艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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いつもながらマイペースに投稿してます。
一応、ピクシブの方でも投稿行ってますのでそっちでも見ていただければありがたいです。
ちなみに、Part2の後はしばらく閑話休題てきな話を出す予定なので、どうぞよろしくです。


第28話 艦娘たちの心の傷

 

 

ショートランド泊地の艦娘寮の食堂。

ウチことトラック泊地提督中峰正也は、ウチの仲間『漣』の姉妹艦である駆逐艦『潮』と、ここで酷使されている艦娘たちを解放すべく駆逐艦『夕雲』と共にブラック鎮守府壊滅のため乗り込んできた。

現在はぼんやりと明かりが照らすこの食堂の椅子に腰掛けている。

向かいにいるのはウチをここに案内してくれた夕雲とその姉妹艦『巻雲』、その隣にここの駆逐艦たちを励ましている軽空母『鳳翔』。 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホンマすまんかった!! アンタ男だったから、てっきりあいつらの仲間かとおもて……」

 

 

 

 

 

いきなりウチを背後から殴りかかった張本人、軽空母『龍驤』が手のひらを合わせながら必死にウチに謝罪していたのであった。

 

 

ウチの周りにいるのはこの4人だけで、ここに幽閉されていたというほかの駆逐艦娘たちは、やはり人間の男であるウチが怖いのか部屋のはじでウチを遠巻きに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「それについてはほんとにもういいって。 ウチは気にしちゃいないよ」

 

鳳翔「ですがだいぶ強く殴られたようですし、やはり傷の手当をしたほうがいいのでは…?」

 

正也「ご心配どうも鳳翔さん。 でも、いつも漣にしばかれてるときと比べたらこれぐらいどうってことないよ」

 

巻雲「夕雲姉さん。 このしれーかんさま、もしかしていつも艦娘にいじめられてるんですか?」

 

夕雲「そんなことはないと思いますよ、巻雲さん…」

 

 

真顔で尋ねる巻雲に、夕雲は苦笑しながら返答する。

まあ、艦娘にしばかれる提督なんて、普通……ていうかまずいないよね。

とはいえ、時間は限られている。 ウチは早速本題を切り出すことにした。

 

 

正也「代わりといっては何だけど、ひとつ聞かせてもらえないか?」

 

鳳翔「っ? 何を聞きたいのですか?」

 

正也「ここにウチの仲間の妹、潮って子がいるって聞いたんだけど、彼女はどこにいるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その問いを投げかけたとたん、急に場の空気が重くなった。

まるで皆答えを口にすることをためらうかのように、急によそよそしくなる。

ウチは周りの雰囲気が変わったことが理解できず、あたりをキョロキョロと見回す。

 

 

正也「えっ、えっと… なんか、まずかったかな…?」

 

 

正面にいる巻雲や龍驤も気まずそうにうつむいている中、鳳翔さんがウチの問いに答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔「……潮さんは、提督の元にいます」

 

正也「な、なんだって!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔「ここでは提督の独断で秘書艦を誰にするか決めているのですが、今日は偶然潮さんに白羽の矢が立ってしまったんです。 私が代わりに秘書艦をすると提督に進言しましたが聞き入れてもらえませんでした…」

 

鳳翔「秘書艦だなんて名ばかりで、実際は提督の憂さ晴らしに暴力をふるわれるだけの役なんです。 そのせいで、ここではあなたのような人間の男性を見るだけで怯える子もいるのです」

 

正也「そ、そんな…」

 

 

鳳翔さんの話を聞いたウチは、隅にいる他の駆逐艦たちに顔を向ける。

あるものはさっきと同じように短い悲鳴をあげ、あるものは頭を抱えながら怯え、またあるものは小声で「ごめんなさいごめんなさい」と何度も囁いていた。

これがブラック鎮守府かよ… これが、ウチと同じ人間のやることかよ…

おのずと、槍を握る手に力がこもる。

ウチは、ふらりと食堂の隅に向かう。 ゆっくりと近づくウチに艦娘たちは恐怖の色を隠せなかった。 隅にまとまり、がたがたと震える彼女達に近づくと、ウチは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「すまんっ!!!!」

 

 

 

 

槍を手放し、その場で土下座した。

 

 

正也「ウチと同じ人間が、皆にこんなひどい仕打ちをしてたなんてちっとも知らなかった。 今までひどい目にあわせて、本当にすまなかった!!」

 

正也「謝って許されることじゃないのは分かってる。 ウチ等人間を憎んでもらっても構わない。 ただ、これだけは信じてほしい…」

 

