ピクシブのほうでしばらく単発物を書いていたので、こっちの投稿が遅くなってしまいました。
こちらもどんどん話を進めていきたいので、よろしければ見て行ってください。
あれは、カスガダマ沖での戦闘の後のこと。
満身創痍の状態だったウチは、潜水ヨ級フラグシップの放った魚雷が爆発。 爆風に煽られ空高く吹き飛ばされたウチの体は海面にたたきつけられ、その衝撃で意識を失ってしまった。
あれからどれだけ経ったか分からないが、次に意識を取り戻したウチが見たのは、三途の川ではなく見知らぬ島の砂浜であった。
どうやら、ウチは意識を失った後、潮の流れに流されこの無人島の砂浜へと漂着したようだ。
まず真っ先に皆の元に戻ろうとは考えたが、心身ともにボロボロなうえ、ここがどこなのかも分からない。 そんな状態で海に出るのは自殺行為だとウチも感じていた。
なので、ウチはしばらく無人島で体を休めていた。
幸い島には小川が流れており、海には魚もいたので水と食料はどうにかなった。 怪我が治るのを待ちつつ、戦闘の勘を忘れないよう体を動かしていたウチだが、ただ体を動かすのは退屈だったのでどうしようか考えてた時、ある方法を思いついた。
「……。 このままじゃ暇だし、新しい技でも考えてみよう」
そこで新しい技の実験をしつつ、体を動かしながらウチは無人島で数日を過ごしていた。
ある日、新しい技の一つを試してみようと勢いよく回転しながら飛び出したら、
「…どわあああああああああ!! と、止まらねええええ!!!!」
止まる方法がなくウチはそのまま無人島をでて外海へと向かって行ってしまったのだ。
そうしてしばらく回転していたウチなのだが、海で何かにぶつかりようやく止まることができた。
見知らぬ海の上。 痛む頭をさすりながらウチが最初に見たものは……
「ご主人様ぁ!!」
「司令官っ!!」
泣きじゃくりながらウチのもとに駆け寄ってきた二人の艦娘。 漣とヴェールヌイの姿だった。
気づくとどうやらウチは濃霧の中まで飛んできてたらしく、遠くにはウチがぶつかったのであろう深海棲艦が霧の向こうへ吹っ飛んでいた。
徐々に薄れていく霧を見ながらウチは心の中で自分に言い聞かせた。
このことは言わないでおこう… と……
しばらくして二人の成すがままにされていると、突然ヴェールヌイの持っていた無線が反応。
ヴェールヌイはようやく落ち着いたのか、涙をぬぐうと無線をとってスイッチを入れた。
『ヴェールヌイ、聞こえる!? 霧が晴れてきてようやく無線がつながったわ。 そっちは無事なの? 応答して!!』
無線から聞こえてきたのは霧島の声だ。 数日ぶりに聞く声に、ウチも思わず懐かしさに顔をほころばせていた。
ヴェールヌイもウチを見て微笑むと、霧島へと応答をする。
「こちらヴェールヌイ… 大丈夫、私たちは二人とも無事だよ。 だって……」
そこで入れ替わりに今度はウチが割り込んで声を上げる。 無線に顔を近づけ、いつもの口調でそこへ話しかけた。
「よお、久しぶりだな霧島! 漣とヴェールヌイなら問題ない、なんたってウチが一緒にいるんだからな。 だから、どうにかそっちも合流でき……」
『……っ!!? そ、その声……!? まさか…司令なんですか!?』
「ああ、もちろん! えっと、その……ごめん、心配かけちゃって…」
『本当に……本当にどれだけ私たちに苦労を掛けさせれば気が済むんですか貴方は!? 姉様たちも、泊地の皆も、貴方のことすごく心配してたんですよ!!』
無線越しにガンガン飛んでくる霧島の怒りにウチは思わず無線から顔を離す。
しかし、その声は文句の中に少し涙声になってる所も聞こえてきて、彼女がどれだけ心配していたかウチにもよく理解できた。
さらに、その言葉を聞いてか無線から霧島以外の声も聞こえてきた。
『テートク…? テートクー!! 本当にそこにいるんですカー!!?』
『提督っ! 無事なんだよね!? 本当に生きてるんだよね!?』
「ああ、ちゃんとここにいるぞ金剛。 あと蒼龍、人をゴーストみたいに言うなっつーの! ウチはちゃんと生きとるわい!!」
無線を通じて聞こえてくる大事な仲間たちの声。
数日ぶりに聞こえる皆の言葉にウチも思わず涙ぐみそうになってくる。
そんなとき、ウチ等の耳に聞こえてくる艦載機の音。
空を見上げるとそこには青空を泳ぐ彩雲の姿。
あれは、間違いない…!
