艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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南西諸島海域編
第7話 トラック泊地提督 中峰正也


 

オッス、ウチ中峰!

一週間の提督代理を経て、このたびトラック泊地の正式な提督になりました!

初めて海軍が着用する白い軍服を着て漣に披露してみたところ、彼女の第一声は

 

 

「プフッ、似合いませんね」

 

 

だった。 ほっとけ!!

 

 

 

 

朝のトラック泊地。

ウチは執務室の机で敵艦隊の情報を表示したタブレットとにらめっこしていた。

 

 

「うむむ、やはりここは手ごわいな…」

 

 

提督代理のとき上げた戦果が大本営に認められ、提督着任と同時に新たな海域への出撃任務が送られたのだ。

 

 

 

南西諸島海域

 

 

 

鎮守府海域で相応の戦果を上げた提督たちが挑む海域で、エリートと呼ばれる中級レベルの深海棲艦が出現する。

戦艦や空母が登場する規模も増えてくるので、ウチの艦隊もよりいっそうの強化が必要になる。

 

現在、漣たちは錬度強化と新たな艦娘を捜索するため、哨戒をかねてカムラン半島に向かっている。

向こうからの連絡はなく、いまだ進撃中と思われる。

 

 

「漣たちががんばってるんだ。 ウチもどうにかあれを成功させんとな…」

 

 

ウチが椅子にもたれながら深いため息をつくと、お茶を片手に一人の艦娘が入ってきた。

 

 

 

 

 

丸みがかった茶色のショートヘアにセーラー服が特徴的な艦娘で、背中には少し小さめの碇を背負っている。

 

 

「司令官、お茶が入ったわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁型駆逐艦3番艦『雷』

提督代理中、建造で新しく迎えた艦娘の一人で影ながら遠征をがんばってくれた健気な子である。

今回は漣が出撃しているので、その間彼女が代わりに秘書艦を勤めてくれているのだ。

 

 

「おっ、ありがと。 ちょうど喉が渇いてたから助かるよ」

 

「司令官も今日から正式な提督になったんだもんね。私も、司令官のためにがんばるわ」

 

 

 

 

 

 

本当にこの子はええ子だわ…!

代理のときも、遠征の仕事に関して「いいわ、この雷さまに任せなさい!」と嫌な顔ひとつせずに働いてくれる姿は、まさにこの艦隊にとってお艦とも呼べる存在である。

 

 

「司令官、この後の予定は?」

 

 

そう聞いてきた雷の瞳はキラキラと輝いている。

今朝、秘書艦代理を頼んでからずっとこの調子だ。よっぽど秘書艦をやるのが嬉しかったのか?

 

 

「まずデイリー任務の消化から行くか。 開発は終わってるから、次は建造だな」

 

「了解、それじゃ早速工廠に行きましょう」

 

 

 

 

ウチと雷は工廠に訪れる。

せっせと働く妖精たちに挨拶を済ませ建造ドックで資材の入力を始めようとしたとき、

 

 

「おはよう、提督さん」

 

 

後ろから建造担当の妖精に声をかけられる。あのとき、ウチにリングを渡してくれたあの妖精だ。

 

 

「君がここの正式な提督になったんだってね。これからも、よろしく」

 

「ああ、あのときはありがとう。 このリングのおかげで皆を助けることができた、本当に感謝してるよ」

 

 

妖精は気にしないで、と言うと建造を行うため仕事場に戻っていった。機会があったら、今度ゆっくり話がしたいな。

妖精を見送ると、ウチは建造ドックに資材を入力する。

今回入力したのは空母レシピだ。

前回は敵空母にひどい目に合わされたが、逆をいえばこちらが空母を味方につけられれば心強い戦力となってくれる。

だが、そのぶん建造にも多くの資材を投入しなければならないので、現状資材がカツカツのウチの艦隊には余り回数を回せないのだ。

「頼むから成功してくれよ…」

そういいながら、建造時間を見ようとしたとき

 

 

 

 

 

 

「大変よ司令官!!」

 

「うおっ、どうした雷?」

 

「ここトラック泊地の正面海域にはぐれ艦隊が現れたの。 数は3で駆逐イ級2隻と重巡リ級が1隻、こちらに向かっているわ」

 

 

なんてこった。よりによってウチの主力艦隊がいないこの状況で現れるとは…

重巡リ級もいるとなると雷一人には荷が重過ぎる。

だったら、とるべき手段は一つ…

 

 

「私が行くわ。司令官、出撃命令をっ!」

 

「いや、雷。お前には別の任務を頼みたい」

 

「えっ…?」

 

「雷…」

 

 

ウチはタブレットを雷に手渡すと、まっすぐ工廠の出口に向かった。

 

 

「ここは任せた!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

 

 

 

 

「いや~、はぐれ艦隊は強敵でしたね」

 

 

ウチは額の汗をぬぐいながら工廠に戻ってくる。

実際は敵艦隊にいきなり銃弾を撃ちこみ駆逐2隻を吹き飛ばし、突然の爆風に動じた重巡リ級を槍でなぎ払ってすぐ終わったけどね。

それより、今ウチの目の前には深海棲艦より恐ろしいものがいた。

 

 

「しーれーいーかーんー」

 

 

そこには、背後にすさまじいオーラを放ちながらウチを睨みつける雷の姿があった。

 

 

「どうして司令官が戦おうとしたの! 漣から言われたでしょ、勝手に出撃しないでって」

 