正也「人間にも艦娘を仲間や家族として大事に思っている者はいるんだ! たとえ人間を嫌いになっても、どうかそれだけは知っておいてほしいんだ…」

 

 

ウチは長い独演の後、再び目の前の艦娘たちに深々と頭を下げる。

向こうから艦娘たちのぼそぼそと話し合う声が聞こえてきたが、ウチはただただ頭を下げることしか出来なかった。

いつまで頭を下げていたか分からないが、突然一人の艦娘がウチに声をかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭を上げてください、しれーかんさま」

 

「巻…雲…?」

 

 

ウチが頭を上げると、そこには膝を折りながらウチの頭をなでる巻雲の姿があった。 彼女の着ている服はサイズが合わないのか腕の裾が長く、裾や着ている服は汚れてボロボロになっている。

だが、そんなことに構わず巻雲は裾越しに手を伸ばしウチの頭をなでていた。

 

 

巻雲「夕雲姉さんから聞きました。 しれーかんさま、夕雲姉さんのこと色々と助けてくれたって」

 

巻雲「夕雲姉さんのために自分のご飯をあげて、夕雲姉さんのために自分の集めた資材を上げて、夕雲姉さんのために自らここの人たちと戦ってくれたんですよね?」

 

巻雲「だから、巻雲はしれーかんさまのこと信じます。 さっきも、しれーかんさまは皆を助けるためにここにきたって夕雲姉さんが言ってましたから、巻雲も夕雲姉さんと一緒にしれーかんさまのお手伝いをします♪」

 

 

そういうと、巻雲はウチに背を向け反対側にいる艦娘達に向かっていった。

 

 

巻雲「皆もひどいじゃないですか! しれーかんさまは皆に意地悪なんかしてないのに、そんなお化けでも見るような目で見たらしれーかんさまがかわいそうです!」

 

正也「いや、巻雲? さすがにそれは、皆が怯えるのも仕方がない事だと思うぞ…」

 

 

巻雲の叱咤にウチは思わず疑問を投げかけるが、その言葉は鳳翔さんの言葉に遮られた。

 

 

鳳翔「確かに、巻雲さんの言う通りかもしれませんね」

 

正也「鳳翔さん…?」

 

鳳翔「皆さん落ち着いてください。 この人は私達を助けに来てくれたんです。 いつも皆に乱暴する人たちとは違うんですよ」

 

鳳翔「それなのに、助けてもらうはずの私たちがこの人の事を悪く思ったらこの人が気の毒じゃないですか」

 

鳳翔「大丈夫、この人は優しい人です。 だから、皆さんもそんなに怯えないであげて、ね?」

 

 

母性溢れる暖かい笑みを浮かべて皆を諭す鳳翔さん。 その説得に納得したのか、諭された艦娘たちはウチに顔を向けると、一人・また一人とウチに向かって「ごめんなさい…」と謝罪の言葉をかけてくれた。 その言葉はさっきの恐怖に怯えたものではなく、心から申し訳ないという誠意のこもったものであった。

ウチは謝ってくれた子達に「気にしないで…」といいながら一人ずつ頭をなでた。

なでられた子は安心してくれたのか、さっきまでのように怯えた表情じゃなくなり、中には笑顔を見せてくれる子もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の駆逐艦の子達を宥め終えると、ウチは足元に転がっていた槍を拾って言った。

 

 

正也「鳳翔さん、龍驤、ここは頼む。 ウチは提督の元に向かう。 潮を助けて、そのクソ野郎をブッ飛ばしてくるよ!」

 

 

無言で頷く二人。 それを確認した後、ウチは懐から無線を取り出し夕雲に手渡す。

 

 

正也「夕雲と巻雲はこれで横須賀鎮守府の神原さんって人にこの事を話してくれ。 ウチの名を出せば分かってくれるから」

 

夕雲「分かりました」

 

巻雲「お任せください、しれーかんさま」

 

 

しっかりと頷き無線を受け取る夕雲と、ビシッと敬礼をする巻雲。

後はウチが提督の下に向かうだけだ。

すぐに食堂を出て廊下に向かおうとしたときだった。

 

 

入り口側のほうから大勢の人の声が聞こえる。

どうやら、他の作業員達がこちらの騒ぎに気付き集まってきてしまったみたいだ。

 

 

正也「やべっ、まだ残ってたのか!?」

 

 

くそっ、このままじゃ鳳翔さんや他の艦娘達の身も危ない…

こうなりゃ、また全力全開で表の連中をブッ飛ばすか…!

