艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第61話 戦艦棲姫の脅威

 

 

西方海域の海原を、数多の艦娘たちが駆け抜ける。

それは大本営が召集した連合艦隊に属する艦娘で、ある者は命令により加入し、またある者は自ら志願してこの艦隊へと加わった。

艦種も所属も違う彼女達だが、皆目的は一つ。 西方海域最強の深海棲艦、戦艦棲姫を討ち取ることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連合艦隊に加わる艦娘の中でも、ひときわ小柄な少女はこれから始まるであろう戦闘に、小さく身悶えする。

 

 

「もう電ってば、今からそんなんじゃ身が持たないわよ」

 

 

小さく震える少女、暁型駆逐艦4番艦『電』は隣で叱責してくる少女に、顔を向ける。

 

 

「ご、ごめんなさい…なのです。 でも、これからあの深海棲艦と戦うんだと思うとつい…。 暁お姉ちゃんは平気なのですか?」

 

「当然じゃない! 一人前のレディたるもの、こんな事で怖気づいていられないわ。 絶対あいつをやっつけるわよ!」

 

 

電を叱責した少女、暁型駆逐艦1番艦『暁』は胸を張りながら気丈に切り返す。

 

 

「おーおー、ちびっ子達は逞しいね~。 私としては、内心ビビってるんだけどね~」

 

「まったく…。 自分から連合艦隊加入に志願したのは貴方でしょ? 今からそんなことじゃ、提督やこの子達に示しがつきませんわよ」

 

 

電と暁の前を行く二人の艦娘、最上型重巡洋艦3番艦『鈴谷』はまいったという風に首を振り、最上型重巡洋艦4番艦『熊野』はそんな姉妹の姿に呆れの色を見せる。

この4人もまた、自ら連合艦隊への出撃に志願し、こうして戦艦棲姫打倒を決意してやってきたのだ。

果てしない青に染まる空と海。

今日の天候はこうして出撃する彼女達を拒む事もなく、普段と変わらぬ景色を見せてくれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時同じくして、連合艦隊とは反対の方角から移動する集団。

それは、まさしく彼女達が狙う相手。 戦艦棲姫率いる敵主力艦隊だった。

 

 

リ級《ヒ、姫… 本当ニヨロシイノデスカ?》

 

 

不安げに尋ねる随伴艦の一人、重巡リ級を訝しげに見ながら戦艦棲姫は問う。

 

 

戦艦棲姫《…何ノコトカシラ?》

 

リ級《今、コノ艦隊ハ姫ノ独断デ動カシテイルノデショウ? アノ御方ノ許可ナクコノヨウナ真似ヲシテ、モシバレタラ私達一体ドウナルカ…》

 

戦艦棲姫《何言ッテルノ? アイツハ私達ノ上官ジャナク、アクマデ技術提供者。 アイツト私達ノ間ニ上下関係ナンテモノハ存在シナイ。 アイツガ何ヲ言オウト私ノ知ッタ事ジャナイワ》

 

リ級《デ、デスガ私達ノ戦力強化ヤ姫ノ能力モ、アノ御方ノ協力ガアッタカラ得ラレタンデスヨ! ソレヲ…!?》

 

戦艦棲姫《無駄話ハココデ終ワリ。 ソレ以上続ケルノナラ、アイツノ前ニ私ガ罰ヲ下スワヨ》

 

リ級《ヒ、ヒイィ…!》

 

 

リ級は殺気に満ちた戦艦棲姫の眼光に威圧され、大人しく引き下がる。

まったく、と言わんばかりにため息を漏らす戦艦棲姫の元に、軽母ヌ級からの伝達が届く。

 

 

戦艦棲姫《…フウン、分カッタワ。 私モ行クカラ、オ前達モ戦闘ノ準備ヲシテオキナサイ》

 

リ級《姫、今ノハ…》

 

戦艦棲姫《エエ。 ドウヤラ、他ニモ私ノ邪魔ヲシタイ者ガイルミタイネ》

 

 

