艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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第80話 それぞれの戦い (後編その1)  霧中の激闘! 中峰正也VS装甲空母姫

 

 

 

 

幸仁から離れた後、瑞鶴は艦載機を放ちひたすら逸れてしまった仲間たちの捜索を行っていた。

衰弱した翔鶴を背負った状態で弓を引くのは難しかったが、今はそんなことを言っている場合ではない。

自分の提督である幸仁が自ら殿を買って出た以上、自分が弱音を吐くわけにはいかない。

四方八方へと艦載機を飛ばし、周囲の索敵を行っていると、

 

 

 

 

 

「いた… 見つけたわ!」

 

 

艦載機の一つが集団で幸仁の捜索を行う叢雲たちの姿をとらえ、瑞鶴は急いでその場へと向かう。

 

 

「皆ー!!」

 

 

艦載機を叢雲たちの上空に旋回させ、片手を振って瑞鶴は自分がこの場にいることをアピール。

叢雲たちもそれに気づいて急いで瑞鶴の元へと駆け付けたのであった。

 

 

「瑞鶴さん、無事だったんですね!」

 

「突然姿を消したから心配してたのよ、もう…!」

 

 

瑞鶴の無事を知って安堵した筑摩、その隣にいた陸奥はややふくれっ面で瑞鶴を見る。

瑞鶴は苦笑いを浮かべながらもみんなにぺこりと頭を下げて謝る。 その時、飛龍は瑞鶴の隣にいた翔鶴に気づいた。

 

 

「そっちの子って……もしかして翔鶴!?」

 

 

その言葉に他の艦娘たちも翔鶴に注目し、翔鶴はゆっくりと頭を上げながら弱々しい声で答える。

 

 

「はい……私…翔鶴です……。 赤城先輩……飛龍さん……お久しぶり、です……」

 

「いいよいいよそんな無理に答えなくて…! 今は少しでも休んでおきなよ」

 

「確か捜索中に向こうに小島があったよ。 そこで休ませよう」

 

 

時雨の提案に瑞鶴も同意し、いったんそこへ向かおうとしたとき、叢雲は辺りをきょろきょろと見まわし気づく。 今この場にいるべき人物がいないことに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ!? ねえ、あいつは…あいつはどこにいるの…!?」

 

 

叢雲の言葉に動揺する一同。 それに続いて赤城も声を上げる。 この場に、彼がいないことに……

 

 

 

 

 

 

「…提督? …瑞鶴さん、なぜ提督の姿がないんですか? …一体、提督はどこにいるんですか!?」

 

 

その言葉を聞いて、他の者達もこの場に幸仁がいないことに気づいた。

あの時、霧に巻き込まれ瑞鶴とともに姿を消してしまった彼。

幸仁はどこかと必死に詰め寄る二人の姿に瑞鶴は暗い表情を見せる。

 

 

「それは…」

 

 

気まずそうに口ごもる瑞鶴。 それを見た瞬間、叢雲は察した。 幸仁に何かあったんだと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…提督さんは、私と翔鶴姉を逃がすためにたった一人で南方棲戦姫という深海棲艦と戦っているの。 ……あの時、提督さんが助けてくれなかったら、今頃私たち二人ともあいつに鹵獲されてたわ…」

 

「南方棲戦姫…? まさか、あのカスガダマで戦った戦艦棲姫と同じ姫クラスの深海棲艦か!?」

 

「それほどの相手に一人で挑むじゃと…!? あやつ、無謀にもほどがあるわ!!」

 

 

瑞鶴の話に出てきた南方棲戦姫に、叢雲たちは動揺を隠せなかった。

彼女たちもカスガダマの戦いにいたので、姫クラスの深海棲艦の強さはよく知っている。 ましてや、それほどの相手にたった一人で戦うなど自殺行為に等しい。

 

 

「急いで加勢しましょう! このままでは提督の身が……!!」

 

 

赤城がそう言って瑞鶴に提督はどこかと尋ねようとしたとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズウウウウウウウウウウウウウウウウン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如叢雲たちの耳に聞こえる二つの轟音。