 

 

 

 

 

 

鳳翔「…行ってください、中峰さん」

 

正也「鳳翔さん…?」

 

鳳翔「ここは私が食い止めます。 ですから、あなたは潮さんを助けに行ってください」

 

 

そう言った鳳翔さんの手には隣の部屋においてあった艤装の弓が握られている。

 

 

鳳翔「あなたは皆さんを守るために戦っているというのに、何もせず待っているだけなんて私には出来ません。 私もここにいる大事な家族を守るために、あなたと共に戦います」

 

 

決意のこもった瞳でウチを見つめる鳳翔さん。 その姿はまさに大事な我が子を守る母親のそれであり、静かに溢れるその気迫に圧倒されたウチは二の句を告げる事が出来なかった。

そんなウチに、もう一人横から声をかけるものがいた。

 

 

龍驤「まあ、ウチもこんな目に合わされてなんもせんのは性に合わんからなあ。 付き合うで、鳳翔はん」

 

 

もう一人の空母、龍驤もまた自身の艤装であろう巻物片手に、鳳翔さんと共に食堂の出入り口のほうへと向かっていった。

二人はお互い顔を見合わせると、鳳翔さんが部屋全体に聞こえるように声を張り上げた。

 

 

鳳翔「夕雲さんと巻雲さんは中峰さんの知り合いの方に連絡を、他の皆さんは隣の部屋に装備が置いてありますから、それを使って上の階に囚われている子達を解放してあげてください!」

 

 

凛とした鳳翔さんの掛け声に、他の艦娘たちも意を決したようにお互い頷きあい、一丸となって隣の部屋へと向かっていった。 すごいな、鳳翔さんは。

ここはもう心配ないだろう。 ウチは、ウチの成すべき事を成さなくちゃな!!

 

 

夕雲「あっ、中峰さん!?」

 

巻雲「どこ行くんです、しれーかんさま!?」

 

 

ウチは入り口とは別方向、上の階に上がる階段を駆け上がっていった。

2階に上がりすぐ上、3階に上がりそのまた上、そして上の小部屋の扉を開け、ウチは艦娘寮の屋上にやってきた。

 

 

正也「やっぱり、ここも同じだったか」

 

 

屋上からウチの見つめる先、艦娘寮の隣は数メートルの距離を置いて中央建物の端に面していた。

 

 

夕雲「中峰さん、何で急にこちらに来たんですか?」

 

巻雲「こっちは行き止まりですよ? 早く別の出口を探したほうがいいんじゃないですか?」

 

 

背後から聞こえる声、夕雲と巻雲の二人は突然屋上に駆けあがっていったウチを追って、ここに来たようだ。

 

 

正也「いや、こっちでいいんだ」

 

 

ウチはそう言って、中央建物のを指差す。

そこはほとんどが壁になっている中、廊下に当たる部分には窓ガラスが張ってあった。

いまいちウチの言っている事が理解できない、といった様子で夕雲と巻き雲は首をかしげる。

対するウチはなぜこっちに来たのか、その理由を行動で示した。

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオン

 

 

 

 

 

ウチは中央建物の窓ガラスを狙って砲撃。

砲弾は狙い通りの場所に命中、窓ガラスは爆風で派手に割れぽっかりと穴を開けたのだ。

窓が割れた事を確認したウチは、数歩下がった後全速力で屋上を駆け抜ける。

 

 

夕雲「ま、まさかっ!?」

 

 

夕雲が何をしようとしたか気づくのと同時に、ウチはその事を実行に移した。

ウチは屋上の手すりに足を乗せると、勢いに任せ跳躍。 そのまま真っ直ぐに先ほど開けた窓へと飛び移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「うりゃああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

弧を描くようにウチは屋上の端から中央建物へと跳び、間一髪で窓から中央建物に突入、勢いのまま廊下を転げまわったのであった。

 

 

正也「イチチ…。 さすがに無茶しすぎたかな? まあ、これでショートカットできたしよしとするか」

 

 

ウチは傷だらけの体を起こすと、目的の場所。 提督と潮がいるであろう執務室へと向かうため駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上に残された二人、夕雲と巻雲はあまりの出来事に唖然となっていた。

 

 

巻雲「す、すごいですしれーかんさま。 こんなこと巻雲たちのような艦娘でもやりませんよ」

 

 

素直に関心の言葉を漏らす巻雲。

対する夕雲は、自身の成すべき事を成すため無線機を操作し始めていた。

 

 

夕雲「確かにすごいですけど、感心している場合じゃないです巻雲さん。 こちらも、やるべきことをやらないと…!」

 

 

そう言うと、夕雲は無線を耳にあて誰か応答しないか必死に耳を傾けた。

 

 

(お願い、つながって!!)

 

 

ノイズしか聞こえない無線に一筋の希望を託しながら、彼女は心の中で祈り続けるのであった。

 

 

 

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