「加賀さんの艦載機…?」
彩雲の飛んできた方を向くと、そこにはこちらに向かって手を振ってくる数人の艦娘たちの姿。 それはまぎれもなく、ウチの大事な仲間。 トラック泊地に所属する金剛たちの姿だった。
「テートクー! 会えてよかったデース!!」
「うおっ!? ちょっ…金剛…ぐるじ……!」
「もう…絶対離しませんからネ……!!」
「いえ、離してあげてください姉様。 これじゃ司令が死んでしまいます…」
合流したとたん、泣きながらウチに抱き着いてきた金剛。 瞳に涙をためてその手を放すまいとする姿はかわいいが、全身全霊の力を込めて抱き着いてくるからウチの体はメキメキと締め上げられていた。 霧島が止めてくれなかったらそのままお陀仏になっていたよ……
「提督…! 良かった… もういなかったらどうしようかと……!!」
「ぐすっ… ううっ… 私もよかったです… 司令官さんが無事で、本当に…よかった……ふええぇぇん……」
「加賀さんも羽黒も心配かけて本当にごめん! 泊地へ帰ったらちゃんとお詫びを…」
「提督……」
「……あっ! いや、本当にすまなかった。 加賀…!」
そうだった… 以前騒動になったとき、加賀さんから呼び捨てで呼んでほしいって言われたのすっかり忘れてた…
ジト目でこっちを睨む加賀さんを落ち着けて、ウチは急いで泊地へ戻ろうと皆に言おうとした時だった。
「あの、待ってください司令官さん!」
「うおっ!? どうした鳥海…?」
「実は、この霧のせいで私たちと同行していたお兄さんが逸れてしまったんです。 叢雲さんたちが探しているのですが、いまだに見つからなくて……」
「何だって!? 兄ちゃんもここへ来ているのか!?」
突然鳥海から知らされた衝撃の事実。 まさか兄ちゃんまで皆と一緒に来ていたとは…!
そうと分かった以上、ここで立ち止まっているわけにはいかなかった。
再開の余韻に浸る間もなく、ウチも皆とともにこの場から離れようとした時だった。
「うっ… なんだこりゃ…!?」
いきなり目の前に現れた白い靄。
辺りを見渡してみると、いつの間にかさっきの霧が周囲を覆ってきていた。
このままじゃまずい…!
そう感じたウチは、急いで皆とともにここを出ようとしたが、霧はまるで生きてるかのようにウチの近くへ集まり皆からウチを離そうと目の前を深く覆っていった。
「漣っ!?」
「ご主人様っ!!」
とっさに漣はウチのいる方へと手を伸ばし、ウチもその手を掴もうと手を前に出したが、
「…くそっ!」
差し出された手は真っ白な濃霧に包まれて見えなくなり、ウチの伸ばした手は目の前の霧に突っ込んだまま空を切ったのであった。
巨大な霧の前で立ち往生するトラック泊地の面々。
漣は正也の手を掴もうとしたが、その望みはかなわず、彼女たちは束の間の再開とともにまたも正也と離れ離れになってしまった。
「そんなっ!? やっと会えたっていうのに…!!」
霧の前で地団太を踏む蒼龍。 助けに行こうにもこの霧の前では手も足も出せず、彼女たちにできることはただ一つ。 目の前の霧に飲まれた正也の無事を祈るだけだった。
「ご主人様…!」
「司令官…!」
握りこぶしを作りながらその場に立ち尽くす漣とヴェールヌイ。
二人もまた、正也に無事に戻ってきてほしいという思いを胸に眼前の霧を睨むのであった。
「くっそー、うっとうしい…! 何なんだこの霧は、全然前が見えないぞ!」
辺りを霧に包まれた直後、ウチはどうにかこの霧から脱出しようと突破を試みていた。
しかし、霧の外から中には入れたのに、外へ出ようとしても再び霧の中へと戻ってきてしまう。 どうやってもここから出ることができなかったのだ。
《ソンナ事ヲシテモ無駄ヨ… ソノ霧ハ、私ノ能力デ操作シテイルノ。 私ノ意思デ解除スルカ、私自身ノ意識ヲ奪ワナイ限リ、コノ霧ヲ払ウコトハデキナイワ…》
突然背後から聞こえてきた声。 後ろを振り向くと、そこには苦しそうに息をしながらこちらに話しかける深海棲艦の姿があった。
恐らく、ウチがぶつかったのはあの深海棲艦に違いない。 深海棲艦は、脇腹のあたりを抑えながらウチを睨み付けている。
《人間フゼイガ… ヨクモコノ私ヲコケニシテクレタワネ…! マア、探ソウト思ッテイタ獲物ガ向コウカラ来タノハラッキーダッタワ…》
《トハ言エ、コノママジャ私ノ気ガ収マラナイ。 オ前ハタップリ痛メツケテカラ、アノ御方ノ元ヘ引キズリダシテクレルワ!!》
《モチロン、アノ二人ノ駆逐艦モ逃ガシハシナイ! オ前ノ相手ヲシタラ、二人仲良ク私ノ手デ沈メテアゲルワヨ!!》
鬼気迫る表情で怒りを叫ぶ深海棲艦。 突然この場に飛び込んできたばかりのウチだが、ようやく今の状況を理解できた。
この霧の原因があいつであること。
二人がウチを探すためにここまで来てくれたこと。
そして、大事な仲間をあいつは沈めようとしていることを。
「…なるほど。 この霧を出したのも、漣とヴェールヌイをこんな目に合わせたのも、すべてはお前が原因か」
リングの力で手元に艤装の槍を出現させる。
肩慣らしのように軽く振り回すと、ウチは槍の切っ先を目の前の深海棲艦に向けて真っすぐ構えた。
「なら、ウチはあいつらの元に戻る。 そして、漣とヴェールヌイを沈ませたりなんかさせない。 そのためにも、お前はここでブッ飛ばす!!」
水面を大きく駆け抜け突撃。 盛大な水しぶきをまき散らしながら、ウチは目の前の深海棲艦を倒すべく突撃していった。