艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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久しぶりの本編投稿です。 次の話は製作中ですが、他に番外編や書きたい話ができればそっちも書いていきたいので、次から投稿は遅くなりそうです。 申し訳ないです…





第63話 その思いを引き継いで

 

 

それは、今から1ヶ月前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

西方海域にある島、ジャム島付近の海域を哨戒中の事。

そこには一隻のクルーザーが停泊しており、一人の提督がさきほどから青く広がる海原を眺めていた。

しばらく表情を変えずに海を見ていた彼だが、こちらにやってくる数人の艦娘に気付くと顔をほころばせた。

 

 

電「司令官さん。 こちら異常なし、なのです」

 

提督「ああ、分かった。 報告ありがとう電。 暁もお疲れ様」

 

暁「べ、別に疲れてなんかいないわ。 これぐらいたいした事ないし…!」

 

提督「おやぁ? それじゃ、ご褒美の特製アイスはいらないかな?」

 

暁「なっ!? い、いらないなんて言ってないじゃない! 熊野さんから、『一人前のレディは食べ物を粗末にしちゃいけない』って教わったんだから!!」

 

提督「ごめんごめん。 ちゃんと暁にも上げるから、そんなに怒らないで」

 

 

長距離移動用のクルーザーにいる提督に、顔を真っ赤にしながら怒る暁。

おろおろとする電に見られながら、提督は苦笑しながら謝った。

 

 

鈴谷「提督~! さすがに疲れちゃったから、帰ったら鈴谷たちの事ちゃーんとねぎらってね♪」

 

熊野「もう、鈴谷ったら! 提督にそんな事言うものじゃありませんわ」

 

提督「いいさ熊野。 鈴谷も今回は旗艦として頑張ってくれたんだ、僕もちゃんとねぎらってあげなきゃバチが当たるよ」

 

熊野「全く… 鈴谷もそうですけど、提督も甘すぎますわ。 たまにはビシッと言ってやらなきゃ、鈴谷が余計図に乗りますわよ」

 

 

勢いよく人差し指を突きつけながら、熊野は提督にそう叱責する。

 

 

提督「ああ、肝に銘じておくよ。 それより二人とも、そろそろ引き上げるから戻っておいで」

 

 

仕方ないですわね…、とため息を吐きながらクルーザーに乗り込もうとする熊野。

でも、そんな彼女も内心では彼のそんな優しい所を好いていた。

いつも励ましの言葉で送り出し、いつも笑顔で自分達の帰りを待ってくれる提督。

新米ゆえか軍人としては甘い男だったが、それでも熊野は提督の事が大好きだった。

いや、自分だけじゃない。

鈴谷も暁も、そして初期艦として常に側にいた電も。

皆、彼を慕ってこの艦隊にいるんだ。

これからも、私たちは彼と共に歩んでいこう。

そう心の中で自分に言い聞かせ、彼女は提督の元へ戻ろうとした。 そのときだった…

 

 

 

 

 

 

 

『それ』は、突然訪れた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオオオオン!!

 

 

突如自分達と提督の間に割ってはいるかのように飛来した砲弾。

それは海面に当たり、巨大な水柱を打ち上げながらお互いを遮った。

何が起きたか分からず困惑する電たち。 提督も手すりにしがみつき、揺れるクルーザーから振り落とされないようにしているのがやっとだった。

 

 

提督「な、何なんだ今のはっ!?」

 

 

揺れが弱まり、どうにか頭を上げた提督は自分の目の前、クルーザーの先にいる存在に気がついた。

 

 

戦艦棲姫《ウッフフフ♪ ヤット会エタワネ、呉鎮守府ノ提督サン》

 

提督「お、お前は一体!?」

 

戦艦棲姫《部下達ノ話デハ、コノ辺リヘ哨戒中ト聞イテイタカラネ。 網ヲ張ッテイタ甲斐ガアッタワ》

 

 

文字通り化け物じみた艤装を背に、クルーザーの元へとやってきた戦艦棲姫。

先ほど砲弾を放ったであろう主砲からは、うっすらと煙が上がっている。

戦艦棲姫は艤装に、提督を捉えるよう命じ、艤装はその大きな腕を伸ばし提督を掴み上げた。

 

 

提督「そ、そうか…。 少し前から、ここらで次々に艦隊を襲う深海棲艦がいると聞いていたが、お前の事だったのか…。 …ぐぅっ!」

 

戦艦棲姫《アラ、私ノ事知ッテタノ? ソレハ意外ネ》

 

 

艤装の手に締め上げられながらも、提督は戦艦棲姫を睨みつけ、話を続ける。

 

 

提督「ぼ、僕達が…くっ…! ここに来た理由は……お前がどこにいるかを…突き止めるために…やってきたんだ。 …わ、わざわざ…そっちから出てきてくれるとは……さ、がす…手間が…省けたよ……ぐぁっ!!」

