艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第57話 ビッグセブン奮戦記

 

 

タウイタウイ泊地の鎮守府。

俺ことここの提督、中峰幸仁はいつものように無線を通じて朝の見回りを行っている叢雲と連絡を取り合っていた。

 

 

幸仁「どうだ、叢雲。 そっちは異常ないか?」

 

叢雲『変わりないわ。 いつものように深海棲艦の姿はなし、退屈なものよ』

 

幸仁「いないほうがいいだろ、そこは。 退屈なら、また俺のトレーニングに付き合ってくれよ」

 

叢雲『いいじゃない… 今日こそアンタから一本とってやるわ、覚悟なさいっ!!』

 

 

そういって、ブツリッ!という音とともに無線は切れ、俺はやれやれと思いながら無線を机に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が戦艦棲姫に拉致された事件の後のこと。

弟の正也と別れ、俺は再びこのタウイタウイ泊地の提督としての業務を全うしている。

やらなきゃならないことは山のようにあるが、深海棲艦の襲撃がないこの泊地は至って平和そのもの。

これから忙しくなるだろうが、今はこの穏やかなひと時を堪能したいものだ。

そのとき…

 

 

タッタッタッタッタッタッタッ!

 

こちらに向かって猛スピードでかけてくる足音。

いつもならここへ走ってやってくる奴は島風が思いつくが、今日はあいつも叢雲とともに見回りに入っている。

となれば、おそらくあっちのほうだな…

俺は内心その人物の顔を思い浮かべると、執務室の扉がものすごい勢いで開き、こちらへ走ってきた人物が息を荒げながら俺に駆け寄ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督よ、今日ここに新しい駆逐艦が来るとは本当かっ!?」

 

 

傍から見ればどん引きするぐらいの勢いで俺に詰め寄ってくる艦娘。

その正体は今日の秘書艦を勤める艦娘で、この艦隊随一の火力を持つ戦艦長門だった。

 

 

幸仁「ああ、本当だよ。 ちゃんと建造結果に書いてあるだろ」

 

長門「そうか、それは胸が熱くなるな!」

 

幸仁「赤城や飛龍に加え、最近はお前や陸奥といった戦艦組も増えて資材のやりくりが厳しくなってきたからな。 それで、今回遠征班として新しく建造したんだよ」

 

 

俺が説明すると、長門は話を聞いている様子はなく、一人どこからか出てきた後光を浴びながら『完・全・勝・利っ!!』のポーズをとっていた。 うん、あいつはもう放っておこう…

 

 

しばらくすると長門も落ち着いたので、俺はさっさと執務を手伝えと促す。

そうして二人執務を進めていると控えめに扉をノックする音が聞こえ、俺は「どうぞ」と答える。

「失礼します」という少し大人びた声とともに、執務室には三人の艦娘が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人は小柄ながら、長い黒髪に精悍な顔つきをしたいかにもしっかりものといった雰囲気を感じさせる少女。

 

一人は穏やかな顔に、セミロングの黒髪を三つ編みにした少し大人びた様子の少女。

 

そしてもう一人は、じっとしていられないと言わんばかりに金髪の髪をゆらしそわそわする少女。

 

 

三人は俺の机の前で横に並び、一人ずつ自己紹介をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日よりここタウイタウイ泊地所属となります、駆逐艦朝潮です。 司令官、よろしくお願いします!」

 

「僕は駆逐艦時雨。 今日からここでお世話になるからよろしくね、提督」

 

「駆逐艦夕立だよ。 提督さん、夕立提督さんのために頑張るからいっぱい褒めてねー♪」

 

 

 

「三人ともよく来てくれたな。 俺はここタウイタウイ泊地提督、中峰幸仁だ。 よろしく頼む」

 

 

 

綺麗に礼をして挨拶する朝潮。 落ち着いた雰囲気で微笑む時雨。 今にも俺に抱きついてきそうな様子の夕立。

三人の艦娘に俺も提督としての礼を返すと、早速本題を切り出すことにした。

 

 

