艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第66話 絶望の元に集う光

 

 

 

 

敵の防衛ラインを突破したウチ等は、ひたすら海面を疾走していた。

あれからというものの、敵の襲撃は全くない。

まるでここには自分達しかいないのではないか。 そう思ってしまうほど、静かな海を駆け抜けていた。

 

 

正也「どういうことなんだ? 敵の姿が全くない…」

 

漣「油断は禁物ですよ、ご主人様。 敵はいつ襲ってくるか分からないんですから」

 

正也「ああ、そうだな…。 気を引き締めていかないと…」

 

 

隣でウチに注意を促す漣に、ウチも同意の返事を返す。 その時だった…

 

 

幸仁「おい、二人とも! 前を見ろ」

 

叢雲「どうやら、向こうからお出迎えに来てくれたようね」

 

 

兄ちゃんと叢雲の言葉にウチと漣は前を向く。

その先には、水平線以外のものが視界に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《ヤット来テクレタノ? 首ヲ長クシテ待ッテタワ》

 

 

そこにあったのは、あの時リランカ島で出会った敵。

巨大な艤装を携え、不気味な笑みを浮かべながら水面に立つ戦艦棲姫の姿があった。

 

 

正也「ああ。 こっちもお前に会えて嬉しいぞ」

 

幸仁「そうだな。 俺達もお前に会いにここまで足を運んできたからな」

 

戦艦棲姫《ジャア、ココヘ来タノハ私ノ物ニナッテクレルッテコトカシラ?》

 

正也「そうだね。 ウチ等もその返事をしにやってきたんだ」

 

幸仁「お前のものになってくれるか。 その要求に対して、俺達はこう答えるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也・幸仁「「くそくらえだっ!!」」

 

 

 

 

 

同時にはなった否定の返事。

それを聞いた戦艦棲姫は顔を伏せたまま、プルプルと肩を震わせた。 怒りではなく、こみ上げる笑いを抑えるために…

 

 

戦艦棲姫《ウフ… ウフフ…! アハッ…! アーハッハッハッハッ!!》

 

叢雲「な、何がおかしいのよ!?」

 

戦艦棲姫《アッハハ…! ゴ、ゴメンナサイネ。 マサカコンナニバッサリ断ラレルトハ思ワナカッタカラ》

 

戦艦棲姫《デモ残念。 コレデ私ハ貴方達ヲ始末シナクテハイケナクナッタ。 本当ニ残念ダワ》

 

正也「こっちは元よりお前をブッ飛ばすために来たんだ。 覚悟しろよ、戦艦棲姫っ!」

 

 

ウチは艤装の槍を向けて突撃しようとする。 しかし…

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《……イイノ? アノ子達ヲ放ッテオイテ》

 

 

戦艦棲姫は右手を空高く上げながら、パチンッ!と指音を鳴らす。

すると、まるでその音を合図にするかのように海中から数多の深海棲感が現れ、漣と叢雲を取り囲んだ。

 

 

正也「なっ!?」

 

幸仁「しまっ…!?」

 

 

タ級にヲ級、リ級やヘ級と艦種はさまざまだがとんでもない数が二人を包囲している。

相手は駆逐艦二人だというのに、えらい過剰戦力だ。

 

 

戦艦棲姫《私ガ用ガアルノハ貴方達二人ダケ。 余計ナ来客ヲ追イ払ッテモラウヨウ、部下達ヲ海中ニ待機サセテタノヨ》

 

戦艦棲姫《デモ、事情ガ変ワッタ。 貴方達ニハ罰トシテ、大事ナ艦娘ガ目ノ前デ沈ムサマヲ見届ケテモラウワ》

 

 

深海棲艦たちは一斉に二人に向かって武器を突きつける。

ウチはどうにか助けようとするが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

正也「うおっ!?」

 

 

戦艦棲姫の巨大な艤装の腕がウチの行く手を遮った。 丸太のような太い腕を振り下ろし、ウチの進もうとした場所に巨大な水しぶきを打ち上げた。

 

 

戦艦棲姫《余計ナ事シナイデ。 貴方達ハ黙ッテ二人ノ最後ヲ見届ケレバイイノヨ》

 

戦艦棲姫《ソレニ、向コウデハ貴方ノ部下達ガ戦ッテイルヨウネ。 後デ他ノ子達ノ首モ持ッテキテアゲルカラ、楽シミニシテナサイ》

 

 

下卑た笑みを浮かべる戦艦棲姫に、ウチは怒りを露にする。

しかし、助けたくても動けない絶体絶命のこの状況。 一体、どうすれば…!

 

 

 

 

 

 

漣「ご主人様、こっちは気にせずやってください! 漣たちとの約束、忘れたんですか!?」

 

叢雲「私たちはアンタに護ってもらうために来たんじゃないのよ! さっさとそいつをやっつけちゃいなさい!!」

 

 

深海棲艦たちの向こうから聞こえてきた漣と叢雲の声。

この極限の状況で、なお任務遂行を優先しろという二人の言葉。

できるわけがない… 大事な仲間を見殺しにしてまで、ウチにそんなことはできない…!

