艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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今回、話の展開上少し多めに投稿します。

個人的にどうしても出したかったので、見てもらえるとありがたいです。






第42話 中峰正也の独白

 

 

トラック泊地の食堂に集まる艦隊の仲間たち。

現在、ウチは食堂の一番奥で皆が集まるのを待っており、傍らには一番付き合いの長い漣と響、そして兄ちゃんの艦娘だという叢雲と利根が皆に視線を向けている。

一人、また一人と食堂にやってくるのを待ちながら、ウチは内心に感じる不安を抑えていた。

 

 

これからウチが話すことを皆が信じてくれるかどうか分からない。

 

でも、これ以上話さないわけにはいかなかった。

 

深海棲艦に拉致された兄ちゃんを助けるには、みんなの協力が必要だ。

 

そのためにもこのことについては皆にも知ってもらわなければならない。

 

それに、ウチをぶん殴ってまで説得してくれた漣の気持ちにも応えたい。

 

曲がりなりにも上官に手を出せば、どのような罰が下るか考えれば分かるものだ。

 

しかし、あいつはそれを承知でウチをぶん殴った。

 

自分の身の危険を覚悟した上で、あいつはウチを説得してくれた。 ウチを信じてこの選択をしてくれたんだ。

 

だから、ウチも覚悟を決める。

 

皆がウチを信じてくれるかじゃない。

 

ウチが皆を信じられるかだ。

 

提督として、仲間として、ウチはこの選択を選んだんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員集まったのを確認すると、ウチは一度深呼吸して、集まったみんなに向かって話しかける。

 

 

正也「皆、わざわざ集まってもらってすまない。 実は、皆には話しておかなきゃいけないことがある。 それはウチの家族や故郷のこと、そしてウチがここに提督としてくる前のことについてだ」

 

正也「ただ、これから話すことは普通じゃ考えられないような事もあるかもしれないが、全て事実だ。 それを念頭において、聞いてほしい」

 

 

ウチのその前置きに、周囲の艦娘たちはざわざわと囁き始める。

だが、その騒ぎを収めるように響が諭す。

 

 

響「皆、落ち着いて。 これは司令官や私達にとって大事な話なんだ、静かに聞こう」

 

 

その一言に、皆は騒ぐことをやめて静かにウチに視線を向けた。

大勢の仲間に、隣にいる漣たちに注目を浴びる中、ウチは響に「ありがとう…」と一声かけると、ゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの故郷はごく普通の住宅街でね。 特に有名なものや名所があるわけでもない、本当にごく普通の町なんだ」

 

 

「両親は共働きで夜まで帰ってこなくて、いつも家ではウチと兄ちゃん、そして妹の茜の三人で協力しながら家のことをやっていた」

 

 

「だからといって家庭環境が悪かったわけじゃない。 父ちゃんたちはウチらのために学費を稼いでくれてて、おかげで兄ちゃんと茜は大学に入れたし、ウチも高校を卒業してちゃんと働くことができたんだ」

 

 

「ウチは自分の故郷も、家族も大好きだ。 あそこは平和で落ち着いてたし、両親や兄ちゃんたちとも楽しく毎日を過ごしてた。 このまま、ウチはこの平和な一生を過ごすんだと信じていた」

 

 

「でも、そんな日常は突然終わりを告げた。 きっかけは、兄ちゃんと茜が紹介してくれた巷で人気のブラウザゲームをやろうとしたときだった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人気のゲーム…?」

 

 

先の言葉をオウム返しに言いながら、漣はウチの顔を覗き込む。

 

ウチは軽く頷くと、そのまま話を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲームのタイトルは『艦隊これくしょん』。 プレイヤーは軍艦が擬人化した少女『艦娘』を育て、海を荒らす怪物『深海棲艦』と戦うというストーリーなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に静かに話を聞いていた皆は、一斉にどよめきだった。

あちらこちらから、「なにそれっ!?」 「どういうことっ!?」 といった疑問の声が飛び交う。

そして、その疑問を投げかけたのは隣で話を聞いていた漣たちも例外ではなく、叢雲と利根だけはその言葉に動じる様子は見られなかった。

 

