艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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今回でまたしても新キャラ登場です。

自分にとって、主人公である中峰正也は気付かぬうちにヒロイン達とフラグを立てて行く、あるいみ少年漫画やラブコメの主人公的なキャラで出したかったので、これからもバカ正直でニブチンな彼を書いていきたいです。


第37話 中峰正也は人気者

 

 

正也「バックステッポゥ!!」

 

 

ウチが大きく後ろに跳躍した瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

ウチのいた場所目掛けて主砲から放たれた砲弾が被弾、周囲に黒煙と熱風を撒き散らした。

 

 

正也「あ、あっぶねえ…。 危うく直撃する所だった、このままじゃマジでヤバイな」

 

金剛「テートクー! そう思うなら、おとなしく私に捕まってくだサーイ!!」

 

 

ウチ目掛けて主砲を放った張本人、戦艦金剛はこちらに向かって大きく右手を振り上げてきた。

 

 

正也「だが断るっ!! ウチにも男としてのプライドってものがあるんだからな!!」

 

加賀「そうよ金剛さん。 提督はあなたにつかまるわけには行かないのよ」

 

正也「おおっ! 分かってくれるか加賀さ…」

 

加賀「だって、提督を連れて行くのは私ですから…」

 

正也「あっ… これ絶対分かってない奴だわ……」

 

 

ウチは踵を返すと急いでその場から立ち去る。

このままではあの二人のどちらかの部屋で一夜を明かさなくてはならない。

そうならないようにするためにも、ウチは今ここで捕まるわけには行かないのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある朝の提督執務室。

 

ウチことトラック泊地提督中峰正也は、誰もいない部屋でひとり自分の艤装である槍を取り回し、戦闘の練習をしていた。

 

 

正也「ほっ! ふんっ! てやー!」

 

 

槍を回転させてなぎ払う、一気に突き出して刺突、さらに穂先を敵に向けすばやく砲撃する練習もした。

一通りの練習メニューをこなしたウチは、汗をぬぐい穂先を下にした状態で槍を下ろす。

 

 

正也「ふいー、朝の練習メニュー終了っと。 今日は天気も調子もいいし、いい一日になりそうだな」

 

 

ウチがそういって槍の穂先を床につけた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室の中心、ウチのすぐそばで槍に入っていた砲弾が衝撃で暴発し派手に爆炎を撒き散らす。

煙が晴れた後の執務室は中心から大きく床がえぐれ、窓ガラスはほとんどが割れて、ウチは暴発した槍を持ったまま黒焦げの状態で呆然としていた。

 

 

正也「…ああ、今日は良い一日になりそうだったな」

 

 

ほぼ半壊した執務室の中心で、ウチは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漣「…それで、執務室がこんな状態になってるんですね、ご主人様」

 

霧島「本当に毎度毎度よくこんな騒動を起こせますね、司令は…」

 

正也「うぐぐ…」

 

 

黒焦げになった執務室で、ウチは漣と霧島に呆れ顔を向けられる。

周りには、部屋の修理のため家具職人の妖精たちが甲斐甲斐しく働いており、現在廃墟と化した部屋の瓦礫を撤去している最中だった。

妖精達曰く、執務室の修理には数日かかるとの事でウチはそれまでどこで執務をするか考えるため、他の皆を呼んで話し合っていた。

 

 

漣「それにしても困りましたね。 この建物空き部屋とか余分な部屋はありませんし、資料庫や食堂で執務って訳にもいきませんしね」

 

正也「うーむ、そうだよな…。 やっぱりここが使えない以上私室を使うのが妥当か」

 

 

ウチがそう結論付けようとしたとき、

 

 

鳥海「すみません、司令官さんっ!!」

 

 

突然ウチの後ろにいた鳥海が勢いよく頭を下げながら謝ってきた。

 

 

正也「うおっ!? どうした鳥海?」

 

鳥海「実はその…。 以前司令官さんを私室まで追いかけたとき、勢いで私室に砲撃してしまって…。 それで、部屋をボロボロにしてしまったんです…」

 

