艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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いやー、やっと出来ました。
しばらく艦これのイベント海域に没頭中で、中々小説に手をつけられない状態が続いて遅くなってしまいました…

とにもかくにも、次でいよいよ南方海域出撃です。 楽しみにしていただければありがたいです。






第73話 恐怖を超える思い

 

 

 

トラック泊地の入渠ドック。

脱衣所にいた漣は、休ませてほしいと偶然ここへやってきた艦娘『瑞鶴』から衝撃的な話を聞いた。

彼女に……いや、この泊地の艦娘たちにとって希望とも呼べるべき話を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの提督さん。 このトラック泊地の提督は………生きているわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その話を聞いた漣は大きく目を見開いた。

 

 

 

 

 

今まで探しても見つからなかった彼が…

 

 

 

今までずっと会いたいと願っていた人が…

 

 

 

漣たちにとって大事な提督が生きている。

 

 

 

 

 

次の瞬間、彼女はわき目も振らず入渠ドックを出ようとする。

入渠しようとしていたのでセーラー服は着ておらず白い下着姿のまま。 そんなこと眼中にもない漣を見て、瑞鶴は慌てて漣を引き止めた。

 

 

瑞鶴「ちょっと!? あなたなんて格好で出ようとしてるのよ!」

 

漣「離して! 提督が生きてるのが分かった以上、こんなところでじっとなんかしてられないです!!」

 

瑞鶴「だからっていくらなんでもこれはまずいわよ、少し落ち着きなさい!」

 

 

必死に振りほどこうとする漣を必死に引き止め落ち着くよう説得する瑞鶴。

二人の叫び声は外まで聞こえており、様子を見にきたヴェールヌイと鳳翔はその声を聞きつけ急いで駆けつけてきた。

 

 

ヴェル「ど、どうしたのさ漣! そんな格好で…!!」

 

漣「瑞鶴さんから聞いたんです! ご主人様……いえ、提督が生きているって!!」

 

 

その言葉にどよめきだつ二人。

ヴェールヌイも漣を引き止めつつどういうことなのか詳しく話を聞こうとし、鳳翔も正也の無事を知って安心したのか、その場で膝から崩れ落ち漣を追って来た瑞鶴に心配されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってトラック泊地の食堂。

 

 

泊地に所属する艦娘たちが皆ここへ集まり、彼女達の視線の先にはさきほど入渠を終えてきたばかりの瑞鶴が気まずそうに座っていた。

皆言葉には出さないものの、正也の事について詳しい話を聞きたいという気持ちが無言の圧力となって瑞鶴にのしかかっている。

彼女の正面にいる漣とヴェールヌイも射抜くような視線を彼女に向けており、鳳翔から「では、話してください…」という言葉を聞くと、瑞鶴はここへくるまでの経緯を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、私が翔鶴姉と一緒に深海棲艦に襲われているときだったわ。 翔鶴姉はこのまま二人で逃げていたらいずれ捕まってしまうって言って、私を逃がすための囮になってくれたの。 あたしも翔鶴姉の覚悟を無駄にしたくなくて、すぐにその場から離れようとした時偶然見つけたの。 無人島のジャングルから出てきたこの人の姿を…」

 

 

そう言って、瑞鶴は写真に写った正也を指差す。 朗らかな笑みを浮かべる彼の姿を見て自ずと漣も拳に力が入り、食い入るように瑞鶴へと問いただした。

 

 

漣「それで、ご主人様を見たのはどこなんですか? 教えてください!!」

 

 

机から身を乗り出し、漣は必死の形相を浮かべる。 しかし…

 

 

瑞鶴「…その、答えるのは良いんだけど………もしかしたら、その提督さんはもう助からないかもしれないの」

 

 

俯き悲しげに話す瑞鶴。 だが、そんな彼女の言葉に加賀は異議を唱えた。

 

 

加賀「笑えない冗談はやめてちょうだい。 提督は…あの人はそう簡単に死んだりしない! 貴方は、あの人の力を分かってないのよ!!」

 

雪風「そうです! しれえはとっても強いんです。 それに、しれえには雪風がついています。 だから、しれえは絶対大丈夫です!!」

 

 

不安を払拭するかのように声高々に叫ぶ加賀と雪風。 その言葉に同意するかのように周囲も騒ぎ出したが、それを聞いた瑞鶴は歯軋りしながら言葉を返した。

 

 

瑞鶴「そっちこそ何も分かってない! あたしがどこでこの人を見たか分かってる!? あたしが見た場所は、南方海域の一角・珊瑚礁沖よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南方海域