幸仁「それじゃ、まず三人にはこの泊地と自分達が泊まる寮の確認を行ってもらう。 今日は艦隊の皆と顔合わせしてもらい、明日から遠征任務をこなしてほしい。 いいかな?」

 

朝潮「はいっ! それが司令官のご命令ならば」

 

長門「では提督よ、三人の指導についてはこの長門が務め「お前は駄目だっ!!」」

 

 

さりげなく三人を連れて行こうとする長門に、俺は待ったをかけた。

 

 

長門「なぜだ提督っ! 私では問題があるとでもいうのか!?」

 

幸仁「大ありだよっ! 三人が行うのは遠征だぞ、戦艦のお前が担当したら余計資材の消費がかさむだろうが! それ以前に、こいつらを見た途端怪しく目をぎらつかせるような奴に任せられるか!!」

 

長門「提督よ、それではまるで私が変態みたいではないか!」

 

幸仁「みたいじゃなくその通りだろうがっ! とにかく、三人の指導は叢雲と夕張に行ってもらう。 分かったな!」

 

 

長門にきつく言い聞かせたあと、俺は朝潮たちに寮の場所を伝え向かうよう促した。

彼女達を見送ったあとの執務室に残っていたのは、俺ともう一人。

 

 

膝をつき、床に手を置いたまま深い悲しみに包まれた長門の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

 

朝潮「司令官、ただいま戻りました」

 

夕立「提督さん見て~♪ 夕立たち、遠征大成功させて資材いっぱいもらってきたの。 すごいでしょ~♪」

 

幸仁「ああ、お疲れ様朝潮。 夕立もよくがんばったな、偉いぞ……って、ちゃんと褒めてやるからそんなに抱きつくなって…!」

 

時雨「ただいま提督。 はいこれ、今日の遠征の報告書だよ」

 

幸仁「ありがとう時雨。 今日もよくやってくれたな、疲れただろ?」

 

時雨「そんなことないさ。 むしろ、これで提督が喜んでくれるのなら僕も嬉しいよ」

 

幸仁「ははは… そういってもらえるとありがたいね」

 

 

 

三人がここへ来てから少しずつ遠征をこなしてもらい、着実に資材の数が増え艦隊の運用は楽になってきていた。

叢雲曰く、三人とも呑み込みが早いから指導する側としては楽だったとのこと。

やんわりと微笑む時雨の頭を、俺はやさしくなでる。

時雨は気持ち良さそうにしており、その姿を見て夕立は自分も構ってほしいとすがり、朝潮は何も言わないがどこか時雨を羨ましそうに見ている。

俺は夕立を宥めながら朝潮を手招きで呼び、二人にも時雨と同じように頭をなでてやった。

夕立は満足げに笑みを浮かべ、朝潮は少し俯いているものの、その表情には嬉しさと恥ずかしさが入り混じっているように見えた。

ゲームではわんこのイメージを感じさせる三人だが、こうして実際に接してみるとそれも頷ける話だ。

そんな和やかな雰囲気の中、俺の後ろから聞こえる声。

俺は声のしたほうに顔を向けて見ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいなーいいなー提督ばっかり… 私なんて……ブツブツ」

 

 

執務室の隅で、長門が体育座りをしてのの字をを書きながらいじけていた。

あの後、指導禁止がよほどショックだったのか長門はしばらくこの調子だった。

おかげで出撃にも執務にも身が入らない始末。 さすがにこれじゃ仕事にならん…

見かねた俺は、あの提案を行う事にした。

 

 

幸仁「三人ともちょっといいか?」

 

時雨「何かな? 提督」

 

幸仁「三人とも最近は遠征にも慣れてきたし、そろそろ実戦も行ってもらおうと思っている。 今日の出撃任務で補給艦撃滅があるから、バシー島へと向かってほしい」

 

夕立「うん、分かったっぽい♪」

 

幸仁「そして長門、お前に今回の任務の旗艦を勤めてもらう。 ビッグセブンの力、三人にしかと見せ付けてやれ」

 

 

俺がそういった瞬間、長門は急に元気よく立ち上がり俺のほうを向く。

 

 

長門「フッ、いいだろう。 この長門、必ずや提督の期待に応えてみせよう!」

 