 

あ… そういえばそんなことがあったな…

確かに、以前ウチが鳥海と霧島に追われたとき私室に逃げ込んで、そのまま派手に砲撃された覚えがあるな… (前作『トラック泊地の中心で』参照)

ウチも普段は執務室で寝泊りして、私室はほとんど使ってないからすっかり忘れてたな。 てか…、

 

 

正也「きーりーしーまー?」

 

霧島「あ、あはは…。 その…、一応…あの時は司令にも非があった…と言うべきかと…」

 

正也「…ごめんなさいは?」

 

霧島「……。 ご、ごめんなさい…」

 

正也「よろしい。 さて、それじゃ私室も使えないとなるとどうするかな…?」

 

 

ウチはため息混じりに何か他に案がないか頭をひねっていると、横からウチに声を駆ける艦娘の姿があった。

 

 

那珂「任せて提督さん。 那珂ちゃんにいいアイデアがあるよ!」

 

正也「どうした那珂ちゃん、これまたやけにテンションがハイだけど…?」

 

 

無駄に高いテンションでウチに話しかけてきたこの艦隊の古株、軽巡洋艦『那珂』は右手をピンと上げながらいいアイデアがあると宣言してきた。

 

 

那珂「提督さんは宿泊する部屋がなくて困っている。 そうだよね?」

 

正也「どっちかというと執務する部屋だな。 寝泊りするだけなら工廠や資材置き場でも大丈夫だけど」

 

 

ウチは何気なく呟いたが、その発言について看過できない者が数名。

 

 

金剛「ノー! 提督がそんな場所で寝泊りするなんて断じて見過ごせまセーン! それなら、ぜひ私の部屋に来てくださいネー!!」

 

雷「司令官、泊まるなら私達のところはどう? 司令官の身の回りのこと、全部私がみてあげるわ♪」

 

扶桑「あの、提督。 よろしければ私の部屋はいかがでしょうか? 静かで窓の外からの景色もいいので、執務をするには良いかと…」

 

正也「お、落ち着いてくれ皆。 そんないっぺんにすすめられても決められんて…!」

 

 

金剛を筆頭に、我も我もと自分の部屋を推薦してくる艦娘たち。

皆の好意はありがたいのだが、彼女達が生活している場は艦娘寮。 いわば女子寮だ。

そこへ提督とは言え男であるウチが行くのは色々と問題が生じるだろう。

ウチもここトラック泊地で生活してしばらく経つが、艦娘寮には一度も立ち入ったことがない。 臨時とはいえ、やはりウチが艦娘寮に行くのはまずいと思うのだ。

 

 

那珂「心配しないで提督さん。 那珂ちゃんの考えたアイデアは、そんな皆の要望にも公平な形でこたえられる素晴らしいものだから!」

 

正也「そこまで言うとは頼もしいな。 それで、そのアイデアってのは一体何なんだ?」

 

 

自身満々に話す那珂ちゃんに、ウチもどんなアイデアなのか思わず期待してしまう。

そして、彼女は皆のいるほうにドヤ顔を向けると声高々に発表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

那珂「第一回! 提督さん争奪鬼ごっこ、始まるよ――――!!」

 

 

 

 

正也「………へっ?」

 

 

ウチ…? 争奪…? 鬼ごっこ…?

ちょっと何言ってるか分かりませんね……

 

 

 

 

 

 

那珂「ルールは簡単、提督さんを一番最初に捕まえる、それだけ。 捕まえた人の部屋を提督さんの臨時執務室として使ってもらうの。 これなら提督さんも泊まる部屋が出来るし、皆も公平に決められる。 いいアイデアでしょ、提督さん♪」

 

正也「意義ありっ!」

 

 

いいわけねーだろ!?

