正也「やっとついた。 もうお昼になっちゃったな」
太陽が空の真上に昇る頃。
正也たち三人は自分達の住むトラック泊地へと戻ってきた。 一日しか開けてなかったものの、こうして戻ってくるとどこか実家のような懐かしさを感じ、正也も思わず足を止めてしまっていた。
正也「なんか、久しぶりに帰ってきたって感じがするな。 一日しかあけてないのに…」
金剛と榛名は少し負傷していたので入渠ドックに向かわせ、正也はいつも提督として過ごす中央建物へと向かっていった。
正也「えっ? あれは…」
建物の入り口へ来ると、そこには鳳翔を中心に大勢の駆逐艦が彼を出迎えていた。
鳳翔「提督…」
正也が驚いていると、鳳翔が一歩前に出て大きく頭を下げた。
鳳翔「このたび、上官である貴方に対して大変無礼な行いをした事、深く反省しております。 私ども、こうして貴方から罰を受けるべく帰りをお待ちしておりました…」
悲しげな表情を浮かべたまま口上を述べる鳳翔。
周りの駆逐艦娘たちも鳳翔と正也に不安げな顔を向けている。
鳳翔「ただ、一つお慈悲を頂けるのであれば、この件に関しての罰は私一人に受けさせてください。 この子達は悪気があってやったわけではないのです。 代わりに、私がいかなる罰でも受ける所存です。 どうか、お願いします……」
雪風「しれえ、鳳翔さんは悪くありません! 悪いのは、しれえにイタズラした雪風です! だから怒るなら雪風に怒ってください!!」
巻雲「そうです! 元は巻雲達もしれーかんさまにひどいことしたんですから、罰を与えるなら巻雲達にしてください!!」
次々に鳳翔を擁護する駆逐艦たち。
正也は雪風たちを見回すと、小さく息をはいて答える。
正也「…そうだな。 鳳翔さんには悪いが雪風たちも共犯である以上その頼みは聞けない。 ちゃんと、あいつらにも罰を受けてもらうぞ」
鳳翔「提督っ!?」
鳳翔はどうか考えを改めてほしいと頼むが正也は聞き入れず、雪風たちを初めとした駆逐艦の面々はこれからどんな罰が下されるのかという恐怖に、目を閉じながらじっと堪えていると…
正也「お腹空いたっ!!」
正也の大声が響き渡った。
鳳翔「えっ…?」
突然の事に唖然とする鳳翔と雪風たち。
そんな彼女達を尻目に、正也は話を続ける。
正也「実は、今朝山城から金剛と榛名の二人が自棄になって飛び出したのを聞いて、急いで助けに行ったんだ。 おかげで朝から飲まず食わずで腹ペコなんだよね。 よって、鳳翔さんはこれからウチとみんなの分の昼食を作ること! そして、雪風たちは食堂に行って鳳翔さんのお手伝いをすること! これを今回の一件についての罰とする。 以上!!」
正也の話を聞いて呆然とする一同。
曲がりなりにも上官である提督に、自分達は慇懃無礼な行いをした。
そのことでどんな罰が下されるのかと内心恐れていたら、返答は食事を作れといういつもやっていることだった。
しかし命令は命令。 鳳翔は我に戻ると、
鳳翔「わ、分かりました! では、すぐに昼食のご用意をしますのでお待ちください!」
雪風「しれえっ! 雪風も鳳翔さんのお手伝いをするため、すぐに食堂へ向かいます!」
正也「ああ、楽しみにしてるよ鳳翔さん。 雪風も、ちゃんと鳳翔さんの言うこと聞くんだぞ!」
正也からの罰をこなすべく食堂へと駆け出していき、雪風たちもその後についていった。
雪風たちを見送っていた正也だが、そこへ山城が声をかける。
山城「全く…。 あんな目にあわされたっていうのに、罰がそれだけなんて提督は甘すぎるわよ」
正也「まあ、それはウチも思うけどさ… 皆が必死に謝る姿見てたらさ、今までの仕打ちなんて自分の中ではどうでもよくなっちゃったんだ」
正也はそういうと、他の皆を呼びに行くべくその場から離れ、山城は正也の後姿を何も言わず見送っていた。