幸仁「立ち直り早っ!!」

 

 

こうして、長門は三人を連れて意気揚々とバシー島へと向かっていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門が出発するのを見送り、俺は再び一人で執務を再開。

他には誰もいなく、静かなときが流れる中で、しばし書類と格闘しているときだった。

突然静寂を破るように、机の上の無線が鳴り出した。

 

 

幸仁「ああ、こちら提督。 何かあったのか?」

 

 

俺はすぐに無線を取り、相手からの連絡を聞くと、

 

 

幸仁「…何、それは本当か!?」

 

 

驚愕のあまり、突然机から立ち上がり書類をばら撒いてしまった。

だが、俺は落ちた書類に構う暇なく、

 

 

幸仁「…ああ、お前は先に行っててくれ。 俺もすぐに向かうから、海上で落ち合おう」

 

 

会話を切り上げ無線を切ると、俺は窓の外の海を睨みながら呟いた。

 

 

幸仁「くそ、あいつ一人で先走りやがって…! とにかく、俺も急がないと…!!」

 

 

そうして、俺は無線を取り急いで執務室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシー島の海上。

 

 

長門「全主砲、斉射! てーっ!!」

 

 

長門の凛とした掛け声と共に彼女の艤装が派手に火を吹く。

標的となった輸送ワ級はなす術もなく、長門が放った砲撃を受け沈没していった。

 

 

朝潮「すごい、あれだけの距離から一撃で…」

 

夕立「わー♪ 長門さんかっこいいっぽい~!」

 

長門「ふふ… 長門型のネームシップとして、これくらい造作もないことさ」

 

 

自らの実力を朝潮たちに賞賛され、長門は笑みをこぼす。

表向きはクールに振舞っているものの、内心では大好きな駆逐艦娘たちに尊敬の眼差しを向けられ、盆と正月がひっくり返りそうなほど狂喜乱舞しているのは内緒だ。

 

 

時雨「これでちょうど今日の任務分は終わったね。 そろそろ戻るのかな?」

 

長門「ああ。 私としてはまだやれるが、みんなはまだ実戦は始めたばかりだ。 今日はこれで引き返すとしよう」

 

 

長門はそういうと、三人に泊地に戻るよう促す。

彼女にとっては自慢の火力をもっと披露したい所だが、まだ三人は実戦の経験は今日が初めて。

もうすぐ暗くなるし、これ以上ここにとどまっているのはさすがに危険だと判断してのことだった。

そうして戻ろうとしたとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮「…っ!? 何か来ます!!」

 

 

最初に気づいたのは朝潮だった。

長門は朝潮が指差すほうを見ると、そこには水平線の向こうからこちらへ向かってくる人影があった。

人影の正体は深海棲艦。 それも空母ヲ級が2体。

 

 

長門(まずいっ! こちらには空母はいないし、三式弾も持っていない。 艦載機が飛ばされれば三人の身が危うい!!)

 

 

今の危機的状況を察し、血相を変えた長門はすぐ三人にここを離れるよう指示する。

 

 

長門「三人ともすぐここを離れるんだ! 艦載機を飛ばされる前に、早くっ!!」

 

 

長門は指示を出すや否や、即座に敵艦に向かって砲撃を放つ。

自慢の長距離射程による砲撃は、遠くにいた敵のヲ級を一体撃沈させた。

だが、もう一体はその隙を突いて艦載機を一斉に飛ばしてくる。

長門もどうにか敵の艦載機を減らそうと砲撃をするが、空を縦横無尽に飛ぶ艦載機を砲弾で撃ち落とすなど至難の業。

彼女の反撃も空しく、いくつかの艦載機は砲撃を回避し、長門の後ろにいる三人の駆逐艦目掛け特攻してきた。

 

 

長門「やめろー!!」

 

 

長門は叫び、その手を伸ばす。

だが、無常にも艦載機は三人を沈めるべく突っ込んで行き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、空中で真っ二つになった。

 

 