 

漣「ど、どういうことなんですかご主人様!? そのゲーム、漣たちがやっていることと全く同じじゃないですか!!」

 

響「司令官、さすがに話が飛躍しすぎて理解できない… 一体、司令官がやろうとしたゲームと司令官がここにいることにどんな関係が…?」

 

 

一瞬で混沌と化した食堂。

やはりこのことを話すのはまずかったか…

皆には話すべきではなかったか…

ウチは自分の決断の甘さを呪ったそのとき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしなさいアンタ達! まだ話は終わってないわよ!!」

 

 

食堂中に響き渡る鋭い声。

その声に場は打ち水をかけたかのようにしんと静まり返る。

皆を一括した張本人、叢雲は今度はウチに顔を向けてきた。

 

 

叢雲「あんたも提督なら、これぐらいのことでびびってんじゃないわよ! あいつの弟でしょ!?」

 

利根「艦隊の長たるもの、部下の前で動揺を見せてはならん。 さっきそう学んだばかりであろう? 大丈夫じゃ、落ち着いて話せ」

 

正也「あ、ああ…すまない。 みんな、話を続けるぞ」

 

 

叢雲の叱責と利根の助言に、ウチは冷静を装い話を続ける。

皆も叢雲の鶴の一声が効いたのか、先の疑問をあげるものはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「ウチが自分の部屋でこのゲームを起動しようとしたとき、突然パソコンのモニターが光だし、そこで意識を失った。 次に目が覚めたとき、ウチはこの世界にいたんだ。 あとはお前も知ってるだろ、漣…?」

 

漣「…えっ? それってどういう……?」

 

正也「ウチが目が覚めた場所は、青い海が広がる砂浜だったんだ。 漣、お前と初めて出会ったあの横須賀鎮守府近くの砂浜にウチはいたんだ」

 

響「自分の部屋にいたはずが、起きたら砂浜に…? 一体なぜ…?」

 

正也「ここからはウチの推測なんだが、おそらくウチはパソコンを通じてゲームの世界……いや、ゲームを模したこの世界へ飛ばされたと思うんだ。 現にウチのいた世界では艦娘も深海棲艦も存在しない、ゲームの中だけの架空の設定なんだ。 それがこうして実在しているということが、ここがウチのいた世界じゃないという何よりの証拠なんだ」

 

漣「ここが…ご主人様のいた世界じゃない? …それじゃ、ご主人様の故郷って……!?」

 

 

大きく目を見開きながらウチを見つめる漣。

彼女の目を見返しながら、ウチは大きく頷き、そして答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「ああ、ウチの故郷はここにはない。 ウチはここではない別の世界、異世界から来た人間なんだ」

 

漣・響「「……っ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

驚愕の表情を浮かべる漣と響。

そして、その衝撃は目の前にいる仲間たちからもひしひしと感じられた。

だが、まだ話は終わっていない。

ウチは動揺する皆に顔を向けたまま、続きを語っていく。

 

 

 

 

 

 

正也「そして、現状元の世界に帰る方法はない。 神原さんや間宮さんたちが調べてくれているんだけど、正直いつになるかは分からないし、もしかしたらその方法自体ないかもしれないんだ…」

 

響「…そ、そんなっ!?」

 

雪風「それじゃ、帰る方法が見つからなかったらしれえはずっと家族に会えないんですか!?」

 

正也「そうだよ。 だから、叢雲から兄ちゃんのことを聞かされたときは頭の中が真っ白になった。 兄ちゃんもウチと同じ異世界の人間、本来この世界には存在しないはずの人間だったから…」

 

加賀「そうだったのですか…。 あのとき、提督が取り乱した訳がようやく分かりました」

 

漣「……ちっとも知らなかった。 まさか、ご主人様にそんな事情があったなんて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…その後、ウチは横須賀鎮守府の提督である神原さんと出会い、トラック泊地の提督が着任するまでの代理として漣と共にここに来た。 これが、ウチがここに来るまでのすべてだ」

 

 

