艦隊これくしょん 提督代理、着任する   作:なかむ~

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どもー! やっとこちらできました。
最近は中々モチベーション上がらなくて厳しいです。 おまけに単発物も上げていくから余計進むのが遅いというね……
これにて、南方海域編Part1『提督代理、消失編』も終了となります。
次回は日常パートで若干シリアスあり…?になりそうです。
これからも、この話見てもらえると嬉しい限りです。


第82話 暴かれた黒幕。 怒りを決意に変えて

 

 

珊瑚礁沖の海上、ウチはなぜか装甲空母姫を背負いながら漣たちとともに兄ちゃんに指定された島へ向かっていた。

ウチとしては、こいつは漣たちを襲おうとした敵なのだが、ヴェールヌイ曰く『この深海棲艦は、戦艦棲姫の言ってた人物について知っている。 何か情報が得られるかもしれない』と言われ、こいつを鹵獲するということでウチは渋々奴を連れてきていたのだ。

しばらくは海上を走っていたが、

 

 

「ご主人様、見えてきましたよ!」

 

 

漣の指さす先には、ポツンと小さな小島が視界に飛び込んできた。 他にそれらしいものは見当たらないし、あそこが指定した孤島で間違いない。

ウチ等は砂浜から島へと足を踏み入れると、そこには…

 

 

 

 

 

「戻ってきたか、正也」

 

「…兄ちゃん」

 

 

腕を組みながら仁王立ちの姿勢でウチを待つ兄ちゃんの姿があった。

久しぶりの兄弟の再開。 ウチは挨拶しようと声をかけようとしたとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の衝撃とともにウチは砂浜の上を転げまわる。 痛む頬を抑えながら頭を上げると、そこには日の光を背に兄ちゃんが睨むような目つきでウチを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正也、お前は自分が何をやったか分かっているか? お前の勝手な行動のせいで俺やこいつらだけでなく、間宮さんや神原さんにまで余計な心配を掛けたんだ。 今回の一件でお前の軽はずみな行為がどれだけ周りを困らせるか、よく肝に銘じておけ」

 

 

 

「…ちょ、ちょっと待ってよ! いくら提督のお兄さんだからってそれはあまりにひどいんじゃ…!!」

 

 

いきなり弟をぶん殴るという行為に異議を唱えようと蒼龍は兄ちゃんに食って掛かろうとしたが、

 

 

 

 

 

「…いい、蒼龍。 …兄ちゃんの言う通り、元はウチのせいでこんなことになってしまったんだ。 …ありがとう、ウチのために怒ってくれて」

 

 

 

「提督……」

 

 

 

ウチは蒼龍を窘めると、兄ちゃんとともに二人の姫を捕縛している森の中へと向かった。

簡易的にだが傷の治療はされており、傍らでは長門たちがおかしな動きをしないか見張っていた。

 

 

「提督か。 こっちは変わらず、だ…」

 

 

長門は横目で南方棲戦姫に視線を向ける。

南方棲戦姫と装甲空母姫は両手を後ろに縛られて身動きが取れない状態だった。

しかし顔をこっちに合わせようとせずそっぽを向いたまま。 とても情報を引き出せる様子ではなかった。

 

 

「よお、久しぶりだな」

 

《………》

 

「お前らも自分がなぜ鹵獲されてるか、大体察しはついてるだろ」

 

《……サア、ナンデカシラネ?》

 

 

白々しくとぼける装甲空母姫。 その態度に長門は装甲空母姫に掴みかかろうとするが、兄ちゃんは手を前に出してそれを止めた。

 

 

「南方棲戦姫の方はもうわかってるはずだ。 俺がお前らに尋ねたいことがあると」

 

《…フン》

 

「俺が聞きたいのはお前らがあの御方と呼ぶ人物についてだ。 お前らに不可解な技術を与えたその人物について、知ってることを話してもらうぞ」

 

《…バカネ、敵デアル私タチガ『ハイソウデスカ』ト喋ルトデモ思ッテルノ?》

 

 

人を小馬鹿にするようにおどけた態度を見せる南方棲戦姫。 しかし、兄ちゃんも毅然とした態度を崩さなかった。

 

 

 

 

 

「話したくないなら結構だ。 それならお前らの装備をはぎ取ってデータを解析する。 俺たちの元にはそういった開発に関するプロがいるから、お前らに技術を与えたあの御方のいる場所を割り出すのも時間の問題だろう。 今ここで情報を吐いて解放されるのと、今ここで解体されるの、果たしてどっちがマシだ?」

 

 

その言葉にさすがの南方棲戦姫もぐっと唇をかみしめた。 どうやらこのまましらを切りとおすのは無理と悟ったみたいだ。

 

 

(開発のプロって明石さんの事? すごいね兄ちゃん、明石さんがそんなことできるなんていつの間に知ったん?)