那珂ちゃんの突拍子もないアイデアに、ウチは思わず右手を高々と上げて叫ぶ。

 

 

正也「ちょっとまて、なんでそうなる!? 大体、そんなことしてまでウチを泊めたがる奴なんているわけが…」

 

 

ウチがそう言おうとした背後で、突如大いに盛り上がる声。

後ろを振り返ると、そこには俄然やる気を見せる皆の姿があった。

 

 

金剛「OH♪ それはGood ideaデース!!」

 

鳥海「さ、最初に捕まえられれば司令官さんが…。 これは計算のし甲斐があります!!」

 

陽炎「提督、雪風が来て欲しいっていってるから、私が真っ先に捕まえるわ♪」

 

雪風「あれ? 確かに雪風、しれえに来てほしいですけどお姉ちゃんにその事言いましたっけ?」

 

陽炎「しーっ! それは言わないで…!!」

 

 

 

 

 

 

正也「あるぇ~? 何で皆さんそんなに盛り上がっているんですか……?」

 

 

これ以上ないほどの温度差を感じながら、ウチは遠い目で皆を見ている。

だが、そんな悠長なことを思っている場合ではなかった。

一斉に、皆の目がウチに向けられる。 その目は完全に獲物を刈る狩人の目だった。

本能がヤバイ!と警告した瞬間、ウチは真っ先に執務室の窓から外に脱出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「はあ… はあ… マジでどうしてこうなったの…」

 

 

執務室の窓、建物の三階から脱出して痺れる足を引きずりながらウチは外の広場を進んでいく。

艦隊の面々が増えたせいか、最近ウチには女難の相がある気がするな…

 

なんて、のんきに考える暇もなく災難は畳み掛ける。

 

 

 

 

 

『Burning Love!!』という掛け声と共に背後から聞こえる風切音。

 

それが何を意味しているか気付いた瞬間、ウチは勢いよく後ろに跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

 

正也「ぜぇ… ぜぇ… どうにかあいつら撒いたみたいだな」

 

 

ウチは息を切らせながらその場にへたり込む。

現在、ウチは広場を全力で駆け抜け港に来ていた。

背後からウチを呼ぶ声が聞こえない所を見ると、どうやらうまく逃げることができたみたいだ。

とはいえ、ウチを探している相手に、あの正規空母である加賀さんもいたんだ。

上からの見晴らしが良いここでは、彼女の持つ艦載機に見つかるリスクが高い。

ウチは近くの木の影に入ると、一息つきながら彼女がここへ来たいきさつを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正規空母『加賀』。

ゲームでは一航戦の赤城と共に登場する彼女がなぜここに来たか、元をたどると少し長くなる。 

 

実は、彼女もまたウチが壊滅させたあのブラック鎮守府の所属だったからだ。

 

彼女は他の艦娘同様に酷使され、そんな苛酷な環境で他の娘たちを沈ませまいと誰よりも果敢に戦っていた。

しかし、皮肉なことにその行動が提督の目に留まり、彼女はより敵の強い海域へと強引に駆り出されていた。

 

『艦隊の仲間を沈ませたくなかったら、お前が誰よりも敵を倒すんだ』

 

そう脅迫されながら、彼女は我武者羅に戦っていた。

ただ戦果を上げるための道具として利用された彼女だったが、ブラック鎮守府壊滅に伴い間宮さんが提督を務める舞鶴鎮守府へと配属。 そこで間宮さんや秘書艦の綾波の世話になり、肉体的・精神的にだいぶ回復することができた。

 

 

そして、ある日の事だった。

 

彼女は間宮さんにこう申し出てきた。

 

 

『私たちを助けてくれたトラック泊地の提督に会わせてほしい』 と…

 

 

直接お礼が言いたいのか…?

