ぶっちゃけこの話書いた一番の理由が、幸仁と赤城がいちゃつく話を書きたかったからなんです。
気付くと、俺はここにいた。
幸仁「ここは…どこなんだ?」
タウイタウイ泊地提督、中峰幸仁は周囲を見渡しながら驚きの声を上げた。
そこは、水平線ではなく地平線が広がる緑一色の草原。
空は果てしない蒼に点々と雲が漂い、風でそよぐ草はまるで水面のようにゆらゆらと揺れている。
そんな草原のど真ん中に彼はいた。
幸仁「いつもの泊地じゃないし、こんなだだっ広い場所来た覚えがないぞ」
幸仁は困惑しながらも、一人歩みを進めた。
ここにいた所で事態の解決にはならない。
少しでも情報を得るため、彼は辺りを見回しながら草原を歩き始めた。
しばらくは草のカーペットが広がる大地を進んでいたが、ようやくその地平線も終わりを告げた。
幸仁「んっ? あれは…」
草原の終わりに見えたもの。
それはいつも自分が見てきたもの。 青く広がり行く大海原だった。
草原の下は崖になっており、そこから先は白い砂浜と青い海がどこまでも続いている。
崖と砂浜の高さはそれほど大きくもないが、ここからでは下に降りられそうにない。
どこか下に降りられる場所はないか。 幸仁は再び周囲を確認すると、あるものが視界に飛び込んできた。
そこにあったのは家だった。
2階建ての白い一軒家で、青い空の下で赤い屋根が存在感を示している。
四角い玄関の前には花壇の付いた小さな庭があり、色とりどりの花が綺麗に咲いていた。
外観は綺麗だが、こんな何もない草原にぽつんと立っている様はあまりに不自然だ。
一体誰が建てたのか?
幸仁が首をかしげていると、玄関から一人の住人が顔をひょっこり出してきた。
黒のロングヘアーに、幼さを感じさせるくりんとした丸い瞳。
体系は見えないが、顔つきからするに住人は小学校低学年ほどの少女だ。
少女は先ほどから首だけをあちこち動かし何かを探しているように見える。
しばらくきょろきょろとしていた少女だが、幸仁のいるほうに顔を向けると嬉しそうに明るい笑みを浮かべ、こちらへ駆け寄ってきた。
なぜ少女があんな嬉しそうに駆け寄ってきたのか、幸仁には分からない。
しかし、ここの住人ならここがどこかは聞けるはず。 そう思い、幸仁も少女に声をかけようとしたときだった。
「お父さーん! お父さーん!」
そういって、思いっきり抱きついてきた少女に幸仁は驚きを隠せなかった。
なにせ自分は独身。 娘どころか妻もいない。
なのにこの少女は自分をお父さんと呼んで嬉しそうに擦り寄ってくる。
幸仁はますます困惑するばかりだった。
「ねえお父さん、今日は約束通り一緒に遊びに行こうね。 どこに連れてってくれるの? 遊園地? それとも動物園? ねえどこねえってばぁ♪」
矢継ぎ早に幸仁に遊びに行こうとせがんでくる少女。
その姿は無邪気でかわいいが、幸仁はそもそも少女と面識自体ないし、約束もしていない。
とにかく、いったん少女に落ち着いてもらおうと幸仁が宥めようとしたときだった。
「駄目でしょ"あかぎ"、そんな無理にお願いしたら。 お父さんはお仕事で疲れてるのよ」
家から現れた女性。 少女と同じく長い黒髪に、薄いピンクのエプロンを纏った女性。
そして、その女性の顔を見た途端に幸仁はさらに驚愕の声を上げた。
幸仁「あ、赤城っ!? お前…こんなところで何して…!?」
エプロン姿の女性。
その人物は彼のよく知る艦娘の一人。 航空母艦赤城本人だった。
赤城は幸仁に抱きついていた少女、"あかぎ"と呼んだ娘を幸仁から引き離し抱っこした。
赤城「ごめんなさい、あなた。 この子ったらあなたと一緒に遊ぶ約束の事、夕べから楽しみにしてたから」
あかぎ「ぶー。 だって、お父さんってばいつもお仕事でいないんだもん。 あかぎ、お父さんといっぱい遊びたかったんだもん…」