場所は変わって演習場。 正也はいつも空母の艦娘たちが訓練に使っている弓道場へとやってきた。
正也「おっ、いた。 おーい、蒼龍ー!!」
入って一番最初に出会った空母、蒼龍に大声で呼びかけた。
蒼龍「あわわわ!? て、提督っ!!」
正也「あの件なら、ウチはもう気にしてないよ。 アレは薬のせいでああなってただけなんだから」
蒼龍「で、でも私も提督に散々暴力をふるって…!」
正也「本人がいいって言ってるんだからいいの! それより加賀さんは?」
蒼龍「…あそこ」
蒼龍は気まずそうに弓道場の端を指差すと、そこに加賀はいた。
何も言わず正座しており、気付いているのか分からないがこちらに反応する様子はない。
正也は早速声をかけようと向かうが、
正也「おーい加賀さん! これからメシ食いに…」
加賀「来ないでくださいっ!!」
弓道場に響く加賀の声。
その気迫に、正也も思わず足を止めてしまった。
正也「どうした加賀さん… もしかしてまだウチが嫌いか…?」
加賀「そうじゃ…ありません… 私は…貴方に合わせる顔がないんです……」
顔を向けず、瞳を閉じたまま正也の問いに答える加賀。
その姿は、こちらに近づくなという無言の圧力を感じさせるものだった。
正也「薬のことなら気にしてないよ。 アレは加賀さんも影響を受けただけなんだし」
加賀「それでも、私が提督を侮辱した事に変わりはないわ!!」
すさまじい剣幕で言い放つ彼女に戸惑う正也。
ふと加賀の手を見ると、そこには小さいがあちこちに切り傷や刺し傷がついていた。
正也「加賀さん、その手怪我してるじゃないか!」
加賀「…こんなもの、貴方に与えた傷に比べればほんの些細なものです」
正也「な、何を言って…!?」
加賀「覚えているんです、あのときの事を…」
そういうと、加賀はほんの少しだけ目を開いた。
加賀「私が提督を傷つけたとき、貴方は暗く悲しい顔をしていた。 辛い思いを必死に隠そうと必死に笑顔で取り繕うとしていた…」
加賀「…私はそれを見て、内心ほくそ笑んでいた。 『いい気味だわ』 『これで、ここを出て行く気になるでしょう』 …と、心の中で貴方を蔑んでいた」
加賀「…だからこそ、私は許されないんです……」
すると、加賀は背中の矢筒に手をかけ一本の矢を取り出す。 矢の先端には、微かにだが赤い血がこびりついていた。
加賀「他の者達が私を許しても…」
正也「やめてくれ、加賀さん…」
加賀「貴方が私を許しても…」
正也「やめるんだ、加賀さん…!」
加賀「私が、私を許せないんですっ!!」
その言葉と共に加賀は自分の腕へと手にした矢を振り下ろす。 自分で自分に罰を下すために…
「やめろっつってんだろ、加賀あっ!!!!」
突如加賀に飛んできた怒声。
驚きのあまり自然に手が止まった彼女は、自分に怒鳴りつけてきた相手。 正也にゆっくりと顔を向けた。
正也「自分で自分を傷つけて、それが傷つけた相手への償いになると本気で思っているのか!?」
正也「そんなの、償いでもなんでもない! ただの独りよがりの自己満足でしかないじゃないか!!」
正也「もし加賀さんの大事な人が加賀さんを傷つけた罰だといって自分に怪我を負わせたら、加賀さんはそれを許せるのかよ!?」
正也の言葉に加賀はおのずと手の力が緩み、手にしていた矢を床に落とした。
とめどなく溢れてくる涙を拭うことなく、彼女は正也を見続ける。
正也「本気で償いたいと思うのなら、もう自分を傷つけるのはやめてくれ。 加賀さんにとっては苦しいかもしれないが、もう加賀さんが傷つく姿は見たくないんだ。 頼む…」
加賀「提督… 私、私は……!」
目の前で泣き崩れる加賀を見ながら、正也はどうしようかと考える。 元々生真面目な性格の彼女ゆえ、今回の一件はそう簡単には割り切れないのだ。
正也(加賀さん、相当参ってるな……。 何か、代わりになるようなことは……そうだ!)