間宮さんはそう思って彼女をウチのいるトラック泊地まで連れていくことにした。

ウチも間宮さんから彼女の事を聞き会いに行くと、彼女は開口一番こう言ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私をここに置いてください! 必ずお役に立ちます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女がここに来た理由。

それは自分を助けてくれた恩人へお礼をするため、ウチがいるトラック泊地へ置いてほしいというものだった。

 

これにはウチや間宮さんも驚きを隠せなかった。

ウチに向かって必死に頭をたれながら懇願する彼女の姿に、こちらも頭を上げてくれと頼み込んでしまった。

そのときの彼女の表情はクールながらも、目は真っ直ぐにこちらを見つめており有無を言わさぬ気迫さえ感じられた。

さすがにアレだけ真摯に頼み込まれちゃ、ウチも断ることはできない。

こういった経緯があって、間宮さんから了承を得た後、彼女はウチの艦隊に加わることとなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「さて、一体どこに逃げるかな…?」

 

 

ウチは頭をがしがし掻きながらこれからの行動を画策する。

中央建物はさっき逃げてきたばかりだから戻れないし、他にどこに逃げるか…

ゆったりと流れる雲を見上げながら、一人木の幹に寄りかかっていると、

 

 

「てーとく、てーとく!」

 

 

突然ウチを呼ぶ声にあわててあたりを見渡す。

すると、

 

 

ゴーヤ「てーとく、こっちでち!」

 

イク「提督、早く来るのー!」

 

正也「ゴーヤ、イク。 どうした、二人とも…」

 

 

堤防の先、そこには手招きしながらウチを呼ぶ潜水艦の艦娘、ゴーヤとイクの姿があった。

ウチが二人の元にやってくると、ゴーヤは興奮気味に話す。

 

 

ゴーヤ「てーとく、向こうにゴーヤたちが遊び場にしてる海岸があるから、そこに逃げるといいよ!」

 

イク「イク達しか知らない秘密の場所だから、身を隠すにはうってつけなの。 早速イクのー!」

 

 

その言葉と共にゴーヤとイクの二人はウチに手を差し出す。 ウチの手を引いて案内するということか?

とはいえ、二人の申し出はありがたい。

ウチはゴーヤの手を掴もうと差し出し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして即座に引っ込めた。

 

 

どうして手を引っ込めたの? という疑問を顔に浮かべるゴーヤとイク。

同時に、その表情には何かに失敗した… という落胆の色も伺えた。

 

 

正也「あ、危ねえ…。 あやうく、お前達に『捕まる』ところだった…」

 

 

那珂ちゃんの考えた鬼ごっこは、一番最初にウチを捕まえたものが勝ちとなる。

しかし、その捕まえ方に規定は決まっていない。

つまり考えようによっては、さっきのようにウチの手を掴むだけでも『捕まえた』ことになる。

おそらく、二人の狙いはウチを案内するフリをして、こうして自然な形で捕まえようとしていたんだ。

ウチもそのことに気付くのが一瞬遅かったら、今夜にはこの二人の抱き枕と化していたろう…

 

 

ゴーヤ「むう、気付かれたでちか…」

 

イク「もうちょっとだったのに、残念なのー…」

 

 

どうやらウチの予想は外れていなかったようだ。

二人は作戦に失敗したと分かった途端、今度はウチ目掛けて飛び掛ってきた。

 

 

ゴーヤ「こうなったら力づくで捕まえるでちよ!!」

 

イク「提督、覚悟するのー!!」

 

正也「くっ、結局こうなるのか!!」

 

 

ウチは飛び掛ってきた二人を避けるべく横に飛び跳ねる。

堤防から跳び下り下の海に着水すると、急いでその場から離れようと海面を駆ける。

だが、すぐ後ろからもゴーヤとイクがこちらに泳いで追ってくる。 潜水艦にとって海中はまさにあいつらのフィールド、文字通り水を得た魚のように猛スピードでこちらとの距離をつめてきていた。

 

 

正也「んが―――!! 捕まってたまるか―――!!」

 

 

ウチは槍の穂先を海面に突っ込むと、二人の周囲を円を描くようにぐるぐる回り始める。

ゴーヤとイクはどういうことか、と疑問に感じていたがその理由はすぐに身をもって知ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

ゴーヤ「う、うわわっ!?」

 