 

(バカ、ただのハッタリだ…)

 

 

ウチはこっそり耳打ちをすると、兄ちゃんからあきれ顔でそう返されガクッとずっこける。

しばらくすると、無言を貫いていた装甲空母姫が小さな溜息を吐き、こっちを向いた。

 

 

 

 

 

 

 

《イイワ、話シテアゲル》

 

《チョット、アンタ…!?》

 

《ココマデ来テシマッタ以上、話スシカナイ。 貴方モ分カッテイルデショ?》

 

 

どこか遠くを見るような悲しげな瞳でそう話す装甲空母姫。 南方棲戦姫もそう言われると、観念したように黙り込んだ。

二人がこちらを向くのを待って、兄ちゃんは本題を切り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず俺が聞きたいのは、お前らの言う『あの御方』とやらについてだ。 そいつはいったい何者なんだ?」

 

「私も聞いた。 その人物は司令官と同じで普通の人間じゃない。 そう言ってたよね?」

 

 

幸仁とヴェールヌイが真剣な表情で詰め寄る。

今まで無人島で一人だったウチは、その様子を遠目に眺めることしかできず、装甲空母姫は口を開く。

 

 

 

 

 

《…アナタ、言ッテタワネ。 自分ハコノ世界ノ人間ジャナイ、別ノ世界カラ来タッテ》

 

「それがどうした?」

 

《考エタコトハナカッタノ? 別ノ世界カラコノ世界ニ来タ人間ハ、本当ニ自分達ダケナノカッテ?》

 

「………」

 

「ど、どういう事さ…!?」

 

 

ウチは言ってる意味が分からず声を荒げる。 兄ちゃんの方は何も言わず、無言のまま装甲空母姫の話を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ココマデ言エバ気付イタンジャナイ? 貴方達ノ他ニモ、別ノ世界カラ来タ人間ガイルト》

 

「…っ!? もしかして、それがお前たちの言う『あの御方』なのか…?」

 

《正解♪ 私達ガ艦娘ヤ身内ノイザコザデ手ヲコマネイテイル時、アノ御方ハ現レタ》

 

《『俺を此処においてくれるのなら、お前たちにより強い力を与えてやる』 アノ御方ハソウオッシャッテイタワ》

 

《初メハ人間ノ言ウ事ナド宛ニナラナイト思ッテイタケド、試シニトイウコトデ与エラレタ技術ヲ使ッテミタラ、皆スグニアノ御方ヲ迎エ入レタワ》

 

「それで…その能力を得たというわけか。 そいつの名はなんて言う?」

 

 

しばらく無言のままだったが、不意に口を開く兄ちゃん。

装甲空母姫はクスリと笑うと、その質問に答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫟谷(くぬぎや) 葬壱(そういち)。 アノ御方ハ、ソウ名乗ッテイタワ》

 

「…そうか。 そいつがこの戦争の黒幕なのか」

 

 

ついに判明した深海棲艦たちの裏にいる黒幕の存在。

ウチは握りこぶしを作り怒りを抑える。

 

 

「もう一つ聞くことがある。 お前らが『アレ』と呼ぶ深海棲艦についてだ」

 

「戦艦棲姫の話では、『アレ』は櫟谷という男が独自に生み出したものだと聞いている。 一体、どんな深海棲艦なんだ?」

 

 

再び質問を変え尋ねる兄ちゃん。 今度は、南方棲戦姫がその問いに答えた。

 

 

 

 

 

 

《…アレハ、マサニ化ケ物ト呼ブニフサワシイ強サダッタワ。 アノ御方ハ、両者ノ艦ノ長所ヲ併セ持ッタ艦ヲ作リタイト言ッテタノ》

 

《駆逐艦ノヨウナ小型ノ艦ハ機動力ハアルガ火力ガナイ。 逆ニ戦艦ノヨウナ大型ノ艦デハ火力ガ強イ分、機動力ニ劣ル。 ソコデアノ御方ハ生ミ出シタ、両方ノ長所ヲ取リ入レタ艦ヲ…》

 

《駆逐艦並ミノ機動力ヲ発揮サセルタメ小型ニシ、尚且ツ戦艦ノヨウナ大火力ヲ有シタ理想ノ兵器。 アノ御方ハ、アレヲコウ呼ンデイタ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《戦艦…レ級……》

 

 

 

「戦艦…レ級……?」

 

 

ウチはただ、南方棲戦姫の言葉をオウム返しのように呟く。 その時だった……

 

 

 

 

 

 

 

《…ソロソロ、時間ノヨウネ》

 