そう言ってぐずついたあかぎを、赤城は優しくあやす。
そのとき、少女を抱いている赤城の指に一筋の光が浮かんだ。
そこには、シンプルなシルバーリングが指にはまっていた。
左手の薬指にはまっていた指輪。 それが何を意味するのかは分かっている。
幸仁「赤城、お前その指輪は…!?」
幸仁が指輪を示すと、赤城はうっとりとした表情を浮かべながら指輪を眺めた。
赤城「これですか? うふふ、懐かしいですね。 昔の話、私がまだ貴方を提督と呼んでいた頃。 貴方は弟の正也さんと共に私達艦娘のために戦い、そして艦娘と深海棲艦による戦争を終わらせてくれた。 その時、艦娘が大事な人と強い絆を結ぶシステム。 『ケッコンカッコカリ』の相手に、貴方は私を選んでくれた。 そして、この指輪を私の指にはめてくれた。 あの時、私本当に嬉しかったんですよ。 今まで想いを寄せていた人が、私を好きだといってくれたんですから」
赤城「そうして、私は貴方と本当の家族になれた。 貴方の妻となり、こうして子宝にも恵まれた。 提督……いえ、あなた。 あなたと正也さんには本当に感謝してもしきれません」
そう言って、赤城は自分の娘を抱きながら幸仁に微笑んだ。
愛しい娘を抱きながら見せるその笑顔から、幸仁も彼女がどれだけ幸せなのかが伺えた。
赤城「さあ、あなた。 朝食の用意ができてますから皆でご飯にしましょう。 あかぎも、どこへ遊びに行くかはこれから三人で話し合えばいいわ」
赤城は娘を抱いたまま家へと向かっていく。
彼女の背中を見ながら、幸仁はようやく理解したのだ。
(そうか… これは夢なんだな…)
そう。 これは夢であり、いつか訪れるかもしれない未来の一つ。
そこで彼は赤城と結婚してこの世界に残り、こうして幸せな家庭を築く。
この戦争を終えた先にある一つの可能性だ。
あの時、自分は赤城に誰ともケッコンカッコカリしないと言った。
それでも彼女は真摯に自分を想ってくれている。
そんな彼女の熱意に心を動かされ、結ばれるという可能性もなくはない。
こうして見ていると、そんな未来も悪くないと思えた。
だけど……!
幸仁「すまん、赤城。 俺はまだそっちにはいけないんだ」
拳を握り締め、静かに…だが力強く答える幸仁。
赤城は歩みを止め、娘と共に幸仁の方を振り返った。
幸仁「俺はまだ何も成し遂げていないし、今はお前の気持ちに応える事はできない。 もし…、もしこうなる未来があったとしても、それは今じゃない。 俺は、まだ何も成し遂げていないんだ…」
幸仁の主張を静かに聞く赤城。
幸仁の言葉が終わると、彼女はそこで立ち尽くしたまま話す。
赤城「……やはり、行かれてしまうのですね。 分かっていました。 本当は戦争は終わっていないし、まだ貴方と結ばれてもいない。 全ては私の甘い夢… これは、私の望んだ未来の偶像なんだと……」
あかぎ「……。 お母さん、泣いてるの…?」
心配そうに母親の顔を覗き込むあかぎ。 俯いたままの彼女の表情は見えなかったが、頬からは一筋の雫が流れている。
そこへ、幸仁があかぎの頭をやさしくなでてあげた。
幸仁「ごめんなあかぎ。 お父さん、どうしてもやらなきゃならない仕事があるんだ。 お前やお前のお母さんが平和に過ごせるようにする、大事な大事な仕事なんだ」
あかぎ「そんなー!! あかぎ、お父さんと一緒に遊びたい! お父さんと一緒にいられるこの日をずーっと楽しみにしていたんだよ!!」
あかぎ「ねえ、行かないでお父さん! あかぎ、お父さんとお別れなんてやだ! ここでお母さんやあかぎと一緒に暮らそうよー!」
幸仁「本当にごめん、今はまだお父さんはお前と一緒に暮らせない…。 この仕事が終わったときは、またお前の元に戻ってくる。 そしたら、いっぱい遊ぼうな」