ウチは話を終えると、一息つく。

皆の目は、ウチに向けられたままざわついている。

別の世界の人間という奇異なものを見る目なのか、故郷に戻れないウチを不憫に思ってのものなのか、それは分からない。

そんな視線に耐えかねてか、気付くとウチはこんなことを口走っていた。

 

 

正也「えっと… 一応言っとくとな、ウチが提督になったのもゲームだから面白そうとかそんな生半可な考えじゃなく、本当に皆を仲間として誰も沈ませたくないって決意したからなんだ。 まあ、こんな話聞かされた後じゃそう簡単には信じられないよね、あはは…」

 

 

ウチは皆を見ながら一人苦笑いを浮かべる。

ただその場の空気が辛かったから、少しでもこの空気を紛らわしたかったから。

我ながら苦しいやり口だとは思うが、他にいい方法も思いつかなかった。

だが、そんなとき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漣「えいっ♪」 ズビシッ!

 

正也「いってえ!?」

 

 

ウチの背後から、突然漣が後頭部目掛けチョップを入れた。

痛む頭をさするウチに、背中からあいつのため息交じりの声が聞こえてきた。

 

 

漣「本当に、ご主人様はバカですねえ…。 そんなこと、皆とっくに知ってますよ」

 

 

呆れながらも、どこか温かみを感じるあいつの言葉。

そして、漣以外にもウチに語りかけてくる声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漣の言うとおりだよ。 言ったでしょ司令官、『私達は司令官のことを信じてる』って…」

 

「響…」

 

 

 

 

 

「そうデース! 私のテートクへの想いはこんな事じゃ揺るぎまセン。 テートクがどこの誰であろうと、私はテートクにどこまでもついていきマース!!」

 

「金剛…」

 

 

 

 

 

「司令官さんが私達のために戦ってくれていることは、私達が誰よりわかっています。 ですから、今度は私達が司令官さんの力になる番です!」

 

「鳥海…」

 

 

 

 

 

「お兄さんを助けに行きましょう、司令官さん。 大丈夫、貴方には私達がついています!」

 

「羽黒…」

 

 

 

 

 

「そういうことです。 さっ、早くご命令を、司令」

 

「霧島…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「……。 皆、ありがとうな」

 

 

ウチは、目頭を押さえながら皆に礼を言う。

気付くと、皆の顔つきも変わっていた。

凛とした顔つきで、澄んだ真っ直ぐな瞳で皆はウチを見ている。 大丈夫、心配いらないと語りかけてくるような様子が、その表情から伺えてくる。

 

 

叢雲「…どうやら、そっちも話がまとまったようね」

 

正也「ああ、もう大丈夫だ。 すまんね、ちょっとごたついちゃって…」

 

利根「うむ。 お主も、あやつと同じく皆に慕われる良き提督なのじゃな」

 

叢雲「それじゃ、私達の頼みを…あいつの救出に協力してもらえるかしら?」

 

正也「ああ、むしろこっちから頼みたいくらいだよ」

 

 

もう迷いはない。

皆はウチの真実を知って、それでもウチに付いて来てくれる。

だからウチは皆と共に前に進む。

提督として、仲間として、ウチは誰一人だって沈ませない。

 

艦隊の皆。

 

霧島…金剛…羽黒…鳥海…響……そして漣。

 

こんなどうしようもない提督だけど…

 

こんなバカなウチだけど…

 

どうか今だけは、皆の力を貸してくれ…!!

 

 

 

 

 

正也「トラック泊地第一艦隊出撃準備!! 目的は……タウイタウイ泊地提督、中峰幸仁の救出だ!!」

 

 

ウチの声とともに一斉に歓声を上げるトラック泊地の艦娘達(仲間達)

 

こうして、タウイタウイ泊地提督救出作戦が幕を上げたのであった。

 

 

 

 

 

正也「行くぞみんな、抜錨だ――――――!!」

 

 

一同「「「「「オオ―――――――――――!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「…ところで叢雲?」

 

叢雲「何っ?」

 

正也「えっと…… 兄ちゃんって、どこに連れてかれたの…?」

 

叢雲「…利根、ほんとにあいつ大丈夫なの……?」

 

利根「ま…まあ、なんとかなるじゃろ……」

 

 

 

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