どうもです、毎回話すネタがなくて困ってます。
たまに単発物もピクシブで投稿しているので、こっちも若干進むのが遅くなるかも…
まあ、それはそれで見てもらえるとありがたいですが。
西方海域、カスガダマ沖。
戦艦棲姫を討伐して以来、深海棲艦の動きがおとなしくなったこの海域では、正也の知り合いの鎮守府に所属する艦娘たちが必死に彼を探し駆け回っていた。
球磨「おーい提督ー! いたら返事するクマー!!」
多摩「提督ー! 皆心配してるニャ、早く出てくるニャー!!」
トラック泊地から捜索に来た球磨と多摩は大声を張り上げながら正也に呼びかけ、
ゴーヤ「ぷはー! イク、そっちはどうだった?」
イク「やっぱり駄目だったの…。 提督の手がかりになりそうなものは見つからなかったの…」
ゴーヤ「うう… こんなに探しても見つからないなんて…!」
イク「やっぱり… 提督はもういないの?」
ゴーヤ「バカな事言わないで! 提督はそう簡単に死んだりしない、泣き言言ってる暇があったら早く捜索にもどるでちよ!!」
悲しみにくれるイクに、自らも心折れそうになりながらも必死にイクを叱咤するゴーヤ。
扶桑「はあっ… はあっ… こっちにもいなかった。 それじゃ、次は向こうに…!」
伊勢「ちょっと扶桑!? それ以上無理に瑞雲を飛ばしたら、あんたの体が持たないよ! 少しは休まなきゃ…」
扶桑「止めないで! 提督がいなくなったっていうのに、呑気に休んでるなんて私にはできないわ!!」
日向「だからといって、それでお前が体を壊したら元も子もないだろう。 続きは私たちがするから、お前は少し休め」
扶桑「嫌よ! 私は何としても自分の力で提督を探し出す。 絶対に…!」
伊勢「…なんで、そんな意地になってるのよ?」
扶桑「伊勢・日向。 あなた達は誰かを本気で愛したことがある…?」
伊勢「…え?」
扶桑「私はあるわ。 私を山城と再会させてくれたあの人を… 私を綺麗だといってくれたあの人を… 私に幸せをくれたあの人を… 提督を、私は愛しているの」
日向「………」
扶桑「だから、私は何としても自分の力であの人を見つけたいの! 私を救ってくれた提督を、今度は私の手で救い出したいの!」
伊勢「扶桑……」
休む暇なく瑞雲を飛ばし続け、疲労困憊になりながらも思いの丈を叫び、捜索を続行する扶桑。
神原「ふむ… そうか、分かった。 次はそこから北の方を捜索してくれ。 うん、よろしく頼む」
大和「提督、少しは休んでください! 夕べから一睡もせず捜索範囲の確認と指揮をとっていたら、貴方も倒れてしまいますよ!」
神原「…すまないね。 仮眠をとろうにも、中峰君のことを考えるとどうにも寝付けなくてしまって…」
間宮「それじゃ、せめて休憩だけでも取ってください! 後は私や栞が引き継ぎますから…!」
神原「…悪いが、もう少しだけやらせてほしい。 彼を提督としてこの戦いに巻き込んだ以上、私も黙ってみているわけにはいかない。 あと少し、私にも手伝わせてほしいんだ…」
後輩の提督である間宮や秘書艦の大和に心配される中、休む間もなく艦娘たちへ捜索の指揮をとる神原。
各々の思いが渦巻く中、この日も決死の捜索が行われていた。
トラック泊地の廊下。
執務室の扉の前に佇む艦娘、ヴェールヌイはじっと扉を眺める。