「う、すまん…」

 

「司令官は私たちと違ってただの人間なのよ。 それを、こんな無茶して…!」

 

 

それからしばらく、ウチは正座しながら雷の説教攻めにあった。

その様は周りにいた妖精いわく、提督と秘書艦というよりどう見ても母親にしかられる息子だったという。

 

 

かれこれ何時間たったか分からないが、ようやく雷の説教が終わった。

 

 

「ふう… まだ言いたいことはあるけど、今回はこれくらいにしといてあげるわ」

 

 

あれだけ怒ってまだ言い足りないのか? 今後、彼女の逆鱗に触れるようなことはしないほうがいいな。

ウチが正座で痺れた足をゆっくり上げてると、一人の妖精がウチらの元にやってきた。

 

 

「提督さん、建造終了だよ。 新しい艦娘に会ってあげて」

 

「あっ、そういえば建造のことすっかり忘れてたわ」

 

「私も…」

 

 

二人で顔を合わせて苦笑いを浮かべてると、建造ドックのドアから新しく建造されたという艦娘が姿を現した。

 

 

「えっ、これって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様、艦隊がもどりましたよ~」

 

 

夕方、すっかり日も暮れた鎮守府に漣たち第一艦隊が帰還してきた。服や艤装にはところどころ戦闘の後があったが、

みんな元気よく大手を振って戻ってきた。

 

 

「おう、お疲れ様。 皆入渠をすませて、今日はゆっくり休みな」

 

「あれ? ご主人様、あんまり心配してないみたいですね」

 

「今回は哨戒だけだし、なによりみんなの顔をみりゃ分かるよ」

 

「なーんだ、もっと心配するのかと思ってたのに」

 

「ははは、残念だったな。当てが外れて」

 

 

入渠を終えて、執務室でウチと漣は今日の戦果や出来事について話し合った。工廠での雷とのやり取り、はぐれ艦隊と戦ったこと、その後雷にこっぴどく怒られた事もだ。

 

 

「なるほど。 ほんと、ご主人様は期待を裏切らない人ですね。 悪い意味で」

 

「うぐっ…」

 

「まあ、雷に散々怒られたみたいだし今回は追及しませんよ。 ところで、建造したみたいですけど新入りは誰が来たんですか?」

 

「ああ、今呼ぶよ」

 

 

ウチが無線で連絡を取ると、執務室のドアを開けて一人の艦娘が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

軍服に巫女袴という一風変わったスタイルで、襟元には琥珀色の勾玉。

長い黒髪に白いリボンを結びつけ、手には巻物の形をした飛行甲板があった。

 

 

「名前は出雲ま…じゃなかった、飛鷹です。航空母艦よ。よろしくね」

 

 

飛鷹と名乗った艦娘は照れ笑いを浮かべながら漣に挨拶する。

ウチの艦隊に来てくれた最初の空母だ。これで少しは漣たちの力になってくれるといいな。

そんな漣は、

 

 

「…ご主人様のとこにも来たんですね」

 

 

嬉しそう、と言うより驚きの表情を浮かべていた。…というか、ご主人様のとこにも来たってどういう…?

 

 

「えっと、実は漣たちも敵前衛艦隊と交戦後、捕まっていた新入りに会ったんですよ」

 

「私も廊下で会ったわ。彼女、提督に会うの楽しみにしてたわよ」

 

 

飛鷹も楽しそうに漣の言葉を引き継ぐ。ぬおお、そんなふうにいわれたら余計気になるだろーーー!!

そんなふうに一人悶絶していると、漣たちが連れてきたという艦娘が姿を見せる。

 

 

こちらは長い黒髪は飛鷹と同じだが服装はまるで違う。

白い胴着を肩がけにきており、胸元にはサラシ。

下は黒い袴だがミニスカートのように短い。 正直、今まで見た中で一番露出過多な艦娘だった。

 

 

 

 

 

「軽空母、祥鳳です。 はい、ちょっと小柄ですけど、ぜひ提督の機動部隊に加えてくださいね」

 

 

祥鳳と名乗った艦娘はウチに深々と頭を下げながら挨拶する。

 

 

「お、おう。 よろしく頼むよ」

 

 

まさか、いきなり2人も空母の艦娘が加わるとは思わなかった。だが、同時に嬉しかった。

 

 

「これならこれからの海域攻略も楽になるな。 ぜひとも力を貸してくれ、二人とも」

 

 

そういってウチは祥鳳の肩をポンとたたく。

これが、間違いだった。

 

 

 

 

 

 

「きゃあっ!」

 

「ど、どうした祥鳳!?」

 

「あの…あまり触られると、艦載機が発進できないです…。 全機発艦してからで、いい?…」

 

「ちょっ!? 何言ってんのこの子ーー!!」

 

「うわぁ、提督やらしー」

 

「待て、誤解だ飛鷹!!」

 

「ご主人様、いきなり新入りにセクハラとかもしかしてブッ飛ばしてほしいんですか?」

 

「だから誤解だ漣! 頼むから話を聞い…」

 

 

それ以上、ウチは声を出すことができなかった。

漣の鉄拳がウチの鳩尾にクリーンヒットし、ウチの言葉と意識を奪っていったからだ。

 

 

 

 

 

その後、飛鷹・祥鳳を加えた第一艦隊がカムラン半島付近で敵主力艦隊を撃破したのは、この事故があってから数日後の話だ。

 

 

 

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