 

戦艦棲姫《コンナ状態ナノニ気丈ナ男ネ。 ナラ、ツイデニ教エテアゲル。 私ガ艦隊ヲ襲ウノハ、貴方ノヨウナ有能ナ指揮官ガ欲シイカラヨ。 ダカラ、邪魔ナ艦娘タチハ排除シテル。 分カッタカシラ?》

 

提督「…って事は何か? お前は……僕に…指揮官になれと…言うのか?」

 

戦艦棲姫《話ガ早クテ助カルワ。 ナラ、貴方ノ返答ヲ聞カセテ頂戴》

 

提督「……ああ、いいとも。 …僕からの…返答は……これだっ!」

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、提督は戦艦棲姫へつばを吐きかけた。

戦艦棲姫は無言で自分の顔にかかった唾をぬぐい、提督は体を締め付けられる苦しみに顔をゆがめながらも、「ざまあみろ」と言わんばかりの顔で戦艦棲姫を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

提督「僕は…、電や他の艦隊の仲間達を傷つけたお前の言う事など絶対に聞かない…。 そんなことするくらいなら、死んだほうがマシさっ!!」

 

戦艦棲姫《…ソウ、残念ダワ。 ソレジャ……》

 

 

戦艦棲姫は艤装にハンドサインを送ると、艤装は目の前の海へと提督を放り投げる。

水面に叩きつけられた提督が小さく呻くと、今度は艤装についていた砲門が一斉に火を噴いた。

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《オ望ミ通リ、殺シテアゲルワ》

 

 

 

 

 

戦艦棲姫の放った砲弾は熱風と黒煙を上げながら、水面に浮かんでいる提督へと襲い掛かり爆発。

轟音が響き渡り、激しく波しぶきが立ち、それが収まった頃には提督の姿は影も形もなくなっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電の話を聞いたウチは、気付くとわなわなと拳を震わせていた。

電はなるべく淡々と話そうと、悲しみを押し殺して話を続ける。

 

 

電「司令官さんを消し飛ばしたあと、姫は電たちには目もくれずその場を去っていきました。 電たちは必死に司令官さんを呼びましたが、司令官さんの姿はどこにも見当たらなかったのです」

 

暁「結局、私たちは司令官の亡骸を弔う事もできなかったの。 だから、せめて暁たちで司令官の敵をとりたかったのよ!!」

 

 

電とは対照的に、目に涙をためながら叫ぶ暁。

その姿は、まるで自分の心の内にある悔しさを吐き出すかのようだった。

 

 

正也「な、なんだよそれ…。 そんなひどいことって、あるのかよ…!?」

 

幸仁「落ち着け正也っ!」

 

 

怒りに震えるウチに、兄ちゃんが肩に手を置き宥める。

そんなとき、神原さんがいつになく真摯な顔つきでウチに話しかける。

 

 

 

 

 

 

神原「……。 中峰君、実は君にもう一つ話しておかなければならない事がある」

 

正也「っ? どんな話ですか、神原さん」

 

神原「君が元々は提督代理でここに来た事情は覚えているかね?」

 

正也「はい。 本来着任するはずの提督が他所の鎮守府に配属になったから、ですよね?」

 

 

そう、ウチがトラック泊地の提督になったきっかけ。 それは本来トラック泊地に着任するはずの提督が、大本営からの通達で他の鎮守府へと配属になってしまったこと。

トラック泊地が提督不在になってしまうという事態を回避するため、ウチが提督になると進言して今に至ったのだ。

でもそれが一体何の関係が…?

神原さんの意図が読めず、ウチは一人困惑していたとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど… これはまた皮肉な話だ」

 

 

そう答えたのは、ウチの隣にいた兄ちゃんだった。

 

 

正也「…? 兄ちゃん、一体どういうこと?」

 

幸仁「分からないか正也? お前は本来着任するはずの提督に代わって、このトラック泊地の提督になった。 なら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸仁「その本来着任するはずだった提督は、今どうしていると思う?」

 

正也「どうしているって…………ま、まさか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神原「気付いたようだね。 そう、君のいるトラック泊地に本来着任するはずだった提督の名は笹垣昌平(ささがきしょうへい)。 彼がトラック泊地に代わって配属されたのは呉鎮守府。 そして彼の初期艦こそ、君達の目の前にいる艦娘、駆逐艦電なんだ」

 

正也「それじゃあ、その殺された提督っていうのは…」

 

正也「あいつの……漣の提督になるはずだった人…だったのか……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神原さんが打ち明けてくれた事実。

それを聞いたとき、ウチは自分の中の驚きがパニック寸前まで達しているのを感じていた。

まさか、彼女の提督とウチにそんな接点があったなんて…

神原さんの話を聞いて、暁と電も目を丸くしていた。

 