漣がこもって以来、ずっと開かずの間となっていた執務室を見つめ、彼女は口を開く。
「聞こえるかい、漣? 聞こえてたらそのまま聞いてほしい」
「漣が司令官を目の前で守れず、悲しんでいるのは分かる。 だけど、このままじゃ何の解決にもならない。 それは君だって分かっているでしょ?」
「司令官はどんなときだって、ひたむきに前を向いて進んでいった。 司令官のためを思うなら、私たちがここで立ち止まってちゃ駄目だと思うんだ」
「司令官がいない今、私たちが司令官の分まで前を向いて進まなきゃ。 このままじゃ、司令官に笑われちゃうよ」
「だから…だからさ……。 出てきてよ、漣………」
扉に手を置いて、徐々に小さくなっていく声でヴェールヌイは呼びかける。
小さな肩を震わせ、薄いブルーの瞳からは一筋の涙がこぼれる。 自身も大事な人を失った悲しみをこらえながら、扉の向こうにいる相方に思いを伝えていた。
それでも漣から返事はない。 無言のまま、静寂だけがその場を支配していた。
悲しみに耐えられず、へたり込み涙を流すヴェールヌイ。
彼女のすすり泣く声だけが聞こえてくるそのときだった。
「ここか。 漣がいる執務室っていうのは」
突然の男の声に驚いて振りむくと、そこにはタウイタウイ泊地の提督である幸仁の姿があった。
唖然としているヴェールヌイに、幸仁は顔を向ける。
幸仁「久しぶりだな、ヴェールヌイ。 カスガダマ沖以来か」
ヴェル「司令官のお兄さん!? どうして、ここへ…?」
幸仁「漣に会いに来た。 一つ、言っておきたいことがあってな」
その言葉に、ヴェールヌイは顔を曇らせた。
ヴェル「無駄だよ… 漣は数日前からここにこもって以来、一度も出てきてない。 私達の呼びかけにも答えないんだ」
幸仁「ここで構わない。 俺から勝手に話す」
そういって、幸仁はその場に座り込む。
ヴェールヌイの隣で、彼は同じように執務室の漣へと話を始めた。
幸仁「聞こえるか、漣? 俺は中峰幸仁、正也の兄だ」
幸仁「あいつ、最後はお前を庇って魚雷に撃たれたんだってな。 俺もその場にいたから、そのときのことはよく覚えているよ」
幸仁の言葉にヴェールヌイは俯いたまま、静かにスカートの裾を握り締めた。
自分の弟が目の前で撃たれ、護衛艦でありながらそれを守れなかった艦娘がいる。
そのことについて、兄である彼が恨みを抱くのは当然のことだ。
きっと、彼もそのことで漣に文句を言いにきたに違いない。
ヴェールヌイはそう思っていたが、実際は違った。
幸仁「バカな奴だよな。 自分もボロボロのくせして、身の程をわきまえず飛び出していったんだから」
幸仁「バカは死んでも直らないって言葉があるが、どうやらあいつのバカも死ぬまで直らなかったみたいだな」
そう言って、高笑いを上げる幸仁。
あろうことか、彼は弟のことで文句を言いにきたどころか、その弟をバカ呼ばわりするためにやってきたのだ。
その後も、正也に対する罵詈雑言を並べていく幸仁。
弟とはいえ、自分達の大事な司令官を馬鹿にする幸仁の暴言に、さすがのヴェールヌイも我慢ならなかった。
これ以上、司令官を馬鹿にするな。
その言葉をぶつけるべく、ヴェールヌイが幸仁を睨んだ。 そのとき、
ドンッ!!!!
