艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第8話 山城の懸念

 

ウチはトラック泊地の提督、中峰。 この世界に来て半月、秘書艦の漣を始め

艦隊の皆とともにせわしない毎日を過ごしている。

そんなウチは今、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおー、さすがに生で見るとすごいな」

 

 

場所はバシー島の海上、そこでウチは遠くから第一艦隊の戦闘風景を眺めていた。

今回、ウチは皆に頼んで第一艦隊の出撃に同行させてもらった。戦闘には参加しない、という条件付きで。

(ちなみに編成は漣・響・鳥海・羽黒・飛鷹・祥鳳)

 

「全機爆装!さあ、飛び立って!」

 

 

飛鷹の放った艦載機が敵旗艦に爆撃を仕掛け撃沈させる。どうやら勝負がついたようだ。

 

 

「司令官、終わったよ」

 

「おお、お疲れさん。しかし今回の敵は手ごわかったな」

 

 

先ほど交戦した敵通商破壊艦隊だが、敵旗艦の重巡リ級エリートがとても固く同じ重巡である鳥海や羽黒の砲撃を受けてもなかなかダメージが通らなかった。空母である飛鷹や祥鳳がいなかったら倒せなかったろう。

 

 

「せめてウチの艦隊にも戦艦が来てくれればな…」

 

 

ウチがそう呟いたときだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様、新入りみたいよ」

 

 

いつも旗艦を勤めてくれている漣が、捕まっていたという艦娘を連れてきた。

 

 

白い着物とミニスカートのような赤い袴を身に着け、短い黒髪には艦橋を模した髪飾り。

艤装は巨大な砲塔が4機ついており、すごく存在感があった。

えっ、この子ってまさか…

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。 扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です」

 

「せ…」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦キタ――――――――!!!

 

 

「あ、あのぉ…」

 

 

 

南西諸島進出して、やっと! やっと戦艦が来てくれた!!

今まで資材なくて建造できなかったから探索するしかなかった。

その苦労が! やっと! 報われた――――!!! イヤッフ――――!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴスッ!!

 

 

「ひでぶっ!!」

 

「もうご主人様、調子に乗るとブッ飛ばしますよって言ったの、忘れたんですか?」

 

 

だからブッ飛ばしてから言うなというのに、この暴力秘書艦め…

いかんいかん、初めての戦艦相手にこれじゃ変な提督だと思われてしまうな。 平常心平常心…

 

 

「ウチはこの艦隊の提督、中峰だ。 わが艦隊最初の戦艦として歓迎するよ」

 

「あ、ありがとうございます。 ところで、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか?」

 

 

少し引き気味ながらも握手を交わしてくれた山城の質問に、ウチはどうぞ、と答える。

 

 

「あの、ここの艦隊に扶桑姉さまはおりませんか?」

 

「うーん、あいにくだけどウチの艦隊にはいないね。 そもそも、山城がウチの艦隊に来た最初の戦艦だから」

 

「そう…でしたね。 すみません、急に変なこと言って」

 

「気にしないでくれ。 それに、鎮守府にいれば艦娘の目撃情報も入るし、扶桑って姉ちゃんも見つかるかもしれないぞ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ま、まああくまで見つかるかもしれないってことで」

 

「分かりました! この山城、ねえさ…提督のために、精一杯がんばります!!」

 

「と、とりあえず姉ちゃんのためにがんばろうな…」

 

 

こうして、ウチの艦隊に戦艦の艦娘が加入したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、山城が加わったウチの艦隊は次々に新たな仲間を発見した。

 

 

「商船改装空母、隼鷹でーすっ!ひゃっはぁー!」

 

 

「マイク音量大丈夫…?チェック、1、2……。よし。 はじめまして、私、霧島です」

 

 

 