 

暁「そ、そんな話は暁も初めて聞いたわよ!?」

 

正也「うん、ウチも正直驚いてるよ。 まさか、ウチと君達がこんな形で関わりがあったなんて…」

 

電「そ、それよりもいいですか!? あの、貴方がトラック泊地の提督というのは本当なのですか!?」

 

正也「えっ? …ああ、そうだよ。 それが一体…?」

 

電「…実は、貴方とタウイタウイ泊地の提督さんに姫という深海棲艦から言伝を預かっているのです…」

 

電「『私ハカスガダマ沖ニイル。 期限ハ3日、ソレマデニ来ナケレバ、次ニ出会ッタ者ハ人間ダロウト艦娘ダロウト容赦ナク殲滅スル』 姫は、そう言っていました…」

 

正也「……。 兄ちゃん、これって…」

 

幸仁「ああ…。 どうやら、俺達に本格的に宣戦布告してきたようだな」

 

 

ウチと兄ちゃんはお互いに顔を見合わせる。

もう、考える余地はなさそうだ。

 

 

正也「それじゃ兄ちゃん、ウチ等であいつを…」

 

幸仁「いや、まだそれを決めるわけには行かない」

 

 

倒しに行こう。 ウチはそう言おうとしたが、兄ちゃんはどこまでも冷静だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸仁「考えてみろ正也。 奴はこれだけの数の艦娘をたった一人で返り討ちにするほどの強さだ。 俺やお前が挑んだ所で勝てるかどうか分からないんだぞ」

 

正也「だからって、このままじゃ三日後にはあいつは関係のない者にまで危害を加えるつもりなんだよ! それに、あの時ウチ等にはあいつと戦うという選択もあった。 そうすればこんな被害を出さなかったかもしれないじゃないか!!」

 

幸仁「勇気と無謀を履き違えるな! それに、戦うの俺達だけじゃない。 俺達が行くという事は、俺やお前の艦娘も戦う事になるんだ。 お前一人のエゴのために、お前は艦隊の仲間を危機に晒すのか? それは提督として、人の上に立つものとしてとるべき考えじゃないんだぞ!!」

 

正也「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兄ちゃんの言いたい事はよく分かる。

 

兄ちゃんの言ってる事は正しいさ。

 

これだけの強さを持つ相手に挑む事がどれだけ無謀か。

 

これだけの強さを持つ相手にあいつらを巻き込む事がどれだけ危険か。

 

あいつと戦おうという考え自体が、提督としてどれだけ馬鹿げたものか。

 

ウチにだって、分かっていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………でも、それでも…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「ウチはやっぱりこのまま見過ごすなんて真似できないよ!! あいつがウチ等を狙ってることが分かっている以上、ウチ等があいつを倒さなきゃ、誰があいつを止めるのさ!? 誰がここにいる艦娘達を助けるのさ!? 誰があいつらを………漣を、叢雲を、艦隊の皆を守るのさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチは声を荒げて兄ちゃんに言い返した。

ウチは兄ちゃんみたいに頭がよくないから、こうして自分の気持ちを言葉にすることしかウチにはできなかった。

兄ちゃんはウチの顔を見て小さくため息をつくと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸仁「……。 お前のその考え方、昔から変わってないな。 …ったく、つくづく俺もバカな弟を持っちまったよ」

 

幸仁「まあ、こうして期限を出された以上このまま黙っているわけには行かないか。 あいつと戦うのは避けて通れない事だし、なにより…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸仁「あいつを倒せないようじゃ、この戦争を終わらせるなんて夢物語だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこか遠い目をしながらつぶやく兄ちゃん。

それは一体誰に向かっていった言葉なのか…

 

 

 

 

 

 

幸仁「…分かったよ。 やってみろ正也、お前にそれだけの覚悟があるのならな。 俺も協力してやるよ」

 

正也「ありがとう、兄ちゃん!」

 

幸仁「お前は止めるだけ無駄だって分かってるからな。 ただ、やるからには絶対に勝つぞ!!」

 

 

その言葉に、ウチも大きく頷く。

負けるつもりなんかない。 あいつは、絶対に許せないから!!