まるで地鳴りのようにゆっくりと、しかし辺りの海面を波立たせ、その轟音は周囲一帯に鳴り響いていた。

 

 

「い、今のはいったい何なの!?」

 

 

突然の轟音に飛龍が混乱していると、瑞鶴は先ほど自分が逃げてきた方を向きながら、ポツリと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの方角…… 間違いない、提督さんのいる方だ!」

 

 

その言葉に叢雲たちも瑞鶴と同じ方角を見る。

それは先ほど二つの轟音のうち、一つが鳴り響いてきた方角。

叢雲は一瞬あっけにとられたが、すぐに意識を取り戻すと艦隊の仲間たちに言った。

 

 

「何ボサッとしてんの!? すぐにアイツのもとに向かうわよ!!」

 

 

そう言って真っ先に叢雲は突っ走り、その後を追って赤城や利根も向っていく。

長門もすぐに向かおうとしたが、流石に衰弱した翔鶴を放っておくわけにいかず、陸奥に頼み近く小島に瑞鶴とともに休ませるよう指示し、遅れて彼女も叢雲たちの後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ケホッ…! ケホッ…! イ、今ノハ一体何ナノヨ!?》

 

 

 

 

 

 

装甲空母姫は自分の勝ちを確信していた。

戦闘開始と同時に自身の能力で霧に身を隠し、艦載機や砲撃による遠距離攻撃で正也にダメージを与えていく。

そして弱ったところを捕まえあの御方の元へと引き渡す。

計画通り、正也にはダメージが蓄積してあと少しで倒れるだろうと予感していた。 その時だった…

いきなり爆発が起こり、強烈な爆風が巻き起こる。

その爆風により周囲一帯の霧は吹き飛ばされ、爆発が起きた地点には円を描くようにぽっかりと霧のない空間が出来上がっていた。

突然の出来事に装甲空母姫も困惑し、爆発が起きた場所に目を向けるとあることに気づく。

 

 

 

 

 

《…アイツ、ドコニ消エタノ?》

 

 

先ほどまで自分が痛ぶっていた正也の姿がない。

先の爆発が起きる前は確かにその姿を確認してたのに、爆発と同時にその姿を見失った。

装甲空母姫は自身の起こした霧の中でも大まかには正也の姿を見ることができた。 霧の中から艦載機を飛ばせたのもその力があったからだった。

しかし、遠くの景色や海面など辺り一面を細かく視認するには彼女自身もこの霧は邪魔になる。

霧が吹き飛んだエリアに足を踏み入れ、何か手掛かりがないか確認しようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…みーつけた」

 

 

突然の声に装甲空母姫は周囲を見るがおかしな所はない。 なら、今の声はどこから…?

せわしなく周囲を見渡し警戒の姿勢を作っていると、

 

 

 

 

 

 

 

《ナッ!?》

 

 

いきなり足元から飛び出した砲弾。

避ける間もなく直撃を食らい爆発、装甲空母姫は爆風に身を焦がされ海面にたたきつけられた。

 

 

 

 

 

「やっと尻尾を出したな!」

 

 

その言葉と共に海面から水しぶきを上げながら飛び出す者。 そこにいたのは、全身ずぶぬれになりながらも槍を携え装甲空母姫を睨み付ける正也だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチは勢いよく海中から飛び出すと、作戦通り霧の中から姿を見せた装甲空母姫を睨み付ける。

 

 

《キ、キサマ…! 今ノ爆発ハ何ダ……一体、何ヲシタ…!?》

 

 

装甲空母姫の方は、砲撃の直撃を受けたせいか若干よろめきながらもウチを睨み歯ぎしりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の居場所を暴くには、自分の周囲にある霧をまとめて吹き飛ばす必要があった。 そこで、ウチは自分の近くに自分で砲撃をしてその爆発で霧を吹き飛ばした。 多少爆風でウチ自身も吹っ飛ばされたが、すぐに海中に身をひそめ、お前がウチを探しに来るのを待ってたんだよ」