イク「か、海面がグルグルしてるのっ!?」

 

 

ウチが回っている内側。 そこには二人を巻き込む形で渦潮ができ始めていた。 

狙い通り、二人はウチが作り出した渦潮に巻き込まれグルグルと回される。 もちろんウチを追ってくる所ではなかった。

ゴーヤとイクが渦潮で目を回しているうちに、急いでこっちは陸地に戻ってきた。

 

 

正也「まずいな。 港も逃げられないし、後ほかに逃げられる場所といえば…」

 

正也「…あそこぐらいか」

 

 

とっさに思いついた場所。 ウチは港から陸地に上がると、急いでその場所へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「うーむ… 誰もいないよな?」

 

 

目的地の一歩手前まで来たウチは、近くの茂みの影からほかに誰もいないか確認していた。

 

 

ウチが向かった目的地、工廠では妖精達の姿がちらほら見えるだけで、艦娘の姿はない。

もっとも、工廠の妖精も艦娘に買収されているという可能性もあるが、正直他に逃げ場もなかったのでウチはなるべく自然に妖精たちに挨拶しながら工廠へと向かった。

 

 

正也「や、やあ。 おはようさん」

 

妖精1「あっ、提督さん。 おはようございま~す♪」

 

妖精2「さっき、艦娘さんたち提督さんのこと探し回ってましたよ~。 なにかあったんですか~?」

 

正也「いや、なんでもないよ…。 とりあえず、このへんに誰か艦娘は来ているのか?」

 

 

ぎこちない様子で恐々とたずねるウチに、妖精は首を横に振って答えた。

 

 

妖精1「いいえ。 艦娘さんは来ましたけど、『ここに提督さんは来てないよ』っていったらすぐここを去っていきました」

 

妖精2「なんだか艦娘さんたち、必死というかとっても怖い顔してました~。 提督さん、あんまり艦娘さんの事困らせないであげてくださいね~」

 

正也「ああ、分かった。 肝に銘じておくよ…」

 

 

むしろウチがあいつらに困らされているのだが…

 

会話の後、二人の妖精に手を振りながら見送られ、ウチはすぐ工廠の建物裏に隠れた。

ここは日陰ができているうえ、島の端に当たる部分なので陸地からはもちろん空からでも意外と見つかりにくい。

ひとまず、ここに身を隠してどうにか打開策を考えよう。

そう思い、腰を下ろして一息つこうとしたそのときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました、提督」

 

 

ウチの耳に届いた抑揚のないクールな声。

あわてて声のしたほうを振り向くと、そこには艤装である弓を手にした加賀さんの姿があった。

 

 

正也「か、加賀さん…? どうやってここを見つけたの。 艦載機の音はしなかったけど…」

 

加賀「少し私なりに推理してみただけです」

 

 

 

加賀「先ほどあなたが逃げてきた中央建物は、他の艦娘がいるからまず戻ってくることはない。 同じ理由で艦娘寮も論外です。 あなたの艦隊には潜水艦の艦娘がいたので、その子たちが港で網を張っていることも予想していました。 海に面した港は彼女達にとっては絶好のフィールドですからね。 それで、港に向かわない・もしくは逃げ切ったとして、残った隠れ場所といえば工廠と入渠ドックのあるここしか考えられないと思い、待っていたのです」

 

正也「…その推理だとウチが港に逃げたとして、そこでゴーヤたちに捕まるとは思わなかったのか?」

 

加賀「…信じていましたから。 あのブラック鎮守府をたった一人で壊滅させるような人が、そう簡単に捕まるはずがないと…」

 

正也「わー… ウチ信用されてるんだなー…」

 

 

会って間もない加賀さんからの信頼度の高さに、思わず棒読みになるウチ。

だがそんなのん気なこと言ってる場合じゃない。 どうにか彼女に思いとどまるよう説得せねば!