正也「あのさ、加賀さんってお菓子は作れるの?」
加賀「えっ…? まあ、一通り料理はできますが…?」
正也「よしっ、それじゃ明日の秘書艦は加賀さんにするから、明日の休憩時間にお茶菓子を作ること。 これを今回の件についての罰にする、いいね?」
加賀「…あっ、はい。 分かりました、提督がそうおっしゃるのであれば…」
正也「よし決まりっ! んじゃ、もうすぐ昼飯になるから二人とも早く食堂に来なよー!」
正也はいつものように笑って加賀に提案すると、他のみんなを呼びに行こうと演習場を後にしようとしたその時、
蒼龍「あれっ、ちょっといいですか提督?」
二人の様子を見ていた蒼龍が素っ頓狂な声を上げた。
正也「うおっ? どうした蒼龍」
蒼龍「いや、提督さっき加賀さんのこと『加賀』って呼び捨てで呼んでましたね。 私初めて聞きましたよ」
正也「え……あっ! そういやそうだった。 いやごめん加賀さん、ウチもあの時は興奮して、ついうっかり…」
加賀「いえ… むしろ、提督が初めて私を呼び捨てで呼んでもらった事、正直嬉しかったです。 だから、その…」
加賀「…こ、これからも加賀と呼んでもらえますか? 提督…」
正也「あ…ああ、分かった。 そうしてほしいんなら、ウチもこれからはそうするよ。 じゃあウチは行くね、加賀さ……加賀」
正也はそう言うと足早に演習場を去り、残ったのは加賀と蒼龍の二人だけになった。
蒼龍「良かったですね、加賀さん。 提督、許してくれて…」
加賀「そうね。 本当に…良かった……」
蒼龍「……。 加賀さん、私先に食堂行ってますから、後からちゃんと来てくださいね」
蒼龍も優しく微笑むと正也と同じく演習場を出て行き、一人残った加賀は止まったはずの涙を流しながらその場に崩れ落ちるのであった。
加賀「うう、うっ…… 提…督…… あり…が…とう……!」
『お別れだな漣。 もう会うこともないだろう』
『えっ…? ご主人様、一体何を言って…』
『お前こそなに言ってるんだ? ウチはもう提督じゃない。 なにせ、ここには必要ない人間なんだからな』
『あ、あれはその…! あの時は漣もおかしかったというか…! とにかく、アレは本心じゃないんです。 信じてくださいっ!』
『もうここへは戻ってこなくていい。 そういったのはお前だろ? お望みどおり、ウチはここを出て自由にやらせてもらう。 正直、お前の暴力行為にはウンザリしていたからな』
『じゃあな、見ず知らずの艦娘さん。 新しい提督には、せいぜい優しくしてやれよ』
『ま、待って! 行かないで提督!!』
『提督っ! 提督―――――!!』
漣「…はっ!! ……ゆ、夢か…」
執務室の執務机。
いつも提督の定位置であるこの椅子に漣は腰掛けていた。
彼女は後悔していた。
提督である正也に対してもう戻ってこなくていい、と言ってしまったことを。
暴言を吐いた次の日、漣は正也に対して自分がどんなひどい言葉を浴びせたのかを思い出した。
すぐに寮を飛び出し、彼女は執務室に行ったが正也はいなかった。
そして山城から告げられた、提督はここを出て行ったという事実。
その話を聞いて、あるものは泣き崩れ、あるものは自棄になって海に飛び出した。
漣も正也を追おうとしたが、自分は秘書艦であるという義務感が彼女を押しとどめた。
今まで彼が守ってくれたこの泊地を放り出すわけには行かない。
漣はその一心で、臨時秘書艦を買って出た響の助力の下、今日の執務をこなした。