 

《…バ、馬鹿ゲテル。 ソンナ真似ヲスレバ、オ前自身モタダデハスマナイトイウノニ……!》

 

「ああ、自分でも馬鹿げてると思う。 でも、こうでもしなきゃお前を引きずり出せなかったし、それにウチは普段から漣や霧島の砲撃を受けて吹っ飛ばされてきた身なんでな。 こんな自爆じゃビクともしないんだよ!」

 

 

ウチの言葉に、装甲空母姫も驚き…というより呆れの色を見せる。

流石に自爆してこの状況を打開するなんてふつうは考えないもんな…

 

 

《ナ、ナンテデタラメナ男ダ… ダガ、ソレナラ又霧ニ身ヲ隠セバイイダケ…!》

 

 

そう言って、再び周囲の霧を自分へとかき集めようとする装甲空母姫。 だが、そんなこと見逃すわけがなかった。

 

 

 

 

 

「吹き飛ばせ、槍嵐撃(ランストーム)!!」

 

 

ウチは槍を回転させて暴風を発生させる。 槍から放たれた暴風は装甲空母姫の霧を吹き飛ばし、身を隠すことができなくなった。

予想外の事態にたじろぐ装甲空母姫。 ウチは暴風を放ったまま叫んだ。

 

 

「ウチもお前の一部の霧を吹き飛ばすことならできる。 霧の中に隠れるにはお前自身霧を纏わなきゃいけないみたいだが、お前の居場所さえ掴んでしまえばどこに隠れようが関係ない。 もう逃がさねえぞ!!」

 

《…ウ、ククッ!? コンナ人間ニ、私ノ霧ヲ破ラレルナンテ…!!》

 

 

ウチは奴を倒すため一気に奴目掛け突撃。 もう奴は自慢の霧を使うことはできない、今度はこっちが仕掛ける番だ!

 

 

《ナ、舐メルナ! 私モ姫ノ一人、オ前ナンカニ負ケルモノカ―――――!!》

 

 

装甲空母姫も自棄になったかウチを狙って主砲を発射していく。

曲がりなりにも相手は深海棲艦。 その砲撃を正面から受けるのは自殺行為だったが…

 

 

 

 

 

「うりゃー!!」

 

 

ウチは槍を横なぎに振って、次々に自分に飛んでくる砲弾を弾いていく。

装甲空母姫も必死になってウチを狙うが、ウチの前にこんな砲撃はまるで意味がなかった。

 

 

「しょぼい砲撃だな。 これなら、戦艦棲姫の方がお前よりよっぽど強かったぞ。 お前の力っていうのは、こそこそ霧に身を隠して不意打ちするだけか?」

 

《クソッ、クソッ、クソッ!! コノ私ガ、装甲空母姫デアル私ガ人間ゴトキニ負ケルトイウノ…!? ソンナノ、絶対アリエナイ…!!》

 

 

泣き叫びながら否定しようとする装甲空母姫だが、目の前に起きてるのは紛れもない現実。

ウチは奴の正面まで接近すると、真っすぐに槍の穂先を装甲空母姫に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…コ、コノ……化ケ物…ガッ……!!》

 

 

 

 

「ウチが化け物だって…? なら、装甲空母姫。 ついでにもう一つ覚えておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はその化け物の仲間に手を出したってことをなっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

至近距離から放たれた砲弾は装甲空母姫の顔面を直撃し、爆発。

装甲空母姫は顔を爆風で黒焦げにしながら意識を失い、その場に倒れこんだ。

ウチは大きく息を吐くと、その場にへたり込む。 それと同時に、ウチは周囲の霧を見ると、徐々に霧が薄くなっていくのが見えた。

どうやら装甲空母姫が話してた通り、奴が意識を失ったことで霧が消滅しているようだ。

しばらく霧がなくなっているのを眺めていると、不意に後ろから聞こえてきた声。

 

 

 

 

 

「いた、あそこだ!」

 

 

声のした方を振り向くと、そこには声の主であるヴェールヌイがウチに駆け寄ってきてた。

 