何かを強く殴る音。 二人の目の前から、確かにその音はした。
「……提督を馬鹿にするな…!」
扉の向こうから聞こえた声。 それは間違いなく、数日前からずっと閉じこもったままの漣の声だった。
「あの人は漣を守って撃たれたんだ! あの人は最後まで漣たちを守るっていう自分の信念を貫いたんだ! あの人は……提督は、漣たちにとって大切な人なんだ! それを馬鹿にする人は、たとえ提督の家族でも許さないんだから!!」
扉越しに聞こえる漣の叫び。
悲しみと怒りが入り混じった、彼女の心からの言葉。
その彼女の叫びを聞いて、
「なら、なぜお前はそんなところにいるんだ!!」
幸仁の怒声が響き渡った。
「そこで一人塞ぎ込むために、正也はお前を助けたのかよ!? そんなことあいつが望んでいると、本気で思ってんのか!?」
「っ!?」
「漣、正也はあの時お前にどうしてほしくて助けたんだと思う? 思い出せ、あのときの事を! 思い出せ、あいつが……正也が最後に言った言葉を!!」
幸仁の叱責に、漣はあのときの出来事を頭に思い浮かべた。
カスガダマで正也が自分を突き飛ばしたあのときのこと。
そして、そのとき彼が最後に言ったあの言葉を。
『……これは…提督、命令だ………』
『……漣………生きろ』
正也が漣に言い放った命令。
消え入りそうなほど小さい声だったが、確かにその命令は自分の耳に届いていた。
あのときの正也の言葉を思い出した漣は、糸が切れた人形のように扉の前でぺたんと座り込んだ。
漣「…そう…だ。 …あの時、ご主人様は…生きろって…言ったんだ……」
そのときのことを思い出し、ポロポロと涙をこぼす漣。
扉越しにいる漣に、幸仁は落ち着いた口調で話しかける。
幸仁「ようやく思い出したか…。 漣、お前はあいつの分まで生きる義務がある。 手前勝手な言い分かもしれないが、そうしなければそれこそあいつのやったことはただの犬死になってしまうんだ。 だから、頼む…」
「正也の覚悟を無駄にしないでくれ…。 あいつが…弟が守った命を粗末にしないでくれ……」
すすり泣く音と共に漣へと語りかける幸仁。
扉に顔を当てているので表情は見えないが、彼が悲しみを押し殺しているのは後ろで見守るヴェールヌイから見ても明白だった。
ガチャリ…
扉から聞こえた鍵の音。
そして、二人の目の前で、それはゆっくりと開いた。
扉の前。 執務室の入り口には幸仁とヴェールヌイに申し訳なさそうに顔を伏せる漣の姿があった。
漣「その… 漣こそすみませんでした。 ご主人様に守ってもらったっていうのに、ただ悲しんで自棄になるばかりで…」
ヴェル「いいんだよ、漣。 辛いときは泣いていいんだ」
漣「…うん、ごめんねヴェールヌイ。 …お兄さんもごめんなさい。 あれは漣を焚きつけるためにわざと言ってたんですね」
幸仁「別に良いって。 それに、謝る相手は俺じゃなくこの泊地の仲間達にだろ? 俺よか、ずっとお前のこと心配してたんだぞ」
その言葉に、ばつが悪そうに照れ笑いを浮かべる漣。 それを見つめるヴェールヌイと幸仁も、おのずと笑みがこぼれるのであった。
叢雲「あっ、やっと戻ってきたのね」
トラック泊地の正面玄関。
そこで待機するよう命じられていた叢雲は、幸仁に顔を向ける。
叢雲「それで、どうだったの?」
幸仁「ああ、もう大丈夫だ。 漣は執務室から出てきたし、泊地の仲間達にもこのことは伝えてある。 今は体を回復させるため、入渠ドックに行っている」
叢雲「そう…。 なら良かったわ」
そう言って、安堵の笑みを浮かべる叢雲。
幸仁の用が済んだ今、自分達もタウイタウイ泊地へ戻ろうという事で、港へ向かった。
そのとき、港の近くにあったジャングルから一人の艦娘が顔を覗かせたが、二人はそれに気付かずクルーザーでその場を後にした。
ジャングルから出てきた艦娘は、港から去っていった幸仁たちを見ていたが、すぐに泊地のある中央建物の方へと足を向けるのであった。
「はあ… やっと人のいる島へたどり着いた。 もうへとへとだよ…」
「さっきの人は提督さんかな? でも、ここを去ったとなるとここの人じゃなかったの?」
「いやいやいや! 今それを考えててもしょうがないじゃない。 それより今はあそこで休ませてもらえるか、確認するのが先決ね! でも……」
「さっきの男の人、確かに似てたな。 あの島で見た、あの人影と……」