そういうと、戦艦棲姫はリ級を置いて通達してきた軽母ヌ級がいる前線へと足を運ぶ。

報告をしてきたヌ級を下げさせると、彼女の前には報告どおり、何十という数の艦娘たちが行く手を遮っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《小娘達ガ揃イモ揃ッテ…。 一体何ノ真似カシラ?》

 

「私達はお前を倒すために結成された連合艦隊だ。 これ以上の進攻はさせない、ここでお前を討ち取らせてもらう!」

 

 

先陣を切っていた連合艦隊の旗艦が声を張り上げる。

だが、戦艦棲姫はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

 

 

戦艦棲姫《見クビラレタモノネ。 コンナ寄セ集メノ集団デ、私ヲ倒セルト思ッテルナンテ》

 

「黙れっ!! 殺された提督たちの恨み、ここではらさせてもらう!!」

 

 

旗艦を勤めてた艦娘は、大きく右手を振り上げ攻撃の合図を促す。

同時に背後に待機していた空母の艦娘たちが、戦艦棲姫目掛けて一斉に艦載機を放った。

空を覆う数多の艦載機は、まるで渡り鳥の群れのごとく標的に向かって飛んでいく。

だが、戦艦棲姫はまるでうろたえる様子もなく、背後の艤装に命じた。

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《目障リネ。 払ッテ頂戴》

 

 

グロロロ… と唸り声を上げる艤装は、彼女の命令を聞いた途端…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すさまじい雄叫びを上げた。

地獄の猛獣、そんな例えがふさわしいほど艤装が上げた雄叫びは低く不気味なものだった。

雄叫びから発せられた音は、大気を震わせすさまじい衝撃波となって艦載機を吹き飛ばしていく。

結局、艦載機は一つも戦艦棲姫に届くことなく、周囲の水面へと落下していったのであった。

 

 

鈴谷「う、嘘…でしょ…?」

 

熊野「こ、ここまで力の差があるなんて…」

 

 

圧倒的な力で艦載機を吹き飛ばした戦艦棲姫を見て、鈴谷と熊野は驚愕の色を隠せなかった。

明らかにあの深海棲艦と自分達とでは核が違う。

絶対あの深海棲艦を倒す。 そう決意してここへ来たはずなのに…

恐怖に押し負けそうになる二人。 しかし、

 

 

暁「あ、アンタなんか怖くないわ! 暁たち、絶対アンタをやっつけてやるんだから!!」

 

電「そ、そうなのです! 電も、司令官さんのためにここで逃げたりなんかしないのです!!」

 

 

体を震わせながらも、必死に決意を声に乗せる暁と電。

その姿に、二人もお互いに顔を見合わせた。

 

 

鈴谷「…そう、だったね。 鈴谷たち、自分でここへ来るって決めたのにね」

 

熊野「…戦う事もなくこんな所で怖気づいたら、それこそレディ失格ですわ」

 

 

鈴谷と熊野も、覚悟を決めると今度は接近戦に持ち込もうと主砲を構え突撃する。

艦載機による遠距離からの攻撃は無理なら、せめて近接から攻撃を仕掛ける。

そのためにも少しでも相手を牽制できるよう時間を稼ぐ。 そのための砲撃だった。 だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《…邪魔ヨ》

 

 

再び背後の艤装が動き出し、その大きな腕でこちら目掛けて飛んできた砲弾をまるで蝿でも払うかのように弾いていった。

さすがに全ての砲弾をはじけるわけではなく、いくつかの弾は艤装の攻撃を逃れ戦艦棲姫自身へと飛来したが、

 

 

戦艦棲姫《フンッ!》

 

 

彼女も、その細腕からは想像もできないような凄まじい力で砲弾を弾いていった。

雨のように降り注ぐ砲弾はほとんどが艤装に飛ばされ、艤装の攻撃をかいくぐった砲弾も戦艦棲姫の手で悉く弾かれていった。

結局、これもたいした効果はなく、戦艦棲姫の艤装の腕がわずかに焦げ、彼女自身も腕が少し痺れただけで終わったのである。

 