できないのか…? ウチには、あいつらを見殺しにしてまで奴を倒すことが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もうあのような悲劇は繰り返させない。 私はそう心に誓って、かつて自分が勤めていた横須賀鎮守府の提督として復帰したんだ』

 

 

 

 

『姫に大好きな人を殺されて、悲しんでいる艦娘さんは大勢いるのです。 これ以上、他の誰かが悲しむ姿は見たくないのです…』

 

 

 

 

 

………

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。 そうじゃないか…!

 

神原さんも、電も、大事な人を失って… それでもなお前を向いて進もうとしているんだ!

 

なのに、ここでウチが足を止めたらどうする!? あいつらは何のためにウチ等をここまで送り届けてくれたんだ!?

 

あいつらの思いを、あいつらの覚悟をウチ自身が踏みにじる事になる。

 

そうだ、これはウチ等全員の戦いなんだ。

 

たとえ犠牲が出ようとウチ等はやり遂げなくてはならない。

 

漣も、叢雲もそのためにウチ等についてきてくれたんじゃないか!

 

皆の思いを託されたウチが…

 

皆の覚悟を託されたウチが…

 

ここで止まってどうするんだよ…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也「くそったれ―――――!!」

 

 

気付くとウチは一気に戦艦棲姫目掛け突撃していた。

突然の特攻に兄ちゃんも呆気に取られ、戦艦棲姫は小さく肩をすくめていた。

 

 

戦艦棲姫《フウン… アクマデ私ニ盾ツコウッテ言ウノネ。 ナラ…》

 

 

戦艦棲姫は意思伝達機能で部下の深海棲艦たちに指示を促す。

二人の周囲にいる深海棲艦たちは一斉に漣に向かって主砲を差し向けた。

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫《マズ、貴方ノ艦娘カラ始末シテアゲルワ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「電の本気を見るのですっ!!」

 

 

突然聞こえた幼く高い声。

次に聞こえたのが魚雷が爆発する音と、その魚雷の直撃を受け轟沈する深海棲艦の悲鳴。

その場にいたものたちは一瞬何が起きたのか理解できなかったが…

 

 

「ま… 間に合ったのです……」

 

 

声のした方向。

そこには、息を切らせながら膝に手を置く一人の駆逐艦の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

正也「い、電っ! 何でここにいるんだっ!?」

 

 

漣を助けてくれた張本人、電の登場にウチは思わず目を丸くする。

なぜ、横須賀鎮守府にいるはずの彼女がここにいるのか?

その問いに、電は涙目になりながらも必死に答えてくれた。

 

 

電「鈴谷さんも、熊野さんも、暁お姉ちゃんも皆必死に戦ったっていうのに、電だけ何もできないなんてやっぱり嫌なのです! 姫と戦う力は電にはありませんが、姫の邪魔をすることなら電にもできるのです!!」

 

 

突然の乱入者に驚くも、その正体を見てくすりと笑う戦艦棲姫。

 

 

戦艦棲姫《アラ、誰カト思ッタラコノ前ノオ嬢チャンジャナイ。 貴方モ私ニ噛ミ付クノガ好キナヨウネ》

 

戦艦棲姫《ダケド貴方、今ノ状況ガ分カッテル? 駆逐艦一隻加ワッタトコロデ、コノ軍勢ニ太刀打チデキルカシラ?》

 

 

そう、いくら電が加わった所で戦力差は圧倒的。 戦艦棲姫にとっても自身の優位である事に変わらず、彼女も余裕の姿勢を崩さなかった。

結局轟沈する艦娘が一人増えるだけ… 戦艦棲姫がそう思ったとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいにく一人じゃないんだよね~」

 

 

その言葉と共に、すさまじい水柱が上がる。

それはさっきと同じ魚雷が深海棲艦にあたり爆発したものだった。 しかし、爆発の規模は電の比ではない。

まるで連鎖するかのごとく次から次へと上がる水柱と魚雷の爆発音。

漣と叢雲を囲っていた深海棲艦たちは次々に魚雷の餌食となり、その数を減らしていく。

 

 

戦艦棲姫《ナ、何ダコレハッ!?》

 

 

さすがにこれには戦艦棲姫も動揺の色を隠せず、驚きの声を上げる。

無数の爆発により立ち込める黒煙。 その煙の中から、見覚えのある顔がその姿を見せた。

 

 

 

 

 

 

北上「二人とも、お久しぶり~。 まあ、弟君のほうは舞鶴での私の忠告忘れてたみたいだけど…」

 

大井「やっと見つけたわ、戦艦棲姫。 前に私と北上さんをいたぶったお礼、たっぷりさせてもらうわよ!」

 

正也「北上っ! 大井っ!」

 

 