 

「テートクー!」 「司令っ!」 「司令官さんっ!」

 

「おー! 皆、無事でよかった!」

 

 

ヴェールヌイに続いてやってきた金剛たちに、ウチは手を振ってこたえる。

皆は駆け寄ってきて、思い思いの反応を見せてくれた。

金剛は再び骨がきしむほど抱き着き、霧島は今までどれだけ心配してたか怒り、鳥海や羽黒は泣きながらもウチの無事に喜び、ヴェールヌイも無言のままウチの袖をつかんだまま何も言わないでいた。

 

 

「…うん、本当にごめん。 皆にえらく心配かけちゃって……」

 

「……ご主人様」

 

「あっ… 漣……」

 

 

ウチが謝っていると、突然ウチの前に漣がやってきた。 その様子はいつもの天真爛漫な様子はなく、どこかしおらしくしている。

初めて見た漣の意外な一面に戸惑っていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいっ!!」

 

 

 

 

 

 

いきなりウチに頭を下げてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漣は、護衛艦でありながら最後までご主人様を守ることができませんでした! それどころか、逆に漣がご主人様に守ってもらって……」

 

 

 

 

「漣、あの日からあの光景が忘れられなかったんです。 漣のせいだ… 漣がご主人様を殺してしまったんだと… ずっと心のどこかで自分を責めてて……」

 

 

 

 

「ご主人様が装甲空母姫に離されてしまった時も、もし死んだらどうしようかって……ずっと怖かったんです。 だから……その……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………そうか。

あいつは、カスガダマのときからウチを守れなかったことにずっと負い目を感じてたんだ。

守るべき相手を守れず、逆に守られてしまい生き延びた。

その事実が、あいつをずっと苦しめていた。

いや…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチが……漣を苦しめていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ?」

 

 

ウチは漣の頭にそっと手を置く。

涙にぬれた目でぽかんとした表情をした漣に、ウチは大きく頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スマン、漣! お前にそんな苦労を掛けて!!」

 

 

 

 

「ウチの勝手な判断でお前を苦しめて、本当に申し訳ない! あの時、確かに霧島から忠告されたのに、ウチはそれを守らなかった。 そのせいで、お前をこんな目に合わせてしまい、本当にスマンかった!!」

 

 

 

 

ウチは改めて深々と漣に頭を下げる。

カスガダマの戦いで、決して漣を助けてはいけないという忠告を破ってウチは漣を助けた。

だが、それがこの結果を招いた。

ウチが漣を助けたせいで、あいつは轟沈よりもっと苦しい思いをした。

目の前で大事な人を失うという、死ぬより辛い業を背負わせてしまったのだ。

ウチは必死に頭を下げ謝り続けていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシッ!

 

 

「あだぁ!?」

 

 

突然額を走る衝撃。

痛む額を抑えていると、そこにはいつもの笑みを浮かべる漣の姿があった。

 

 

 

 

 

 

「全く… やっぱりご主人様は馬鹿ですね」

 

 

 

 

「そんなに謝られたら、真剣に謝った漣が馬鹿みたいじゃないですか」

 

 

 

 

「そんなに気を負わないでください、ご主人様。 これじゃ何のために漣が謝ったのかわかりませんよ」

 

 

 

 

「ここはお互い痛み分けってことで、ね。 それでいいですか、ご主人様?」

 

 

 

 

 

 

その姿に、思わずウチも吹き出す。 そっか… そんなに気負うことはなかったんだ。

ウチはウチらしくいつも通りやればいい。 それが、あいつへの贖罪だったんだ。

 

 

 

 

 

 

「ああ、それでお互いチャラにしよう。 あと、もう一つ」

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、漣」

 

 

ウチはにししっ、と笑いながら漣に言う。

それを見て、漣も一瞬目を丸くしたが、すぐに笑顔になりこう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、ご主人様っ♪」

 

 

 

 




今回の話では、どうしても書きたい展開があったので後編を2分割しました。 次回は幸仁編決着になります。
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