「何の話だ…?」

 

《…アノ御方ハネ、自分ニトッテ使エナイト見ナシタ者ハバッサリ切リ捨テルノ。 貴方達ニハ聞コエテナカッタダロウケド、サッキ通話デ私達モソレニ見ナサレタ。 ソウイッタ者ノ末路ハ、果タシテドウナルト思ウ?》

 

「ど、どうって…?」

 

 

装甲空母姫の言葉にウチが困惑していると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…危ない司令官っ!!」

 

 

ヴェールヌイが必死の形相でウチを二人から引きはがした。 次の瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、飛来してきた砲弾が二人の姫を直撃。 大型の砲弾から放たれる爆風と破片が辺り一面を襲い、ウチはヴェールヌイとともに爆風に吹き飛ばされた。

 

 

「うっ… いつつ… 大丈夫かヴェールヌイ?」

 

「私は…大丈夫…… 司令官は…?」

 

「ウチも平気……なっ…!?」

 

 

ヴェールヌイの無事を確認して、ウチは先ほど爆発があった場所を見て、そして愕然とした。

なぜなら、そこにはもう二人の姫の姿はなかったからだ。

よほど強力な爆発だったのか、姫の死体はおろか砲弾が着弾した場所はぽっかりと穴が開いており、辺りには申し訳程度に艤装の破片が転がっているだけであった。

ウチは開いた口が塞がらないまま、その光景を眺めており、兄ちゃんの方は急いで無線を取り出し、周囲の索敵を行っていた赤城さんへと連絡をしていた。

 

 

 

 

 

「…何だって、それは本当か!?」

 

「ど、どうしたんだ兄ちゃん…?」

 

「…さっき、赤城からこの島の周囲に敵の姿はないか確認をしたんだが、赤城曰くこの島の周囲10キロにこの砲弾を放った深海棲艦の姿は見受けられなかったそうだ」

 

「えっ…? それってどういう……」

 

「…簡単な話だ。 要は、この砲撃をした奴はここからじゃ居場所を掴めないほど遠くから、あの砲弾を撃ち込んだんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正也と幸仁の二人がいる島から遠く離れた海上。

そこでは小さな深海棲艦の傍らで、一人の男が二人がいる島の様子を映したモニターを片手に、歓喜の声を上げていた。

 

 

 

 

 

「素晴らしい―――――!! 流石、俺の作り出した最高傑作。 あの距離から標的目掛けて正確に砲撃するなんて!!」

 

 

「とはいえ、奴らにも困ったものだ。 調整相手を探して来いというお使いもまともにできないうえ、ペラペラとこちらの話をするなんて」

 

 

「まあ、代わりにあいつらにはこいつの調整相手になってもらったし、それで良しとしよう。 あいつらも憎い艦娘を始末するこいつの礎になれたのなら、本望だろうしな」

 

 

そう言って、砲撃を指示した男……櫟谷葬壱はちらり戦艦レ級に目をやる。

小さな体の後ろから身の丈と同じくらいのしっぽを出して、尻尾の口からは先ほど吐き出した砲弾の余熱がわずかに残っていた。

その表情はなにやらニタニタと笑い、単純に作られたものを破壊することを楽しんでいるように見えた。

 

 

「そうか、お前も楽しかったか。 だがもう少し待つんだ。 お前が出るにはまだ微妙な調整が必要になる。 それが済んだら、お前には思う存分暴れさせてやるからな」

 

 

櫟谷はレ級にそう諭すと、島がある方角を向きニヤリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆風で跡形もなく消し飛んだ装甲空母姫と南方棲戦姫。

ウチはただ、やりきれない思いだけを胸に拳をわなわなと震わせていた。

 

 

 

 

 

「…なあ、兄ちゃん。 こいつらの黒幕は、あいつらを……深海棲艦(自分の仲間)をなんだと思っているんだ……?」

 

「……。 恐らく、奴にとって深海棲艦は都合のいい駒………いや、自分の技術を試すための実験材料(モルモット)にすぎないのかもしれん」

 

 

その言葉を聞いたとたん、ウチはわき目もふらず駆けだした。

兄ちゃんやヴェールヌイが呼び止めるのも聞かず、ウチは砂浜まで走ってやってくると、水平線が広がる海を睨みあらん限りの声で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「櫟谷葬壱――――!! 聞こえてるなら、耳の穴かっぽじってよーく聞け! ウチはトラック泊地提督、中峰正也。 お前をブッ飛ばす男の名だ! ウチは必ずお前をブッ飛ばしてこの戦争を終わらせて見せる。 それまで、首を洗って待ってろよ――――!!」

 

 

息を切らせながら、目に涙をため、拳にあらん限りの力を込めたまま、ウチはその場に佇んでいた。

 