 

戦艦棲姫《全ク、コンナモノガ砲撃ナンテ笑ワセルワネ。 イイ? 砲撃ッテイウノハ、コウスルモノヨ》

 

 

そういって、今度は彼女が艤装に砲撃するよう命じると、肩についている砲門がいっせいに火を噴き、向かってきた艦娘を瞬く間に蹴散らしていった。

同時に、バケモノのような艤装の口からも特大の砲弾が吐き出され、周囲に凄まじい爆風を放った。

砲弾から放たれた爆炎と衝撃波は、辺りにいた艦娘を吹き飛ばし、その艤装を破壊していく。

戦艦棲姫に接近しようとしていた暁と電も衝撃波に飛ばされないよう耐えていたが、

 

 

電「暁お姉ちゃん、危ないっ!!」

 

 

破壊された艤装の破片が、暁目掛け真っ直ぐに飛んできた。 当たれば大怪我は免れない。

 

 

熊野「きゃあっ!!」

 

鈴谷「いったぁ!!」

 

暁「熊野さんっ!! 鈴谷さんっ!!」

 

 

近くにいた鈴谷と熊野が咄嗟に暁の前に出て、代わりに艤装の破片を受けとめた。

おかげで暁に怪我はなかったが、鈴谷と熊野はその場に倒れこみ、同時に衝撃波が二人と暁をその場から引き離していった。

電も追いかけたくても、未だに身動きは取れないまま。 こうして飛ばされないよう耐えるだけで精一杯なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ようやく衝撃波が収まり、電が顔を上げるとそこは地獄絵図だった。

 

 

電「あ… ああ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りは砲弾から発せられた炎が轟々と燃えており、傷つき呻く艦娘達の姿を煌々と照らし出していた。

周囲には破壊され鉄クズとなった艤装がプカプカと浮いて、中にはその艤装に掴まって漂流者のように浮いている艦娘の姿もあった。

皆顔や体から血を流し苦しみ、無事に立っていた者は自分を除いて誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《アトハ、ソコノオ嬢チャンダケカシラ?》

 

電「ひっ…! あ、あ……!」

 

 

勝ち誇るように電の前にやってくる戦艦棲姫。

他の艦娘たちは戦艦棲姫の砲撃に吹き飛ばされ、皆呻き声を上げもだえている。 今この場に立っているのは自分と目の前の悪魔だけ。

戦おうにも手は震えて主砲は構えられず、逃げようにも膝が震えて動く事もままならない。

自らの死をも予感した電。 だが、戦艦棲姫は電の肩に手を置き囁きかけた。

 

 

戦艦棲姫《コノママ沈メテアゲテモイイケド、今回ハ見逃シテアゲルワ。 代ワリニ、タウイタウイ泊地トトラック泊地ノ提督ニ言伝ヲシテホシイノ》

 

電「えっ…? こと…づて…?」

 

戦艦棲姫《ソウ。 『私ハカスガダマ沖ニイル。 期限ハ3日。 ソレマデニ来ナケレバ、次ニ出会ッタ者ハ人間ダロウト艦娘ダロウト容赦ナク殲滅スル』 内容ハ以上ヨ》

 

戦艦棲姫《ジャア、チャント伝エテネ。 ウフ… アハハ…! アーッハッハッハッハッ!!》

 

 

高笑いを浮かべながら戦艦棲姫は随伴艦たちを連れてこの場を去っていった。

恐怖から開放された電は力なくその場にへたり込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電「う…うう…。 ごめんなさい、司令官さん。 電、何もできませんでした…」

 

電「鈴谷さんも熊野さんも、暁お姉ちゃんも戦おうとしたのに… 電は、その場で震える事しかできませんでした…」

 

電「司令官さん… 電は…電は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電「電は、どうすればいいのですか…?」

 

 

涙をぽろぽろと流し、電はその場にいない人物に問いかける。

だが、彼女の言葉に応えれるものは、誰もいなかった

 

 

 

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