 

 

そこは、東西南北に分けられた4つの海域の中でも最も危険と謳われる海域。 フラグシップクラスの深海棲艦が続々と発見されており、中には戦艦棲姫には劣るものの、鬼や姫級の深海棲艦の目撃情報も上がっている。

その危険度ゆえに、大本営からもほんの一握りの鎮守府だけが立ち入りを許可されている海域。 『深海棲艦の巣』の異名を持つとされる、恐ろしい海域なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴の口から上げられた衝撃の事実。

さすがに場所が場所だけに、トラック泊地の艦娘たちにも動揺の色が窺える。 「そんな…」とか「どうしよう…」とか、不安のこもった声がちらほらと聞こえてくる。

しかし、そんな彼女達の不安の声の中、一人の艦娘の声がはっきりと響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも、漣は行きます。 どんなに危険な場所であろうと、立ち止まってなんかいられません」

 

 

声の主、漣は瑞鶴を見据えてはっきりと答える。 そんな彼女を見て、瑞鶴も慌てて尋ねた。

 

 

瑞鶴「あ、あなた本気!? あたしがこの人を見たのは数日前で、今は生きてるかどうかも分からない。 そんな不安定な情報だけで行くつもりなの!? 下手したら、あなたも沈められるかもしれないのよ!!」

 

 

瑞鶴の言い分はもっともだった。

彼女はあくまで正也の姿を見かけただけで、本当に本人かどうかは確定情報ではない。 そのためにこの危険な海域に踏み込むなど、命知らずとしかいえない決断だった。

だが、漣も自分の意志を譲らなかった。

 

 

 

 

 

「…漣は、提督に何度も助けられました。 沖ノ島で綾波お姉ちゃんを助けに行くか迷ったときも、提督は手を差し伸べてくれました。 キス島で漣が自ら囮になったときも、提督は自分の身の危険を顧みず助けに来てくれました」

 

「あの時、漣は護衛艦でありながら提督を最後まで守ることができませんでした。 だから、もうあんな後悔はしたくないんです。 『自分に嘘をつくな』提督が教えてくれたその言葉に従って、何があろうと漣は漣の意志で提督を助けに行きます!!」

 

 

 

 

 

「あなた…」

 

 

漣は瑞鶴をじっと見つめる。

迷いのない真っ直ぐな二つの瞳が彼女の姿を映し出している。

その静かな気迫に圧倒される瑞鶴。

そのとき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も行くよ。 私も司令官を助けたいし、何より親友をそんな危険な場所に一人では行かせられないからね」

 

 

 

 

 

「ヴェールヌイ…」

 

 

 

 

 

「雪風も行きます! 雪風も、早くしれえに会いたいですもん!!」

 

 

 

 

 

「雪風…」

 

 

 

 

 

「駆逐艦ばかりじゃ力不足だクマ。 ここは、球磨も同行するクマよ」

 

 

 

 

 

「球磨…」

 

 

 

 

 

「私たちも行きますよ」 「皆で、司令官さんを迎えに行きましょう!」

 

 

 

 

 

「鳥海さん… 羽黒さん…」

 

 

 

 

 

 

「私も行くわ。 提督には、一言文句を言わなきゃ気が済まないんだから!!」

 

 

 

 

 

「山城さん…」

 

 

 

 

 

「提督に会うためナラ、私はどこへでも行きマース!」

 

 

「私も司令救出のため、気合・入れて・行きます!!」

 

 

「榛名も行きます! 榛名も提督に会いた……あっ、いえ! 提督が心配ですから……///」

 

 

「この数日、司令に片付けてもらわなきゃいけない書類が溜まっていますから、早くここへ戻ってもらわないとですね」

 

 

 

 

 

「私だって、提督のためならニ航戦の底力、見せてやるんだから!!」

 

 

 

 

 

「私も行くわ。 鎧袖一触よ」

 

 

 

 

 

「ゴーヤも、提督を迎えにいくでち!」 「イクもイクもー♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我も我もと正也救出に意気込むトラック泊地の艦娘たち。 たとえどんな危険があろうと、皆の意志は変わらない。

大切な人に戻ってきてほしい。 それが彼女達の答えだった。

そんな彼女達を瑞鶴は呆然と見つめていると、

 

 

 

 

 

鳳翔「あれが、私達の提督です。 どんなときでも、何があろうと、提督は私たちを助け導いてくれた。 あの人は、私達の心の拠り所であり、希望なんです」

 

 

 

 