突如現れた影が空中で艦載機目掛け手にしていた得物を振るい、それが終わる頃には艦載機は切り裂かれ、その残骸を海へと落下させていったのだった。

艦載機を切り裂き海面に着水した謎の影。 その正体に気付いたとき、長門は声を上げて驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「て、提督っ!?」

 

幸仁「長門、お前は三人の護衛に回れっ! あいつは俺がしとめる!!」

 

 

艦載機を切った張本人は、部下の長門にそう指示を出すと共に随伴していた艦娘、叢雲へと声をかける。

 

 

幸仁「俺は一気に奴の懐に突っ込む、艦載機の方は頼んだぞ!」

 

叢雲「いいわ、任せなさいっ!」

 

 

叢雲の返事を聞くと同時に、幸仁はもう一体の空母ヲ級へと接近した。

空母ヲ級も慌てて艦載機を放ち幸仁を仕留めようとするが、叢雲の艤装についてる装備がそれをさせなかった。

 

 

12cm30連装墳進砲

 

 

自分の艦隊に空母が二人しかいないと聞いて、対空防衛のためにと弟の正也が譲ってくれたのだ。

墳進砲は標的のいる空へと向きを変え、30連発ものロケット弾を発射。 空母ヲ級の放った艦載機を跡形もなく破壊していった。

圧倒的な威力に呆気に取られるヲ級。 そこへ、

 

 

幸仁「おらあっ!!」

 

 

幸仁がヲ級に刀の矛先を向け、柄につけられたスイッチを押す。

すると、刃先に仕込んであった砲門が姿を現し、ヲ級目掛けて小型の砲弾が放たれた。

砲弾はヲ級に直撃し、爆発。

一瞬よろめいたところを、幸仁が爆煙にまぎれて接近。 一気に刃を振り、ヲ級を袈裟斬りにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうにか空母ヲ級を撃退した俺は、朝潮たちを守ってくれていた長門の元に向かった。

長門は三人を背後に庇いながらも周囲を警戒していたが、何もないと分かると艤装をおろし安堵の表情を浮かべた。

 

 

長門「助かったよ、提督。 しかし、なぜ提督がここに…?」

 

幸仁「本当は叢雲たちにも同行してもらうつもりだったのに、お前が先に行ってしまったから慌てて追ってきたんだよ」

 

長門「そうだったのか…。 すまない、私のつまらない我侭のせいで、提督や皆にも迷惑をかけてしまって…」

 

幸仁「いや、俺のほうこそ悪かった。 お前の気も知らずに、ちょっと冷たかったよ…」

 

長門「…お互い、まだまだ未熟だな提督」

 

幸仁「…ああ。 そうだな、長門」

 

 

バシー島の海上で、俺と長門はお互い照れ笑いを浮かべていると、朝潮たち三人が俺達の元へ駆け寄ってきた。

 

 

長門「お前達もすまなかった。 もう大丈夫だ」

 

 

長門も朝潮たちを迎えてやろうと笑みを浮かべて両手を広げる。

そして三人は嬉しそうに駆け寄り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「…えっ?」

 

 

 

 

長門をスルーして、俺の元にやってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮「ありがとうございます司令官。 私たちを助けてくれて!」

 

時雨「艦載機を斬るなんて、提督はすごいね。 僕にはとても真似できないや」

 

夕立「提督さんとってもかっこよかったよ~! 夕立、提督さんの事ますます好きになったっぽい~♪」

 

 

朝潮たちは俺を取り囲み、口々に褒め称えてきた。

困惑しながらも、俺は長門に目を向けると、

 

 

長門「あの…… 私は…?」

 

 

ぽつんと一人取り残されながら呆然としている。

か細いながらも長門はこちらに呼びかけているが、三人は完全に俺に夢中になっており、長門の事は眼中にない様子だった。 あっ、叢雲が無言であいつの肩を叩いている。

そして、長門はがくんと項垂れると肩をプルプル震わせながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「うわーん! やっぱり提督なんて嫌いだ――――――!!」

 

 

と、泣きじゃくりながら去っていき、その姿からはいつも彼女が口にしていたビッグセブンとしての威厳は微塵も感じられなかった。

 

 

 

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