そしてこの日の執務を終えた安堵感からか、いつの間にか彼女はうたた寝をしていた。
提督が自分の目の前で去っていく。 そんな悪夢を見ながら…
気がつくと、漣の瞳からはボロボロと涙がこぼれていた。
彼女は痛感した。
自分達がどれだけおろかなことをしてしまったのか。 どれだけ泣いて謝っても、彼に償うことはできないんだと…
漣「うっ…うっ…! こんな…こんなのってないよ…!」
漣「もうあんな事言わない… もうあんなひどい事しない… 許してもらうためなら何でもする… だから……!」
漣「戻ってきてよ、提督―――――――――!!!!」
「んっ? 今なんでもするって言ったよね?」
突然聞こえてくる聞きなれた声。
驚いて頭を上げた漣の目に飛び込んできたのは、執務室の扉に寄りかかりながらこちらを見る正也の姿だった。
漣「て、提督っ!? うそ…、もう戻ってこないんじゃ…?」
正也「あのな、確かに出て行ったけどウチがいつ戻ってこないなんていったんだ? ウチだって、たまには一人になりたいときもあるっつーの」
漣「で、でも…! 漣は散々提督に傷つくようなこと言って…。 挙句、もう戻ってこなくていいって…!」
正也「全く… いいか? 漣」
正也「ウチが今までどんだけお前に傷つけられたと思っているんだ? あるときは拳骨を喰らわされ、あるときはヘッドロックで絞められ、またあるときは砲撃で吹っ飛ばされ、お前につけられた傷なんて数えたらキリがないぞ」
正也「それに比べればあんな罵倒、ちーとも効いてないっつーの。 大体アレは薬の効果でああなってただけなんだ。 それでお前を嫌いになるつもりなんて微塵もないよ」
漣「提督…」
正也の言葉に安堵したのか、床にへたり込む漣。
そんな漣の頭をやさしくなでながら、正也は言った。
正也「分かったら、いつもの漣に戻ってくれ。 ウチはいつものお前とのやり取りが一番楽しいんだ。 頼むぜ、秘書艦様♪」
いつもの提督の声。
聞いてて心がほっこりする、いつもの彼の声。
漣はくすりと笑うと、笑顔で顔をあげ、
漣「りょーかい。 それじゃ、漣もいつもの調子に戻りますね。 ご主人様♪」
正也「そうそうその調子。 それじゃ、これから昼飯だから先に食堂行っててくれ、漣」
漣「かしこまり~♪ ご主人様も、早く来てくださいね」
そういって、漣は執務室を後にして食堂に続く廊下を進んでいく。 そこへ…
漣「あっ、山城さん…」
山城「……。 提督に感謝することね。 貴方には言わなかったようだけど、提督は私に泣きついた後こう言っていたわ」
『確かに、皆から嫌われたり暴力を振るわれたのは辛かったけど、ウチにとって一番辛かったのは……』
『あいつに…、漣にもう戻ってこなくていいと言われたことだな…』
そのことを伝えた山城はそのまま廊下を去り、漣は膝を折り両手で顔を覆ったまま、その場にいない人間にただ謝罪の言葉を述べていた。
漣「…そうだったんだ。 本当は、辛かったんだね……」
漣「…ごめん。 …本当にごめんね、提督……」
仲間や恋人というのは最初からずっと仲良しというわけではない。
時にすれ違い衝突し、そうした困難を乗り越え、分かち合うことでお互いに絆を深めていく。
今回のことはウチにとっては辛い出来事だが、同時にあってよかったと思っている。
こうした困難があったから、ウチは改めて皆との絆を深めることができたと感じているからだ。
だけど…
金剛「ヘーイ、テートク♪ その… 良い紅茶が入りましたから、早速ティータイムにしまショー」