軽空母準鷹・戦艦霧島・ともにバシー島哨戒中に出会った仲間だ。

この二人に会えたのも、他ならぬ山城の頑張りあってこそのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山城が艦隊に加わって数日後、第一艦隊は錬度向上とある目的のため再びバシー島に訪れていた。

 

 

「どうだった? 漣」

 

「今回もダメです、見つかりませんでした…」

 

 

ウチはそうか、と返事をすると漣の後ろで肩を落とす山城に目をやった。

 

 

 

 

 

 

現在、ウチらは山城の姉である戦艦扶桑を捜索している。

彼女がこの艦隊に来た目的は姉を探すためで、準鷹や霧島に会えたのはそのついでに過ぎなかった。

しかし、目的は違えど彼女のおかげで艦隊の戦力を強化できたのも事実。 そのお礼がわりに、わが第一艦隊も姉の扶桑捜索に協力しているのだ。

 

 

「今日も姉様に会えなかった。 姉様、今どこにおられるのですか…」

 

「そう落ち込むなって山城。 南西諸島で扶桑型戦艦の目撃証言があるのは確かなんだし、気長に探そう」

 

「気休めはよして!」

 

 

山城は乱暴にウチの手を払いのける。 長い間姉に会えなかったせいか完全にヒステリックになっているみたいだ。

 

 

「あんたに何が分かるのよ。 私にとって姉様はたった一人の大事な家族、その家族に会えない辛さがあんたに分かるって言うの!?」

 

 

彼女の言葉にウチはなにもいえなかった。 自分も、家族に会いたくてもあえない場所にいる。

だからこそ、彼女の辛さはよく分かる。 彼女にかける言葉が見つからなかった。

 

 

 

「分かりますよ」

 

 

山城の言葉に答えたのは、ウチではなく漣だった。

 

 

「漣もいまだお姉ちゃんたちに会えません。 綾波お姉ちゃんや敷浪お姉ちゃんに妹の潮、皆元気にやってるかな。 どこかで怪我してないかな。って思うと、不安で胸が苦しくなるときがあります」

 

「……」

 

「だから山城さんの気持ち、分かりますよ。 会いたくても会えないって、本当につらいもんね」

 

「……」

 

「ご主人様も、本当は代理として1週間だけ提督を務めるはずだったんですけど、漣たちのためにこのトラック泊地の正式な提督になってくれたんです。 家族の元に返れるチャンスを棒に振ってまで」

 

「……」

 

「でも…それでも私にとって…姉様は…」

 

 

山城は涙をこぼしながら声を振り絞る。

そして、

 

 

 

「おいっ、待て!!」

 

 

彼女は駆け出した。 こちらを振り向かず、無我夢中で…

ウチも山城を追った。 とにかく追った。

どれくらい追いかけたか分からないが、ウチはどうにか山城に追いついた。

 

 

「分かっているのよ!!」

 

「本当は分かっているの、他にも会えなくてつらい思いをしてる子がいるってことも。 でも、不安なの。 姉様に何かあったらと思うと、不安で気がおかしくなりそうで…」

 

 

泣きじゃくりながら思いを吐露する山城を見て、ウチは声を張り上げた。

 

 

「心配すんな!!」

 

「っ!?」

 

「山城は姉ちゃんに会いたいんだろ? なら、姉ちゃんだって山城に会いたいはずだ。 絶対に会える……いや、ウチが会わせてやる!!」

 

「根拠のない事言わないで…。 あなた、私たち姉妹がなんて呼ばれてるか知ってる? 不幸戦艦よ。 現にこうして私は今まで姉様に会えないままじゃない!」

 

「だったら、ウチが姉ちゃんに会わせて証明してやるよ。 お前は不幸なんかじゃないってな!!」

 

「…本当に…会わせてくれるの?」

 

 

山城の問いにウチは大きく首を縦に振り、彼女はそれを見ると再び泣きじゃくりだした。

ウチがみんなの下に戻ろうと山城の手を引こうとしたとき、

 

 

 

 

 

 