隣で皆をほほえましく見つめる鳳翔の姿。 温かみを感じさせるその優しい笑みは、まさに愛娘を見守る母親のそれと同じであった。

鳳翔の言葉を聞いた瑞鶴は、一瞬ふっと笑みをこぼすと皆に向かっていった。

 

 

瑞鶴「ちょっとちょっと。 皆意気込むのは良いけど、提督さんがどこにいるのか分かってる? 珊瑚礁沖は広いのよ?」

 

 

その台詞に落ち着きを取り戻したらしく、一同は「うっ…」と言いながら黙り込んでしまった。

すっかり意気消沈してしまった皆を見ながら、瑞鶴は言った。

 

 

瑞鶴「しょうがないから、あたしが案内してあげるわ。 …その代わり、あたしからも一つお願いがあるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「翔鶴姉を助けて! あそこで囮になったのなら、きっと捕まっているはずなの。 助けたくてもあたし一人の力じゃとてもできそうにない…。 だから……」

 

 

皆に向かって大きく頭を下げながら懇願する瑞鶴。 そこへ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいぞ。 それであいつを見つけられるって言うんなら引き受けてやる」

 

 

突如聞こえてきた男の声。 皆は驚き、声のしたほうへ振り向いた。

 

 

 

 

 

ヴェル「し、司令官のお兄さん!? タウイタウイ泊地に戻ったはずなんじゃ…!」

 

 

皆の視線の先、食堂の入り口には扉に寄りかかりながら皆を見る幸仁の姿があった。

驚きを隠せないヴェールヌイの質問に、叢雲が答える。

 

 

叢雲「戻ろうとしたとき、アタシがジャングルから怪しい影が出たのを見て、気になったから引き返してきたのよ。 まさか艦娘だったとはね…」

 

 

叢雲の言葉に、ばつが悪そうに顔を背ける瑞鶴。

幸仁は瑞鶴の前へとやってきた。

 

 

幸仁「お前は弟を見つけるための唯一の手がかりだ。 そのためなら、俺も力を貸してやる。 俺達は正也を、お前は自分の姉を助ける。 それでどうだ?」

 

瑞鶴「うーん… ごめん、やっぱりもう一つ条件をつけても良いかな?」

 

幸仁「………なんだ、一体?」

 

瑞鶴「実はさ、あたしも翔鶴姉もまだ無所属の艦娘なの。 だから、もしあなたの弟さんを見つけたときは、あたしと翔鶴姉をあなたの鎮守府に置いてもらえないかしら?」

 

幸仁「……。 それは別に構わないが、本当に良いのか? 何の面識もない俺の元につくなんて…」

 

瑞鶴「だってさ、あなたここの提督さんのお兄さんでしょ? ここまで皆に信頼される人の家族なら、あたしも信用できる。 ねっ、いいかな?」

 

幸仁「…やれやれ。 俺も信頼されたもんだな。 いいか、叢雲?」

 

叢雲「何でアタシに聞く必要があるの? 提督として、アンタが決めなさい。 アンタが決めたことなら、アタシはそれに従うわ」

 

 

つっけんどんながらも、幸仁を信頼する彼女らしい返事を聞き、ふっと笑みをこぼす幸仁。

再び瑞鶴に向き合うと、彼は答えた。

 

 

幸仁「…分かった。 なら、俺の弟とお前の姉の捜索が終わったら、お前達にはタウイタウイ泊地に所属してもらう。 いいな?」

 

瑞鶴「もっちろん! これからよろしくね、提督さん♪」

 

幸仁「気が早い奴だな。 まあ、いいか」

 

 

幸仁は瑞鶴から漣へと通達。 食堂にいる皆に聞こえるぐらいの声を張り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸仁「トラック泊地第一艦隊、出撃準備! これより、南方海域へ向かう!!」

 

 

幸仁「今回は正也に代わって俺が指揮をとる。 こちらも準備ができ次第合流するから、各自港から南方海域前面で落ち合うぞ!」

 

 

漣「了解です!!」

 

 

幸仁の鋭い号令にしっかり敬礼をする漣。 自分の大事な人を助けるため、今はこの人の指示を仰ごうと。

他の皆も同じだった。 自分達の提督ではないが、彼なら信頼できる。 この人と共に、私達の提督を助けに行こう。 そう心の中で固く誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ皆、必ず二人を助け出すんだ!! 提督代理捜索隊、抜錨だ―――――!!」

 

 

 

「「「「「オオ――――――――――――ッ!!!!」」」」」

 

 

 

 

トラック泊地に響く鬨の声。

こうして、中峰正也捜索作戦が決行されたのであった。

 

 

 

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