そこには改二になって重雷装巡洋艦としてグレードアップした北上と大井の姿があった。

しかも、加勢に来たのは彼女達だけでなく、

 

 

伊勢「私たちもいるわよ♪」

 

幸仁「伊勢に日向っ! それに…」

 

 

航空戦艦の艤装をまとい現れた伊勢と日向。 さらに、後ろには遠距離移動用に使われるクルーザーが来ており、そこには二人の提督の姿が乗っていた。

 

 

 

 

 

間宮「中峰さん、ご無事ですかっ!?」

 

大淀「遅くなって申し訳ありませんでした。 敵艦に見つからないよう、多少遠回りしていたもので…」

 

正也「間宮さんと大淀さんまで!?」

 

綾波「行ってください中峰さん。 ここは私たちが請け負います!!」

 

漣「あ、綾波お姉ちゃんっ!? どうして…」

 

綾波「何言ってるの? 妹が皆のためにがんばっているのに、私が何もしないんじゃお姉ちゃん失格じゃない♪」

 

 

そう言いながら、綾波は姉妹艦である漣の頭をやさしくなでる。

その行為に照れながらも、漣はおとなしく綾波に頭をなでられるのであった。

 

 

 

 

 

 

綾波「行きなさい、漣。 護衛艦として、中峰さんを…………貴方の司令官を守り抜きなさい!!」

 

漣「了解っ! 駆逐艦漣、出るっ!!」

 

 

綾波に喝を入れられ、一気にウチの元へと駆け寄ってくる漣。

叢雲も兄ちゃんの元に現れ、ついにウチ等は戦艦棲姫と対立したのであった。

 

 

戦艦棲姫《次カラ次ヘト忌々シイ連中メ…! コウナッタラ、私自ラノ手デ貴様ラヲ葬ッテクレルワ!!》

 

正也「それはこっちの台詞だ。 戦艦棲姫、てめえは絶対許さねぇ…!」

 

幸仁「歯ぁ食いしばれよ。 俺達の家族に手を出した罪は重いぜ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也・幸仁「「お前は、俺達が必ずブッ飛ばすっ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也と幸仁が去った後、必死に抵抗を続けた金剛たち。

最初はどうにか敵を撃退できたが、流石に数に圧倒され徐々に劣勢になっていた。

このままでは押し切られるのは時間の問題か!?

ここにいた誰もがそう思ったとき、その人物達は現れた。

 

 

金剛「な、何で貴方がここニ…!?」

 

 

金剛の言葉に、質問された相手はやんわりと微笑みながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神原「すまないが、君達に沈まれてしまったら、それこそ我々は中峰君たちに顔向けできなくなるからね」

 

大和「勝手ながら、私たちも戦線に参加させていただきますよ」

 

 

深海棲艦達の前に立ちはだかる二人の人物。 横須賀鎮守府提督の神原駿少将と彼の秘書艦、戦艦大和は金剛たちを襲ってきた深海棲艦たちへと武器を向ける。

金剛たちの後ろでは二人をここまで乗せてきた人物、佐世保鎮守府提督赤羽栞がクルーザーに乗ってやってきていた。

このクルーザーは彼女が自作したものであり、中には簡易的にだが艦娘用の入渠ドックが用意されており、一人ずつだが即座に回復ができるよう施されているのだ。

 

 

明石「はーい、傷ついた子達は早く乗ってー! 高速修復材ならたっぷり用意してあるからねー!」

 

 

先の戦闘でダメージを負った金剛たちに呼びかける明石。

神原も彼女に従うよう話し、皆は明石のいるクルーザーへと向かう。

しかし、深海棲艦たちもそれはさせまいとクルーザーへと襲い掛かろうとするが、

 

 

神原「遅いっ!」

 

大和「させませんっ!」

 

 

神原の神速の太刀と大和のすさまじい砲撃により、一瞬で海の藻屑にされてしまい手が出せずにたじろいでいた。

 

 

神原「君達に怨みはないが、私の後ろにいるのは大事な部下の艦娘なんだ。 それを傷つけようというのなら、すまないが斬捨て御免にさせてもらうよ」

 

大和「中峰さんは私たちにとっても大切な人なんです。 その中峰さんの大事なものを奪おうというのであれば、大和は容赦いたしません」

 

 

人間でありながら常軌を逸した強さを持つ神原少将と、艦娘として超弩級戦艦の名を持つ大和。 二人の登場により、完全に形勢は逆転したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和型戦艦一番艦、大和」

 

「横須賀鎮守府提督、神原駿」

 

 

 

 

 

 

 

「推して参るっ!!」

 

「罷り通るっ!!」

 

 




やっとこさここまでこぎつけました。
出したい展開が思いついたり、番外編のネタが思いついたりで本編を書くのが遅くなって申し訳ないです。
次回、戦艦棲姫とのバトル。 そしてこの『決戦! カスガダマ沖海戦編』もようやくクライマックスになります。
次の展開は朧げながらできてますので、次もよろしくです。
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