 

 

正也「ちょっと待ってくれ。 加賀さんはあの有名な一航戦の正規空母でしょ? その加賀さんが男を部屋に連れ込もうなんてあったら、一航戦の名が泣くよ!?」

 

加賀「お気遣いどうも。 ですが、私も考えを改めるつもりはありません」

 

加賀「『自分に嘘をつくな』 あなたがこの艦隊の子たちに教えてくれたことですよね? 私は自ら望んでここへ来ました。 ですから、私は最後まで私の意志を貫こうと思います」

 

正也「そこまでしてお礼したいのか…。 いや、加賀さんの義理堅さには恐れ入るよ」

 

加賀「……。 義理ではなく、私がそうしたくてやってるだけなのですけど…」

 

正也「えっ、今何か言った…?」

 

加賀「なんでもありません。 さあ、おとなしく捕まってください提督。 悪いようにはしませんから」

 

正也「説得は駄目か…。 だが、ウチも素直に捕まるつもりはないぞ!」

 

加賀「なら、手荒になりますがおとなしくしてもらいます!」

 

 

脱兎のごとくその場を離れるウチの背中むけて、加賀さんは弓を構え自身の艦載機を放つ。

負けじとウチも背中越しに飛んでくる艦載機を槍で叩き落しながら逃げ回る。

一進一退の攻防。 加賀さんは艦載機を放つため動くことができないが、こっちも迫り来る艦載機を叩き落さなくてはならないので、ここから離れることができない。

 

 

加賀「人間でありながら、艦娘の私にここまで張り合うなんて… やはり、あなた只者ではありませんね!」

 

正也「褒め言葉として受け取っておくよ! まあ、たった一人でこれだけの艦載機を飛ばせる加賀さんもさすがだけどね!」

 

加賀「提督こそお褒めの言葉ありがとうございます。 お礼もかねて、私の部屋に来ていただけないでしょうか?」

 

正也「ノーセンキューだ! ちゃっかり引き込もうとするな!!」

 

 

背後を狙ってきた艦載機を槍を振り回してなぎ払う。

すこしずつだが、確実に加賀さんから離れることができてる。 もうすこし… もうすこしだ… 

あと少しで建物の端側まで到着する。 ウチがそう確信したとき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛「ヘーイ、テートクー♪ 見つけましたヨー!」

 

 

ちょうどウチが逃げようとしていた建物の端から身を乗り出す金剛。

同時に、金剛を視界に入れた加賀さんは一瞬表情を険しくすると、

 

 

加賀「…っ!? 邪魔しないで!」

 

 

即座に金剛目掛け艦載機を放った。

しかし、金剛も加賀に気付くと、

 

 

金剛「それはこっちの台詞デース!」

 

 

背中の艤装から主砲を撃ちだした。

お互い向かいの相手を狙って飛来する砲弾と艦載機。

ウチは上を見上げると、力いっぱい跳躍し、

 

 

正也「うおりゃ―――――――――!!」

 

 

二人の放った砲弾と艦載機を同時に叩き落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「いい加減にしろ二人とも! ウチはこんなことをさせるためにお前達を助けたんじゃないんだぞ!!」

 

 

いくらなんでも仲間内で争うなんて真似、さすがにウチも看過できなかった。

息を切らせながら、ウチは金剛と加賀さんを睨みつけるが、

 

 

金剛「どいてくださいテートク! テートクのパートナーにどちらがふさわしいか、その女に分からせてやるネー!!」

 

加賀「一航戦の誇りにかけて、ここは譲れません。 下がってください提督!」

 

 

金剛と加賀さんは完全にヒートアップしており、全く引くつもりはない。

二人のこの態度には、さすがにウチもブチ切れた。

 

 

正也「上等だこの野郎…。 だったら…」

 

 

ウチは槍を構えなおすと、一気に金剛目掛け突撃する。

 

 

正也「二人まとめてぶっ叩く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀さんを狙って放った金剛の砲撃を、ウチは槍から砲弾を撃って破壊する。

