艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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続き、投稿させていただきました。


あいもかわらず中二要素の強いこの話ですが、これからも続きを書いていきたいです。





第41話 今の私にできること

 

 

漣の知っているその人は、普段は明るく楽しい人でした。

 

たまに勝手に建造して大事な資材を使ったり、めちゃくちゃなことをして建物や部屋を破壊しては秘書艦によく怒られたりもします。

 

それでも、艦隊の仲間や仲間の姉妹艦が危険なときは、あの人はその身を挺して助けてくれました。

 

だからこそ、漣たちはこのトラック泊地の提督であるご主人様を慕ってここまでついてきました。

 

でも、漣たちは大事なことを知らなかったのです。

 

自分達が慕う人のことを…

 

ご主人様のことを…

 

漣たちは、何も知らなかったのです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「タウイタウイ泊地の提督と呼ばれた男、中峰幸仁は………ウチの、兄ちゃんなんだ!!」

 

 

初めて聞いた、ご主人様の家族のこと。

でも、それはあまりに衝撃的な事実でした。

 

 

漣「タウイタウイ泊地の提督が…ご主人様のお兄さんが拉致されたって…!?」

 

 

突然トラック泊地に助けを求めてやってきた艦娘、叢雲さんと利根さんから聞かされた事実。

それはタウイタウイ泊地の提督であり、ご主人様のお兄さんである人が深海棲艦に拉致されたということでした。

 

 

正也「そんな… そんなこと… あるはずが… あるはずが…!」

 

 

ご主人様は頭を抱え込みながら、まるで壊れたラジオのように同じ台詞を繰り返していました。

その姿は、いつもの… 漣たちの知ってるご主人様の様子は微塵もなく、まるで別人を見ているかのような錯角さえ感じられました。

 

 

響「しっかりして司令官、落ち着くんだ!」

 

鳥海「司令官さん、お兄さんが連れ去られてショックなのは分かります。 でも、ここはまず落ち着いてどうするか考え…」

 

 

響と鳥海さんはご主人様を宥めるべく、肩を優しくたたきながら落ち着くよう言い聞かせていました。

その効果があったのか、ご主人様は二人の言葉を聞くと同じ台詞を繰り返すことをやめて黙り込みました。

落ち着いてくれた。 そう思ったとき…

 

 

正也「…違う」

 

 

再び喋りだすご主人様。

でも、その言葉はさっきとは違ったものでした。

 

 

正也「違う… 違うんだ… そうじゃないんだ…」

 

響「司令官? それは、どういう…」

 

正也「…はずがないんだ……」

 

鳥海「…えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…いるはずがないんだ。 兄ちゃんがここに……この世界にいるはずがないんだよっ!!」

 

 

ご主人様は喉の奥から搾り出すように叫び声を上げました。

それから先はもう滅茶苦茶でした。

まるで気が狂ったかのように、ご主人様は悲鳴を上げたまま頭をかきむしり、響や鳥海さんの声も全く聞こえていません。

突きつけられた事実をよほど受け入れたくないのか、ご主人様はひたすら「いるはずがない! いるはずがない!」と同じ言葉を繰り返していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、漣にはどうすればいいか分かりませんでした。

 

今、目の前にいるのは漣の知っているご主人様じゃありません。

 

いつもバカなことをやりながらも、皆から慕われるご主人様じゃありません。

 

漣たちのために誰よりも必死に戦ってくれるご主人様じゃありません。

 

今、目の前にいるのは明かされた事実を必死に否定しようとしてるただの一人の人間でした。

 

どうすれば、ご主人様は帰ってきてくれるのでしょうか。

 

どうすれば、あの人にまた会えるのでしょうか。

 

漣が、「お兄さんなら大丈夫。 だから、落ち着いて」と言えばご主人様は戻ってくるのでしょうか。

 

いえ、響や鳥海さんがあれだけ宥めても駄目だったんです。

 

漣がそんな気休めをかけたって、ご主人様は戻ってきません。

 

それじゃ、漣は一体何ができるのでしょうか。

 