正也「お…おお、ありがと。 でも今は執務中だから後で…」
加賀「駄目です金剛さん。 提督は私と二人でお茶にするんですから」
正也「いや確かに約束はしたけど、別に二人だけとは言ってないぞ。 加賀さ……加賀」
雪風「しれえー♪ 雪風、しれえと一緒に遊びたいです!」
正也「そうしてやりたいのは山々なんだが、今二人に睨まれてるからその件は後で…」
巻雲「そんな事言わず、巻雲たちと遊びに行きましょうよしれーかんさまー!!」
正也「あ、あのな巻雲…。 気持ちは嬉しいが今はちょっと……」
金剛「そこのちびっ子ガールズ! テートクは私とお茶にするんですから下がってなサーイ!!」
加賀「今提督は執務で忙しいんです。 秘書艦として貴方達の遊びに付き合わせるわけには行きません」
雪風「金剛さんも加賀さんもずるいです! 朝からずっとしれえと一緒で、雪風もしれえといたいです!!」
巻雲「そうですよ! 夕雲姉さんも楽しみにしてるんですから、お二人とも下がってください!!」
正也「お、落ち着け皆! 気持ちは分かるが今は落ち着いて…!」
榛名「提督、榛名にお手伝いできることはありませんか? 遠慮せず、何でもおっしゃってくださいね♪」
金剛「ヘーイ榛名ー! 一人だけ抜け駆けするなんてノーなんだからネー!!」
鳳翔「提督、お昼ご飯は何が食べたいですか? 私、提督の食べたい物をおつくりしますよ♪」
加賀「鳳翔さん、申し訳ありませんが漁夫の利は見過ごせませんよ」
執務室にはウチの事で姦しい叫びが響き渡り、当の本人であるウチは彼女達からもみくちゃにされていた。
どうにか執務室を脱出したウチは息を整えていると、
漣「こんなところで、何してるんですご主人様?」
正也「げげっ! さ、漣…!」
そこにはニッコリ笑顔でウチを見る漣の姿があった。
ウチは知っている。
こういう笑顔の漣ほど、ウチに恐ろしい仕打ちをしてくることを…
ウチはこれから来るであろう仕打ちに思わず身構えていると、
ピシッ
正也「へっ?」
漣に軽くデコピンされた。
漣「あんまり他の子に囲まれてデレデレしていたら、その…… 漣も怒りますからね」
正也「えっ……あっ、ごめん…」
どこかふてくされた声と口調でそういうと、漣はその場を後にする。
呆然としているウチに、漣とすれ違いで今度は山城がやってきた。
山城「提督、大丈夫ですか?」
正也「お、おお… どうにかな」
正也「しかし、これじゃしばらく執務室には戻れんな…」
正也は頭を書きながら先ほど逃げてきた執務室の方を見る。
ここからじゃ執務室は見えないが、未だに金剛たちの騒ぐ声が聞こえており、未だにどんちゃん騒ぎは続いているようだった。
山城「でしたら、少し私に付き合ってもらえますか? もうすぐお昼になりますしお茶でもご馳走してください」
正也「えっ? 別に良いけど、今日扶桑さんは出撃でいないんじゃ…?」
山城「たまには姉様抜きでもいいじゃないですか。 さっ、早く早く!」
正也「わ、分かったからそんな引っ張らんでくれー!」
あの一件以来、艦隊の皆からのスキンシップが増えた事に戸惑うばかりの正也。
仲間達との関係を取り戻せたことを嬉しく思う反面、今までとは少し変わった日常に慣れず、ぎこちなくなることも多々あった。
ただ、彼は気付いていなかった。
今回の件で、自分に好意を抱く彼女達の想いがますます強くなったことを。 そして、お茶に行こうと誘ってくれた山城もその一人であるということを。