必死に行かないでと泣きじゃくるあかぎの頭を、幸仁は優しくぽんぽんと叩く。
目の前の少女を宥める彼もまた、娘を愛でる一人の父親の顔になっていた。
あかぎ「……。 約束だよ、お父さん。 あかぎとの約束…」
その言葉とともに、あかぎは自分の手を握り小指を立てた。
幸仁も無言のまま頷くと、あかぎと同じように小指を立てお互いに指を絡めた。
「「指きりげんまんうそついたら針せんぼんのーます。 指きった」」
約束の指きりを交わした後、幸仁は二人のあかぎに見送られ元来た道を戻っていった。
二人とも手をつないだまま、もう片方の手を振って愛しい人が去っていく姿を見届けていた。
朝のタウイタウイ泊地。
目を覚ました彼がいたのは、いつも自分が寝床にしている自室だった。
幸仁「ああ… やっぱりあれは夢だったんだな」
幸仁は自室で着替えを終えると、そのままいつものように食堂へと向かっていった。
中へ入ると、いきなり飛龍が血相を変えながら幸仁の元にやってきた。
飛龍「た、たた、大変ですよ提督っ!!」
幸仁「ちょっ、どうしたんだ飛龍!?」
飛龍「赤城さんが、ご飯を全然食べないんです! いつもなら五合は軽くいく赤城さんが、今日は半分もご飯を食べてないんです!!」
飛龍の失礼千万な物言いに、幸仁は若干呆れつつ食堂のテーブルにいる赤城の所へいった。
見ると、確かに赤城の様子は変だった。
表情はどこか落ち込んでるように見え、目の前の食事はご飯はおろかおかずもほとんどが手付かずになっていた。
幸仁「おはよう赤城。 どうした? ちゃんと食わないと体が持たないぞ」
赤城「あっ、提督。 おはようございます…」
幸仁「どこか具合でも悪いのか? もしそうならちゃんと言ってくれ。 戦場では、小さなミスが命取りになる事もあるからな」
赤城「いえ、その… こんなこと、提督に話していいものかと思いまして…」
幸仁「言ってみろ。 俺でよければ相談相手になるぞ」
赤城「それじゃ… わ、笑わないでくださいね…!」
赤城「夢を、見たんです…」
幸仁「えっ…?」
赤城「そこは深海棲艦との戦争を終えた世界で、私が提督と結婚して海辺の小さな家で暮らしていたのです。 娘を持って、あなたと幸せに過ごして。 でも、提督は自分にはまだやるべき事がある、と私と娘を残して去っていったんです。 そのときの事が、夢とわかっていても辛くって…」
赤城が話してくれた夢の内容は、さきほど自分が見ていた夢とまるで同じものだった。
このような出来事を単なる偶然と捉えるか、何かしらの
ただ、はっきり言える事は…
幸仁「赤城、俺はお前を励ます言葉はかけられないが、この戦争を終わらせるまでお前らを残していなくなったりはしない。 必ず皆で戦争のない未来を迎えよう」
赤城「…はい、私もそれまで貴方の傍にいます。 だから、どうかそれまで私達を導いてください、提督…」
幸仁「ああ、もちろんだ」
その言葉に安心したのか、赤城もいつもの笑みを見せてくれた。
それが合図だったかのように、突然赤城のお腹が空腹のサインを鳴らした。
ぐうぅ~という音に顔を赤くし俯く赤城。
そんな赤城を見ながら、幸仁は苦笑いしつつ赤城に声をかけた。
幸仁「さて、それじゃ俺も飯にするか。 もしよければ一緒に食わないか、赤城」
赤城「は、はい…。 わ、私も…その… 提督と一緒に食べたいかなー…って」
自分の朝食をとりに向かう幸仁と、若干恥ずかしがりながらも嬉しそうに幸仁を待つ赤城。
飛龍「やーれやれ、これじゃ私完全にお邪魔虫ですね。 しょーがない、お二人のためにしばらく人払いしてますか」
そんな二人を傍目から眺めていた飛龍が、こっそり気を利かせるのであった。