「っ!? 危ねえ!!」

 

「えっ? きゃあっ!!」

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオン

 

 

砲撃音とともに、ウチと山城のすぐ横で巨大な水柱があがった。

ウチが辺りを見ると、10メートルほど離れた場所で深海棲艦の艦隊がいた。

敵は戦艦ル級・軽巡ヘ級が2隻に空母ヲ級・重巡リ級が1隻、しかも旗艦の戦艦ル級はエリートクラスのようだ。

 

 

「あれって、オリョール海に現れるっていう敵主力打撃軍じゃない。 まさかバシー島沖で遭遇してしまうなんて、やっぱり私は不幸だわ…」

 

 

戦艦ル級エリートは再び山城目掛け砲塔を向ける。 山城はすっかり気落ちしてしまい動く様子がなかった。

完全に狙いを定めた戦艦ル級エリートは山城に発砲……できなかった。

ウチの放った銃弾が戦艦ル級エリートの顔面で爆発したからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「させるかよ…」

 

 

ウチは山城を背に敵艦隊と向き合い、槍を構える。

 

 

「約束したんだ。 山城は必ず、姉ちゃんに合わせるって。 だから、お前ら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの仲間に手を出すんじゃねえ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、どうにか勝ったな…」

 

「無茶しすぎよあなた…。 私が手を貸さなかったらどうなってたか…」

 

 

夕暮れのバシー島沖。 ウチと山城は背中合わせに立っていて、周りには深海棲艦の残骸がまばらに浮かんでいた。

 

 

「まあ、お互い無事だしよしとしようや。 早く帰ろう、明日も朝から捜索するからな」

 

「まったく、あきれた提督ね」

 

 

山城はため息混じりにつぶやき、ウチと一緒にみんなの元に戻ろうとしたときだった。

 

 

 

 

 

「その声…もしかして、そこにいるのは山城なの?」

 

 

後ろから澄んだ女性の声が聞こえる。

 

 

「嘘…そんな…。 その声、まさか…」

 

 

山城は震えながらも声のしたほうを振り向く。 ウチも一緒に振り向くと、そこには一人の艦娘がいた。

 

 

白い着物とミニスカートのような赤い袴は山城と同じ服装だったが、こちらは黒のロングヘアーを風にたなびかせ、穏やかな顔でこちらを向いていた。

山城は彼女を見ると、一直線に声の主へと駆け寄っていった。

 

 

「扶桑姉様!!」

 

 

そう、声の主はずっとウチらが探していた艦娘、戦艦扶桑のものであったのだ。

山城は扶桑の胸に飛び込むと、子供のようにわんわん泣き出した。

 

 

「良かった、姉様が無事で! 山城は…山城はずっと…姉様に会いたくって…!!」

 

「ごめんなさい、山城。 私もあなたを探していたら、あの深海棲艦に捕まってしまったの。 心配かけてしまったわね」

 

「いいのです姉様…。 姉様の無事な姿を見れただけで、山城は満足です…」

 

 

扶桑は泣きじゃくる山城をなだめると、今度はウチに話しかけてきた。

 

 

「あなたが山城の提督ですか? 私だけでなく、妹まで助けていただいて本当にありがとうございます」

 

「気にしないでよ、ウチも山城には色々世話になったからね。 ウチはトラック泊地の提督、中峰だ」

 

「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。 妹の山城ともども、よろしくお願いいたします」

 

 

ウチが扶桑と握手を交わしていると、後ろから漣たちの声が聞こえてくる。

 

 

「えっと、扶桑さん…。 来たばかりで悪いんだけど、ちと頼みたい事があるんだ…」

 

「はいっ。 私でよろしければ、なんでもおっしゃってください」

 

 

 

その後、勝手に艦隊を離れた件でウチと山城は第一艦隊の面々からこってりしぼられたが、扶桑さんの弁護でどうにか事なきを得たのであった。

 

 

 

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