 

神原「……。 やはり、君達の力を借りる事になってしまうか。 本当に、君達には感謝の言葉しか出ないよ」

 

幸仁「とんでもない神原さん。 むしろ、このバカの無茶に付き合わせてしまって、こっちがすみませんですよ」

 

正也「うぐぐ…」

 

 

兄ちゃんは笑顔で神原さんに謝る。 ウチの頭をばしばし叩きながら…

怒りたい所ではあるが、現にウチの勝手でこうなっている以上怒りようもなく堪えていると、

 

 

電「あ、あの…。 本当に、あの深海棲艦を……姫をやっつけてくれるのですか?」

 

 

そこには、目をうるわせながらウチに尋ねる電の姿があった。

 

 

正也「その…。 電たちの提督、助けてあげられなくてごめん。 その代わり、約束するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「あの姫って深海棲艦…。 戦艦棲姫は必ずウチがブッ飛ばす!! もうこれ以上、こんな悲劇は繰り返させないから電たちも信じて待っててくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その言葉、信じていいんだね?」

 

 

突然電の後ろから聞こえてきた声。 そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「鈴谷っ! 熊野っ! それに漣と叢雲も!?」

 

叢雲「アンタ達が熱く叫んでる声が聞こえたから様子を見に来たのよ」

 

漣「もちろん、戦艦棲姫と戦うという件もバッチリ聞いてましたよ」

 

 

入渠を済ませ、傷が癒えた体でウチ等の話を聞く鈴谷と熊野、そして漣と叢雲の姿があった。

 

 

鈴谷「今回あいつと戦って分かった。 ……悔しいけど、鈴谷たちじゃあいつには勝てない。 鈴谷たちの思い、君達に託していいかな?」

 

熊野「まことに勝手な頼みですけど、どうか私達に代わってあの悪魔を倒してください。 お願いします、提督の仇をとりたいのです…」

 

 

そう言って、深々と頭を下げる鈴谷と熊野。

それに続いて、電と暁もぺこりとお辞儀をする。

 

 

暁「暁からもお願い。 司令官のためにも、絶対あいつをやっつけてね…!」

 

電「電からもお願いするのです。 姫に大好きな人を殺されて、悲しんでいる艦娘さんは大勢いるのです。 これ以上、他の誰かが悲しむのは見たくないのです…」

 

 

電たちからの頼みに、ウチは無言の同意を示す。

そして、ちらりと同行してきた漣に注意を促した。

 

 

 

 

 

正也「…まあ、そういうわけだ。 流石に今回は相手が危険だし、なによりウチが勝手に決めたことだ。 ウチの都合で皆を巻き込みたくはないし、お前や他の皆が今回出る必要はな…」

 

漣「えいっ♪」

 

正也「ぶへっ!?」

 

 

話していると、なぜか漣から顔面グーパンを入れられた。

 

 

 

 

 

漣「何情けないこと言ってんですか! これまでどんだけご主人様の無茶につき合わされたと思ってんですか。 漣も皆も好きでここまで来たんです。 こうなりゃ徹底的に付き合いますよ、漣はしつこいから♪」

 

正也「あ、あはは…。 サンキューな、漣」

 

 

ウチは痛む頬をさすりながら、漣に礼を言った。

痛みはあるけど、それ以上に今は嬉しさが勝っていた。

 

 

 

幸仁「叢雲、お前は…」

 

叢雲「アンタが何と言おうとアタシはついていくわよ。 アンタ言ってたじゃない、『俺みたいな奴の作戦をこなせるのはお前しかいない』って…」

 

叢雲「アタシはアンタのためならどんな無茶な作戦でもこなしてみせるから、アンタはアンタで自分の成すべき事を必ずやり遂げなさい」

 

幸仁「……。 ああ、分かったよ」

 

 

叢雲にぴしゃりと言われた兄ちゃんは、そう聞くと素直に押し黙った。

気のせいか、その表情はどこか嬉しそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「やろう、漣・兄ちゃん・叢雲。 この戦い、勝ちに行こう!!」

 

漣「了解です、ご主人様♪」

 

幸仁「ああ、もちろんっ!」

 

叢雲「当然よっ!」

 

 

 

 

 

 

 

もう迷いはない。

 

ウチのこんな無茶な頼みでも、漣はウチを信じて付いてきてくれる。 兄ちゃんはウチを支え助けてくれる。 叢雲はウチ等と共に戦ってくれる。

 

この戦いを決めたのはウチ一人だ。

 

でも、この戦いはウチ一人だけのものじゃない。

 

ウチや兄ちゃん、漣や叢雲、そして電たち皆の思いを背負った戦い。

 

そう、これはウチ等全員の戦いなんだ。

 

待っていろ戦艦棲姫。 これ以上お前の好きにはさせない。

 

お前をブッ飛ばして、ウチはこの悲劇を終わらせる。 これ以上、誰かが誰かを失い悲しむような真似なんてさせやしない。

 

そして見ててくれ、呉鎮守府の提督さん。

 

アンタの艦娘達の思いはウチが引き継ぐ。

 

アンタの無念は、ウチが必ず晴らしてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「行くぞ、トラック泊地・タウイタウイ泊地連合艦隊。 抜錨だ―――――!!!!」

 

 

 

「「「オオ―――――ッ!!!!」」」

 

 

 

横須賀鎮守府の入渠ドックに響き渡る決意の声。 こうして、戦艦棲姫との戦いの火蓋が切って落とされたのであった。

 

 

 

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