウチには出来なかった。

相手が深海棲艦だろうが提督だろうが仲間を傷つける奴は許せない…!

霧島、悪いが資材集めはちょっと待ってくれ。

ウチはちょっとよその鎮守府に行って来る。

漣の妹を助けて、艦娘を道具扱いするクソ野郎をブッ飛ばしにな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕雲「…本当に、助けてくれるんですか?」

 

正也「もちろんだっ!! そんな話聞かされて、黙ってられるかよ!!」

 

夕雲「あ、ありがとうございます…!」

 

 

泣き崩れる夕雲の頭をウチは静かになでる。

その姿に、彼女がどれほど辛い思いをしてきたかが痛いほど伝わってきた。

 

 

正也「そういえば、まだウチのほうも自己紹介してなかったな」

 

夕雲「えっ…?」

 

正也「ウチはトラック泊地提督、中峰正也だ。 夕雲、ウチを案内してくれるか?」

 

夕雲「も、もちろんです! 夕雲にできることなら、お手伝いします!」

 

正也「ああ、よろしく頼む」

 

 

そして、ウチは夕雲につれられ彼女の所属する鎮守府に向かっていった。

お互い、大事なものを取り返すために…

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。