 

「正也… お前…」

 

「兄ちゃん… 漣… ヴェールヌイ… ウチはやる。 必ず…絶対にこの戦争を終わらせてみせる! だから………これからも一緒に戦ってくれ!!」

 

 

兄ちゃんたちは海へ駆け出したウチを遠目に眺めていたが、ふっと小さく笑うとウチの隣に立って、パンッ!と肩を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前に言われなくてもそのつもりだよ、バカ」

 

 

 

 

「もちろんですよ、ご主人様。 漣はしつこいから、どこまでもついていきますよ」

 

 

 

 

「元より私たちは深海棲艦と戦う存在、艦娘なんだ。 私たちはこれからも司令官と一緒さ」

 

 

 

 

 

 

ウチの傍でそう言ってくれた大事な仲間たち。 その言葉を聞き、ウチは改めて決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に勝つ。 あんな奴に、ウチの仲間を沈ませたりはしない! と……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫟谷葬壱は肩をプルプルと震わせていた。

手にしていたモニターからは、正也の宣戦布告の言葉が流れ、その声を奴は確かに聞いていた。

抑えきれない衝動を胸に、櫟谷は両手を広げ喜びをあらわにした。

 

 

 

「くっ、くふふ… あーはっはっはっはっは!!」

 

 

「わざわざ宣戦布告をしてくるとは、おもしろい……本当に面白い男だ中身正也!」

 

 

「いいさ、是非来るといい。 その時は、こちらも最上級のおもてなしをさせてもらおう」

 

 

「さあ、戻るぞ戦艦レ級。 急いでお前の調整を終わらせなくてはな」

 

 

「そして、調整が終わったその時はやらせてやる。 艦娘も、深海棲艦もしのぐ存在。 戦う提督とやらせてやろう!!」

 

 

しばらくはただただ海を眺めていただけの戦艦レ級だったが、櫟谷の言葉を聞いたとたん笑った。

野獣のような獰猛な笑みを浮かべ、戦艦レ級もまた新しいおもちゃで遊ぶような高揚感に体を震わせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、誰も知らないような孤島だった。

せいぜい10人ほどが寝泊まりするのがやっとのような小屋で、奥にはここで一番広いであろう部屋が取り付けてある。

その部屋の手前の廊下には、二人の深海棲艦。 戦艦ル級・戦艦タ級がその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

《…姐サン、マダ話シテルミタイダネ》

 

《…無理モアリマセン。 姐サンニトッテハ反対シタイノデショウガ、流石ニコレバカリハ提督モ考エヲ変エルツモリハナイデショウ…》

 

 

両手を頭の後ろに組みながらタ級はぶっきらぼうにつぶやき、ル級の方は丁寧な口調で気まずそうに話し声が聞こえる扉の方を見ていた。

奥の部屋には、一人の男性と一人の深海棲艦。 深海棲艦の方は必死の表情で、目の前の男性に何かを尋ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…モウ一度、確認サセテクダサイ。 貴方ハ、本当ニ行クトイウノデスカ?》

 

「ああ。 もうこれしかないんだ、この事態を解決するためには…」

 

 

薄汚れてはいるが、元は海軍が来ているような白の軍服に身を包んだ男は静かな口調で目の前の深海棲艦にそう話した。

 

 

《ダカラトイッテ、イクラナンデモソレハ危険スギマス!! モシ、貴方ノ身ニ何カアッタラ私ハ……!》

 

「君の気持ちはわかるよ。 現に、僕も自分のやろうとしていることがおかしいというのは承知している」

 

「でも、今の僕たちにはそれしか手が残されていないのも事実だ。 君も知っているはずだ、奴の助力のおかげでかつての同志たちがどんどんおかしくなっていることも」

 

《ソ、ソレハ……》

 

「最悪、僕一人でも行くよ。 この身一つと引き換えに君たちを助けられるのなら、僕はやる」

 

《……。 イエ、私モ行キマス。 貴方ヲ一人デ行カセルナンテ、私ニハデキマセン。 ダッテ……》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…私ハ、貴方ヲ愛シテマスカラ》

 

 

 

 

 

赤くなった顔を伏せながら、深海棲艦は小さくつぶやく。

その姿に、男もどこか嬉しそうな優しい笑みを浮かべて彼女の頭を撫でた。

 

 

「…ありがとう、君を好きになってよかったよ。 …さて、そろそろ時間だ」

 

 

男は立ち上がると、スッと深海棲艦へと手を差し伸べる。 優しく自分の手を握る彼女を見て、男は決意のこもった声で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こう、港湾棲姫。 僕達の最後の希望。 トラック泊地へ…!」

 

 

 

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