ご主人様のために… あの人のために… 漣がしてやれることは何でしょうか。

 

響たちじゃできない、漣にしてやれること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あった。

まだあったんだ。

漣がご主人様にしてやれること。 響たちじゃできない、漣だけができること。

 

 

漣は意を決して立ち上がり、混乱しているご主人様の元にやってきました。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漣「いい加減にしろ、このバカ提督っ!!」

 

 

思いっきりご主人様をど突いてやったのです。

 

ご主人様は殴られた衝撃で壁に叩きつけられおとなしくなり、漣は肩で息を切らせながら叫びました。

 

 

漣「提督の家族が大変なことになってるのは分かったよ。 でも、だからこそ提督が気を強く持たなきゃ駄目でしょ! 今提督の家族を助けられるのはここにいる提督と漣たちだけなんだよ!? 艦隊を指揮する提督が、漣たちの提督であるあなたがしっかりしなきゃ、誰があなたのお兄さんを助けるのさ!!」

 

 

漣は言いました。 言いたいことを。 言うべきことを。

 

漣はご主人様を慰めることも、励ます方法も分かりません。

漣にできることは、こうしていつものようにご主人様を叱咤することだけでした。

ご主人様は壁に寄りかかったままピクリとも動きませんでした。 漣の声が届いたかどうかは分かりません。

 

 

雪風「さ、漣さん… いくらなんでも、そんな事いったらしれえがかわいそうです…」

 

加賀「貴方の言い分は分からなくもないけど、さすがにこれはやりすぎよ。 上官である提督を殴り飛ばすなんて、下手したらあなた解体処分も免れないわよ」

 

 

漣のやり方を見かねたのか、雪風と加賀さんが漣を止めようと駆けつけてきました。

加賀さんは漣の肩を掴み強引に下がらせようとしたとき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってくれ、加賀さん……」

 

 

漣たちの視線の先。 ご主人様のいる壁際から、確かにその声は聞こえました。

 

 

「下がって… そいつを…漣を離してやってくれ…」

 

 

加賀さんは声の主に… ご主人様にそう言われると、静かに漣から手を離し下がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…スマン、漣。 お前の言うとおりだったよ……」

 

正也「こんな危機だからこそ、提督であるウチがしっかりしなきゃいけないってのに、肝心のウチが一番取り乱したら本当に困るのはお前達だものな……」

 

正也「漣、ウチをぶん殴ってくれてサンキューな。 おかげで、目が覚めたよ」

 

 

壁に寄りかかったままのご主人様はゆっくりと顔をあげ、こちらに向きました。

その表情はいつもの、漣たちのよく知ってるご主人様の顔でした。

良く言えば朗らか、悪く言えば能天気。 でも、皆を安心させてくれるいつものご主人様の笑顔がそこにありました。

 

 

 

 

 

 

正也「響・鳥海・雪風・加賀さん、突然取り乱したりしてすまなかった。 兄ちゃんの名前を聞いたとき、あまりの衝撃に頭が真っ白になってしまって…」

 

響「仕方ないさ。 司令官の家族が拉致されたんだ、取り乱すのも無理のない話だよ」

 

加賀「それにしてもさっきの取り乱しようは、あまりに異常です。 それに、さっき貴方が言っていたことのほうが私は気になります」

 

雪風「そういえば、さっきしれえはお兄さんがこの世界にいるはずがないって言ってたんですよね。 どういうことでしょう? しれえ…」

 

 

真っ直ぐに加賀さんと雪風はご主人様に先の言葉に対する疑問を投げかけました。

ご主人様は、二人の問いに眼を背けることなくはっきりと答えました。

 

 

正也「うん、そのことについて話すことはできるけど、その前に皆に話しておかなきゃいけないことがある。 だから、他の皆を食堂に集めてくれ」

 

漣「皆に話しておかなきゃいけないこと…? 一体何なんです、それは…?」

 

正也「お前があの時聞きたがっていたことだ。 漣…」

 

漣「…えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「全て話すよ。 ウチの家族のこと、ウチの故郷のこと、そして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…ウチがこの世界に来たときのこともね」

 

 

 

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