そのまま金剛の目の前まで接近し、背後に回りこむように跳躍。

槍を弧を描くように勢いよく振り回し、ウチは背中の艤装ごと金剛を地面に叩きつけた。

 

 

加賀「提督、危ないっ!」

 

 

ウチが地面に着地すると同時に聞こえた加賀さんの警告。

振り向くと、加賀さんが金剛を狙ってはなった艦載機がウチ目掛けて飛来してきた。

だが、ウチはあわてる様子もなく…

 

 

正也「大丈夫だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀さんが警告を発した直後、彼女の背後から砲弾が飛来。

砲弾は加賀さんの艦載機を正確に撃ち抜いていく。

突然の出来事に一瞬何が起きたのか理解できず動揺する。

しかし、砲弾が自分の背後から飛んできたことに気付いた彼女はあわてて後ろを振り向こうとし、

 

 

加賀「かっ…!?」

 

 

そのまま一気に接近してきたウチに気付かず、鳩尾に深々と拳を打ち込まれたのであった。

 

 

 

工廠裏の建物で気を失い倒れこむ金剛と加賀さん。

ウチは二人を交互に見回しながら言う。

 

 

正也「二人ともこれに懲りたらもうこんな真似はしないように。 まあ、今回はウチが原因でもあるから、監視役付きで二人のとこにも行くよ。 スマンがそれで勘弁してくれ」

 

 

金剛の脇に落ちていた槍を拾い上げると、ウチの元に加賀さんの艦載機を撃ち落とした張本人が声を掛けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漣「大丈夫でしたか、ご主人様?」

 

正也「ああ。 フォローしてくれてありがとな、漣」

 

 

騒動を聞きつけ駆けつけてきてくれた艦娘、漣にウチはお礼の言葉をかける。

 

 

漣「それにしてもご主人様ってなんやかんや言って人気者ですよね。 こうして金剛さんと加賀さんの二人に取り合いされるんですから」

 

正也「…普通こういうのって、一人の女をめぐって二人の男が取り合うっていうのが普通じゃないか?」

 

漣「はいはい、細かいことは気にしない。 それより、また他の子が来たら大変ですから、すぐここを離れましょう?」

 

正也「おっ、そうだな」

 

 

確かに漣の言うとおりだ。

二人はしばらくすれば意識を取り戻すだろうし、ここは漣の言うとおり急いで離れたほうがいいな。

ウチはこちらに向かって手を差し出してくる漣の手を取ろうとして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕雲「漣さん? 抜け駆けとは感心しませんね…」

 

 

漣の背後でにっこり微笑む夕雲の姿に、思わず手を止めてしまった。

 

 

漣「嫌ですね~、抜け駆けとか何のことですか?」

 

夕雲「あなたもゴーヤさんたちと同じことを考えていたんでしょう? 提督と付き合いの長いあなたなら、普通に手を握っても気付かれませんから」

 

 

夕雲の言葉に、ウチは「あっ!」と言って思い出す。

 

そうだった、そういえば鬼ごっこはまだ継続中だった。

いくら漣でも、手を握られていたらそれは『捕まった』ことになる。

付き合いの長いこいつだからと完全に油断していた。 ってか、こいつまでウチを泊めようともくろんでいたのか?

 

 

球磨「提督ー! そこにいたかクマー!!」

 

鳥海「司令官さん! ぜひ私達の部屋に…!」

 

羽黒「あ、あの…! 私も、その…!」

 

 

夕雲を筆頭に、ウチを捕まえようとこちらに向かってくる面々。

ウチは気付くと、全力で皆のいるほうとは反対方向にむかって駆け出していた。

 

 

 

 

 

 

正也「うおわー! なんでこうなるんじゃ―――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ウチは皆に追われトラック泊地中を延々と逃げ回り、最終的に事情を知らない工廠長の妖精に『何かあったの?』と服の裾をつかまれたことで、工廠で寝泊りすることに決定。

こうして、那珂ちゃん考案『第一回! 提督さん争奪鬼ごっこ』は幕を閉じたのであった。

 

 

 

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